2007年4月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2007年4月


第61巻 第4号 和文概要


製紙産業技術の発展とその特徴
―新入社員歓迎号に寄せて―

製紙産業技術遺産保存・発信 飯田 清昭

 日本の製紙産業は,原料・エネルギーで不利であるにもかかわらず,世界有数の製紙国であり続けている。 これは,日本製紙産業に技術力があることの証明といえる。 技術力にはいろいろの分野があり,単純な定義が困難である。そこで技術力を,経営・投資技術,原料対策技術,エネルギー対応技術,生産技術,環境対応技術,研究開発力の6つの分野に分け,それぞれで検証してみる。
 その結果,日本は,それぞれの分野で,次々と変わる状況に対応しながら発展してきたことがわかる。その根底にあるのは,柔軟な発想と新しい状況に対応しようとする姿勢であったといえる。これは,日本の製紙産業として誇るに値することで,その結果が産業の衰退をまねかず,国際競争力を維持している。
 今後も新しい変化に対し,柔軟にかつ挑戦的に対応できる技術力を持ち続けることを期待する。
(本文3ページ)


石巻工場 N5M/C改造効果及び操業経験

日本製紙株式会社 石巻工場 抄造二部 永田 敬貴

 石巻工場N5M/Cは1988年にオンマシンブレードコーターとして稼動した主として薄物中質微塗工紙を抄造している基幹マシンのひとつである。
 2005年9月に品質改善,増速・増産,省力化を目的とし,「ワイヤーパートDユニット増設」,「3Pシュープレス化」,「オンマシンホットソフトニップカレンダー増設」,「リールセンターワインド化」,「リリーラ,スーパーカレンダーの廃止」,「ワインダーコア自動供給化」等,大幅な改造を実施し,より競争力のあるオンマシンコーター・オンマシンカレンダーマシンへと生まれ変わった。今回はN5M/Cの改造設備概要・効果及び操業経験について紹介する。
(本文8ページ)


ガスエンジンの操業経験
―エネルギープラントの転換によるCO2の削減―

三菱製紙株式会社 高砂工場 製造部環境エネルギー課 瀬尾 和良

 近年は,産業界はもちろん各家庭・個人の行動まで環境とエネルギーを抜きに語れない時代となった。
 我々,三菱製紙株式会社は,環境憲章の行動指針に「CO2総排出量の削減」を掲げて取組みを行っている。その施策として2005年,高砂工場に高効率ガスエンジン発電機によるコ・ジェネレーションシステムの導入とボイラー燃料のガス化転換をESCO事業の形態により実施した。本施策の完成により高砂工場のCO2排出量は,予定通り27%の削減ができた。本稿では,このガスエンジン導入を含むエネルギープラントの転換によるCO2削減について紹介する。
(本文15ページ)


光触媒紙の開発

日本製紙株式会社 技術研究所 甲斐 秀彦

 およそ400nm以下の短波長の光を酸化チタンに照射すると,酸化チタンは光触媒として働いて有機物を強力に酸化反応させる。これにより,有機物は分解反応の最終段階であるCO2や水などに分解される。近年,この効果を利用した脱臭,防汚,抗菌といった機能を持つ製品が様々な分野で開発されている。紙の分野においても光触媒酸化チタンを含んだ紙が実用化されており,空気清浄効果を持つ壁紙や襖紙,脱臭用の紙袋,フィルタとしての適用例がある。しかし,これまで紙に含有する方法は光触媒酸化チタンを内添する方法が主であったが,光触媒機能の高い酸化チタンは表面積を多く得られるように超微粒子であるため,内添では効率良く紙に定着させることが困難であった。また,光の当たる表面に効率よく配置させることが望ましいと考えられることから,当社ではコーティング法による検討を行ってきた。
 光触媒機能によりバインダーなどが分解されることによるチョーキング現象を防止することにより,ナノサイズの酸化チタンを利用した空気清浄機能を持つ「光触媒用紙」を開発した。この光触媒紙にはチョーキング防止だけでなく,印刷適性の付与,などの技術を応用した。
(本文19ページ)


原材料のグリーン調達への取り組みについて

王子製紙株式会社 環境経営部 松林 克明

 王子製紙では,1994年以来独自書式の「新規使用原材料安全シート」により,原材料として使用する化学物質を法規制,有害性に基づいて工場試作前に審査する化学物質管理制度を運用している。内容を拡充しつつグループ会社への浸透に努め,今日では王子製紙グループのグリーン調達の根底をなすに至っている。
 近年,化学物質の性状および取扱いに関する情報提供については,化学物質等安全データシート(以下,MSDS)の交付が定着している。しかし,現行のMSDSの記載情報の質・量では,リスク評価を行うには不十分なものが多いのは否めない。また,化学物質管理に欠かせない情報については,輸出産業の顧客が海外法令についてもグリーン調達の中に取り入れ始めたことにより,MSDSの記載事項の範疇を超えたものになってきている。
 そのため,「新規使用原材料安全シート」を用いた化学物質管理制度は,顧客のグリーン調達に対応するためにもその重要性が飛躍的に増大している。王子製紙グループでは,2005年度から「新規使用原材料安全シート」を補完し化学物質管理制度をより確実にするため,現在使用している原材料について,定期的に法規制,有害性に係る情報を確認するための調査制度を製造・輸入事業者の協力のもと開始した。
 本稿においては,王子製紙グループのグリーン調達の根底をなす化学物質管理制度を,化学物質管理政策の動向を踏まえながら紹介する。
(本文24ページ)


カラーレーザープリンター対応耐水紙『オーパーMDP』の開発
 ―流量計測に着目した技術イノベーション―

日本製紙株式会社 商品研究所 福永 正明

 耐水紙『オーパー』は基材に紙を使用し,紙の両面にラミネート樹脂層を設けた構造である。この構造により,『オーパー』は良好な耐水性と紙本来の特性「しなやかさ」,「印刷適性」,「加工適性」を併せ持った従来にない耐水紙であり,商業印刷分野,加工用紙分野を中心に広く使用されている。現在,商業印刷分野では,ハードの急激な進歩もありオンデマンド印刷化が進行している。近年成長が著しい電子写真方式のオンデマンド印刷に対応するため,カラーレーザービームプリンター(カラーLBP)印刷適性を付与した新商品『オーパーMDP』を開発した。
 この『オーパーMDP』は紙基材の層間強度を向上し,ラミネート樹脂に高融点樹脂を使用することで耐熱性を付与,また,樹脂表面に塗工層を設け,塗工層にトナー定着性を考慮した資材を使用し更に帯電防止剤を配合することによりカラーLBP適性を与えている。
 更にユーザーの要望に応え,高光沢銘柄のG22MDP,ビジネスフォーム印刷対応銘柄のBF―MDPを開発し,ラインナップに加えた。G22MDPでは高級感のある高平滑,高光沢な表面性形成のため,樹脂構成および紙基材の見直しを行った。また,BF―MDPでは塗工層の処方を見直すことでビジネスフォーム印刷適性を付与している。
(本文31ページ)


RPFボイラーの操業実績

王子板紙株式会社 大分工場 工務部動力課 小池 美暢

 当社大分工場は,段ボール原紙と白板紙を中心に生産する工場で,蒸気については自家用ボイラー,電力については自家用タービン発電機及び電力会社からの購入によってまかなってきた。王子製紙グループは地球温暖化対策の柱として,化石エネルギーから廃棄物エネルギーへの転換を掲げ,近年注目されているRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)についても活用に力を入れている。RPFは再生が難しい古紙と廃プラスチックから作られる固形燃料で,資源の有効利用にあわせ,石炭や石油等の化石燃料に比べ二酸化炭素の発生量が少ないため,地球温暖化防止に貢献できる燃料である。
 今回,当工場にて2004年5月に営業運転を開始したRPFを主燃料とする最新鋭の循環流動層RPFボイラー(第2号ボイラー)及び発電設備について,概要とその特徴及び操業実績について報告する。
(本文35ページ)


最新のフォーミング技術

メッツォペーパー社 ティモ・バルカマ
メッツォSHI株式会社* エンジニアリング本部 赤澤 貴志

 製紙設備の能力は,大部分が選択する技術のコンセプトによって決まる。装置の主なコンポーネントは,数年間をかけて段階的に開発されるが,これらの各段階は順を追って開発されるものではない。その結果,製紙設備の重要な各セクションの能力が異なる場合があり,他のセクションが新しいセクションの能力をサポートしていない場合には,それぞれの新しいセクションの能力を部分的にしか利用することができない。すべての主要セクションが最適な速度で運転できたときに,製造ライン全体の生産性および操業性の大きな向上が期待できる。
 本報では抄紙機の能力向上に対応するために開発された最新のフォーミング技術を紹介する。
 Metso Paperが開発した新しいVacuShoeおよびBelShoeテクノロジーは,ハイブリッドフォーマーの生産性と収益性を改善し,既存のBelBaieフォーマーをギャップテクノロジーのレベルで競争できるようにする。この新しい技術はコスト効率が高く,現在利用できる他のあらゆる技術ソリューションに匹敵するものである。これまでの限界と現在の生産ラインで活用されていない能力を考えると,ValFormerとBelBaie Vの技術は生産ライン全体の寿命を長くする新しいチャンスの扉を開くものである。
 *現社名:メッツォペーパージャパン株式会社
(本文40ページ)


SAQ®によるパルプ収率変化の推定

川崎化成工業株式会社 技術研究所 田中 潤治

 クラフトパルプ工場の実操業において,SAQ添加によるパルプ収率の変化を簡便に推定する方法として,黒液中の有機固形分と無機固形分濃度を分析する方法を検討した。
 第1に,ラボ蒸解実験を行って得たパルプと黒液を用いて,SAQ添加によるパルプ収率の変化について比較を行った。その結果,黒液分析によって推定された結果と,パルプの重量実測値による結果はほぼ一致し,本法の有効性が認められた。
 第2に,複数のクラフトパルプ工場において,SAQ添加によるパルプ収率向上確認テストを行った。蒸解釜から得た黒液を分析し,すべての工場でSAQ添加によるパルプ収率の向上が認められた。
(本文45ページ)


嵩高紙の密度/強度のバランスに関する内添薬品の影響

荒川化学工業株式会社 製紙薬品事業部 技術開発グループ 瀧下 雅之      
                研究開発部 大塚 洋平,新井大二郎

 嵩高紙は上質書籍用紙,印刷用紙などに使用される。最近は国内の嵩高紙の品種が多様化し,これに伴い嵩高紙の市場は拡大傾向にある。嵩高紙を「紙層構造の空隙部分を増加させることにより密度低下させたもの」と考えるなら,嵩高紙の一般紙質は通常紙とは異なってくるであろう。またそれら嵩高紙に使用される嵩高剤の種類によっても紙質は変化するものと考えられ,併用する薬品種が異なってくれば更に状況は複雑化する。嵩高紙に要求される性能は低密度,軽量,高平滑性,柔軟性,手触り感,紙腰,不透明度,光沢,印刷適性など数多くあるが,嵩高紙品種が増加する中ではこの製造に関するノウハウの蓄積も進んでいることと推察される。
 嵩高紙に使用される嵩高剤は有機系と無機系の2つに大別される。嵩高剤は紙の密度を低下させる以外に,その他の紙質へも影響を及ぼす。例えば,紙の強度を弱くするなどの,好ましくない効果を示すことも考えられる。しかし,嵩高剤が一般紙質に与える影響を,嵩高剤の種類別に検討した例は少なく,他の薬品との併用に関する紙質への効果阻害や相乗効果等の知見についても報告例は少ない。
 本報では,有機系及び無機系嵩高剤が密度,紙力,平滑性,印刷適性等の紙質への影響を検討した。さらに,紙力剤を併用した場合の紙質への影響も検討した。
(本文50ページ)


ペーパー・テクノロジー・センター(原質部門)の紹介
 ―原質研究部門の紹介―

株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 原質機械技術部
國分 孝之

 製紙工場において機器を設備・更新する際,実機を使用しての事前トライアルが出来ればより綿密な事前検討が出来ることは言うまでもない。弊社及びドイツVoith社は顧客の皆様のご要望に応えるために,カスタマートライアルを実施出来る体制を整えている。
 そこで今回はドイツ・Voith社Ravensburg工場及びHeidenheim工場,そして弊社VIPT製紙研究所のPaper Technology Center(PTC)原質テスト設備を紹介する。
(本文56ページ)


新規薬剤を用いた耐水紙の構造解析

日本ゼオン株式会社 総合開発センター エラストマーC5研究所  
斉藤陽子,劉  祥,任田英樹,葛西潤二

 我々が開発している新規薬剤PVAグラフト型ラテックスは,ポリビニルアルコール(PVA)を保護コロイドとして合成し,粒子にPVAを化学結合させたラテックスである。このPVAグラフト型ラテックスを基材に塗布した場合,優れた耐水性,耐ブロッキング性を発現することが確認できた。塗布面をAFM(原子間力顕微鏡)を用いて観察したところ,PVAグラフト型ラテックスを塗布した塗布面は水との接触の前後で塗布構造が変化せずラテックス粒子と思われる形状が観察されたのに対し,一般的な乳化剤型ラテックスを塗布した塗布面は水接触後に塗膜が平坦に変形した状態が観察された。本レポートでは,これらの結果について報告する。
(本文65ページ)


第39回ABTCP(ブラジル紙パルプ技術協会)年次大会参加報告

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 2006年10月にブラジルのサンパウロでABTCPの第39回年次大会がTAPPIとの共催で開催された。世界各地域の協会代表による特別セッションでの8件の発表と環境,パルプ,計装,紙,回収,エンジニアリングの6セッションで68件の発表がおこなわれた。ABTCPの積極的な海外活動とブラジル紙パ産業の成長を反映して,結構,海外からの発表も多かった。特筆は,併設される展示会の巨大さで,10,000m2という広さに,250社の展示が行われた。会議後,ブラジルのセニブラ社やチリの日本製紙と三菱製紙のそれぞれのユーカリ植林地を見学し,南米でのユーカリの高い成長性に感心させられた。
(本文70ページ)


原紙の表面性が塗工紙の印刷面感に与える影響
 ―高温プレカレンダの適用検討―

日本製紙株式会社 技術研究所 紺屋本 博,大篭 幸治

 塗工紙の印刷面感不良(インキ着肉ムラ等)は,原紙の地合ムラや塗工量の不均一性に起因すると考えられ,特に低密度で塗工量が少ない中質微塗工紙ではしばしば面感不良が問題となっている。面感不良を改善するためには均質な塗工層を形成する必要があり,原紙配合および表面性,塗料物性,塗工方式等,様々な視点から研究が進められている。
 原紙へのプレカレンダ処理はその有効な手法の一つと考えられ,塗料による原紙被覆性を良好にし,均質な塗工層を形成する目的で,プレカレンダの導入は一般的に定着しつつある。本稿では,プレカレンダ処理(ホットソフトニップカレンダで処理温度を変更し処理)し作製した異なる表面性の中質原紙を用いてパイロット塗工を行い,塗工原紙の表面性が印刷面感に与える影響について調査を行った。
 プレカレンダ未処理原紙および原紙平滑性が同等となるよう低温(60℃)および高温(130℃)でプレカレンダ処理した原紙に塗工したもので比較すると,低温処理品は未プレカレンダ品と同等の印刷面感であったのに対し,高温処理品は相対的に良好であった。高温で処理した場合,低温処理時に比べ表層がより緻密な構造となることで塗料の浸透が抑制されたためと考えられ,均質な塗工層形成,印刷面感の改善には原紙の平滑性だけでなく,原紙表面の可塑性や塗料浸透性を抑制することが重要であることを確認した。
(本文80ページ)