2007年10月 紙パ技協誌
 
紙パ技協誌 2007年10月


第61巻 第10号 和文概要


GL&V/川之江造機の最新技術
 ―スクリーン,クリーナ,BTFシステム―

GL&V Pulp Group Inc. ブライアン ギャラガー

 川之江造機株式会社は従来,GL&Vカナダ社との技術提携のもとに,かねてよりBTFヘッドボックス等の製作販売を行なっていたが,2006年4月1日からGL&X・スウェーデン社,GL&V・USA社と販売提携を行い,旧セレコ社(ディスクフィルターは除く),旧インプコ社等の製品を扱うことになった。
 GL&V社はインプコ社,ベロイト社,セレコ社などを傘下にしており,これら多数の企業から構成された複合企業である。インプコ社,ベロイト社,セレコ社などはいずれも世界中の紙パルプ業界に於いてよくそのブランド名が知られており,日本国内に限ってはGL&V社という社名よりも個々のブランド名のほうが良く知られていると思われる。これらGL&V社を構成する企業の最も得意とする製品群がGL&V社の中で結集することにより,紙パルプ製造の全般に関わる広い範囲の製造設備機器を市場へ提供することが可能になった。
 GL&V社と川之江造機は協力して日本の紙パルプ業界へ,新しい製造装置を市場にご提供するとともに,これまでインプコ社,ベロイト社,セレコ社が今日まで日本国内で販売してきた全ての機器に対するアフターサービスをすることで,一層市場の発展に寄与していきたいと決意している。
 今回は,GL&V製品群の中から特に,ウォッシャ,ノッター,スクリーン,クリーナ,及びリファイナのご説明をさせていただく。
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カンバス汚れに起因する欠点防止対策
 ―新規カンバス汚れ防止装置の適用動向について―

株式会社メンテック 販売技術部 保坂 大気

 低レベル古紙の高配合,中性紙化や用水のクローズド化が進む中で,近年,カンバスの汚れが顕著となり,欠点の増加,ワインダーでの継手作業,汚れ損紙の増加により,生産性が著しく低下する問題を抱えるマシンが急増している。
 弊社では従来のカンバス汚れ防止技術を改良し,カンバスへの汚れを付着しにくくするとともに,付着した汚れをクリーナーなどで除去しやすくするカンバス汚れ防止システム「シャワーランナー」を開発した。本システムにより,カンバス表面上の汚れが大幅に減少し,欠点数の減少や印刷クレームの解消など,クリーナーのみでは解決できなかったトラブルを解決することができた。
 本報では,本システムの特徴と効果について実機での適用例をもとに紹介する。
(本文6ページ)


KP洗浄工程用消泡剤
 ―フォームレックスEシリーズ―

日華化学株式会社 研究開発本部 スペシャリティケミカル開発部 紙パルプグループ
小松 充,田中多加志,友田裕一

 近年,KP工程においてパルプへの高品質化,製造ラインの大型化,輸入材の比率増加など製造ラインの負荷が高まっている。そのため,泡によるトラブルが増大している。その対応として,KP用消泡剤への要求が高まっている。
 日華化学はシリコーンコンパウンドと自己乳化型変性シリコーンからなるシリコーン系消泡剤「フォームレックスEシリーズ」の開発を先駆けて行い上市した。この製品はその自己乳化型変性シリコーンを採用したことで,優れた消泡性・高い液中安定性・パルプろ水性の向上・パルプへの非残留等の特徴・効果を有している。今回,「フォームレックスEシリーズ」の特徴と使用例を報告する。
(本文12ページ)


アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤におけるアルキル鎖の化学構造が紙質と操業性に与える効果

星光PMC株式会社 研究開発本部 永尾和樹,安藤 仁,原 哲也

 アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤は,中性抄紙用サイズ剤として広く使用されている。AKDサイズ剤が様々な浸透液に対して優れたサイズ効果を発揮するため,コート紙,印刷筆記用紙,新聞用紙,ライナー,耐酸カップ原紙,写真用印画紙原紙など弱サイズ紙から強サイズ紙まで,その用途は多くの紙種に及んでいる。しかし,AKDサイズ剤の欠点として,紙質面では,滑り,操業面では,アプローチ配管,プレスパート,ドライヤーパートの汚れ,さらに抄造後の後工程での汚れを指摘されることがある。これらの問題を解決するには,先ずAKDサイズ剤の使用条件を最適化することが重要であるが,さらにAKDの化学構造を変える必要がある場合も多い。
 本報告ではアルキル鎖の異なる各種AKD,およびそれらの加水分解物であるジアルキルケトンの物性(融点,凝固点)を示した。また各種AKDをサイズ剤として使用したときの紙質(サイズ効果および摩擦係数)への影響について示し,AKDの融点が操業性に与える影響について述べた。さらに,ワックスAKDでサイジングされた紙では,AKDの結晶物の生成が認められることがあるが,この結晶物の生成に対するアルキル鎖構造の影響,およびカチオンポリマーによる結晶生成防止効果について示した。
(本文16ページ)


TAPIOプロファイルアナライザーの紹介
 ―PMA, TS―Profiler, Lab Profiler BXC―

野村商事株式会社 カスタマーサービス 川端 祥行

 紙製品の生産における品質のばらつき,変動をより少なく抑えることは世界の紙市場の激烈な競争を勝ち抜くための重要な管理項目の一つである。
 フィンランドのTapio Technologies社が提供する「TAPIOプロファイルアナライザー」は,CD方向,MD方向それぞれの変動だけでなく,CD,MDの双方に絡む変動までも発見し,品質変動の原因となる抄紙機の不具合部位の特定,制御パラメータの最適化への見直し等の品質変動問題を解決する有効な手段として既に世界の多くの製紙会社だけでなく世界の主要な製紙機械メーカにも導入されている。
 TAPIOプロファイルアナライザーでの測定方法が製紙産業におけるデファクトスタンダードとなって新設抄紙機やリビルド抄紙機の性能仕様を検証する標準測定方式として幅広く採用されている。
 TAPIOプロファイルアナライザーには,PMA(Paper Machine Analyzer),TS Profiler, Lab Profiler BCXのラインアップがある。PMAは最大10台のセンサーを搭載可能で,数キロメータに及ぶMD長尺サンプルを高分解能で測定できる最上位プロファイル測定システムである。TS Profilerは,4台までセンサーを搭載し,1km程度までのMD長尺サンプルの測定が可能。日常業務の敏速,簡便なCDプロファイル測定が行え,PMAと同じ高分解能でのプロファイル分析が行える中位機である。Lab Profiler BCXは,紙や板紙の単葉から100m程度
までのMDサンプルの4測定項目のプロファイルが簡便に測定できる簡易型オフラインの測定システムである。
 本稿では,各測定システムの概要,特徴,従来方法との相違点と優位点,解析方法,測定結果から判明した問題点,等を紹介する。
(本文24ページ)


オクトパスストックアプローチシステム

株式会社小林製作所 稲葉 正明,戸田 訓人

 小林製作所では,より高品質の紙,板紙を効率よく,低コスト生産を可能にするために,他方面的な研究開発に取り組んでいる。
 第一に,「サクセスフォーマ」や「ウルトラフォーマ」などに代表される自社独自開発にこだわりを持つ点,第二に提携企業が確立した技術を導入し,国内のユーザのニーズに合わせてアレンジして,より高い満足度を得ている点である
 今回,紹介する「オクトパスストックアプローチシステム」は,第二に該当している。
このオクトパスは,KADANT―AESとの提携品であり,北米を中心に100ユニット以上の納入実績がある。国内で昨年8月に第1号機を納入し,その後国内で4ユニット,中国で2ユニットが順調に稼動し,また2ユニットが製作中とユーザーから高い評価を受け普及し始めたのでここにオクトパスを紹介する。
(本文31ページ)


各種紙パルプ製造排水への嫌気性処理の適用について

アサヒビール株式会社 技術開発研究所 則武 繁,今林誠二
株式会社アサヒビールエンジニアリング 上地和男
王子製紙株式会社 春日井工場 香川仁志,田中 温,高橋 元
住友重機械エンバイロメント株式会社 小浜文夫,加藤明徳,島本敦史

 紙パルプ製造工程から排出される排水の処理法としては好気性処理法が一般的であり,嫌気処理方法の適用事例は少ない。
 今回,紙パルプ分野での嫌気性排水処理の最善な利用方法を見極めるため,現状は活性汚泥処理している各工程排水,すなわちDIP工程排水,晒工程排水,蒸解工程排水を原水とした現場実証テストを約1年間に渡り実施し,以下の結果を得た。
 DIP工程排水は一般的に嫌気処理は不適であると考えられてきたが,嫌気処理が十分可能であることがわかった。好気処理と比較して,ランニングコストの低減が十分図れるものとみられる。しかしながらガス発生量は少なく,後述の蒸解工程排水に比較するとその効果は小さくなる。
 晒工程排水は除去率,ガス化率が低く,嫌気処理に適していない。
 蒸解工程排水については針葉樹系排水の嫌気処理は難しいと従来言われてきたが,針葉樹系が半分を占める蒸解工程排水であっても馴養方法を工夫することで高負荷運転が可能となることがわかった。さらに,蒸解工程排水中,特にCODcr濃度の高いファールドレンについても,同様の馴養方法の工夫により高負荷運転が可能となることがわかった。
以上の結果,現在紙パルプ製造工程排水への嫌気性排水処理の適用事例は少ないが,馴養方法の工夫や他の排水処理方法との適切な組合わせなどにより今後その適用範囲は広がってゆくものと考えられる。
(本文36ページ)


最新ITによる“ものづくりナレッジ”の見える化
 ―テキストマイニングツール REXION Pro(レクシオンプロ)―

株式会社山武 アドバンスオートメーション カンパニー 木幡 真望

 本稿では,テキスト記録からものづくりに関わるナレッジを効率よく抽出して直感的に扱っていくことを狙って開発されたテキストマイニングソフトウェアの紹介,及び適用事例について報告する。
 本製品「レクシオンプロ」は人工知能の最新技術を採用しており,人間が未整理の大量の文書記録を仕分けする際にとる行動とほぼ同じ内容の処理を計算機で自動実行する。
 各種の文書記録を本製品で解析すると,情報空間全体が俯瞰できる情報マップを生成したり,各種の相関分析を効率的に実行することなどが可能である。
 例として設備保全業務での活用を考えてみると,長期間に蓄積された膨大なメンテナンス記録を主な項目に分類し,全体像を俯瞰できる情報マップという形に可視化することができる。更に,このマップ上で着目した特定の保全項目と実施時期や設備との相関を分析することも出来るので,「どんな保守作業が,何時頃発生しているか」,「ある設備にて,頻繁に同種の保守作業が発生している」といった現場の状況を客観的に把握する事が可能となる。
 他にも,このような特徴を活かして下記の用途が考えられる。
 1) 製品のクレーム記録から製品の品質アップのためのポイントを見つけ出す。
 2) 技術検討文書類を分類・マップ化し,既存ナレッジの活用を促進する。
 3) ヒヤリハット記録を危険要因で層別分類し,的確な災害予防につなげる。
 4) コールセンターのコンタクトログから新製品の企画ネタを得る。
(本文39ページ)


マット塗工紙のインキ擦れに関する検討

JSR株式会社 高分子研究所 渡辺 武,山中茂生,松田信弘

 マット塗工紙はその落ち着いた風合い・艶・光沢感などの独特の品質が一般に好まれ,現在も市場で需要が伸びている。しかしながら,その独特な品質を発現する為に多くの重質炭酸カルシウムが配合されており,グロス調塗工紙にはない“インキ擦れ(汚れ)”と言った宿命的な弱点を有している。
 この“インキ擦れ”はスマッジング(smudging)やスカッフィング(scuffing)などとも言い,印刷後の製本工程や搬送時などの際にインキが擦れて汚れる現象で,これはインキ層が重質炭酸カルシウムで構成された粗く角ばった塗工層表面により擦り取られることが原因と言われている。このトラブル回避には重質炭酸カルシウムの減配や形状・粒子径などの最適化,OPニスによる表面処理などの対策が実施されているが,塗工紙の品質バランスが不十分であったり,作業が煩雑であったりと未だ十分な解決に至っていないのが現状である。
 本研究では,このマット塗工紙の弱点である“インク擦れ”に関し,塗工紙の表面形状の面からアプローチを行い,“インキ擦れ”が発生する構造的要因に関して非接触式三次元表面粗さ計を用いて詳細に解析し,その結果をもとにトラブル回避の一つの手段を見出したので報告する。
(本文44ページ)


環境問題に対応するシール水削減と機器効率向上によるトータルコスト大幅削減の実現

日本ジョン・クレーン株式会社 MSエンジニアリング部 馬場 亮介

 製紙およびパルプ業界において消費される工業用水の使用量には多大な経費が費やされ,その理由一つを鑑みても,「水」は常に削減対象とされなければならない重要課題である。また世界においては,「水」は貴重なる環境資源と位置付けられ,環境保全に関連する工場用水排出規制や環境汚染規制の強化も進み,業界全体への規制がより一層厳しくなることが予想される。ここ日本においても,工場の設備や保全,そして経営者を含むあらゆる工場関係者にとって,工場の生産能力を低下させることなく,工業用水の削減により,いかに工場全体のトータルコストの削減に貢献できるかが問われている。本報では製紙パルプ用メカニカルシール製造メーカーであるJohn Crane Safematic Oy(フィンランド)の製紙およびパルプ業界での長年にわたる経験に培われた研究成果,および近年の卓越した技術革新による実例を報告し,業界全体の環境保全と生産コストの削減に役立てていただくことを目的とする。
(本文50ページ)


一般産業界における音に関して PartU
 ―トラブルフリーオペレーションの一環として―

日本エスケイエフ株式会社 コンディションモニタリングマーケッティング 山崎 安彦

 前回の「一般産業界における音に関して」での説明で音の発生と大まかな事例を提示した。今回はそのパート2として深溝玉軸受を中心としてその回転のメカニズムと障害例などを説明したいと考える。ベアリングの損傷はその初期状態に検知してすぐに出来る対応策と次回のオーバーホールにすべき対応策を考える必要がある。それを実施することで機械のエネルギーロスの低減と不必要な環境悪化の原因を作る音の低減が出来る。
(本文56ページ)


第74回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会 木材科学委員会

 第74回紙パルプ研究発表会は,2007年6月12日(火)〜13日(水)の2日間,東京都江戸川区「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計41件で,口頭発表が29件,ポスター発表が12件であった。参加者は263名であった。発表内容の概要をまとめた。
(本文61ページ)


2007TAPPI Papermakers Conferences参加報告

日本製紙株式会社 研究開発本部 技術研究所 柳内 晃一

 2007年3月12日から15日まで,米国マイアミ州ジャクソンビル市のHyatt Regency Jacksonville Riverfrontにおいて開催された,TAPPI主催のPapermakers Conferenceに参加する機会を得た。本年は,初の試みとしてPIMA(Paper Industry management Association)主催のInternational Leadership Conferenceも同時に開催され,両者を合わせた参加登録人数は516人にのぼった。Papermakers Conferenceでは3つのセクションに分かれて73件の発表があり,そのうち3件はPIMAとのジョイントセッションであった。一方,International Leadership Conferenceでは3つのセクションに分かれて28件の発表があった。本報では,学会の概要や興味深く感じた発表について報告する。
(本文78ページ)


PulPaper2007(フィンランド紙パルプ技術協会主催)参加報告

王子製紙株式会社 中嶋慶八郎,千葉  基,内田 洋介
日本製紙株式会社 大篭 幸治
紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 2007年6月にフィンランドのヘルシンキで,PulPaper2007Conference & ExhibitionがPI(フィンランド紙パルプ技術協会)の主催で開催された。8つの分野で48件の講演が行われた。PIとフィンランド紙パ産業の技術先進性を反映して,世界各地から約500名の参加者があった。特筆は併設される展示会の巨大さで,10,000m2以上という広さに500社の展示が行われた。また,大会の前後で,フィンランドとスェーデンの紙パルプ研究機関,製紙工場,森林伐採地,苗畑を訪問したのであわせて報告する。
(本文83ページ)


マイクロバブル処理技術の製紙白水浄化への応用

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 西条 良彦,岩崎  誠

 マイクロバブルとは数〜数10ミクロンの空気泡のことで,これを液中に吹き込むとそれがやがて消える瞬間に圧壊と呼ばれる高温度(数千℃),高圧(数千気圧)の領域を形成して,液中の微生物や化学物質を分解できるといわれている。 本報告では先ず,50ミクロン以下の泡を最も多く発生させる最適な条件を検討し,その結果得られた最小のものは平均泡径44μmであった。次に懸濁物質の浮上分離による排水浄化や液中の微生物や化学物質の分解による排水浄化に応用できるか否かを調べるために,抄紙クリアー白水の浮上による浄化効果を調べた。その結果,SS(mg/L)は約60%減少するが,COD減についてはSSの浮上除去に伴う効果のみであり,通常言われるようなマイクロバブルの圧壊による有機物の分解の効果はほとんど見られなかった。空気のかわりに濃度125g/m3のオゾンを用いると,SSをろ過した後でもCODは原水に比べ22%減少した。また,オゾンを使用した系で,マイクロバブル処理と通常バブル処理とを比較すると,COD減少の効果,殺菌効果ともマイクロバブル処理の方が優れていた。オゾンの吸収率がマイクロバブル処理の方が高いことが一因と考えられる。
(本文97ページ)