2007年5月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2007年5月


第61巻 第5号 和文概要


既設ボイラーのガス焚き改造による省エネ

北越製紙株式会社 長岡工場 清水 和明

 北越製紙樺キ岡工場では,環境対策(CO2排出原単位の削減・環境負荷の低減等)・省エネルギーの推進等に着目し,工場の整備を進めている。その様な中,ここ数年の原油高騰により,環境対策に加え,さらなる省エネルギーとエネルギーコスト改善が急務となった。これらを解決する諸対策の中から,近年継続的に検討を進めていたボイラー用燃料をC重油から天然ガスへ転換することが最も有効であるとの結論から,ボイラー用燃料の転換設備改造を実施することにした。昨年6月に第一期工事,11月二期工事を実施し既設ボイラーの燃料転換工事が全て完了したので,改造工事の要点と改造後の省エネ・CO2排出原単位の削減についての効果を中心に紹介する。
(本文3ページ)


晶析技術による黒液の高濃縮

アンドリッツオイ 蒸発技術部 ヘッキ ヤッコラ
アンドリッツ株式会社 技術営業部 畑野 哲雄

 最近の世界的傾向として,特に北欧では回収ボイラーへ供給する燃焼黒液の濃度を高め,その発熱量を高くしてボイラーでの蒸気発生量を増大し,石化燃料の減少を達成している。我国における黒液の燃焼濃度は72―73%が主流であるが,これを75―80%に上昇させ省エネルギを図っている。中には85%で運転している工場も存在する。
 これら燃焼黒液濃度は黒液エバポレータで達成されるが,80%以上の高濃度を可能にしたのは晶析技術の開発による。Andritz社は黒液濃縮には多大の実績を有するが,15年前にこの技術開発に着手し,その技術を完成させ,既に20プラントを超える晶析技術を適用した高濃度エバポレータを納入している。
 晶析技術の概要は,回収ボイラーの電気集塵機で捕集されたESP灰を黒液に混合して濃縮するもので,濃度上昇と共に析出して来るナトリウム塩がESP灰の粒子に付着して成長するものである。つまり,ESP灰は種晶として機能する。
 又,黒液は濃度上昇と共にその粘性係数が高くなるが,高温処理による粘度低下によって高濃度濃縮を可能にする。
(本文9ページ)


パルプ系排水からの廃熱回収による省蒸気

三菱製紙株式会社 八戸工場 原質部動力課 千葉  晋

 三菱製紙株ェ戸工場では,当社のフェニックスプランに掲げるコストダウンテーマに則り省エネルギー推進を緊急課題として進めている。運用体制として,工場エネルギー活用委員会及びISO14001幹事会の会議委員を共通化して取組を連係させることにより,リアルタイムに省エネ効果を把握しながらエネルギー原単位の向上に取り組んでいる。
 今回は,平成18年11月に運転開始した排水廃熱回収設備の省エネ効果について紹介する。冬期の水温低下によって抄紙工程における蒸気使用量の増加を抑制することを目的として,従来パルプ系排水の冷却塔から大気放出していた廃熱を回収利用することによって,抄紙工程の清水温度をアップさせた。これにより,工程蒸気原単位が大幅に向上した。
(本文13ページ)


原質課における省エネ事例

中越パルプ工業株式会社 川内工場 工務部原質課 二ノ宮秀盛

 近年,紙パルプ業界は原木や重油など原燃料費の高騰により,工場でのコスト削減が急務になっている。原質課ではエネルギーの使用料が多く,エネルギーコストを少しでも削減することで収益の改善につながる。
 今回は,二酸化塩素水製造設備(R―U)の冷水温度の見直しによる蒸気削減例。また晒設備での温水及び白水の使用方法の最適化を行い洗浄効率アップさらに残薬品の持ち込み減少による漂白性の向上がみられた。漂白性が向上したことにより原料ラインの温度を下げて操業することが可能になった。そこで温度設定を下げることにより蒸気削減を達成できたので報告する。
(本文17ページ)


蒸気タービン新型シールとクリアランス制御技術について

三菱重工業株式会社 原動機事業本部サービスセンター 大崎 展弘

 近年,更に高まる省エネルギー化のニーズに応えるため,当社では,蒸気タービンの主要な効率低下要因である蒸気リークに着目し,リーク損失を低減させる新技術を開発し,実機に適用してきている。
 新型シール技術であるリーフシールは従来のラビリンスシールとは異なる新しい型式のシールでありシール性の向上,ロータとの接触による発熱の回避等優れた機能を持っている。ACC(アクティブクリアランスコントロール)シールはタービン負荷運転中と起動停止時のクリアランスを変化させて,負荷運転中のシール性能向上と起動停止時のロータとの接触防止を実現するシールである。冷却セルはタービン停止時の車室上下温度差による猫反りを防止し,ロータとシールフィンの接触を防止する装置である。
 これらの新技術は何れも当社の実証発電設備で実機性能及び信頼性を検証した後に実機商用機に適用され,全てのユニットで問題なく運転されている。
 本稿ではこれら新型シールとクリアランス制御技術について,その機能,効果を紹介する。
(本文20ページ)


キルンの重油使用量削減事例

王子エンジニアリング株式会社 釧路事業部 設計G 小西  綾

 王子製紙葛路工場は,『王子製紙環境憲章』の理念に基づき,リサイクル資源を積極的に活用し,環境負荷の小さい製品設計,製造方法に取り組んでおり,洋紙3台,板紙1台の抄紙機で,新聞用紙,中・下級紙,微塗工紙および段ボール原紙を約70万t/年生産している。
 当工場は,KP・RGP・DIP・OCCのパルププラントを所有し,KP製造工程で発生する黒液は,薬液および熱回収が可能であり,工場のエネルギーコスト低減に非常に大きな役割を果している。しかしながら,近年の製品設計,製品構成変化および製品コストダウンによって,KP生産量は次第に減少し,薬液回収に必要な石灰を製造するキルンの操業効率が徐々に悪化した。
 本報では,低生産レートで操業するキルン設備に対して設備改善を行い,重油使用量削減を図った事例について報告する。
(本文28ページ)


4号ボイラー蒸発量アップによる重油の削減

日本大昭和板紙東北株式会社 工務部動力課 鎌田 辰也

 当社の環境方針である省資源・省エネルギーの推進及び廃棄物の削減とその有効利用を実行するためペーパースラッジ(PS)と廃タイヤを混合して燃料し補助燃料(化石燃料)を使用せずに,ボイラーで安定的に高温高圧の蒸気を発生させて14,000KWの発電を行う焼却炉発電ボイラーの建設を計画し平成15年10月から運転を開始し,化石燃料の削減を推進してきたが更なる削減を目指し,今までのカットタイヤ,PSに加えバイオマス燃料(木屑)を補助燃料として燃焼させることで,蒸発量を65T/Hから73T/Hまでアップし平成17年12月より運用を開始した。4号ボイラーは発電専用であったため工場プロセスラインに蒸気を送気するラインがなかった。プロセス送気ラインを新設し蒸発量アップ分を送気することにより2号ボイラーの重油を削減した。その工事概要と操業経験について紹介する。
(本文34ページ)


三島工場の廃熱回収事例

大王製紙株式会社 三島工場 エネルギー企画部 藤田  卓

 冬季は水温の低下に伴い,温水製造及び白水加温用等蒸気使用量が増加し,蒸気原単位は夏季に比べ悪化していた。
 一方バキュームエバポレーター等で発生する温水の内,一部は熱回収していたが 大半は排水処理設備に送られ熱損失となっていた。
 また,発電タービン復水器で熱交換した温水はクーリングタワーで冷却し,大きな熱損失となっていた。
 工場内で発生するこれら廃熱温水の熱回収に取組み,プロセスに供給する工業用水温度を上げ年間を通じて一定に維持する事により,冬季の水温低下による蒸気原単位悪化の防止対策に取組んだ結果を紹介する。
 工場で発生する温水を工業用水池に回収し水温を上げると共に,各プロセスに送る工業用水に,バキュームエバポレーター及び発電タービン復水器の廃熱温水を吹込み,水温を上げる等の廃熱回収対策を行い加温用蒸気の削減を行った。
(本文38ページ)


CCR排油口及び加圧シュー変更による駆動動力削減

王子製紙株式会社 富岡工場 施設部設備管理課 福島 勝幸

 抄紙機(以下:マシン)プレスパートにおいて巾方向に均一な脱水を行う為に重要な機械として,プレスコントロールドクラウンロール(以下:CCR)がある。この機械は,三菱重工業梶\ベロイト社の共同開発により30年以上前から使用され現在もかわらず稼動している。しかし,30年前とでは増速改造工事によりマシンスピードは当初設計仕様の1.5倍になっており,それによる不具合も多く発生しているのが実状である。そこで,設備保全担当者が抱える不具合事例とその解決策並びに本改造による省エネ効果を弊社富岡工場9号マシン2PCCRの改造事例にて紹介する。
(本文42ページ)


表面サイズ剤のイオン性とその機能

ハリマ化成株式会社 製紙用薬品事業部 藤原 崇弘

 近年,環境意識の高まりから,紙,板紙に関わらず抄紙系は中性化,高温化,高電気伝導度化へ変化してきており,従来から使用されている内添のサイズ剤の効果が発揮し難くなってきている。このような状況において,外添薬品である表面サイズ剤に対する重要度はますます高まりつつある。
 表面サイズ剤はイオン性,外観,成分などで分類されるが,最も広く使用されている水溶性合成高分子系の表面サイズ剤に焦点を当て,そのイオン性と機能についてBKPを用い,原紙条件を変えて種々の検討を行った。
 ステキヒトサイズ度やESTの結果から,アニオン性表面サイズ剤はAlumの存在によってサイズ発現に表面から内部へと寄与していくが,炭酸カルシウムが存在すると紙表面からの水の浸透を阻止できず,サイズ発現ができなくなった。一方,カチオン性表面サイズ剤は紙中のAlumと炭酸カルシウムの比率によって挙動が変化するなど,競合的な作用が存在する可能性を見出した。紙中に存在するAlum,炭酸カルシウムともに,塗工される表面サイズのイオン性によって及ぼす作用が異なると考えられる。
 これらの結果から,イオン性の異なる表面サイズ剤のサイズ発現モデルを示し,それを別の観点から裏付けるための新規な分析手法を用いた検証も行った。
(本文46ページ)


要因解析による植林コストの推定

財団法人 地球環境産業技術研究機構 研究企画グループ 
矢口時也,佐藤孝行,高木正人,岡村繁寛

 地球温暖化ガスの削減のための大規模植林によるCO2固定化コストを試算するため,1つの産業植林モデルおよび公表されている4つの海外植林プロジェクトの植林コストについて解析した。
 その結果,累計の総植林コストを,各年の植林残存面積の累計で除して得られる単位面積当たりの年間の総植林累計コスト単価(US$/ha/yr)は,植林年数20―30年では,植林年数nと2000年の国民一人当たりのGDP(GDP/cap)の関数式として,データ数N=44,R2=0.88で,
 総植林累計コスト単価≒130+0.0341×n−0.445×GDP/cap により概略が求められることがわかった。
 また,植林年数3―30年については,データ数N=157,R2=0.90で,植林累計コスト単価は,植林年数nと2000年のGDP/capとの関数式として,総植林累計コスト単価≒800×n−0.566+0.141×n−0.879×GDP/cap
により,概略が求められることがわかった。
(本文52ページ)


第20回ISO/TC6国際会議報告

東京農工大学 岡山 隆之
王子製紙株式会社 八重澤貴志
日本製紙株式会社 後藤 至誠
紙パルプ技術協会 加納  直

 ISO/TC6国際会議が2006年11月13日〜17日にアトランタ(米国)で開催された。この会議は,約18か月毎に開催される。
 日本は,紙パルプ試験規格委員会(兼ISO/TC6国内委員会)の岡山委員長を代表とし,合計4名が参加した。出席した各会議の概要をまとめた。
(本文65ページ)


コート紙内部構造の解析手法の開発

日本製紙株式会社 技術研究所 近藤 裕介
ジョージア工科大学 サイラス エイダン

 塗工紙において,原紙層の物性(地合,空隙,灰分,繊維配向等)は印刷品質や白紙品質に影響するため重要である。例えば,塗工紙のモットリングは塗工方式(ブレード,ゲートロール等)や塗料物性(粘度,保水性等)などの塗工因子だけでなく,塗工原紙の物性(地合ムラ,灰分ムラ)によっても影響を受ける。また,塗工紙の表裏差は原紙層の表裏差が原因であることも多く,原紙物性の厚さ方向分布(以下,Z方向分布と記述)の解析が重要となる。この様に,塗工紙の内部の原紙層の解析をすることは重要であり,本研究ではX線マイクロトモグラフィーを用いて製品の塗工紙から原紙層のZ方向分布を解析する画像解析手法を確立した。また,近年はオンラインコーターが増加しており塗工原紙の入手および解析が困難になっていることからも製品塗工紙からの分析が重要となっている。
 X線マイクロトモグラフィーは,主として医療分野および電子機器分野で利用されている。この機器の最大の利点は物体の内部構造を3次元で,前処理の必要がなく迅速且つ非破壊に解析できることである。欠点としては用紙解析に広く使用されている電子顕微鏡や共焦点型顕微鏡と比較して解像度が低いことが挙げられる。しかし,ここ数年で機器の解像度は飛躍的に向上しており,今後はさらに分析機器としての重要性が増加すると考えられる。
 本文では,本研究で開発した画像解析手法の概要,および,本手法を用いて2種類の製品塗工紙をZ方向に解析した結果を詳しく記述した。
(本文83ページ)