2008年5月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2008年5月


第62巻 第5号 和文概要


紙パルプ産業とバイオリファイナリー

北越製紙株式会社 技術開発部 中俣 恵一

 私たちが暮らしているこの社会は,石油から精製(=リファイン)された物質群によって成り立っている。しかし,この現代文明を支える石油資源に限界が見えてきた。これからは残された半分の石油を大切に使いながら,石油に替わるエネルギーや化学物質の原料を作り出す道を探してゆかなければならない。
 バイオリファイナリーとはバイオマスを出発原料として精製(リファイン)することによって,燃料やプラスチック類を作り出し,石油文明の終焉に備えるための技術である。糖質系およびでんぷん質系バイオマスからのバイオエタノールの製造と比較して,木材などのセルロース系バイオマスからのバイオエタノール製造は,リグニンが多く含まれていることや,セルロースは結晶性が高いことなどの理由から,複雑な前処理が必要である。
 現在研究が進められているセルロース系のバイオリファイナリー技術では,どのようにしてリグニンとセルロースを分離するか,そして,不純物として発生したリグニンをどのように有効活用するかが大きなポイントになっている。しかし,紙パルプ産業ではすでにこれらの課題は解決されている。石油などの化石資源が減少してゆく時代の中で,食料生産と競合しないセルロース系のバイオリファイナリー技術に紙パルプ産業の技術を生かしてゆくことが,「持続的に発展できる産業」としての貢献であり,発展の道であると考える。
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高効率パルパー導入によるシステムの動力削減他

株式会社アイ・エイチ・アイ フォイトペーパーテクノロジー 開発部 村上 雄史

 近年,古紙処理の分野においてさまざまな技術革新がなされ,段古紙処理のエネルギー原単位は十数年前の200kWh/Tから100〜130kWh/Tと非常に低くなってきている。
 古紙処理システムを構成するさまざまな機器の中で,最初に位置するパルパの運転効率を上げることはシステム全体の効率化に直結する。本文では低濃度パルパ技術において,IIM時代から40年以上にわたって国内トップシェアを維持してきた¥外字(8251)アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジーが,その経験とノウハウをドイツのフォイトペーパー社の世界最先端技術と融合し開発した新型低濃度パルパ「インテンサパルパ」を紹介する。
 インテンサパルパの導入によってパルパシステムだけで比較しても,従来型の動力原単位を半分にすることが可能となった。
 また,従来の動力原単位が4分の1にまで省エネが可能となったLPスクリーンの紹介と,精選テールスクリーンシステムに丸穴スクリーンを導入し,さらにさまざまなパターンのフィリングを持つ省エネ型E型シリーズデフレーカを使用した,未離解片の効率的な離解システムによる省エネコンセプトフローについて紹介する。
 これらの機器・システムの組み合わせによって,非常に大きな省エネを生み出し,段古紙処理のエネルギー原単位はついに50kWh/Tに迫る時代に入ろうとしている。
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抄紙白水廃熱回収による省蒸気

三菱製紙エンジニアリング株式会社 設計技術部 坂下 智之

 三菱製紙株式会社八戸工場では,当社のフェニックスプランに掲げるコストダウンテーマに則り省エネルギー推進を緊急課題として進めている。運用体制として,工場エネルギー活用委員会及びISO14001幹事会の委員を共通化して取組を連係させることにより,リアルタイムに省エネ効果を把握しながらエネルギー原単位の向上に取り組んでいる。
 今回は,平成19年12月に運転を開始した抄紙白水廃熱回収設備の省エネ効果について紹介する。冬期の水温低下による抄紙工程での蒸気使用量の増加を抑制することを目的として,余剰として排水されている白水から熱交換器及びろ過器により熱回収を行うことを試みた。従来,白水回収は節水を主目的に実施されてきたが,それに含まれる繊維等の有機物による詰まりや回収効率低下の問題から,白水から直接熱回収することが難しかった。今回はこの詰まりや回収率低下の問題を解消すべくいくつかの工夫をして熱回収に取り組んだ。
(本文14ページ)


最新省エネルギー古紙処理システムの紹介
  ―パルパー・スクリーン・叩解機の省エネルギーの可能性―

相川鉄工株式会社 技術営業部 青嶋 和男

 近年地球環境保護が叫ばれている中,紙パルプ産業においてもCO2排出量削減は非常に重要な課題となっている。原料調整工程では非常に大きな電力を消費しているので,省エネルギーを達成することは発電に使用される化石燃料使用量を削減することに大きく貢献する。特に板紙古紙処理原質工程に関しては,大きな動力を使用して「るパルパー,スクリーン及び叩解機があり,省エネルギー技術が重要となってきている。本稿では特に叩解工程において省エネルギーを達成出きる最新機種と粘状叩解に優れた超Low Intensity叩解用刃物による省エネルギー効果を中心に,パルパー,スクリーンでの最新技術を紹介する。
(本文18ページ)


新規DDRプレート導入による省エネについて

日本製紙株式会社 石巻工場 大谷  努

 洋紙製造において,パルプ叩解は必要な紙品質の確保や抄紙機の操業最適化等から必要不可欠な工程であり,一般的に「DDR(ダブルディスクレファイナー)」を用いて叩解処理を行っているケースが多い。しかしながらパルプ叩解には多くの電力を必要とする事から,パルプ叩解における省エネ対策は製紙業界共通の重要課題のひとつであるといえる。
 それ故,省エネをコンセプトとしたDDRプレートは各プレートメーカーで継続的に開発されており,日本製紙石巻工場でも定期的にプレートの見直しを行ってきた。プレートの選定において注意すべき点は「省エネvsパルプ強度」のバランスであり,省エネのみを重視するとパルプ強度の低下を引き起こすケースがある。特にLBKPについては近年,チップ材が植林木にシフトしている事から,パルプ自体の強度が低下傾向にある為,以前にも増してバランス調整が重要となっている。
 そこで今回,新規DDRプレートとして「allステンレス製+刃幅:1mm」の「FineBar(相川鉄工)」をLBKP叩解機に導入した結果,パルプ強度を維持しながら,叩解原単位の削減や叩解処理能力アップによるDDRの集約化により,大きな省エネ効果を見出す事が出来たので本報にてその事例を紹介する。
(本文25ページ)


発電設備による省エネ・CO2削減事例
  ―LNGサテライト設備を用いた燃料転換ならびに高効率蒸気タービンへの更新―

レンゴー株式会社 利根川事業所 施設部動力課 有福  聡

 近年の地球環境保全に対する社会的要求が高まる中,レンゴーでは「エコチャレンジ009」を制定し,省資源・省エネルギーの取り組みを行っている。「エコチャレンジ009」中の目標のひとつに,「2009年度までに全社のCO2総排出量を1990年度比22%削減する」を掲げ,達成に向け取り組んでいる。
 本稿では利根川事業所で,LNGサテライト設備導入による発電用ボイラーの燃料転換(C重油⇒LNG)を行いCO2排出量を大幅に削減した事例と,発電タービン高効率タイプへの更新による省エネルギー事例について紹介する。
(本文30ページ)


プレエバポレーター設置による省蒸気

中越パルプ工業株式会社 高岡工場 久次米 智文

 N, L2系列のKPプラントを有している当社高岡工場能町では,省エネルギーに対する取り組みの一つとしてプレエバポレーターの設置も重要な取り組みとして進められた。
 このシステムは,蒸解釜回りでの排熱エネルギーを有効利用するもので,フローとしてはL系連続蒸解釜の抽出黒液を3段の自己蒸発をさせた後に,3重効用のプレエバポレーターを設置し,スチーミングベッセルの排蒸気を利用して予備濃縮を行いメインエバポレーターへ送る。最終の蒸発蒸気はサーフェスコンデンサーによって,高・低BODドレンに分離され,低BODドレンは高温水として有効利用する。
 これにより連続蒸解釜回りにおける蒸発量を増加させ,メインエバポレーターでの蒸発負荷の低減及び低圧蒸気使用量の削減を達成している。
 本論では,昨年5月に設置,6月から本格稼動しているプレエバポレーターによる省エネルギー効果について報告する。
(本文36ページ)


タービン抽気スーツブロア運用変更による省エネ

北越製紙株式会社 新潟工場 工務部汽力課 田中 雄大

 地球温暖化対策及び,省エネルギーへの取り組みは,益々重要度を増している。また,近年,化石燃料高騰による使用量削減,コスト改善など,更に省エネルギーへの取り組みの重要性が増している。
 北越製紙では,「北越製紙環境憲章」の基本理念,方針に基づいて,活資源,省エネルギーに率先して取り組んでいる。
 2005年4月に,環境負荷の低減及び,高効率操業を目的として,8号発電設備を導入した。国内最大級の黒液固 形分処理能力を有する8号回収ボイラーと,定格出力85Mwの8号蒸気タービンのユニット構成となっている。
 また,2007年2月には,ペーパースラッジ(PS),RPF,木屑を燃料にした,No.3焼却設備(バイオマスボイラー)が稼動し,更なる化石燃料の削減,環境負荷低減等,環境対策に取り組んでいる。
 設備の操業状況が変化する中,動力部門における発電設備の効率的な運用,省エネルギー化は,どこの事業所でも重要な課題である。
 本稿では,8号回収ボイラーのスーツブロア用に専用供給している,「8号蒸気タービンの第1抽気運用範囲拡大による抽気発電の増加」についてと,「脱塩脱カリ装置によるスーツブロア蒸気流量削減」についての省エネルギー取り組みについて紹介する。
(本文40ページ)


高機能・高性能脱墨剤の開発
 ―リポブライトシリーズ―

日華化学株式会社 研究開発本部 スペシャリティケミカル開発部
 紙パルプグループ 野川 朋幸,田中 多加志

 原油高騰及び中国への古紙輸出増大に伴い燃料,パルプの調達コストが上昇し収益性を圧迫している。この状況に対し弊社は高機能で高性能な脱墨剤リポブライトDP―100シリーズを開発した。
 この脱墨剤は,極めて高い脱墨性能を有しており,従来の脱墨剤に比べて,その使用量を低減できる。また,フローテーションの温度の変化に影響なく安定に操業できることを特徴とする。
 今回,新たに開発したリポブライトDP―100シリーズについて報告する。
(本文45ページ)


コーティングカラー構成要素の歩留まりに関する新考察
 ―水分歩留から成分歩留への新しいアプローチ―

CPケルコ ケン・マッケンジー,アン・ルタネン,ユッカ・レートボーリ, ヤーナ・アーティカリ,テウボ・ピーロラ

 近年継続的に上昇するコーター速度とコーティングカラーの構成要素数の上昇は,良好な操業性と品質を達成する上でカラーの適切なレオロジー性と水分歩留がいかに重要であるかを強調することとなった。
 紙又は板紙のコーティング過程においては,プレコート層から原紙へあるいはトップコート層からプレコート層への水系相の浸透により定着が行われる。この水系相はバインダー薬品だけでなく,他の構成要素にとってもいわば乗り物のような役割を果たしている。仮に水分や構成要素の浸透程度がコントロールされていなければ,コーティングカラーの不動化によっていわゆるマイグレーションが停止される前に,カラーから原紙へ過剰な移行が起こりうる。この結果操業性が悪化あるいは不安定になり,コート層の不均一性などにより,品質に重大な影響を及ぼしかねない。
 レオロジー改良剤や増粘剤はコーティングカラー中での効果を,「水分歩留(Water retention)」または「保水性」という用語で評価される傾向にある。しかしコーティングにおけるこの効果の変化を表すにはこの用語では十分ではない。本稿では我々は「構成要素歩留(material retention)」という新しい概念を紹介し,コーティングカラー中の水分を含む全ての可動要素のコントロール方法について考察を行った。このコントロールによってコーティングカラーの構成要素をZ軸方向に対し均一に配置することが可能となり,その結果インクセット性や印刷光沢の向上,モットリングの抑制や表面強度向上により印刷適正が改善され,また光学特性として,不透明度,白度および耐光性の向上も達成が可能となる。
(本文50ページ)


軸受長寿命化への挑戦

シェフラージャパン株式会社 産機HI営業部 大崎 邦男

 軸受メーカにとって軸受寿命の長寿命化は,常にエンドユーザーより要求されており,終わりなき挑戦の対象となっている。一般的に,軸受寿命は,材料とその疲労強さ,面圧,潤滑などの使用条件に大きく左右される。長寿命化の方策として,
 1)軸受材料の改善(清浄度鋼の開発など)
 2)設計改善(面圧,転動体プロファイルの改善など)
 3)製造技術の改善(熱処理方法,表面仕上げ方法の改善など)
 4)使用条件の改善(潤滑材の改善など)
など,など,さまざまな方法が研究され,実施され現在に至っている。
 シェフラーグループは,INAとFAGの統合によりそれぞれが個別に開発してきた製造技術,設計改善を合体させることにより,ここ数年で,従来の寿命を50%から70%長寿命化した軸受の開発に成功し,これを『X―Life』と名づけ,標準軸受に適用し始めました。今回は,この『X―Life』バージョンの内容について報告する。 (本文58ページ)


PIによる省エネルギー活用事例
 ―RtPMプラットフォームを利用したエネルギー管理システム―

OSIsoftジャパン株式会社 伊藤 静雄

 近年のグローバル化や経済的規制緩和,あるいは温暖化ガス排出規制や原油の高騰をはじめとする我々を取り巻く急激な環境変化はエネルギー効率の良い設備の導入といったハード面の対策にとどまらず,新しい環境変化に即応できる最適な生産活動や迅速な意思決定ができるソフト面での仕組み作りが求められている。
 このような中で大手業界リーダは更なる効率化,コスト削減に向けて従来からの日次や月次ベースの管理サイクルから一歩進め,実時間ベーXでエネルギー情報の収集・分析・最適化が行えるシステム構築を模索している。
 本稿では戦略的なエネルギー管理手法の導入により莫大なエネルギーコストを削減したユーザ事例とそこで採用されているリアルタイムパフォーマンス管理ツールとして数多くの導入実績があるOSIsoft社のPIシステムを紹介する。
(本文64ページ)


第8回PAPTAC/TAPPI DIPフォーラム参加報告

日本製紙株式会社 技術研究所 後藤 至誠
王子製紙株式会社 製紙技術研究所 河名 淳介

 2007年9月23日から27日にかけてナイアガラフォールズ(カナダ)にて8th Research Forum on Recyclingが開催された。DIPフォーラムはPAPTAC主催で3年に一度開催されるDIP関連の基礎研究と応用技術に関する専門学会であり,今回からTAPPIとの共催となっている。今回の参加者は約150名であり,3年前の第7回に比べ1.5倍に増加していた。プログラムとしては,発表が13セッション(口頭発表34件,パネルディスカッション2件)あり,更に粘着異物に関するワークショップ及び工場見学等が含まれていた。発表の傾向と興味深い研究について報告する。
(本文68ページ)


紙に含まれる蛍光増白剤の定量方法に関する検討

東京大学 大学院農学生命科学研究科 加地麻衣子,江前敏晴,磯貝 明

 食品衛生法では蛍光増白剤を食品包装容器用の板紙に添加することが禁止されている。しかし,古紙パルプから製造する板紙には,ある程度の量の蛍光増白剤は必然的に混入してしまう。適切な分解と除去を行うために,蛍光増白剤の定量方法について検討を行った。
 分光蛍光光度計によって測定した蛍光強度の対数は,10ppb〜10ppmの範囲では,蛍光増白剤水溶液濃度の対数とおおよそ直線関係があった。古紙パルプからpH9で蛍光増白剤を抽出し,pH3でろ紙にそれを染着させた。染着ろ紙の蛍光画像をCCDカメラで撮影したところ,画像の輝度レベルの対数は蛍光増白剤濃度の対数と直線関係があった。蛍光増白剤の除去に関しては,pH13までのアルカリ処理では除去量に限界があったが,1ppmの次亜塩素酸では蛍光強度を1,000ppbから1ppb相当まで低下させることができた。超臨界二酸化炭素による蛍光増白剤抽出後,高速液体クロマトグラフィで定量する方法では,モディファイアとして水と有機塩基を添加するアルカリ条件下でほぼ全量の蛍光増白剤を抽出できた。
(本文84ページ)