2009年6月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2009年6月

    
第63巻 第6号 和文概要


電気自動車・燃料電池車の最新動向と将来展望

財団法人日本自動車研究所 FC・EVセンター 荻野 法一

 エネルギーセキュリティ問題,地球温暖化問題等が顕在化する中,世界的に電動車両を中心とした次世代自動車への期待が益々大きくなって来ている。
 本書では,電気自動車・燃料電池車に関する政府の取組み,現在の普及・開発動向,普及の意義,普及に向けた将来展望について紹介する。
 具体的な内容としては,下記の内容を紹介する。
   自動車部門におけるエネルギー・地球温暖化問題に係る最近の状況
  拡大する新興国の自動車市場と原油価格の状況等
  上記問題を踏まえた政府の取り組み,将来目標
  電気自動車・燃料電池自動車の現状
  過去からの電気自動車に係る取組状況と現在の普及状況等
  電気自動車・燃料電池車のエネルギー・温暖化対策での普及の意義
  Well to Wheel(井戸元(原油採掘)から車輪まで)のエネルギー消費量・CO2排出量に基づいた説明
  電気自動車・燃料電池車普及に向けた課題と将来展望
  電気自動車・燃料電池車の課題,コスト分析を踏まえた将来展望の紹介
 電池ならびに水素・燃料電池の環境技術が,将来のサステイナブルモビリティ(持続可能な移動手段)の実現には重要な技術であることは間違いない。
 それらの技術を有効に利用した電気自動車・燃料電池車の現状と将来展望を,大まかにでもご理解いただければと考える。
(本文2ページ)


既設設備見直し適正化による省エネルギー

王子板紙株式会社 日光工場 阿泉  徹

 エネルギー多消費型産業である製紙産業は,昨今の原油高に伴ってエネルギーコストが上昇し,各社ともに収益面において深刻な影響を受けつつある。また地球温暖化防止対策として,紙パルプ業界は2010年度までに製品あたり化石エネルギー原単位を1990年度比13%削減し,CO2排出原単位10%削減を掲げており王子製紙グループ各工場においてもその方針にのっとり省エネルギー活動を実施している。
 日光工場でも2002年,ISO14000取得によりエネルギー原単位を削減する為に省エネ活動を実施してきたが昨今の重油高騰により省エネ活動が急務となり,エネルギー原単位10%,1,500kW(CO2換算:6,660t/年)削減目標として実施してきた。
 本報では,全員参加型で臨んだ省エネルギーの取り組み内容について紹介する。
(本文7ページ)


最新のシール技術を応用した設備診断および節水省エネ技術
  ―連続蒸解釜の熱効率改善手法―

A. W. チェスタートン社 日本地区PROチーム 松西 研治, 岡  竜史

 カミヤ式連続蒸解釜は生産性に優れたパルプ製造方法で世界的に最も普及している化学パルプ製造装置であるが多くの回転機器を使用し,回転機器の軸封保護に使用される通称"シール水"が内部に混入することでその熱効率を低下させる欠点を有する。10L/分(14.4m3/日)のシール水が蒸解釜系内へ混入するとその熱効率への影響は年間約1,060tの蒸気損失(1.3MPa飽和蒸気,年間340日操業,熱交換効率90%,シール水と蒸解釜内分の温度差130oC)となり,重油換算にすると約72kL/年の損失,CO2換算で約195t/年になる。弊社では1998年より現場調査を開始し,これまでに日本国内17工場の蒸解釜周囲のシール水混入量計測を行ってきた。蒸解釜のサイズにもよるが,少ないところで1日約25m3,多いところでは1日約220m3/日の内部混入が計測され,多くの工場が1日約40m3―70m3の内部混入となっていた。これは重油換算で年間200kL―350kL,CO2換算で年間約540t―950tの排出量に相当する。しかし最新のシール技術を採用することでこれらの内部混入量を80―90%削減して蒸解釜の熱効率を向上させ,かつ回転機器軸封部の寿命を延長させることが可能となっている。過去10年間に渡って行ってきたこれらのフィールド調査結果および改善手法について説明させていただく。
(本文11ページ)


R8冷水温度アップによる省蒸気

日本製紙株式会社 岩国工場 原質課 石井 利和

 二酸化塩素発生装置では発生した二酸化塩素ガスを冷水に吸収溶解させ,これをパルプ漂白工程で使用している。ここで使用する冷水は冷水装置(蒸気エジェクター方式或いはチリングユニット)で多大なエネルギーを使用して製造しているものである。
二酸化塩素発生装置設備メーカの運転要領では,冷水温度5oC程度で運転することが指導されるケースが多いようであるが,二酸化塩素発生装置の操業に大きな影響がない事を確認しながら徐々に冷水設定温度を上げて行いくことで,ある程度の温度アップが可能なことがわかった。理論的には冷水温度のアップは幾分は二酸化塩素の発生効率が低下するものと思われるが,原単位解析及び除害設備での薬品使用量から見て発生効率の悪化は見られていない。この結果冷水を製造している冷水装置での使用エネルギーを大幅に削減できた事例について説明する。
 またここでは,冷水装置での省エネルギーのみの効果としてあげたが,一般的に二酸化塩素を使用したパルプ漂白段では,50oC〜70oC程度まで加温して反応させていることから,温水等余剰なエネルギーを有効利用している工場でない限り,漂白工程でのエネルギー消費量をも改善できるものである。
(本文17ページ)


ミニシュープレス導入による省蒸気

三菱製紙株式会社 八戸工場 関根 直志

 三菱製紙八戸工場6号抄紙機において,2007年8月に増産,省蒸気を目的としてシュープレス改造を行った。
 三菱重工で開発されたミニシュープレスを採用し,搾水性の向上により3P出口水分が低減でき,一定の省蒸気を達成することができた。
 更に従来から問題であったドライヤーカンバスロール汚れの減少,紙匹走行安定化の結果が得られており,この操業性改善からドライヤーパートでのドレネージバランス変更に取り組み,ミニシュープレス導入効果と同等の大きな省蒸気につなげる事が出来た。
 本報告では6号抄紙機でおこなったミニシュープレス導入による省蒸気効果及び,ドライヤードレネージバランス変更による省蒸気効果について紹介する。
(本文20ページ)


スチームトラップ診断・管理システム
  ―蒸気コスト低減―

株式会社ミヤワキ MCSセンター 大楽 秀夫

 昨年は,一昨年よりの金属材料の高騰に,更に石油価格の乱高下,金融危機による世界不況の到来と多くの問題が発生した1年であった。本年も引き続き,厳しい産業界となりそうであるが,このような社会状状況だからこそ今一度原点に立ち戻り,足元を固めていく時期ではないかと考える。貴業界様においての「原点」「足元」とは原動力費,その中でも特に,電力エネルギーと共に蒸気エネルギーの消費が大きい業界である。今回,紹介する「スチームトラップ診断・管理システム」は,蒸気エネルギーの損失の大きな要因の1つである「スチームトラップの不良状態」を確実に捉え,そのデータの活用により,「管理の見える化(ビジュアルマネージメント)」を図るツールとして活用いただいている。 (本文25ページ)


スラッジ焼却炉の廃熱回収による省エネ

王子エンジニアリング株式会社 春日井事業部 田近 賢吾

 王子製紙グループは地球温暖化防止対策として,「化石エネルギー原単位及び化石エネルギーからのCO2排出原単位を1990年度対比で20%削減」という自主行動計画を掲げており,春日井工場においてもその方針に則り,省エネルギー活動を積極的に実施している。
 春日井工場のスラッジ焼却炉は1998年に設置されて以降,製紙工程で発生するスラッジや工場内で発生する雑芥を焼却することにより,工場から発生する廃棄物の削減に寄与してきた。しかし,焼却炉から発生する高温の燃焼廃ガスは,ガス冷却室において冷却水を噴霧し冷却するだけで,廃熱の大半は有効利用されずにそのまま大気に放出されていた。そこで今回,ガス冷却室に換えて廃熱ボイラを導入することにより,廃熱を最大限に有効利用し,化石エネルギー使用量及びCO2排出量の大幅な削減を図った。本稿では,今回導入した廃熱ボイラの概要及びその成果について紹介する。
(本文31ページ)


新マシン導入の為の既存部門節水対策
  ―マシン排水濾過処理水の増量による節水―

北越製紙株式会社 新潟工場 工務部紙料課 渡辺 泰伸

 北越製紙(株)新潟工場は9号抄紙機を新設し,平成20年9月に営業運転を開始した。9号抄紙機新設を進める上で,幾つかの大きな課題があったが,その一つが「用水不足」であった。9号抄紙機新設・KP工程増産・その他付帯設備新設に必要な用水量確保のために,既存部門の節水が必要不可欠であった。
 新マシン導入の為の節水対策として,新たに濾過装置を導入して再用水を作り出すことを計画した。そして既存部門の工業用水使用箇所のうち,マシン排水濾過処理水に水質変更可能な箇所を4箇所選択した。既存のマシン排水濾過処理水だけでは不足していたので,対策工事として,平成20年4月よりマシン排水回収量を増量し,新規濾過装置を増設した。これにより,目標としていた9,000m3/日を超える節水を達成し,必要な用水量確保を実現できた。
 最近では例のない著しい原燃料の高騰により,工場を挙げてのエネルギーコスト削減が急務である。本節水対策工事を完工することにより,用水量・排水量の削減による省エネルギーを実現できた。今回は,新マシン導入の為の既存部門節水対策工事の概要と,節水対策工事を施工したことによる省エネ・トータルCO2削減効果を中心に紹介する。
(本文37ページ)


タービン復水器冷却水の熱回収による蒸気原単位の向上

中越パルプ工業株式会社 高岡工場二塚 施設動力部電気計装課 赤池 秀樹

 近年の地球温暖化が進む中,環境問題の関心が高まり温室効果ガスであるCO2排出量削減が重要視されている。さらに企業としてはエネルギー費を削減することが重要な課題となっている。
 高岡工場二塚では,平成18年9月にCO2排出量削減およびエネルギー費削減を目的としてタイヤチップ・RPF・木屑・石炭を燃料とした循環流動層式ボイラを稼動させました。今回はこの廃棄物ボイラ(以下3号ボイラ)稼動による蒸気原単位の向上と,平成20年に取り組んだ節水対策による更なる蒸気原単位の向上について報告する。
 今回の省エネ事例は,投資金額が少なくて省エネできたものを紹介する。
(本文41ページ)


環境目標実現への省CO2ソリューション
  ―コジェネ設備および圧空設備の省エネ事例―

株式会社 山武 植木和夫,瀬川 潔,鈴木康央

 山武としては,顧客のCO2削減の環境目標達成を支援するために製品面,サービス面と多様な形で支援してきている。特に,エネルギー管理,計画・制御の側面から各種ソリューションを提案している。
 最近は,高効率機器単体の導入ではなく,既設の異種複数機器の連携や需要側と供給側の連携をはかった運用を行う「連携制御」が投資・効果が大きいということで注目されており,大量のエネルギーを使用する多種複数機器からなる原動力設備の省エネ改善に有効な手段である。今回の発表では,山武が提案する連携制御によるソリューションの中で「蒸気と電力を製造するコジェネレーション系」と「圧縮空気発生システム系」の省エネソリューションについて紹介する。
 「コジェネレーション系」に対しては,山武のシミュレーション・最適化ツール「U―OPT」を適用し,運転改善や設備変更を行った場合の効果の定量的な算定や一番有利な電力契約の検討へのオフライン活用を紹介する。そして,「U―OPT」のオンライン活用の例として,自動車会社の原動力設備に「オンライン最適運用システム」として適用し,大きな効果をあげた事例について紹介する。また「圧縮空気発生システム系」として型式,容量の異なるコンプレッサ群の連携制御,複数コンプレッサ室間の連携制御について紹介する。
(本文45ページ)


光コントロールによる防虫対策と省エネ
  ―UVの可視化による照明対策―

イカリ消毒株式会社 営業統括部 営業第二グループ 亀澤 一公

  今まで防虫対策は殺虫剤散布という形で害虫の発生を抑えてきた。しかし,最近の環境問題や品質管理の向上によりケミカル処理では対応できず,構造的防虫対策が必要な時代になってきた。今回はその技法のひとつである光コントロールによる防虫対策を省エネルギーと関連させて報告する。
 施設内では様々な光源が利用されているが各光源からは多くのUVを発散している。特に水銀灯からは非常に強いUVを発散しており,その悪影響は照らされるエリア全てに及ぶ。防虫用として利用されてきた高圧ナトリウム灯も多くの問題を持っており,今後これらの防虫対策は非常に大切になってくる。
 またこれらを検証する方法として「虫の目写真検証法」がある。人間の目には見えない紫外線をとらえて画像にする方法である。紫外線は虫が強く反応する波長域で,施設内を様々な角度から撮影してどの場所でどの部位に紫外線が出ているかを検証するものである。さらに光の波長特性を調べる分光分布計やUVメーターを使った検証法など,様々な角度からの照明の測定を行うことが可能になってきた。
 これらの測定機器を利用することにより,人の目には見えない紫外線を視覚化して,より効果的な防虫対策が行える。
 水銀灯の紫外線対策については防虫フィルターの活用を紹介する。既存灯具にビス止めだけで装着可能で,虫の好む波長を420nmまでカットするものである。それらの効果検証試験の紹介も行う。
 また省エネルギーという観点から高効率ランプの利用,局所照明の新型ランプや省エネ防虫フィルムを報告する。
(本文51ページ)


ICPPB2008(南京林業大学主催)参加報告
  ―2008年11月4日〜6日南京(中国)にて開催―

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 2008年11月に中国,浙江省,南京市の南京林業大学で,ICPPB2008(International Conference on Pulping, Papermaking and Biotechnology2008)が,南京林業大学と米国TAPPIの主催で開催された。9つの分野で100件以上の講演が行われた。製紙産業の伸びが著しい中国で,紙パの有力大学,南京林業大学の主催に,TAPPIが補助的主催者で協力し,日本の紙パルプ技術協会も協力した。米国,日本を中心とした世界各地から70名強の参加者があり,中国人を含めた全体の参加者は320名であった。南京林業大学と大会後に訪問した華南理工大学についてもあわせて報告する。
(本文55ページ)


技術革新が新聞用紙とその製造技術を如何に変えてきたか
  ―新聞用紙製造技術の系統化調査(その2)―

国立科学博物館産業技術史センター平成19年度主任調査員,
元紙パルプ技術協会専務理事 飯田 清昭

 第1回で,紙パルプ産業の歴史,テーマ選定の背景及び基礎技術を簡単に解説した。今回は,新聞用紙製造60年の変遷とその原料開発の歴史を紹介する。
 第二次世界大戦で壊滅状態となった後,新聞用紙の需要はGDPの伸びに合わせて増加し続けた。また,新聞社は,技術革新とコストダウンから,オフセット印刷の導入,軽量紙への転換を進めた。製紙産業は,これらの品質要求の変化へ対応しながら,需要を満たす原料の開発とコスト削減のための生産性の向上を積極的にすすめ,輸入紙にたいし国内市場を維持してきている。
 それらの技術開発の一つである原料開発の歴史を紹介する。まず,赤松(多量のピッチがトラブルとなる)をGPに使いこなしたことから始まり,広葉樹の利用,輸入チップの使用,古紙(脱インクパルプ)の使用により伸び続ける原料需要を満たしてきた。これは日本独自の技術対応であり,その努力が製紙産業の存続を可能にした。
 次回は生産性を向上させた抄紙機における技術開発を紹介する。
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誘電率異方性に基づく新しいオンライン繊維配向計の開発

王子製紙株式会社 基盤技術開発研究所 黒沢雅宏,古川郁子,澤本英忠,永田紳一

 誘電率異方性に基づく新しいオンライン繊維配向計が実用化の段階に近づいた。課題であった紙とセンサー面との均一接触化は,ヘッド傾斜装置を導入し,フォイル効果を応用することでほぼ解決できることがわかった。実際の抄紙機に設置し,その性能を確認するためにいくつかの実証実験を行い,良好な結果が得られた。また,オフラインタイプの超音波法(SST)およびマイクロ波法(MOA)との相関関係を調べ,強い相関関係があることを確認した。しかし,オンライン繊維配向計と同じ測定原理であるマイクロ波法(MOA)と弾性率異方性を測定する超音波法(SST)との間には強い相関関係はあるが,絶対値は異なる。超音波法(SST)の方がマイクロ波法(MOA)に比べ,配向角度は小さく,逆に配向度は大きく出る傾向がある。この原因は超音波法(SST)が拘束の影響を受けることによると言われているが,そのメカニズムについて少し検討を加えた。本方法の特徴としては,表層だけの繊維配向ではなく紙の全層の繊維配向を測ることであり,超音波法(SST)との相関も高いことが挙げられる。また,マシン方向の拘束の影響を受けないため,実際の繊維配向が測定できることも大きな特徴である。本装置は繊維配向異常を早期に発見でき,大きなトラブルを未然に防ぐことができるだけでなく,近い将来の繊維配向制御のためのセンサーとして有効なツールになるものと考える。
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