2009年10月 紙パ技協誌
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第63巻 第10号 和文概要


ホットディスパージングシステムとブロークパルパーの技術

セルウッドマシナリー社 カイ トライメル

  紙は,我々が毎日使用している製品であり,原材料とエネルギー価格が高騰している現状において,適性な装置を用いて取り扱う事が大変重要な事である。クリマホットディスパーザーは,現代における原料プラントにおいて重要な設備の一部である。ディスパージングの目的は,古紙内の汚れを経済的にまた発展的な方法で分散するのが目的である。そのディスパージョンシステムの概要,特徴について紹介する。
  また,グルーブンパルパーはバージンファイバーとブロークを効率良くかつ経済的に取り扱うために開発され,50年間以上に及ぶパルパーの進化により,低エネルギー消費量,高溶解濃度及びオーダメイドによるパルパー設備等の点についての市場の要望に応えるべく開発を行っている。この特徴について紹介する。
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ドライヤーキャンバス,プレスフェルト,ワイヤーファブリックの最新洗浄装置

相川鉄工株式会社 技術営業部 岩谷陽一郎

  抄紙機におけるドライヤーキャンバス,プレスフェルト,ワイヤーファブリックの洗浄を適切に行う事は,製品の品質向上のみならずコストダウンの面から見て非常に重要である。そして,洗浄装置はより確実な洗浄・自動化・省力化を満たす為,日々進歩している。その最新型が,以下の4機種である。
    スーパークリーナーWET…高圧水を用いた,吸引型ドライヤーキャンバス洗浄装置。
    スーパークリーナーDRY…洗浄水を使用しない,吸引型ドライヤーキャンバス洗浄装置。
    スマートクリーナー…フェルトの状態をチェックするセンサーと連動した,プレスフェルト洗浄装置。
    FFクリーナー…洗浄によるミスト発生を防止する,ワイヤーファブリック洗浄装置。
                         これら洗浄装置の特徴や,導入におけるメリットについて紹介する。
  また,現在流通しているこれら洗浄装置の殆どが海外メーカー製であるが,それによるデメリットが数多く存在する。しかしながら,弊社の洗浄装置はすべての部品を弊社にて製造している純国産品である為,そのメリットについても合わせて紹介する。
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パルプ蒸解工程排水への嫌気性処理システムの適用実績

住友重機械エンバイロメント株式会社 環境システム統括部   中野 淳,赤澤明敏,関谷努力

  嫌気性排水処理システムは,省スペース,省エネルギー等の特徴を有するとともに,バイオガスからエネルギー回収を行うことで,CO2削減にも寄与する排水処理システムである。昨今の燃料費高騰に対し,処理コストの低減にもつながる処理法である。
 パルプ製造過程で発生する高濃度有機性排水の臭気ドレン排水に対し,嫌気性処理システムの適用を検討した。良好な検討結果を得て,王子製紙富岡工場内に設備を建設し,約1年間の運転実績を得た。
  設備は,油分分離槽,酸生成槽,およびグラニュール汚泥を充填したEGSB反応槽等にて構成される。反応槽は,CODCr容積負荷15kg/m3・dにて設計し,臭気ドレン排水を2倍希釈して処理する計画とした。
 臭気ドレン排水はCODCr11,000〜16,000mg/lの高濃度有機性排水であり,本システムにより約90%の除去率が得られた。主要構成物質のメタノールは,ほぼ100%の分解率が得られた。発生したバイオガスは,燃焼設備に送られてエネルギー回収される。回収エネルギー量は,計画を上回る約200,000MJ/日であった。
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環境負荷低減のためのウエットエンドコントロール技術

ソマール株式会社 技術開発部 但木孝一,朝田知子,春日一孝

   近年の抄紙マシンは大型化,高速化等が進む中で省エネ,省資源化が重要な課題になっている。これまで弊社では,ウエットエンドを最適化することにより抄紙マシンの汚れ低減や操業性の向上等に有効な歩留り剤や凝結剤「リアライザーシリーズ」の開発を続けてきた。これらの試みの中でウエットエンド改質システム「アクシーズシステム」を適用することにより各種ウエットエンド薬剤の添加量を削減できる点や排水負荷を低減できる点等,環境負荷低減につながる効果が見出してきた。
   また最新のASAサイジングシステム「レグシス」の開発によりサイズ剤等の添加量の大幅な削減を目指している。高機能乳化剤「レグシスEシリーズ」を適用することにより,各種添加薬剤のパルプ繊維への定着性を向上させ,サイズ効果以外の面でも効果を発揮できるように開発を進めている。弊社では,環境負荷低減に重きを置いた薬剤を開発し,様々な角度からテストを実施している。
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新しい高性能ウォッシュプレスの開発

アンドリッツ株式会社  萩原 幹児,川上 千明
アンドリッツ・ファイバーライン事業部 ヨハン シェーベリー

  アンドリッツ社は,高性能置換洗浄プレス,AWP Wash Pressを開発した。この新しいAWP Wash Pressは非常にコンパクトでありながら,高処理能力を有し,パルプを高濃度に脱水可能である。アンドリッツ社は,GFFドラムフィルター,ディフューザー洗浄機,また,高処理能力,高洗浄効率のDDウォッシャーを有しており,AWP Wash Pressは,技術的に新たな選択肢を提供するものとなる。今日,ニーズは多様化しているが,洗浄プレスをDDウォッシャーなどと組み合わせ,よりフレキシブルなプロセス設計が可能となる。未晒洗浄プラント,酸素脱リグニンプロセス,粗選・精選後の洗浄・濃縮,デシャイビングを伴う未晒工程,メカニカルパルプ・プロセスなどに応用できる。
 既設のパルプ製造ラインは数多くの洗浄機が稼動しているが,その多くは老朽化していることも多い。そのため,既設設備の改良,改造が行われる。コンパクトで高能力のAWP Wash Pressは,既設改造のアップグレード,増産にも最適のマシンともなる。
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改良型ミニシュープレス
  ―メッツォペーパーと国産技術の融合―

メッツォペーパー社 ティモ ペリネン,ユリ オンネラ
メッツォペーパージャパン株式会社 エンジニアリング本部 本間 一朗

  抄紙機プレスパートのロールニッププレスをシュープレスに改造することは,いくつかの大きな利点がある。シュープレスは,ロールプレスと比べてプレス後のドライネスが数%向上し湿紙強度が増加するため,走行性の安定,増速,増産などの利点をもたらすことができる。プレスパートの改造には多くの費用がかかるが,新しいミニシュープレスへの改造では,フレーム類の改造を小規模とすることで,機械及び建屋の改造費用を低く押さえることができ,ロール重量の低減により天井クレーンの改造を不要とし,改造工事のためのマシン停止期間を短くすることができる。改造後の増産により投資金額の回収期間も短くなる。
  この度,三菱重工業株式会社から製紙機械事業の譲渡を受け,メッツォペーパーはシューロール技術に三菱重工業の技術を融合させることにより,新しいミニシュープレスを商品化した。
  シュープレス技術は,多く納入実績があり今日では標準となっているが,ミニシュープレスの適用により,さらに多くのお客様に利益をもたらすことが可能となった。本報では,シュープレス技術と利点,及びミニシュープレスの特徴を紹介する。
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一般産業界における音に関してPart IV
  ―トラブルフリーオペレーションの一環―

日本エスケイエフ株式会社 コンディションモニタリング 山崎 安彦

  今回は複合音に関して考察する。複合音としてはいろいろな機械要素,例えばギヤやカップリング,モータなどを考えると,非常に複雑になるので今回はまだ4回目でありあまり複雑なものを考えずにベアリング内の損傷部位を複数あるケーススタディから考えていく。いろいろな音が混在する中,ベアリングの異常振動も2箇所以上の場合その損傷の部位とその深刻度合いを判断するのは非常に難しい。中でも内輪損傷とボールの損傷の複合は本来それらの似通った音の合成は人の耳による分離判別は非常に難しいものである。
  測定器の使用は古くから行われて来たが複合振動を明確に区別するものはほとんど無く分離しきれない振動を表示するのがやっとであった。SKFではその損傷部位やその深刻度合いを分離することでその後の対応や原因の特定,再発防止の検討がいち早くはじめることを提唱する。
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資格・管理区域不要のガンマ線レベル計
  ―連釜・晒タワーのレベル計測―

ナノグレイ株式会社 宮下 拓

  製紙工業の非接触計測分野において,放射線源を用いた厚さ計,レベル計,密度計などが使用されている。これらの計測器では,資格や管理区域の設定が必要であり,放射線障害防止法上の許可や届出が必要であった。ところが,2005年6月の法令改正において設計認証制度が新設され,一定レベル以下の微弱線源を用いた機器の内,安全性の認証を受けたものは,「表示付認証機器」となり,主任者の選任・管理区域の設定が不要という1種の規制緩和が行われた。「表示付認証機器」は,従来の放射線源装備機器が必要とされていた労働基準監督署への届出,測定,教育訓練,健康診断,放射線障害防止予防規定なども不要である。「表示付認証機器使用届」は,従来の「届出」と全く異なり,添付書類不要でA4書式1枚を使用開始後30日以内の郵送で良い。加えて,許可事業所において「表示付認証機器」を導入しても,既設の放射線源装備機器と別枠になり,許可使用の変更とはならない。このように,「表示付認証機器」は従来の放射線源装備機器に比べ,格段に手続きが簡便で短期間で済むようになり,密度計,レベル計などの使用が拡大している。
 弊社はすでに「表示付認証機器」としてガンマ線密度計PM―1000,ガンマ線レベルスイッチTH―2000などを販売してきたが,今回,扇状にガンマ線を放射できる線源遮蔽体と棒状検出器を新たに開発し,製紙分野における釜・タワーに適用可能な,「表示付認証機器」のガンマ線レベル計TH―3000を開発した。最大Φ5,000mmクラスの釜・タワーに適用可能である。これにより,製紙分野のガンマ線計測器(レベル計,レベルSW,密度計)がすべて表示付認証機器でカバーできるようになった。
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白板紙へのフレキソ印刷に影響を与えるパラメーター

オミヤ社 ピーター ブリ,キャシー リッジウェイ,ジョアキム シェルコフ

  この研究では非塗工と塗工した白色ライナーボードがフレキソ印刷で比較された。塗工白色ライナーは2つの異なった塗料配合でベントブレード,ロッド,メタサイズプレスの3つの異なった塗工方法で行われた。総てのサンプルは同じ条件でカレンダー掛けされ,ドイツのシュタットガルトメディア大学のDFTA技術センターのフレキソ印刷機を使って印刷された。印刷特性は空隙構造とフレキソ印刷特性との間の相関関係を見つける為に,板紙表面の物理的性質と比較した。平滑性が良好であっても印刷適性が十分でない事が示されました。表面の湿潤性の測定である塗工層の接触角と水吸収速度の2つのパラメーターもまた考慮される必要がある。
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オートテンションストレッチャーの導入効果
  ―Erhardt+Leimer社製Elstretcher―

株式会社KGKエンジニアリング 営業三部 松下  淳

  今日の抄紙機では,ロスの無い安定したリピート性の高い操業が厳しい経営環境のもとでますます重要となっている。その中でも製紙ツールとしてのファブリックテンションを,正確に測定し,全自動でコントロールして最適に保つことは,蒸気消費量の低減又は,生産速度の向上,紙表面の平滑性向上,カンバス寿命の向上等,直接利益に結びつく投資として評価されている。ELストレッチャーは,独自のウェブコントロール技術により,ファブリックテンションを常時,入力設定値の「±0.1〜0.2kN/t」を維持する。本稿では,ワイヤーパート,プレスパート,ドライヤパートにおける画期的な全自動ファブリックテンションストレッチャーの導入効果について紹介する。
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ISWFPC2009(ノルウェー紙パルプ技術協会主催)参加報告
  ―2009年6月15日〜17日オスロ(ノルウェー)にて開催―

東京大学 松本 雄二
筑波大学 大井  洋
紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

  2009年6月15日〜17日にノルウェー・オスロ市で,ISWFPC2009がPTF(ノルウェー紙パルプ技術協会)の主催で行われた。ISWFPCは木材・繊維・パルピングについて世界の研究者が一同に会し,成果を発表し,討論を行う場で,産よりも官・学の参加者が多い。世界各地で,2年に1回持ち回りで開催され,今回で15回目の開催となる。
 会議の参加者は21カ国,168名であった。63件の講演と115件のポスター発表が行われた。これに参加したので概要を報告する。 
 また,大会後に,木材のバイオ利用企業であるボルガード社を訪問したのであわせて報告する。
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第76回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会  木材科学委員会

  第76回紙パルプ研究発表会は,2009年6月30および7月1日の2日間,東京都江戸川区「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計42件で,口頭発表が29件,ポスター発表が13件であった。参加者は228名であった。発表内容の概要をまとめた。
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技術革新が新聞用紙とその製造技術を如何に変えてきたか
  ―新聞用紙製造技術の系統化調査(その4)―

国立科学博物館産業技術史センター平成19年度主任調査員,元紙パルプ技術協会専務理事
飯田  清昭

  第1回で,紙パルプ産業の歴史,テーマ選定の背景及び基礎技術を簡単に解説し,第2回では,新聞用紙製造60年の変遷とその原料開発の歴史を紹介,第3回は抄紙機に見られる技術開発の歴史を述べた。今回は,日本の製紙産業の技術開発の特徴を考察し,他国の製紙産業と比較して見る。
  日本の製紙産業の発展には,生産技術を絶えず革新してきたことが寄与してきた。生産技術とは,生産性の高い設備(日本では設備の大型化,高速化をはかり,絶えず設備の生産性向上させてきた)を効率よく操業し(歴史的に日本の設備の操業効率は群を抜いて高い),信頼性のある製品を競争力のある価格で(日本の新聞用紙のコストパーフォーマンスの良さから輸入紙が国内市場に入れない)生産することである。この高い生産技術の維持には日本独自の工場操業文化の存在があり,海外交流により東南アジアへ広がりつつある。
 ついで,エネルギー対応技術(日本の紙生産のエネルギー原単位は世界で最小のレベル),環境対応技術(環境規制基準は最高レベルでそれを満足している),研究開発力(商品開発力はトップレベル)及び技術教育(日本の競争力の源)について考察する。併せて,日本製紙産業の特徴を他国の製紙産業と比較する。次回は,1960年に設備された新聞用紙抄紙機(当時世界最大クラス)の50年の技術発展を具体例として記録する。
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ECF漂白への転換による環境負荷低減効果(第2報)
  ―排水中のクロロホルムとクロロフェノール類の減少―

株式会社日本紙パルプ研究所 岩田 ひろ

  パルプの塩素漂白により発生する有機塩素化合物の多くは難分解性,蓄積性に加えて毒性を示すことが知られている。この有機塩素化合物の削減を目的として日本の製紙会社は1996年から漂白工程のECF転換を進めてきた。
  日本紙パルプ研究所では王子製紙,日本製紙のECF転換の進行に合わせ,排水による環境負荷を調査してきたが,その過程で明らかになったクロロホルムとクロロフェノール類の削減状況を報告する。
  漂白工程でのクロロホルム発生は広葉樹パルプ漂白系でパルプ1t当たり平均46g(g/t)から0.50g/tに,針葉樹パルプ漂白系で平均43g/tから0.55g/tへ95%以上減少し,漂白工程のECF転換の主要な目的であったクロロホルムの発生抑制は十分達成された。総合排水での排出濃度も発生の削減をうけ激減し,水道水質基準の0.06mg/Lをも下回るようになった。
  塩素漂白により発生する有害性の指摘される3塩素化以上のクロロフェノール類も,ECF転換によって発生はほぼ100%削減され,米国EPAのクラスタールールが求める漂白排水のクロロフェノール類の規制をクリアするレベルとなった。
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