2008年6月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2008年6月


第62巻 第6号 和文概要


2007年度フォローアップ結果(2006年度実績)とエネルギー関連情報

日本製紙連合会 稲田  治

 日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め,積極的に活動している。その中の1つとして地球温暖化対策(CO排出抑制対策)があり,2004年11月に改定した以下の2目標を掲げて取組んでいる。
  2010年度までに製品当り化石エネルギー原単位を1990年度比13%削減し,CO排出原単位を10%削減する
  2010年までに所有または管理する国内外植林面積を60万haに拡大する
 今回は2007年度フォローアップ調査結果(2006年度実績)と,更なる目標引上げについて報告する。
 また,関連情報として,日本におけるエネルギー消費量,CO排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置づけや,京都議定書関連情報についても触れた。
(本文1ページ)


スクリュ圧縮機の特性を利用した蒸気システムの省エネルギー対策

神鋼商事株式会社 福島 康雄

 水蒸気は殆ど全ての電力の源泉であり,また殆ど全ての加熱システムの源泉でもある。これほど社会生活に密接な関係がある流体でありながら,その活用法についてはあまり知られていない。
 たとえば製紙業界,化学業界における蒸気システムの本流は所謂BTG方式で見られる通り,非常に効率的なシステムが古くから採用されていながら,蒸気流量の少ない支流については減圧弁が多用されているのが現実である。CO削減が喫緊の課題となっている今,貴重な圧力エネルギーが無駄に減圧利用されていることに焦点を絞り込んだ。
 スクリュ技術は少量蒸気の圧力差エネルギーを効率よく動力回収できる唯一の技術といっても過言ではない。その具体的な理論,活用方法について紹介し,今後の省エネ対策に広く貢献したいと考える。
(本文12ページ)


RGP工程における省エネルギーの取組み

日本製紙株式会社 岩沼工場 千葉 芳史

 日本製紙株式会社岩沼工場では,「日本製紙グループ環境憲章」の理念・基本方針の基,省エネルギー対策や環境に配慮した技術・製品の開発を積極的に推進し,地球温暖化防止対策に取り組んでいる。
 当工場は,抄紙設備として抄紙機4台,コーター1台を有し,高品質新聞用紙の他,コート紙の生産を行っており,紙総生産能力は55,000t/月である。また,パルプ設備としてはDIP,KP(NBKP,LBKPのスイッチング操業)およびRGPの3種類を有し,自家製パルプ比率はほぼ100%とパルプから紙までの一貫工場である。
 これら設備の中でも,この数年,電力を多大に消費するRGP工程については省エネルギーの取組みを積極的に進めてきた。当工場のRGP設備は,昭和43年に稼動後30年以上大きな改造は行われてこなかったが,老朽化および省エネルギーを目的としてH14〜H18の間に計3回の大型改造工事を段階的に実施した。その結果,電力削減量としては合計39,000MWh/年を達成し,CO排出削減量(換算値)としては約26,000t/年と地球温暖化防止にも大きく貢献する結果となった。このように電力使用量を大幅に削減したにもかかわらず,品質面においては,若干の強度低下はみられたものの,シャイブなどの異物面では従来よりも大きく改善された。
 本報では,岩沼工場RGP工程における省エネルギーの取組みについて,既に報告のあった部分も含め紹介する。
(本文17ページ)


高効率ファン

株式会社テラルキョクトウ* 技術部開発課 永井 秀満
                 産業機器部 渡辺 吉正

 地球温暖化に伴う温室効果ガス(CO等)排出削減,省エネルギー面でも,環境問題への関心が高まっている。当社では,長年培ってきた技術とノウハウにより,最高レベルの「高効率ファン」開発に成功した。商品開発は,送風機自体の効率改善を優先させ,比較的大型で消費電力量が大きな機種からモデルチェンジを進めている。
 製紙業界では,送風機専門用語の比速度700が一般的に使用されてきたが,機器の高速化・小型化に伴い,今後は,大風量―高静圧の比速度500クラスの送風機が増加するものと予想される。当社は,次代を先取りし,比速度500と700高効率新型機を相次いで開発・市場投入した。
 本稿では,送風機高効率化に纏わる開発過程から市場投入までのエピソードを交え,「高効率ファン」の優位性について紹介する。
 *現在,テラル株式会社に社名変更
(本文22ページ)


高効率レファイナー導入による省エネ

王子板紙株式会社 大阪工場 宮本健太郎

 エネルギー多消費型産業である製紙産業は,昨今の原油高に伴ってエネルギーコストが上昇し,各社共に収益面において深刻な影響を受けつつある。また,化石燃料の使用による地球温暖化を防止する面においても,省エネが急務となっている。当社においても,エネルギー使用量を低下させる事は非常に重要な課題である。
 古紙パルプ製造工程において,叩解工程はエネルギーを多く消費する工程であるが,多層抄きのマシンを操業する場合,使用する層によって求められるパルプ品質に差が有り,叩解方法も差が有る。
 本稿では,従来のDDRに変わる省エネ型レファイナーとして,叩解方法が最も適合すると考えられた中層系に導入したコニカル型レファイナー(トライコニックレファイナー/サトミ製作所―ピラオ社)を省エネ事例として紹介する。
(本文28ページ)


コータードライヤー真空断熱材取付による保温強化事例

王子エンジニアリング株式会社 神崎事業部 小泉 英嗣

 王子エンジニアリング叶_崎事業部は,王子製紙叶_崎工場の敷地内にあり,琵琶湖に水源を発した淀川の支流,神崎川が大阪湾にそそぐ兵庫県尼崎市に位置している。主な業務内容は,同工場における設備基本計画から資材調達・建設・試運転に至る一連のプロジェクトの遂行である。
 王子製紙叶_崎工場では,5号抄紙機停止等の生産調整によりエネルギーバランスが悪化,それに伴いエネルギーコストも高い水準にあった事から,2003年にガスタービン発電機,及びガスタービンから排出される高温の排気ガスを利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラーを導入し改善が図られた。しかしながら廃熱ボイラーによる蒸気発生量だけでは,フル操業時,特に冬季の使用量を賄えない事から,不足分を追い炊きにより対応しており,蒸気削減対策が急務となっていた。今回,蒸気削減対策の取り組みの一環である,真空断熱材を利用したドライヤー保温強化事例を紹介する。
(本文32ページ)


オンライン地合測定による抄紙機の性能向上

株式会社アイ・エイチ・アイフォイトペーパーテクノロジー       
フォイトペーパーオートメーション株式会社 内河 英臣   
フォイトペーパーオートメーションGmbH & Co. KG A.バウワー

 抄紙機の操業上,紙の品質を管理するパラメーターは色々あるが,フォメーション即ち地合は,印刷適性等の紙の品質を語る上で欠くことのできない重要なパラメーターである。現在市場に出ている地合測定センサは乾燥工程が終わったリールで測定するため,多層抄のように重量の大きい製品については十分な測定ができない。
 この観点からフォイトペーパーは,ワイヤーパートで測定できる地合センサを開発した。このセンサは抄紙機の性能を向上させ,また抄紙機のトラブルの解決を容易にするツールにもなる。さらに原料,薬品,エネルギーの節約のみならずグレード毎に所望の地合を維持することができるようになった。
 本稿ではこの新地合センサ「OnVフロックスポッター」の概要と,弊社ペーパーテクノロジーセンターに於ける最新のパイロットマシンでのテスト結果について述べる。また最後にこのセンサを導入した場合の経済効果を予想してみた。
(本文37ページ)


環境にやさしい水性エマルションポリマーの適用

栗田工業株式会社 ケミカル事業本部 技術部 陳 嘉義,加藤知成,二木 栄,大草優子,駿河圭二

 製紙マシンの抄速と生産効率を上げると同時に,原料,水,エネルギー資源を節約するため,凝結剤,歩留ろ水向上剤の役割がますます重要になっている。
 弊社は新規な重合技術を用いた水性エマルションポリマーを開発した。この水性エマルションはCODの発生源となる油剤,また,電導度を上昇させる無機塩類も使用しないため,環境にやさしい素材である。ポリマー中の高分子量組成と低分子量組成のカチオン密度,官能基,分子量を最適化し,それぞれ凝結剤,歩留ろ水向上剤として開発し,シリーズ化した。
 本文はこの新しいポリマーの適用による省資源,生産性向上の効果を発揮された事例及びその効果発揮の機構を紹介する。
(本文40ページ)


過酸化水素と金属錯体触媒を利用したpH中性付近における新規パルプ処理法の開発

株式会社日新化学研究所 第一開発部 下山竜吾,國定裕司,岡  孝

 過酸化水素は,環境的に非常にクリーンであり,比較的安価で取り扱いが容易な酸化剤であり,パルプ用の漂白剤としても多用されている。しかしながら,塩素系漂白剤に比べると酸化力が劣るため,その使用条件は限られてきた。そこで,漂白活性化剤や金属錯体触媒により過酸化水素を活性化して酸化力を高める研究が行われている。
 そこで我々は,金属錯体触媒による過酸化水素の活性化法をDIP製造工程に応用することにより,新規パルプ処理法の開発を試みた。その結果,インキ剥離が促進されて残留インキ面積率が減少することが分かり,我々はこのような金属錯体を脱墨触媒と呼ぶこととした。この脱墨触媒による方法を用いることで,アルカリ使用量を削減し,粘着異物対策に応用できる可能性を示した。
 今回,我々は,DIP用脱墨触媒の開発経緯と粘着異物対策,及び,インキ剥離促進効果の作用機構について報告する。
(本文46ページ)


高アスペクト比のカオリンによる紙力・強度のコントロール

イメリスミネラルズペーパービグメント・グループ ジョン・C・ハズバンド

 塗工紙の塗工層は紙の機械物性のコントロールおよび印刷適正に対して重要な要素であり,紙の剛度・耐折強さ・紙粉・表面強度等に影響する。今回の実験ではフィルム化した塗工層を作成し,カオリンのアスペクト比を基にXY軸方向およびZ軸方向の引張強度を測定した。またそれらのカオリンで塗工された塗工紙をパイロットコータで物性の比較を行った。
 1級超扁平型カオリンはGCC100%と比較した場合,弾性率が7〜8倍も優位であった。またバインダーの選択によって塗工層の弾性率はコントロールが可能である。従って紙の剛度の改善,またはコスト削減のため剛度を維持させながら坪量の低減が可能だと考える。
 カオリンの扁平な粒子の形状はXY軸方向の引張強度に寄与するが,Z軸方向の引張強度を低下させるのに対して,等軸型のGCCの粒子の形状は全ての方向に対する強度が一定であった。
(本文54ページ)


平膜ろ過装置を用いた水リサイクルの提案

株式会社KGKエンジニアリング 営業三部 松下  淳
株式会社日立プラント建設機電エンジニアリング 技術管理センタ開発部 沼田 好晴

 製紙業界では,製造工程の中で大量の工業用水,河川水を使用して抄紙,プレス作業を行っている。しかしながら,近年の夏場の渇水期の多発により,河川水の水質悪化や給水制限による操業短縮,水質劣化による操業停止不安が生じることが多くなり,環境保護の立場からも,自社工場の中での水リサイクルの対応により消費水量の低減,渇水に対する循環水保有による防護策を早急に講じると共に究極のゼロエミッションに向けた施策の展開が必要となっている。弊社では従来閉塞が早く実用上多くの懸念事項のあった膜処理による水リサイクルに対し,濁質除去性能に優れ,洗浄回復性能の高いPVDF(ポリ弗化ビニリデン)製の平膜を用いた新型の平膜式ろ過装置を開発し,ろ過において多くの提案を行っている。この新型の平膜装置は取水のSS分,赤水除去や白水のろ過再利用,排水処理水のろ過リサイクルによる用水としての再利用等,広い範囲での水処理に適用,展開が可能である。更に,抄紙機に使用される節水型超高圧洗浄ノズル用のろ過フィルターとしても優れた濁質除去能力を発揮し,ノズルの目詰まり無く長期の継続運転が可能となっている。膜ろ過は使いにくいとの認識を変えて頂き気軽にお使い頂けるよう,特徴,機能,製品形態について報告する。
(本文60ページ)


低せん断抵抗かつ/または低濃度原料の新測定技術
―BTG製ACT―2500の特徴とメリット―

BTG Instruments AB エミル・イングバル
スペクトリス株式会社 BTG事業部 角田 哲朗    

 従来のブレード式パルプ濃度発信器(静止ブレードまたは可動式)では,パルプ濃度が1%の領域では,正確に濃度を測定することは難しい。特に,品質のあまり良くないリサイクル繊維など,せん断力の小さなパルプの測定において,測定感度は十分ではなかった。
 この度,BTGが新たに開発した濃度計ACT―2500,AmpliForceTMは共振振動数で振動するセンシングエレメントを用い,従来式ブレード式濃度計では正確に測定できなかった低濃度で低せん断力の原料においても,精度の高い測定が可能である。
(本文64ページ)


Paperex2007(インド製紙産業の主催)参加報告
―2007年12月7日〜10日デリー(インド)にて開催―

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 2007年12月7日〜10日にインド・デリー市で,Paperex2007Conference & Exhibitionがインド製紙産業の主催で開催された。8つの分野で34件の発表が行われた。 
 会議の参加者数は500名弱でインド人が多いが,インドは中国の次の市場として注目されているため海外からの参加者も多く,発表は海外からのが多数を占めた。
 特筆すべきは,併設される展示会の大きさで,6つの会場で,合計面積10,000m2以上という広さに400社以上の展示が行われた。
 また,大会後にンド製紙連合会,インド紙パルプ技術協会,インド紙パルプ中央研究所,製紙工場を訪問したのであわせて報告する。
(本文67ページ)


製紙スラッジ(PS)のメタン発酵特性
―PSの化学・鉱物学的特性とメタンガス発生量の関係―

千葉科学大学 危機管理学部 安藤 生大      
静岡県富士工業技術支援センター 日吉 公男      
岳南第一製紙協同組合 嶋田 修治      
愛媛大学 農学部 松枝 直人,逸見 彰男

 本研究では,製紙スラッジ(PS)の更なる有効利用法として,PSに含まれる無機成分以外の有機物に着目し,これを原料とするメタン発酵を試みた。多数の製紙会社の協力を得て様々な種類のPSの採取を行い,畜産系消化汚泥をメタン発酵菌群として用いて,メタン発酵原料としての適性を評価した。具体的には,PSの基礎的物性(水分,灰分量,有機物量,鉱物組成,化学組成)とメタンガス発生量との関係を詳細に検討し,メタン発酵に適したPSの条件を明らかにした。得られた結論を以下に示す。
 凝集沈殿法により発生したPSがメタン発酵原料として望ましい。
 灰分量の目安は約8.2%〜30%,灰分比(灰分量/有機物量)は0.2〜2であることが望ましい。
 PS中のカルサイトは,可溶化過程(相T)で酸性化した消化液のpHの緩衝作用,メタン菌に必要な微量金属であるCaの供給源としての役割を担うが,多すぎると相Tにおける通気嫌気性菌群のpH条件(pH=4〜6.5)を実現することが困難となり,バイオガス発生までに時間を要する。このため,メタン発酵に適するPSのカルサイト量には適性範囲があり,約37%〜52%の鉱物組成範囲が望ましい。
 PS中の有機物1gに相当する灰分に占めるCaとMgの合計重量は,0.1〜0.5gが望ましい。
 PSを構成するセルロースは,樹脂の含浸や,化学的な処理等が施されておらず,均質で,菌の生成を阻害する不純物も少ない“良質”なセルロースが望ましい。
 PSの有効利用としては,第一段階としてメタン発酵によりエネルギーを取り出し,第二段階としてその発酵残渣を利用してPSZやCPSZなどの環境浄化材料を合成する,“多段階(カスケード)型”の有効利用が望ましい。
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