2008年10月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2008年10月


第62巻 第10号 和文概要


新開発技術「インテンサパルパ」の紹介

株式会社IHI フォイト ペーパーテクノロジー 原質機械技術部 村上 雄史

 古紙処理システムを構成するさまざまな機器の中で,最初に位置するパルパの運転効率を上げることはシステム全体の効率化に直結する。本文では低濃度パルパ技術において,IIM時代から40年以上にわたって国内トップシェアを維持してきた潟Aイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジーが,その経験とノウハウをドイツのフォイトペーパー社の世界最先端技術と融合し開発した新型低濃度パルパ「インテンサパルパ」を紹介する。
 革新的離解性能を持つ「インテンサパルパ」のキーテクノロジーは,IPバット(Q型偏芯バット),VPバッフル,VPロータ,特殊スクリーンプレートの開発であり,パルピング動力の大幅削減,パルパ出口原料の大幅品質向上,パルパ小型化による大幅な省スペース,さらには原料調成システム全体の再構築をも可能にし,非常に大きなメリットを生み出す。
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最近の叩解機と刃物の実績と傾向
―叩解機の省エネルギーとLow Intensity叩解刃物の紹介―

相川鉄工株式会社 技術営業部 青嶋 和男

 最近は特に原油高騰により,わが国の紙パルプ業界では省エネルギーが大きな課題となっている。また古紙需要の旺盛な東南アジアに古紙を輸出していることから,国内需要の古紙の価格が高騰し今まで以上に低品質の古紙を原料として使用しなければならなくなってきている。そのため使用する原料の品質が低下すると共に紙力が低いものを使用しなければならず,その対応が求められている。その対策としては新しく開発した叩解機ダブルコニファイナーにより,原料調整部門においては非常に大きな動力を使用している叩解工程における省エネルギーに大きく貢献できると考えられる。更にLow Intensity叩解用刃物Finebarにより短繊維化した原料特に段古紙,および植林木の増加による平均繊維長が短くなったLBKPでは省エネルギーと共に紙力強度の改善に大きく寄与できるものと考える。更に弊社では最新の叩解機と最新の刃物を発展させると共に,これら両方を組み合わせた新しい叩解技術の開発も始めている。今回紹介した新しい叩解の技術が時代のニーズに合い,製紙業界に貢献できるものと考える。
(本文6ページ)


ASA活用方法 トラブルゼロのキーポイント

エカケミカルス株式会社 リチャード ヴォナック

 製紙業界では,アルケニル無水コハク酸(ASA)への関心が高まっている。これは主として,実用化に関わるコストを節減できるポテンシャルがあることによるものである。本稿では,トラブルのないASAサイジングとASAの製造プロセス,乳化プロセス,並びにウェットエンドでのASAの実用化に最も大きな関連性を持つパラメータについて考察する。
 今日では,以前に比べてこれらのパラメータの理解が進み,一層の的確化が図られていることから,トラブルのないASAサイジングを実現する製紙工場が増えている。ASA技術における最近の動向は,さらに多様な実用化の分野をターゲットとし,新たな安定剤と,より簡易な乳化システムに向けて,一層の開発が進められることを示すものである。
 現在,ASAの製造と乳化,実用化の3つのすべての領域において技術が進歩している。これらのパラメータが一層詳しく把握されるようになったことで,今日では,トラブルのないASAサイジングが,ますます多くの製紙機械において実現しているのである。これらについて,本稿にて説明する。また,業界初の粒子安定型ASAサイジングの例についても解説する。
(本文14ページ)


マルチレイヤカーテンコーティング及び新タイプのカレンダリング

メッツォペーパージャパン株式会社 山崎 秀彦,永野 明仁

 マルチレイヤコーティングは,従来の塗工方法に比べて幅広い塗工ウインドーを与えてくれる。シングルステージのみで高塗工量の付与と多層塗工の両方を行うことができる。この方法により,ある種の紙・板紙の特性のためにより厚みがあり安価な塗工層を構成し,他の特性(光沢度,バリア性など)の実現のためにはより高価であるがより薄い塗工層の使用を可能にすることによって,より経済的利点が得られる。
 メタルベルトカレンダリングは従来式のショートドウェルのカレンダリング法に比較して良好な表面トポグラフィと印刷適性を与えてくれる。また,高い嵩とこわさを保持しながら目標の表面性を達成できることから,紙・板紙生産の原材料費を節約することができる。
 これらの新しい表面処理プロセスを結び付けた予備的な研究結果は,これらが有望であることを示している。最新のロングドウェルメタルベルトカレンダをプレカレンダに用いることで,輪郭塗工のマルチレイヤーコーティングが形成する平滑性の少ない表面を補うことが可能であると思われる。
(本文19ページ)


新規プレスロール剥離剤の開発と実績

株式会社メンテック 販売技術部 木村 晋也

 低レベル古紙の高配合,中性紙化が進む中,近年,プレスロールの汚れが起因となり,ストリーク・粕穴・圧痕といった製品欠点やプレス・コーターでの断紙のトラブル発生で生産性が著しく低下する問題を抱えるマシンが急増している。  
 また,高速マシンにおいては,プレスロールからの湿紙の剥離性が悪くなると,湿紙にかかるテンション(ドロー)が増大し,断紙回数の増加や抄速ダウンにつながるため,プレスロールからの湿紙の剥離性を維持することは安定操業を行う上での大きなテーマとなっている。
 弊社ではこれらを改善するため【汚れ防止】・【剥離向上】・【汚れ洗浄】の3つの効果を兼ね備え,かつ,低コストで高い効果が発揮できるプレスロール用剥離剤「オンプレスシリーズ」を開発した。
 本報では,本システムの特徴と効果について実機での適用例をもとにご紹介する。
(本文25ページ)


耐摩耗・離型皮膜について

株式会社野村鍍金 仲井啓治,北川晃幸,辻 征樹,田口純志

 現在,弊社では製紙業界で起こる種々の変化に対し,対応できる新規皮膜の開発を行っている。本発表では,製紙業界向けの離形性および耐磨耗性を有する新規皮膜について紹介する。この新規皮膜を用いると実験データから耐磨耗性および離形性が向上することがわかった。また,本発表では当社開発の新規DLC「タフカーボン」について紹介する。タフカーボンは,いままでのDLCとは硬度,密着性ともに向上した皮膜であり,今後製紙業界で用いられるものと考えられる。
(本文30ページ)


品質保証型防虫プログラムについて

アース環境サービス株式会社 開発技術部 寺岡 雄志

 製品への混入異物の上位を占める昆虫類の防除は,特に食品や化粧品,医薬品製造とそれに関連する分野の製品を製造する工場においては大きな課題となっている。そこで,効果のある,対外的に証明できる品質保証型の防虫管理プログラムが求められているが,実際にそれが構築され,運用されている例は少ない。今回はその品質保証型防虫管理プログラムを構築するための要点について説明する。
  工場の現状把握:ただ虫の数をカウントするだけでなく,工場の特性,侵入や発生に関連する要素の確認,そしてクレーム分析が重要である。
  管理対象虫の明確化:@のデータ,生態情報,モニタリングデータを元に監視の方法と具体的な対策を検討し防虫プログラムを設計する。
  防虫プログラムの作成,運用,検証:実際に運用した結果は記録に残し,プログラムの有効性を検証し効果のあるものに改良していく。活動結果が蓄積していけば,工場オリジナルの管理基準値設定とそれに基づく活動も可能になる。
 防虫対策それぞれを個々に見た場合,それぞれの特性に応じた効用と限界がある。総合的な観点で,特性をよく理解した上でプログラムを設計する必要がある。その上でこの品質保証型防虫プログラムを構築すれば,クレーム減と今後高まるであろう顧客要求にも応えることが出来ると思われる。
(本文37ページ)


新設計PaperIQ Plusが実現した高性能QCS

メッツォオートメーション株式会社 技術営業部 中濃礼二郎

 メッツォによって開発されたPaperIQ Plus(ペーパーIQプラス)は初代ペーパーIQシステムの実績と成功を踏まえて構築されたシステムである。広範囲のセルフ診断機能を搭載したモジュラ,インテリジェントIQセンサは,安定した制御に要求される低ノイズのシート品質測定を提供する。IQスキャナの性能は,さらに速いスピードでスキャンできるように能力アップされ,水平面の精度,アライメントや耐振動性を向上している。新しいスキャニングセンサとして,光学技術を応用したシート特性の測定が追加され,特にIQCaliper―L(IQレーザーキャリパ)はシートに接触することなくキャリパを測定する。 
  又,スキャンせずに全幅シートを瞬時測定するものも開発され,IQインサイトはフォーミングとプレス直後のシート水分をMD(流れ方向)とCD(幅方向)を分離した高周波で測定する。これにより,ウェットエンドとプレスセクションにおける水分最適化とより優れた制御性を実現する。
  本稿では新しいスキャナとセンサを搭載した,メッツォ開発の新QCSを紹介する。
(本文39ページ)


パプリカン オプティカル キャリブレーションプログラムの紹介
―紙の光学特性,最適測定と原料やプロセスとの関係―

ローレンツェン&ベットレー株式会社 大川 義弘

 光学特性はとりわけ直感的に評価されやすい物性であり,また,直接的に紙やパルプの価格に影響する。光学特性の視覚的な評価や,そのランキング付けは非常に主観性をともない,それは周囲条件にも大きく影響される。それゆえ,幾つかの評価方法が開発されたが,不十分な知識と,測定法間での測定差が市場での不一致と混乱を招いた。そのためにも,基本的な光学特性と,顧客仕様を満たす最良の測定法を知ることは製紙会社にとって必要不可欠である。またキャリブレーションプログラムも信頼のおける測定を維持してゆく上で重要であり,生産的なキャリブレーションプログラムがPaprican(カナダ紙パルプ研究所)によって提供されている。
 本稿は,5月に催されたL&Wセミナーにおいて,Papricanより発表された光学特性に関するプレゼンテーションをもとに,その重要要点を述べる。基本的な測定法から,光学特性に影響するファクターや,信頼ある測定値を得るために重要なキャリブレーションについて述べる。
(本文45ページ)


アジテーター用軸振れ対応型完全二つ割メカニカルシール

日本ジョン・クレーン株式会社 MSエンジニアリング部 馬場 亮介

 現在製紙及びパルプ業界において,各種回転機器の軸封装置としてメカニカルシールを採用されるケースが多くなってきている。
 但し,機器固有の問題として軸振れや振動がある横軸アジテーターの軸封においては,まだまだメカニカルシールを採用している機器は少なく,大半はグランドパッキが採用されている。
 しかしながら,節電や節水と言った省エネルギーや安定操業,また取扱液の漏れを無くすことでの環境負荷低減,及びメンテナンスコスト削減の観点からは,メカニカルシール化を望まれているユーザーも多く,これら要望に応えるべくJohn Craneは,軸振れや振動にも対応できるメカニカルシールで,しかも完全二つ割のメカニカルシールを開発し提供してきた。
 今回の講演では,主として横軸アジテーター用軸封としての,John Crane独自のユニークな設計思想に基づいた,完全二つ割メカニカルシール(Type37FS)について,構造・原理・実績を交えながらご紹介させて頂く。
(本文52ページ)

一般産業界における音に関してPartV
―トラブルフリーオペレーションの一環として―

日本エスケイエフ株式会社 コンディションモニタリングサービス部門 山崎 安彦

 今回は人に聞こえにくい音を考えて見る。それは音圧が低いということであろうか? 周りの回転機器の騒音の存在でわからなくなる音であろうか? 低速で回転をしていて耳では回転音すら聞こえないものを言っているのであろうか?
 さまざまな環境や条件化で機械に使用されているベアリングは悲鳴を上げている。とくに今回の振動解析データは低速で使用されているベアリングに関しての情報を提示した。低速機器に使用されているベアリングは非常に繊細な信号(悲鳴)を出す。それを確実に聞いてあげる機器が必要となる。それを提供するのがSKFの使命である。
(本文58ページ)


送風機性能と設計技術の紹介

テラル株式会社 技術部開発課 永井 秀満
           産業機器部  渡辺 吉正

  地球温暖化防止のためのCO2削減等,省エネルギーの面でも,環境問題への関心が高まっている。当社では,省エネルギーで社会貢献すべく,長年培ってきた技術とノウハウにより高効率送風機を開発した。商品開発は,送風機自体の効率改善を優先させ,比較的大型で消費電力量が大きな機種からモデルチェンジを進めている。
 製紙業界では,送風機専門用語の比速度700が一般的に使用されてきたが,機器の高速化・小型化に伴い,今後は,大風量―高静圧の比速度500クラスの送風機が増加するものと予想される。
 そこで,次代を先取りして比速度500と700の高効率送風機シリーズを,相次いで開発し市場に投入した。
 本稿では,製紙工場設備の熱回収システム給排気用ファン等に使用する送風機の高効率化に纏わる開発経緯・実機の概要(送風機性能と設計技術)及び省エネルギー効果等について紹介する。
(本文62ページ)


PaperCon '08参加報告

日本製紙株式会社 研究開発本部 商品研究所 兼行民治郎
王子製紙株式会社 研究開発本部 製紙技術研究所 古川 博之

 2008年5月4日から7日まで,米国テキサス州ダラスにおいて催された,TAPPI主催のPaper Con '08に参加する機会を得たので概要を報告する。本年度は,従来は個別に行われていた“TAPPI Papermakers Conference”,“TAPPI Coating & Graphic Arts Conference”及び“PIMA International Management Conference”が,“PaperCon '08”として同時に開催された。合計77のセッションにおいて塗工・抄紙分野の研究発表や,マネージメント関係のパネルディスカッションが行われ,1,000名以上の参加者により活発な議論がなされた。
(本文69ページ)


第75回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会 木材科学委員会

 第75回紙パルプ研究発表会は,2008年6月26日(木)〜27日(金)の2日間,東京都江戸川区「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計42件で,口頭発表が28件,ポスター発表が14件であった。参加者は269名であった。発表内容の概要をまとめた。
(本文78ページ)


針葉樹材のアルカリ蒸解における炭水化物収率とヘキセンウロン酸生成の挙動

筑波大学大学院 生命環境科学研究科 橋史帆,金 光范,中川明子,大井 洋
東京大学大学院 農学生命科学研究科 横山朝哉               
三菱製紙株式会社 八戸工場 古井正美               

 連続操業を行っている工場で国産針葉樹材パルプ収率を化学的に評価する方法について検討した。カラマツ材のKraft,Kraft―AQ,PS―AQおよびSoda―AQ蒸解の結果,キシランの再吸着などが起こるため,パルプのキシロース/グルコース比(X/G比)からパルプ収率を評価することはできないことが明らかとなった。様々なカッ パー価のパルプ収率とマンノース/グルコース比(M/G比)の間では相関が低かった。Kraft,Kraft―AQおよびPS―AQ蒸解でカッパー価25のパルプでは,パルプ収率とM/G比との相関が高いことが明らかとなった。このことからアカマツ・スギ混合材を原料に用いている工場パルプのM/G比からカッパー価25のパルプ収率を評価した。Kraft法にAQを添加することで収率が1.3%増加することが示された。多変量解析により蒸解因子とヘキセンウロン酸(HexA)量の関係を示す実験式を作成した結果,AQおよびイオウの添加はHexA量を増加させる影響があることが示された。同一カッパー価,同一H―ファクターではPS―AQ蒸解が最もHexA量が高いパルプを与えた。工場実験では,Kraft―AQパルプのHexA量はKraftパルプよりも7μmol/g高い値となった。
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