2007年12月 紙パ技協誌
 
紙パ技協誌 2007年12月


第61巻 第12号 和文概要


化学物質管理の国際動向

 ―REACH, GHSなど―

株式会社日立製作所 環境本部 市川 芳明

 国際的な新しい化学物質規制の動向を製品政策という観点から論じる。最近導入されたEUのREACH規則はこの典型であり,本講演のメインテーマである。このREACHに代表されるアプローチは二つの特徴を持っている。一つは登録や届出に関する広範囲なスコープであり,もう一方はサプライチェーン義務である。特に後者については我々がもっとも警戒しなければならない。なぜならば,明らかに欧州企業が日本に企業に比べて有利だからである。この講演では日本国内だけで商売している企業にさえ,その影響が及ぶ可能性の高いことを示す。このような状況で日本の企業にとっての最良の選択とは何か,海外の動向を交えて説明する。
(本文5ページ)


産業廃棄物実態調査報告

日本製紙連合会 技術環境部 前田 直史

 紙パルプ業界の産業廃棄物実態調査は,紙パルプ技術協会と日本製紙連合会の協賛で,第1回目の調査を1984年に開始して以来,2006年度の調査で16回目を迎えた。この間,クリーン・ジャパン・センター(CJC)が行う「産業廃棄物・有価発生物の動向調査」に参加する等,主要産業間の統一目標や統一調査様式に対応するため,本調査は色々と形を変えて現在に至っている。
 当業界が産業廃棄物実態調査を始めた要因の1つに,廃棄物の発生源に変化が生じたことがある。エネルギー源(黒液エネルギーを除く)の重油から石炭ボイラーへの転換とそれによる石炭灰の増加,またゴミ減量化の社会的要請による古紙の積極的利用と,それによる古紙粕(有機性汚泥)の増加などの変化があげられる。加えて,1980年代の全国の産業廃棄物最終処分場の残余年数の逼迫から関係官庁における最終処分量削減等の要請も背景にあり,実態を把握する必要があった。
 本報告では,現時点で最新版である「第16回(2005年度実績)産業廃棄物実態調査」について過去の調査との比較により説明する。 
(本文9ページ)


地球温暖化対策に対するわが国のノルマ達成プラン

みずほ情報総研株式会社 環境・資源エネルギー部 京都メカニズムチーム 齊藤  聡

 京都議定書第一約束期間の開始を来年に控え,わが国では,京都議定書目標達成計画の見直しが行われている。その内容によっても異なるが,多量の排出権が京都目標遵守のために必要とされることは確実である。排出権の取得にあたっては,その需給バランスが重視されるが,当面は供給過多になる可能性は低いと考えられる。さらには,わが国にとっても,わが国企業にとっても,中長期的な計画の策定が必要とされる。
(本文15ページ)


わが国の環境法規制の動向

王子製紙株式会社 環境経営部 今宮 成宜

 今回,環境法令として,@最近改正されたもの,A紙・パルプ産業に関連した環境法令その動向に注意が必要なものを選択し,そのポイント,動向等について説明した。今後環境の規制はますます強化され,そのために数々の新法と法改正による規制強化が行われるものと思われる。
 その中で廃掃法については,法が適切なリサイクルを逆に妨げる事態が生じており,早期の廃棄物の定義や枠組み等抜本改正が望まれる所である。
(本文19ページ)


中国における最近の環境政策と今後の展望

社団法人日本経済団体連合会 アジアグループ 青山  周

 中国政府は経済・産業構造を調整して経済・産業の高度化を図りつつ,環境問題を解決し,資源・エネルギーの効率利用を実現する政策を採用した。こうした政策に沿って,昨年公表した外資利用第11次5ヵ年計画では,外資利用の「量」から「質」への根本的転換の推進がうたわれた。今後の外資利用はこれまでの簡単な加工,組立て,低水準の生産から研究開発,先進的な流通,サービス業へと高度化されていく。低賃金の労働力を活用し,環境負荷の高い製造工程は歓迎されなくなった。外資利用第11次5カ年計画は,中国において外資企業が選別される時代の幕開けを意味している。
 中国政府が環境・省エネ政策を強化している背景には,中国の環境問題が内外において国境を越えた問題として認知されるようになってきたことがある。
 高度経済成長にともなって中国の温室効果ガス排出量が急増している中,中国政府は2007年6月4日,記者会見を開催し,「気候変動対応国家プログラム」を公表した。中国は京都議定書型の国ごとに温室効果ガスの排出枠を定める方法ではなく,GDP当たりのエネルギー消費,CO2排出量の削減という効率向上で対応する方法を主張するが,中国の対応策が2013年以降の国際枠組みの議論に影響を与える可能性は高い。
(本文25ページ)


製鉄業における温室効果ガス削減に向けた取り組み

新日本製鐵株式會社 技術総括部 エネルギー技術グループ 小野  透

 我が国鉄鋼業では,1970年代の第一次石油危機を契機に,徹底した省エネルギーに取り組み,世界トップレベルのエネルギー効率を実現してきた。これまで我が国鉄鋼業が取組んできた省エネルギーの手法としては,@プロセス革新,Aプロセス効率改善,B副生ガスの最大活用,C排熱(エネルギー)回収,D廃棄物有効利用に大別される。特に2000年頃より廃棄物の高炉やコークス炉での利用に積極的に取り組んでおり,セクターを越えた取組として注目される。
 更に将来のプロセス革新のための技術開発にも積極的に取組んでいる。次世代コークス炉(SCOPE―21)は長期の開発期間を経て,現在商業1号機が建設されている。更には,コークス炉ガスからの水素供給や高炉ガス中のCO2を分離回収する技術開発が国家プロジェクトとして取組まれている。
 日本の優れた省エネ・環境技術は,近年成長著しい中国を始めとした発展途上国に技術供与され,将来のエネルギー・資源への対応のみならず,地球温暖化問題に対しても大きな効果が期待されている。
(本文29ページ)


バイオエタノールの現状と展望

財団法人地球環境産業技術研究機構 微生物研究グループ 湯川 英明

 バイオマスを原料とした化学品・エネルギー生産開発はオイルショック時に盛んに行われたが,その後の石油価格の安定化と,当時の技術では経済性のあるプロセス開発に展望が見出せなかったことから,開発規模は縮小され産業界の関心も次第に薄れた。しかしながら,エネルギーセキュリティーや地球温暖化に対する関心が高まる現在,バイオマスを原料とした物質生産は,新規コンセプトの技術体系“バイオリファイナリー”として再び注目を集めている。本体系は,単なるバイオマスの廃棄物利用という静脈産業的な技術体系にとどまらず,21世紀の産業革命とも期待され,産業構造の転換をも予測されている。
 バイオリファイナリー開発において基盤となる技術は微生物ゲノム情報に基づいたポストゲノム関連技術である。これらを駆使した高効率バイオプロセスの確立が実用的バイオリファイナリー構築の鍵となる。ポストゲノム以前の技術では,微生物細胞の改良は突然変異に依存するいわば手探りの改良であったのに対し,今後のポストゲノム研究時代ではゲノム情報を基に理論的改良を加えることが可能となった。すなわち遺伝子レベルから微生物細胞を抜本改良し,種々の目的生産物に応じた高生産性バイオプロセスを設計する技術基盤が確立したのである。
 本稿では,バイオリファイナリーの主要製品であるバイオエタノールについて,政策動向,生産技術課題と,ポストゲノム関連技術に基づいて開発された高生産性バイオプロセス“RITEバイオプロセス”によるエタノール生産への筆者らの取組みを紹介する。
(本文34ページ)


RPFの動向と次世代固形燃料C―RPF

株式会社関商店 RPF企画開発部 竹中 元康(日本RPF工業会 事務局)

 RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)とは,再生紙として利用が困難な古紙と廃プラスチックを主原料とする固形燃料である。その燃料としての品質,価格及び環境面における優位性により,近年石炭代替燃料として製紙業界を中心にその需要が急拡大している。本稿では,RPFの特長や需要に触れ,最近のRPFのJIS化の動きや関係する法改正の動向についてまとめた。
 また,一般家庭から排出される生ごみ等の可燃ごみを炭化して得られる炭化物(Char)と廃プラスチックを主原料とする新型固形燃料C―RPFを紹介した。
 C―RPFは,RPF同様に十分石炭代替燃料として使用し得る品位をもち,化石燃料の削減を通しCO2削減など地球温暖化防止に寄与,従来自治体の焼却施設で処分されてきた一般廃棄物の有効な再資源化手法の一つとして期待がもてる。
(本文38ページ)


焼却灰の処理技術・利用技術

JFE環境ソリューションズ株式会社 環境設計部 明石 哲夫

 一般廃棄物の焼却処理において発生する焼却灰の処理技術ついて紹介する。また,焼却灰を溶融スラグ化する技術を中心とした灰の利用技術について紹介する。
(本文43ページ)


古紙回収の現状と問題点

栗原紙材株式会社 栗原 正雄

 最近一般新聞紙面にも,たびたび古紙に関する記事が登場する様になってきた。3年程前からは主要商品品目のうちデフレ基調下の経済状況の中で,古紙の値上がり率が前年対比で30%以上も値上がりしたことが注目された。その後,古紙価格の上昇によって新たに古紙回収を手掛ける人が増え,それらの人が,行政が企画した古紙回収を無断で古紙集積場から抜き取る行為や町内会等が実地している集団回収の古紙持寄場から古紙を持ち去る行為が頻繁に行われたため,住民から多くの苦情が寄せられた。これ等の現状は一般紙に多く取り上げられた。各自冶体では抜き取り行為を防止するため条例を制定し罰則を設けた市もかなりの数にのぼった。最近の古紙を取り巻く環境は以前とどう変化してきたのだろうか。主に古紙回収,古紙消費,古紙価格に関する推移と国際化してきた古紙マーケットの動向について述べる。
(本文51ページ)


活性汚泥診断システムとサービス

株式会社小川環境研究所 小川 尊夫

  生産プロセスにおいては,コンピュータ技術により,制御技術,管理技術が著しく向上している。生産プロセスのなかで,最も遅れ取っているのが,廃水処理プロセスといって良い。なかでも微生物による廃水処理,その代表プロセスである活性汚泥処理においては,いまだに運転管理を経験と感に頼っている現状がある。
 廃水は微生物の働きで確かに浄化されるが,曝気槽のなかで,どんな状況で処理が行われているか,定量的にはほとんど判っていないで運転されているのが実状である。活性汚泥処理をブラックボックス状態にしている最大の要因は,
 @ 曝気槽の微生物のBOD分解能力(活性)を定量的に把握できていない
 A 原水のBODおよび分解性を迅速に測定できていない
ことである。
 「微生物の活性」と「原水BODの分解性」を測定する手段・装置を紹介し,さらに同指標を使うと活性汚泥の現象がここまで定量化できる,ということを解説する。
(本文54ページ)


高速液体クロマトグラフ法を用いた過酸化水素定量法の検討

独立行政法人森林総合研究所 眞柄謙吾,池田 努,杉元倫子,細谷修二

 過酸化水素は,主としてヨウ素滴定法により定量されているが,これは試料溶液中の酸化力を測定しており,過酸化水素を選択的に定量しているわけではない。よって,酸素やオゾンなどの酸化剤によるパルプの漂白を研究する場合のように,反応溶液中に過酸化水素以外の酸化力を持つ物質が存在する場合,正確な過酸化水素の定量は困難となる。そこで,本報告では,高速液体クロマトグラフ(HPLC)上で過酸化水素を酸化力を持つ他の物質から分離定量するための分析条件について検討した。
 HPLC上で過酸化水素を分離するためのカラムは,1994年にMiyazawaらによって見出されており,本報告でもこのカラムを用いた。このカラム本体や他の接液部に使用されているステンレス鋼による過酸化水素の分解を防止するためには,溶離液中に少量のEDTA―2Naを添加することが有効であった。また,微量の過酸化水素を検出するには,白金電極を持った電気化学検出器が必要であるが,分析試料のpHが強酸性や強アルカリ性の場合,電極表面の変化によりベースラインが不安定となることがあった。しかし,これは,溶離液にpH緩衝能を持たせることで安定化することができた。この電気化学検出器は,電気分解により物質を検出するためベースラインのドリフトが生じる。よって,過酸化水素を定量するためには,濃度機知の標準試料を分析してベースラインドリフトを補正する必要があった。さらに,他の化合物とピークが重なるような場合には,検出電位を変えて過酸化水素の検出選択性を向上させるか,有機溶媒などを溶離液に添加して溶出時間を変える,または修飾電極を用いて過酸化水素の検出選択性を向上させるなどの方法が有効であった。
 これらの方法を用いて,オゾン漂白モデル実験により生成した過酸化水素をHPLCで定量したところ,反応終了直後の過酸化水素生成量は,ヨウ素滴定法で過酸化水素として定量されていた酸化力の約40%に過ぎなかったことが明らかとなった。
(本文65ページ)


リサイクルにおけるパルプ物性変化
 ―ソーキングの影響―

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 八重澤貴志

 近年の環境問題から,リサイクル対応商品への需要は高まり,製品への古紙配合要求や,古紙配合率の増加が要求されている。それに伴い,古紙のリサイクルは推進され,環境に関する規制もさらに厳しいものになることが予想されるが,その一方で古紙パルプにも従来通りフレッシュパルプと同等の品質が要求されるものと思われる。
 数年前まで,リサイクルに適した木材選定や,リサイクルによる物性変化を調査するため,チップや古紙のリサイクル試験結果が盛んに報告されてきた。古紙パルプのリサイクルに関しては,離解した古紙の手抄シートを作り,乾燥させ,再離解して手抄シートを作製するといったリサイクルテストを行い,パルプ物性変化を調査した報告が主であった。
 しかし,実際の古紙処理設備は,古紙を有効利用するため,原料とする古紙と同等,もしくはそれ以上の品質の紙に再生することが多く,苛性ソーダなどアルカリ性薬品で脱インキ処理を行っている。更に,元のパルプより白色度の高いパルプが要求される場合には,アルカリ性下で,過酸化水素による漂白処理を行っている。
 アルカリ性薬品や過酸化水素によるパルプへの影響は,従来から感覚的に推測されているものの,国内での報告例は非常に少ない。そこで,アルカリ性薬品による脱インキ処理を加味し,より実際の古紙処理に即した古紙リサイクル試験を行い,パルプの物性変化を評価したので,その結果を報告する。
(本文78ページ)