2009年3月 紙パ技協誌
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第63巻 第3号 和文概要


計装機器のオープンネットワーク化の流れ
―FDT/DTMによるインテリジェントデバイスの統合―

FDTグループ 日本支部(オムロン株式会社) 福井 信二

 現在のプラントシステムでは,フィールドネットワークで接続された数百,数千のインテリジェントデバイスが稼動し,そのそれぞれの設定を管理する必要がある。このため,近年では,プラントシステムの稼動状況を最適化することでコストを最小化しようというプラント資産管理(PAM:Plant Asset Management)の要求が高まっている。FDT/DTM(Field Device Tool/Device Type Manager)は,インテリジェントなデバイスに対するアクセスを容易化するオープンな技術として開発され,国際規格IEC62453―1として標準化された。FDT/DTMは,デバイスタイプマネージャ(DTM)と呼ばれるバイナリプログラムによるソリューションである。また,MS―Windows¥外字(8064)上のツールアプリケーションであるフィールドデバイスツール(FDT)とDTM間のインタフェースが規定されている。これにより,一つのFDTアプリケーションソフトに対し,複数ネットワークの,また複数のベンダから提供されたDTMが統合できる。よって,FDT/DTMは,複数ネットワーク・複数ベンダのデバイスに対して,高度な設定,診断,資産管理の機能を提供する。加えて,DTMを階層構造に接続することも可能であり,これにより,階層化されたフィールドネットワークであっても,全デバイスに統一的にアクセスできる。これらの特徴により,FDT/DTMは,複雑化した近代のフィールドネットワークのプラント資産管理を支える最適な技術である。
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現場業務における最新IT技術の導入と適用
―整備・点検現場のフィールドイノベーション―

株式会社富士通関西システムズ 公企業システム本部 第二社会システム部 木原  宏

 昨今,様々な業種・分野において,現場作業者の安全・安心が叫ばれている。しかしながら,厳しい環境下の現場では,ITそのものの導入が遅れているのが実情であり,また,安全・安心に関するITニーズが有りながらメーカー側も実用的な商品を提供できていない。そのような状況において,当社は,最新IT技術を採り入れ,現場作業者の方に安全・安心を提供するソリューション商品として『現場業務支援ツール』を開発し,2007年5月から販売を開始した。
 本ツールの開発を行うにあたっては,当初シーズ指向であった各機能も,多数のお客様のご支援,ご協力により,ニーズ指向の機能へと発展させることができ,現時点において国内では数少ない安全・安心ITソリューション商品として完成することができた。
 本ツールの大きな特長は,現場作業者用にウェアラブル型の端末装置を採用し,端末の携帯性の向上を図ったことである。また,ソフト面(機能)においては,多数の開発機能候補の中から顧客ニーズの高かった,作業者支援用のコミュニケーション機能および端末操作を容易にする音声認識機能を現場作業者端末に搭載した。
 本稿では,商品開発に至る背景,機能概要等を紹介するとともに,本ツールの用途,今後の発展について述べる。
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紙パ業界における画像処理の可能性

コグネックス株式会社 FAプロダクトマーケティング部 南口 仁宏
コグネックス株式会社 MVSD技術応用部 奥村 卓也

 紙パ業界は最も自動化が進んでいる業界の一つと考えられる。しかし画像処理システムの導入という観点から見た場合,まだまだ他業界に比べると少ないのが現状である。
 画像処理システムが出来る事は,「GIGI」である。Guidance(位置決め),Inspection(検査),Gauging(計測),Identification(認識)の4種類の意味である。これらを目的として,昨今様々な用途,業界で広く画像処理システムは導入されている。画像処理システムの導入理由として挙げられるのは,コストや高速化,高精度化などである。しかし画像処理は他にも可能性があると考えられる。製造ラインの自動化,人件費の削減に伴い,現場から作業者の数が減っている状況において,無事故は生産技術にとって欠かせないものとなっている。特に本業界においては,大がかりな設備が多い為,巻き込まれ,挟まれなどの危険な事故が発生する可能性がある。これを未然に防ぐ為の設備として,画像処理は有効な策となる事もある。
 ここでは,紙パ業界においてどのような事が出来るのか,画像処理システムの導入により現場の改善の可能性がどこにあるのかを,弊社の画像処理システムであるIn―Sight, Checkerを基に紹介する。
(本文28ページ)


N10マシンでのネットワーク応用システムの使用経験

大王製紙株式会社 臨海工場 電気計装部 鈴木 純一

 製紙産業における計装の自動化は,約30年前からDCS(分散型制御システム)とQCSが主役となっており,省人化や品質向上・制御性向上を実現してきた。一方,工業用監視カメラや内線電話・ページングシステム等の周辺機器は,DCSとは別のシステムとして単独で設置し運用してきた。
 LANの高速化,Webカメラの高性能化,VoIP技術(Voice over Internet Protocol)の高度化などに伴い,昨年稼働したN10マシンでは,監視カメラ・内線電話・IP無線電話・ページングシステムおよびモバイルDCSを1つの通信ネットワーク上に構築し,操作性向上・省力化を実現できた。その使用経験について紹介する。
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安全支援システム導入実績

王子板紙株式会社 岐阜工場 工務部 横山  裕,古井 勝志

 恵那工場のモバイルDCSの経験を基に中津川工場も2006年要員効率化工事に併せ,原質設備に導入,恵那工場同様に現場での作業性の向上を図った。
 モバイルDCSは無線LAN網の電波範囲内であればタブレットPC,携帯端末よりプラントの操作・監視が可能となるシステムである。これにより,少人数による操業が実現した。しかし,パトロールをはじめとした現場作業での操業者の位置管理が出来ないという問題が生じた為,横河電機との協業により無線端末から操業者の現在位置や状態の情報を取得する安全支援システムを導入した。
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パワープラント最適運用システムの導入事例

三菱製紙株式会社 八戸工場 原質部動力課 斎藤 正幸

 製紙工場の動力設備は,複数のボイラ,背圧タービン,抽気タービン・工場送気が複雑に構成されており,石炭・重油・ガス・黒液・廃棄物など多種の燃料を効率良く焚きながら,電力デマンド,電力売買,蒸気デマンドなどの多様な要求を満たす運用が必要となる。運用上の制約範囲内で工場電力と抽気流量のデマンドを満たしながら,かつ発電コストやボイラの燃料コストを最小とするボイラ,タービンの負荷バランスを求め,動力エネルギー費用を低減すること,および,オペレーターの負担軽減,個人差による運用の違いを無くすることを目的に「パワープラント最適運用システム」の導入を実施した。
 本システムの稼働によりある一定のコスト削減を図ることができた。今後更に導入効果をあげるために既設DCSの制御性改善,デマンド変化の先行検知等の改善策を進めて行く。本稿ではこの導入事例として,最適運用システムの紹介,システム構成,既設DCS,タービンガバナ装置との接続,制御方法,オンライン制御機能,運用調整事例,運用上考慮した点,導入効果について紹介する。
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繊維配向自動制御システムの開発と実用化

日本製紙株式会社 八代工場 藤山 道博

 抄紙機における紙の繊維配向はヘッドボックスから吐出する原料ジェット流れとワイヤとの相互作用により,ワイヤパート上の初期の脱水過程で形成されることが知られている。特にPPC用紙のねじれカールは紙の表裏の繊維配向角差により,カール軸が抄紙方向からずれて発生するとされ,繊維配向角を適正にコントロールすることは,カール品質改善の主要な要素技術である。当社は1993年に,紙の表裏の繊維配向角をオンライン測定するセンサを開発し,これまで繊維配向の調整に有効活用してきたが,今回新たに,横河電機¥外字(8251)と共同でオンライン繊維配向自動制御システムの開発と実用化に成功した。本制御システムは,オンライン配向計からのデータを基に,エッジフロー流量とスライスリップアクチュエータを自動制御することにより,繊維配向角の表裏差を短時間で安定的に極小化することを可能にした。また,スライスリップ形状の変化により生じる坪量プロファイルの変動を予測し,ヘッドボックス濃度希釈バルブによる補償を行うことで,他の紙質への影響を最小限に繊維配向角を単独で制御できる。2007年2月から,実運転による連続制御テストを実施し,PPC用紙のカール品質の改善と安定化に効果を発揮している。
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色弁別機能付き欠陥検出機の導入経験

日本大昭和板紙株式会社 足利工場 工務部工務課 田村 佳央

 足利工場1号マシンは,円網多筒(7層)で紙管原紙・貼合原紙・含浸紙を生産している。  当該マシンで抄造されている製品は,従来表面性や見映え等はさほど問題とされなかったが,近年は欠陥に由来するクレームが多くなってきた。
 食品ケースの中仕切り,セパレートシートとして製函される箱用製品においては,色欠陥が嫌われ,中でも赤色欠陥は微細な物でも「NG」である。
 淡色欠陥はもとより,要求される色欠陥も従来の欠陥検出機では検出不可能であり,操業のアキレス腱となってしまった。
 老朽化により機能維持が難しくなっていること,モニター機能がないことで,かねてよりオペレーターに負担が掛かっていることから,一気の改善策として欠陥検出機の更新を図ることとした。
 更新システムの仕様としては,当然のことながら「録画能力,色欠陥検出,淡色欠陥検出可能」を満足する内容とした。
 導入以来,実質運用期間が短いことから能力を十分に活用できているか,不明確なところもあるが,機能と使い易さは当初の要望を十分に満たしているので,ユーザー要求にも応えられるものと確信している。
 今回は,導入経過と今日までの操業経験について報告する。
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水分計の導入事例

王子製紙株式会社 春日井工場 電気計装課 水谷 高將

 近年,抄紙機における省動力化や高効率化をめざした取り組みが多くなされているが,その中でもプレスパートの搾水性能に関係する改造は,高効率化対策として注目されている。一方で,プレスパートの情報がより重要になり,様々なアプローチで水分率やその関係要素の監視機能を採用している。今まではプレスパートの水分率を測定する為のより良いツール(水分計)が無かった為,一般的操業情報を集積して数学的処理を行い管理する等の方法をとらざるを得なかった。
 春日井工場では2007年,4M/Cに於いてプレスパートの改造で一般紙と嵩高紙の併抄を効率良く行う為,プレス圧を品種により変更する操業が必要となりプレス出側のシート水分値が重要な操業指標となった。又,ドライヤーフード及び給排気設備の更新工事を実施し,エネルギー使用の削減を図る事となり,効率良く省エネを行う為にドライヤーでの蒸発水分量を把握する事が重要となった。そこでプレス出側及びプレドライヤー出側に水分計を設置し,その個所でのシート水分を把握することで安定操業及び省エネルギー効率向上を計画した。今回は4M/Cに水分計を設置した例と共に,他設備に設置された水分センサの導入事例についても紹介する。
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最新のファイバーアナライザーとその応用
―オンラインファイバーシャイブアナライザーによるプロセス管理―

メッツォオートメーション株式会社 プロセスオートメーションシステムズ  滝川 直人,トゥモ カルカヤ

 パルププロセスに於いて繊維特性の測定には,プロセス制御やパルプの最終品質を解析するツールであるという主たる役割がある。新手法の測定方法による分析計は,ブローラインから最終パルプに至る,クラフトパルプに対する初めてのオンライン分析計となる。シャイブに関する情報はクラフトパルプ生産に於いて,パルプの高品質化や薬品コストの低減を可能にし,同時に,繊維長や繊維幅等の重要な原料情報もオンラインで得る事が可能となる。カール,キンク及びファイン測定によって,プロセスのファイバー品質に対する影響を確認する事ができる。広葉樹(HW)クラフトパルプに於いて,ベッセルは印刷に関する品質問題の一因となり,故に,マーケットパルプのベッセル含有量やサイズ分布を知る事は紙の生産者にとって重要である。メカニカルパルプでは,シャイブ含有量や繊維長はCSF測定(フリーネス)と同様に,パルプ品質を管理する伝統的な手法である。今日,ファイン(微細繊維)の含有量や品質を測定することにより,より多くの情報が得られるようになった。調成工程に於けるファイバー特性測定は,完成紙料のコストを最適化し,要求された抄紙品質を達成するのに役立つ有用なツールである。充分に大きなリファイナーエネルギーによってベッセルはより小さく破砕され,ボンディング特性は改善され,同時にベッセルの(ピッキング)紙むけ不具合が低減する。今日,ファイバーやシャイブ測定には,コストや生産プロセス不具合を低減し,紙パルプ生産の効率を改善する為の,効果的なオンライン方式を採用している。
(本文66ページ)


次世代の新型回転式濃度計MEK ―3000(ツイン・トルク)の開発とその性能

スペクトリス株式会社 BTG事業部 石津 義男

 BTG社は,パルプ濃度計測定機器メーカーとして,これまで80年間以上,製紙プロセスにおける無類のエキスパートとして多くのお客様に貢献してきた。特に,インライン式回転式濃度計に関しては,BTG社がパイオニアである。
1928年には,世界で初めてインライン式濃度計を市場に送り出した。1960年には,同じく世界初のモーター駆動型の回転式濃度計を独自に開発した。一方,最近では,他社でも類似の回転式濃度計が販売されていが,耐久性やドリフト等の多くの問題が発生している。
 この度,BTG社は,実際の現場で使用されるお客様のニーズ(簡単操作,小型,軽量,高精度等)に合わせた5世代目の次世代型の回転式濃度計MEK3000(ツイン・トルク)を開発した。この濃度計は,ニューテクノロジーにより,従来の回転式濃度計よりも高い性能を実現させることができ,その優れた多くの機能により通常のアプリケーションはもとより今まで困難だったアプリケーションまで幅広い範囲に対応することが期待できる。
(本文71ページ)


DIP操業・設備調査報告

紙パルプ技術協会 パルプ技術委員会
日本製紙株式会社 杉野 光広
王子製紙株式会社 渡部  司
紀州製紙株式会社 塩谷 康治

 DIPは資源の有効活用と環境配慮への社会的ニーズの高まりにより,近年益々その重要性が増している。その一方で,DIPの生産技術や設備に関する技術情報が不足しているのが実情である。そこで,パルプ技術委員会では業界内での技術情報の提供及び共有を目的に,国内のDIPの事業所を対象とした操業・設備状況に関するアンケート調査を行ったので,その結果を報告する。
(本文76ページ)


クラフト蒸解に適した南アフリカ産植林木ユーカリ材の特徴

筑波大学 大学院生命環境科学研究科 本間光子,高橋史帆,中川明子,大井 洋
北越製紙株式会社 技術開発部 中俣恵一               

 パルプ用原料として期待されている南アフリカ産のユーカリ属ナイテンス(Eucalyptus nitens),スミジアイ(E. smithii),グランディス(E. grandis),およびマッカーサリー(E. macarthurii)材について,クラフト蒸解と無塩素漂白に対する特性を明らかにした。
 スミジアイの材密度はマッカーサリーのつぎに高く,0.665g/cm3であった。リグニンのアルカリ性ニトロベンゼン酸化による構造分析では,シリンガアルデヒドのバニリンに対する比(S/V比)がスミジアイ材で4.18と最も高かった。スミジアイ材のクラーソンリグニン含有量はナイテンスのつぎに低く22.8%で,スミジアイ材は最も脱リグニンされやすく,蒸解性に優れていることが示された。パルプ収率はナイテンスのつぎに高かった。酸素漂白パルプをさらにオゾンと過酸化水素で漂白したところ,スミジアイパルプの白色度が最も高く,86.7%ISOであった。
 四種のユーカリ材の中でパルプ材として最も適する材はスミジアイであり,それは材密度とパルプ収率が二番目に高く,漂白後に高い白色度を示したためである。
(本文83ページ)


紫外線によるクラフトパルプの光漂白

日本製紙株式会社 技術研究所 黒須一博,宮脇正一,越智 隆

 クラフトパルプの漂白プロセスは旧来の塩素に替わり二酸化塩素を中心としたECF法が確立し,有機塩素化合物などの排出による環境負荷を以前よりも大幅に低減することに成功した。これをさらに推進し,将来的に二酸化塩素も使用しない漂白プロセスを実現するためには新たな漂白要素技術の開発が必要と考えられ,ひとつの可能性として紫外線(以下UV)を用いた光技術に着目した。
 UVによる光反応でクラフトパルプの漂白,脱リグニンが起きることは古くから知られているが,既往の報告はいずれも効率が非常に悪く,また現行の漂白プロセスにどう組み合わせていくかという視点からのアプローチは皆無であった。そこで本報告では,光漂白の効率を飛躍的に高めるために,有効で現実性のある反応助剤や前処理方法について検討した。得られた知見を以下にまとめる。
  NaOHを助剤として,パルプスラリーにUVを照射することで漂白が可能であった。
  前処理として加温酸処理が有効であり,光漂白効率が向上した。この理由として,パルプ中の鉄イオンが光漂白のメカニズムに関与していることが示唆された。
  UV照射とオゾン曝気を同時に行う促進酸化処理も,光漂白の効率向上に非常に有効であった。加温酸処理と促進酸化処理を利用することで,酸素脱リグニンパルプをUVで単独処理する場合と比較して電力消費量を約70%削減できた。
  促進酸化処理によってヒドロキシルラジカルの発生が予想されるが,実機完成パルプをUV/オゾン処理して得られたパルプでは強度の明確な低下は認められなかった。
 漂白に要するコストは依然として現行のECF漂白と比較してなお大幅に過大であるものの,既存の漂白シーケンスや効果的な助剤との併用など,条件の最適化を進めることで光漂白の効率を飛躍的に高められることが分かった。
(本文93ページ)