2009年2月 紙パ技協誌
 
第63巻 第2号 和文概要


オプティフィード(OptiFeed)ファミリー
―抄紙機の品質,性能,効率を改善するために―

メッツォペーパー社 レイフ・ピイポラ
メッツォペーパージャパン株式会社 山崎 秀彦   

 多くの紙料調成設備やアプローチシステムは,現在も大容量で応答の遅さと不安定さを伴う従来形の技術に基づいている。これらのシステムにはいくつかの大きな欠陥,例えば複数のタンクにおけるデッドボリュームのような制御不能な要素があり,紙料濃度変動・紙料とフィラーの比率制御等の不安定さ,グレードチェンジに要する時間の長さなどの問題点がある。
 オプティフィードは無駄を省き自動制御とプロセス設計を両立させたシングルプラットフォームのコンセプトで構成されている。基本思想は紙料の処理を安定かつフレキシブルにすることで,従来形のウェットエンドマネージメントシステムよりも生産ラインの品質向上と効率の向上を実現しようというものである。適切に設計されたコンポーネントと大きすぎずかつ小さすぎず最適仕様に設計されたプロセスでエネルギー消費を抑え,紙料濃度のバラツキと脈動を抑制することができる。オプティフィードシステムは工場の個々のキーとなる要素を高効率なコンセプトで統合したもので,紙料調成システム全体でも,アプローチフローシステム単独でも,またオプティフィードのコンポーネントを内に含んだシステムに対しても適用可能である。
 本稿はアプローチフローシステムにおけるオプティフィードシステムの実践と利点について述べるもので,特に,脱気,ミキシングそして自動制御を主として説明する。
(本文1ページ)


トランプジェットTMシステムによるマシンスクリーン後の新しい薬品ミキシング方法について

ウエットエンドテクノロジー社 ヨウニ マトラ
株式会社マツボー 江島  顕  

 フィンランド,ウエットエンド・テクノロジー社にて開発されたトランプジェットTMは製紙用内添薬品の新しいミキシング技術を提供する。すでに世界で200以上のシステムが稼動し,国内では30システムが稼動している。内訳として,上質・微塗工紙用80システム,剥離紙・壁紙・ラミネート紙など特殊紙用20システム,新聞紙用30システム,白板・中芯・ライナー用30システム,DIPスラッジ処理用10システムが歩留向上剤,濾水コントロール剤,凝集剤,凝結剤,サイズ剤,¥外字(9061)料,染料,消泡剤などの添加に使用されている。トランプジェットは,薬品使用量の適正化,希釈水使用量の大幅な減少,エネルギー消費量の減少などに貢献している。
(本文8ページ)


トランプジェットTM薬品ミキシングシステム導入によるコストダウン事例

三菱製紙株式会社 八戸工場 渡邉 竜平

 原材料・燃料コストが高騰を続ける中,当社では中期三カ年計画『フェニックスプラン』の中で全費用項目のコストダウンを強力に推進してきた。当社八戸工場7号抄紙機では平成17年春から『ウェットエンドの最適化』に取り組んできたが,本報ではその取り組みの中で達成した,WETEND Technologies社のトランプジェットTM薬品ミキシングシステム導入による歩留向上剤の削減及びワイヤー・フェルトのライフアップによるコストダウン事例について紹介する。また今後トランプジェット導入が計画されている案件の一部についても紹介する。
(本文14ページ)


有機高分子凝結剤を使用したピッチトラブル低減のための最新技術

ハイモ株式会社 湘南研究センター 坂本 英俊,境  健自

 古紙由来のアニオントラッシュやマイクロピッチが原因のピッチトラブルを防止するためには,カチオン系凝結剤を使用することが有効である。カチオン系凝結剤は,抄紙工程内のピッチを粗大化させずにパルプに吸着させる。そしてプレス・ドライヤー工程で,定着した粘着性ピッチが紙層から剥離することを低減させることができる。弊社では,凝結剤の効率的な使用という観点から,系内でのピッチ成長メカニズムを,原料系と白水循環系の二つに分けて考えている。今回,カチオン系凝結剤の評価法として,「ヘマサイトメーターを使用した画像解析法」と「熱転写法―画像解析法」を用い,設計思想の異なるカチオン系凝結剤の効果を確認した。
 本報告では,カチオン系凝結剤の特性によりマイクロピッチへの選択性,作用機構が異なるため,それぞれの添加場所において,最良な効果を発揮するカチオン系凝結剤が異なることを報告する。(本文19ページ)


板紙の調成工程における操業経験

日本大昭和板紙株式会社 草加工場 成安 知樹

 近年,地球環境保護対策が叫ばれている中,省エネルギー対策は重要なテーマであり,更に昨今の原燃料価格の高騰も加わり,収益面においても省エネルギーを積極的に推進することが大きなポイントとなる。
 古紙から古紙パルプを製造する原質・調成工程において,最も大きな動力を消費する設備として,パルパー,リファイナー等があげられる。今回は調成工程において大きな動力を消費するリファイナーを高効率型の相川ダブルコニファイナー(ADC)へ2006年1月より順次更新しており,現在までに16台のDDRを9台のADCへ集約している。本稿では,ADC導入による効果について紹介する。
(本文24ページ)


三島工場 N10マシンの操業経験

大王製紙株式会社 三島工場 日置  亨

 塗工紙の国内需要の8%は中国やヨーロッパの最新設備によって製造されたコスト競争力の高い製品である。一方,国内の塗工紙マーケットは軽量化へシフトしている。輸入紙に品質,コスト競争力で勝る体制とすること,軽量化へのニーズに対応するため,三島工場にN10マシンを建設した。N10マシンは品種により塗工方式を使い分けできるように,ブレードコーターとロールコーターを併設し,さらにオンラインで多段カレンダーを設置した当社初のオンマシンブレードコーターである。
 稼動当初は自動化された設備の多数のインタロックによるトラブルが発生したが,稼動前に懸念していた高速でのコーターパートの通紙や塗工開始,オンラインマルチニップカレンダーの光沢発現性やロール破損事故もなく,順調に稼動している。フォーミングロールがサクションロールのギャップフォーマー,トランスファーベルトを採用したプレスパート等,新しい型式のマシンであるため,地合や表裏差が課題と考えていたが,計画とおりの品質を得ることができた。また,サイズプレスでの澱粉下塗り後にロールコーターで塗料を薄塗りすることで,計画通りの紙腰の強い軽量微塗工紙を製造することができた。
(本文28ページ)


石巻工場 N6マシンの操業経験

日本製紙株式会社 石巻工場 抄造二部 浅野 裕則

 日本製紙グループは,2005年4月に策定した「グループビジョン2015」の中で,今後10年間で国内市場において安定した収益基盤を築き,国内及び海外で成長する目標を示した。成長戦略の中核は,当社のコア事業である洋紙事業の塗工紙である。この目標に沿って,石巻工場のN6マシンは,平成19年11月1日に営業運転を開始後順調に立ち上がり,現在は1,600m/分で主にA3コート,微塗工紙の生産を行っている。
 本マシンの構成はワイヤ幅・抄速は八代N2マシンとほぼ同等,岩国9マシン同様にオンマシンブレードコータ,オンマシンカレンダを持ち,外観上は既存マシンの延長線上にあるといえる。一方でN6マシンの生産量は岩国9マシンの約1.5倍であり,抄速1,600m/分という高速広幅オンマシンブレードコータであるということから,既存マシン以上の効率や省力性を追求し数々の新技術を導入することで高い生産性,コスト競争力を有するマシンを目指して建設された。そして実際にこれらの新技術と培ってきた当社の抄紙技術,塗工技術との複合により,目標とする品質で,計画以上の垂直立ち上げを達成することが出来た。
(本文33ページ)


新潟工場 N9マシン試運転経過

北越製紙株式会社 新潟工場 工務部抄造第7課 小川 明広

 広幅・高速・薄物A3専抄をコンセプトとして,北越製紙新潟工場の4台目となるオンコーターマシン9号抄紙機(N9)は2008年6月ストックオンワイヤに始まりオンリール,カラーコーティング,グロスカレンダリング,リワインダリングへと順調に試運転工程の実施と調整を行ってきた。製品化に向けた品質確認として印刷テスト等を随時行い,ユーザーの評価を踏まえながら,更なる品質の向上と安定化を図っている。N9マシン稼働により既設3台のオンコーターマシンも含めた効率的生産体制が確立されるもの考える。ここではマシン選定のポイントや,新規設備の導入効果,建設および試運転の際のトラブル事例等をマシン設備中心に紹介する。
(本文42ページ)


富岡工場 N―1マシンの建設

王子製紙株式会社 統括技術本部技術部 篠田耕太郎

 富岡工場N―1マシンは2007年7月の起工式より,現在まで順調に建設工事を進めてきており,2008年11月の種乗せ試運転を目前に控えている。
 本稿では,当社の経営方針である「内なる充実,外への発展」を具体化する手段として,新マシン建設の意義や富岡工場S&Bの概要を紹介する。さらに高い生産性とコスト競争力の強化を図るための具体的な設計コンセプトとして,ロール塗工とブレード塗工の両方を備えるオンマシンコーターと,高いグロスを発揮するオンマシンマルチニップカレンダーを採用したオールオンラインコンセプトについての概要と,これまでの建設工事での問題点や工事の進捗状況について報告する。
(本文47ページ)


革新的な調湿システムによる品質と生産性の向上

株式会社IHI フォイトペーパーテクノロジー 内河 英臣

 紙の品質と生産性を問う場合,重要かつ様々なパラメータがある。その中でも水分に関するパラメータは重要であり,製造上問題が生じると多くの場合水分に起因することが非常に多い。
 製紙機械の一貫プラントメーカーとしてフォイトペーパーはかねてよりこの問題を早急に解決したいと考え,自ら所有する抄速2,000m/minのマシンでテストを繰返し,紙上における水分吸収のメカニズムを探求し新たな発見をした。その結果フォイトペーパーは革新的な水分調湿装置,即ち微少量から大量の水分量を正確に紙に吸収させる装置,モジュールプロTMを独自に開発した。
 すでに40台以上のモジュールプロTMが製紙のプロセス機器に据付けられているが,品質改善,生産性向上に著しい成果を上げている。本稿ではモジュールプロTMの概要やこれを利用して紙切れやカール対策またカレンダー掛けの成果向上などのアプリケーションについて報告する。
(本文52ページ)


2008年マーカス・ウォーレンバーグ賞授賞式参加報告

日本紙パック株式会社 藤原 秀樹

 スウェーデン,ストックホルムで10月6日開催された,マーカス・ウォーレンバーグ賞授賞式に招待された。賞の背景,意義,授賞式の様子を含め賞に対する認識を深めていただくのが第一の目的である。また,今回,筆者は賞選考委員会に大使(ambassador)として招請された。これを機会に,受賞,選考方法についても理解していただき,日本・アジア地域からもマーカス・ウォーレンバーグ賞の受賞者が出るよう,啓蒙させていただくのが,第二の目的である。
(本文56ページ)


繊維配向自動制御システムの開発とPPC用紙のカール品質の向上

日本製紙株式会社 研究開発本部 技術研究所 山本准司,轟 英伸, 小野克正, 越智 隆 
横河電機株式会社 IA事業部システム事業センターP&Wソリューション部 佐々木尚史,佐野博文

 抄紙機で製造された用紙は,繊維が偏って配列するため,その並び方である繊維配向に異方性が現れる。これまでのPPC用紙のカールや,新聞用紙のタワー型オフセット輪転機の色ずれ,ノンインパクトプリンター用紙の斜傾等のカールや用紙の走行安定性に関する研究により,これらは繊維配向と密接な関係にあることが分かっている。従って,繊維配向の制御技術は,これらの改善に必要不可欠な要素技術といえる。特にPPC用紙のカールは,繊維配向の表裏差が発生の主要因であり,カールの大きさやカール面の形成には配向強度の表裏差が,カール軸が抄紙方向からずれた形状のカールは配向角の表裏差により発生する。
 我々は1994年に抄紙機上で走行する用紙の表裏の繊維配向を測定するオンライン繊維配向計の開発を行い,10年以上にわたってカール品質のコントロール等に役立ててきた。しかし,これまではオペレータが手動でマシン条件を調節し配向をコントロールしており,抄き出し,銘柄の変更時の調節に労力が掛かる等の問題点があった。
 今回,手動での調整の問題点を解決するために新しい繊維配向の自動制御システムを開発した。このシステムは,ヘッドボックスのスライス開度とエッジフロー流量を自動で制御することにより,オンライン繊維配向計で連続的に測定したF面とW面の配向角の差を極小化することができる。この自動制御システムを実機に搭載し使用した結果,PPC用紙のねじれカールの大きさが,手動による制御時と比べて半分以下になった。そして,この自動制御システムを連続的に使用することで,ねじれカールの小さいPPC用紙を安定的に生産することが可能となった。繊維配向の連続自動制御は,2007年の初頭より行われ,現在も実施中である。
(本文65ページ)