2008年4月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2008年4月


第62巻 第4号 和文概要


西豪州におけるEucalyptus globulus精英樹の大量生産

日本製紙株式会社 森林科学研究所 植林研究室 清水 圭一

 精英樹によるクローン植林を目的として,西豪州においてE. globulusの組織培養によるクローン増殖技術の開発と自社植林地からのE. globulus精英樹の選抜を行っている。昨年,一昨年と生長性および耐環境性により選抜された精英樹ならびに精英樹候補木の組織培養による大量生産試験を行った。組織培養の際には,これまでの蛍光灯に代わる新たな培養光源として冷陰極管による赤色光源を採用した。これにより発根用シュートの伸長期間と発根培養期間の短縮が図られた。生産した精英樹クローン苗は,西豪州内の植林地で,土壌の良否や植栽密度による生育性の違いなどを検討するための試験植林に用いられた。7月にクローン苗の植栽が行われたが,これらは順調に生育しており,今後経過を観察していく予定である。
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森の再生:樹木への環境ストレス耐性付与技術の開発

王子製紙株式会社 研究開発本部 森林資源研究所 浅田 隆之

 環境ストレスの厳しい地域に森林を再生させるため,施肥や薬剤散布の要領で簡便に樹木に環境ストレス耐性を付与する技術開発を目指した。ウニコナゾール―PのようなシトクロムP450阻害剤によってユーカリに環境ストレス耐性を付与することができた。環境ストレス耐性付与作用を示すウニコナゾール―Pは,環境ストレス応答を司るアブシジン酸の代謝を阻害した。わずかな量(0.025mg/植物)のウニコナゾール―Pで処理したユーカリは,強光乾燥ストレス耐性を示し,初期(3.5ヶ月)成長(乾物重量)は対照実験の1.5―2.3倍に増加した。ウニコナゾール―Pは,オーストラリアで農薬登録されている安全性の高い化合物であり,即効的な実用化が期待される。
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省エネ型フローテーターの開発について

王子製紙株式会社 苫小牧工場 パルプ部 笹田慎太郎

 古紙利用率は2003年には60%を超え,今後,更なる利用率の向上を図るには,洋紙への利用率拡大が必要である。そのためには,DIPの高品質化とDIP工程の省エネ化を図ることが重要な課題である。そこで,古紙脱墨装置のひとつであるフローテーターの省エネ化を目的に開発に取り組んだので,その内容について報告する。
 脱墨性が高いことを特長とする旧OK式フローテーターのセル構造を踏まえて,脱墨にとって大切な要素となる「原料と気泡の接触」と「気泡と原料の分離」に重点を置いて検討を行った。その結果,気泡が大量に存在するエリアで原料と接触させ,液層上部とフロス層を安定化させ,さらに接触と分離を強化するために3室構造のフローテーターを開発し,旧OK式フローテーターより電力原単位6割減,セル容量6割減を実現した。
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ライナーマシン オクトパスCP制御の操業経験

北上製紙株式会社 一関工場 工務部抄造課 阿部 尚明

 当社ライナーマシンは5層抄きであるが,3層目のヘッドボックス老朽化に伴い幅方向プロファイル管理に苦慮していた。2005年8月に鰹ャ林製作所製ヘッドボックス,オクトパスストックアプローチシステムを国内1号機として導入し運転を開始した。
 このシステムではヘッドボックスの原料流入部がテーパーヘッダーではなく,幅方向スライス位置ごとオクトパスの原料分配ホースが接続されている。また,スライスジェット流幅方向の部分的な原料濃度調整のため,オクトパス原料分配管ごと希釈水を注入する構造である。この希釈水にはコントロールバルブが設けられ,枠先にて遠隔操作できる。幅方向プロファイル修正はBM計の坪量を確認しながら希釈水コントロールバルブの開度を調整する。
 このシステムを導入後,幅方向プロファイルの改善による品質の向上,抄き物替えや通紙後のプロファイル収束時間の短縮による損紙削減が図られ,現在順調に操業している。
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回収ボイラーの燃焼改善について

王子特殊紙株式会社 江別工場 施設部動力課 野崎 健次

 原油価格の高騰により,更なるエネルギーコストの低減が緊急課題となっている中,5号回収ボイラーに海外で実績のある最適燃焼システム方式を国内で初めて取り入れ,燃焼改善工事を行った。最適燃焼システムを構築するには,燃焼流動解析プログラムでの検証を行い,炉内での複雑に絡み合う燃焼メカニズムを効率的にシミュレーションしながら,燃焼用空気の循環流を形成させる事である。空気口の投入位置及び配置も含め,短期間で計画通りに工事を行った後,燃焼テストを実施した結果,ボイラー連続操業期間の延長,余剰酸素量の低減及びスーツブロワー蒸気削減など大きな省エネルギー効果が得られたので報告する。
(本文19ページ)


バイオマス発電設備の操業経験

北越製紙株式会社 関東工場(勝田) 動力課 馬場 紀和

 当社関東工場勝田工務部は,茨城県の北部に位置し,特殊白板紙およびキャスト紙を生産している。重油専焼の1号発電設備1系列と買電により工場のエネルギー供給を行なっていたが,CO2排出量削減,環境対策のほか,エネルギーコスト低減対策として木質系バイオマス燃料を主燃料とする2号発電設備の導入を行なうことになった。
 従来からの板紙原料に古紙を使用する「マテリアルリサイクル」に加え,今回のバイオマス発電設備導入により,廃材を燃料として活用する「サーマルリサイクル」の形態が整い,より環境対応型工場としての価値が高まることになった。
 木質バイオマス発電設備としては国内最大級となる循環流動層式ボイラおよび蒸気タービン発電機,ならびに燃料受入・搬送設備を新設した。
 平成19年4月下旬から5月初旬にかけ,連続営業運転後初めての計画定期点検を行なった。主要点検整備ポイントは,炉内各所磨耗状況確認・補修,燃料搬送設備関連の消耗部品点検・交換であった。定期点検では今後の長期運転に関して不安要素も何点か摘出され,今後の安定操業維持に向けての検討課題となっている。
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排水処理設備の省エネ事例

王子板紙株式会社 富士工場 工務部 相佐 英一

 二酸化炭素排出量増加による地球温暖化等の環境破壊が世界的な問題となっている中,エネルギー大量消費型産業である製紙業においても積極的な省エネ対策を講ずることが求められている。
 この為,エネルギー使用比率が高い生産設備や発電設備については積極的な取組みを行い,順調に効果を挙げている一方,排水処理設備については対策が遅れており改善が必要となってきている。
 また,製造業が非生産設備である排水処理工程において省エネ対策を講ずる事は大変重要であり,トータルコストダウンに多大に寄与するだけでなく企業競争力の強化にも繋がっていく。 そこで今回,改善の第1ステップとして排水処理工程の内,ポンプ以外の機器単体として消費動力が高く老朽化設備でもある曝気ブロワ(生物膜処理装置付帯設備)5台に照準を定め,省電力と劣化対策をメインに,ブロワ独自の機械騒音の低減と振動の抑制及び潤滑箇所削減による作業軽減と環境対策も併せて行えるよう,当時まだ国内実績が少なかったものの(海外実績は多数有り),省電力・低騒音・低振動をセールスポイントとしていた新型の高効率ターボブロワへ更新し,計画値を上回る省電力と大幅な環境負荷低減に成功した事例について,富士工場排水工程の状況と従来ブロワに対する新型ターボブロワの優位性の検証とその特徴を交えながら紹介する。
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新世代新聞用紙《プラスニューズ》シリーズの紹介

王子製紙株式会社 苫小牧工場 島瀬  浩

 近年,日本における新聞用紙を取り巻く状況は,インターネットなどの新媒体の登場により,紙媒体新聞が伸び悩むというこれまでにない変化に見舞われている。こうした状況下,弊社では様々な角度から検討を進めた中,新聞社の大きな収入源であるカラー広告の好調な伸びに着目し,従来の新聞印刷レベルを超えたカラー印面品質の飛躍的な向上を最重要課題として研究開発を進めてきた。
 その結果,裏抜け防止剤として効果的な製紙用填料であるホワイトカーボンの性能を,粒子径分布の制御などにより飛躍的に向上させた「スーパーホワイトカーボン」と,新聞用紙の表層にインキ吸収及び保持能力を付与し,従来の標準的な新聞用紙にはない優れた印面品質を可能にした「ファインプラスコート」の2つの新技術の獲得に成功した。そして,これら新技術の組合せが,より鮮やかで,より読み易い紙面を実現し,06年秋,新世代新聞用紙《プラスニューズ》シリーズを上市するに至った。08年2月時点で弊社SL紙・XL紙の約8割が《プラスニューズ》に切替わっており,全量移行を予定している。
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軽量オンデマンド印刷用紙の開発

日本製紙株式会社 技術研究所 表  尚弘

 印刷業界においてオンデマンド印刷市場は,ここ数年拡大基調にある。オンデマンド印刷機の品質は年々向上しており,特定の分野においては,オフセット印刷に替わって使用されるケースも増えてきている。また近年,枚葉紙を使用する電子写真方式の高速オンデマンド印刷機においても,コート紙が使用される機会が多くなり,更に軽量コート紙を使用したいとのニーズも高まっている。
 しかしながら,コート紙は上質紙と比較して,印刷機内のトナー転写部やトナー定着部にて用紙が貼り付き易く,剛度の低い軽量コート紙では,用紙の走行性不良が発生するという課題があった。用紙の剛度を上げる対策として,従来は原紙の低密度化や内添または外添薬品による方法が一般的であったが,操業上の制約もあり必ずしも十分な効果が得られなかった。
 今回,塗工層に塗工適性も兼ね備えた剛度向上剤(ポリアクリルアミド)を配合することにより,用紙の剛度アップを図り,軽量オンデマンド印刷用紙を開発した。今回開発した軽量オンデマンド印刷用紙は,オンデマンド印刷適性(印刷仕上がり・走行性)と共に,オフセット印刷適性も付与されており,用紙を使用するユーザーでの使い易さも配慮した設計となっている。
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ペーパースラッジ灰の水熱固化技術開発

日本製紙株式会社 釧路工場 技術環境室 竹谷宏敏,名古敏之,佐々木正浩

 製紙工程で発生するペーパースラッジ(PS)は,ボイラーで燃焼することにより熱回収を行っており,燃焼過程で発生するPS灰は主にセメント原料などに有効利用している。近年の古紙利用率の上昇に伴い,PS灰も増加傾向であるため,更なる有効利用が重要課題の一つとなっていた。今回,路盤材や土壌改良材に利用可能な新規製品の開発を行った。
 最も重要な技術課題は,フッ素等の環境影響物質の溶出を抑制する技術の開発であった。PS灰を高温・高圧下で水蒸気と反応(水熱固化反応)させることにより,環境影響物質が固定化されることを確認した。また,路盤材などにおいて,製品の力学的強度は重要特性の一つであるが,造粒工程における固化材の添加条件や操業パラメータの最適化を行った。さらに,路盤材として道路の凍上抑制層に使用し,水捌け改良材としては,釧路湿原に隣接する湿地に施工して大根の育成試験も行った。本製品は北海道リサイクル製品の認定を受けており,エコドライボールの名前で販売されている。
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2007TAPPI EPE CONFERENCE参加報告

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 友田 生織
日本製紙株式会社 技術研究所 小野木晋一
株式会社日本紙パルプ研究所 荒木  廣

 2007年10月21日から24日まで,米国フロリダ州ジャクソンビルで2007Tappi Engineering, Pulping & Environmental Conference(2007EPE Conference)が開催された。コンファレンスには,米国,カナダを始め,北欧(スウエーデン,フィンランド),ブラジル,中国,日本(5名)など,世界17カ国から435名が参加者した。51のセッションで日本2件を含めて101件の報告がなされたが,発表者の所属では,昨年に引き続き,紙パルプメーカー所属の発表に比べて大学,研究機関や薬品メーカーからの発表の比率が高かった。本コンファレンスで注目された報告の概要をまとめた。
(本文49ページ)


バンブークラフトパルプの漂白性に及ぼす蒸解条件の影響

BCSIR研究機構 パルプ・製紙研究部門 
 M. サーワール ジャハン,D. A. ナシマ チョウダリ,M. カリドゥル イスラム

 木材パルプの漂白性については,多くの報告があるが,非木材パルプの漂白性についての評価はほとんどなされていない。本研究では,活性アルカリ添加率,蒸解時間および硫化度のような蒸解条件が,バンブークラフトパルプの漂白性への影響について評価した。バンブーチップを蒸解条件を変えてカッパー価約20のパルプを作った。それから,パルプ収率と未晒パルプ白色度,粘度,ペントザン含量,α―セルロース含量および残留リグニンのフェノール性水酸基(PhOH)含量を測定した。
 高活性アルカリ添加率と硫化度で作られたパルプは,高パルプ収率,高α―セルロース含量,高粘度で,ペントザン含量は低く,残留リグニン中のPhOH含量は高い。未晒パルプを酸素漂白した後,DEDまたはQPPシーケンスで漂白した。酸素脱リグニンの度合いは,蒸解条件となんら関係がない。パルプの漂白性は白色度80%に達するために必要な二酸化塩素消費量で定義した。パルプの漂白性は,アルカリ添加率と硫化度が高い条件で蒸解した時ほど改善される。バンブークラフトパルプの漂白性は,残留リグニンのPhOH含量と直接的な関係があることが判明した。
(本文60ページ)


高品質苛性化軽カルの開発(その4)
 ―米粒状軽カルの連続製造方法の検討―

日本製紙株式会社 技術研究所 南里泰徳,金野晴男,後藤任孝
日本製紙株式会社 石巻工場 岡本康弘          
日本製紙ケミカル株式会社 江津事業所 高橋一人
   
 クラフトパルプ化の薬品回収工程である苛性化工程では白液を生産すると共に炭酸カルシウムが副生している。この炭酸カルシウム(苛性化軽カル)はキルンで焼成されて白液を生産するために循環使用されているが,製紙用填料・顔料として利用できればキルンでの重油使用量削減や苛性化工程内で蓄積する不純物を除去できるなどのメリットは大きい。しかし,苛性化軽カルをより多く填料・顔料に使用するには苛性化軽カルの品質が良好でなければならないが,現行の苛性化軽カルは形態が塊状であるため,填料・顔料としての品質は十分ではなかった。そこで苛性化反応を用いた高品質軽質炭酸カルシウムの開発を行ったところ,苛性化工程内で起こっている消和と苛性化の二つの反応を基本的に分離してそれぞれ制御することにより,米粒状,紡錘状,針状に形態を制御できることが分かった。これらの形態の中で米粒状は,スレーカー内で生石灰を白液で消和し,苛性化槽で緑液を添加して苛性化反応を行うことにより製造でき,現状の苛性化工程をそのまま使用して製造できる可能性がある。前報において生石灰を白液で消和した後に緑液を添加して調製した一次粒子にさらに石灰乳と緑液をさらに添加させて二次粒子を製造する方法を検討し,ワイヤー摩耗性に優れ,現行の苛性化軽カルと同等の白液ろ過性を示す米粒状苛性化軽カルのバッチ式製造方法を確立したことを報告した。しかしながら,このバッチ法はバルブ類の切り替えやポンプ類の起動・停止が必要である等,操業性に課題があり,現状の苛性化工程の操業に近く,複雑な操作の必要でない連続的に製造ができる連続法がより好ましいと考えられた。そこで現状苛性化工程の装置構成の大幅に変更しない連続製造方法について検討した。本報では実験室スケールで形態制御に重要な第1槽目容量の米粒状軽カル生成への影響を検討し,ついで白液消和石灰乳と緑液の分割添加を検討した。さらに実機スケールでの実証テストを行った結果,連続法によっても,ワイヤー摩耗率に優れ,現行の苛性化軽カルと同等の白液ろ過性を示す米粒状苛性化軽カルを製造することができることが分かった。
(本文68ページ)