2007年2月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2007年2月


第61巻 第2号 和文概要


印刷技術動向と塗工紙/輸入紙

大日本印刷株式会社 技術本部 生原 道夫

 印刷業界においては,20世紀末までに製版〜刷版工程のデジタル化が達成され,現在は普及期に入っている。近年では,「効率化/ロス削減」と「標準化」に関する開発に重点がおかれてきており,標準化については,工程の標準化と品質の標準化に関する検討が進められ,印刷物を従来の感覚に頼った生産から,数値管理に基づく「工業製品」として生産するための取組みが行われている。特に,品質の標準化を進めるにあたっては,印刷プロセスと用紙物性の相関を明らかにしていくことが,ますます重要になってきている。
 本稿では,印刷技術の最新動向として,オフセット印刷分野を中心に,印刷機と印刷プロセスのトレンドについて概要を紹介するとともに,「効率化/ロス削減」と「標準化」を進めていく上で課題となっているオフセット輪転機におけるロングラン適性,および用紙の色再現範囲に関する検討を中心に,用紙(塗工紙)に関する技術課題,ニーズについて紹介する。
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最近の板紙塗工設備

株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 塗工・仕上機械技術部 石塚 克己

 板紙塗工は,従来は,低速運転,狭幅抄紙機で行われていた。最近になり,高速運転,広幅抄紙機での生産が行われるようになってきた。そのため,従来はあまり問題とされていなかった,幅方向の均一塗工,幅方向の均一乾燥および高能力乾燥が,洋紙と同様にクローズアップされてきている。
 塗工は,カーテン塗工(DFコータ),および,洋紙,板紙に,かなりの実績があるファウンテンブレード/ロッドコーターをさらに発展させ,カーテン塗工技術を応用した,サイドフローコーター(SFコータ)が幅方向均一塗工に対応する。
乾燥は,高能力乾燥のために,風量アップ,風速アップを行っても,搬送性を犠牲にすることなく,また幅方向均一乾燥を改善した,エアードライヤ(スタビライザープレート付きHP―SCAFドライヤ)が対応する。
 カーテンコータ(DFコータ)は,ヘッドが汚れることがなく,また消耗品がないため,清掃,消耗品の交換で操業を中断することがない。このため,操業効率が上がることとなる。コート紙では,実機での塗工テストから,ブレードコータ塗工紙製品と同等の品質が得られることを既に確認した。また,連続操業性も問題がないことを確認している。
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板紙の塗工に関する操業経験

日本大昭和板紙吉永株式会社 抄造部 抄造2課 河村 耕平

 日本大昭和板紙吉永株式会社は平成15年4月に発足した日本大昭和板紙株式会社の生産子会社として新たなスタートを切った。古紙原料とエネルギーを有効利用する「循環型資源リサイクル工場」として操業を行っている。
 当社は旧大昭和製紙発祥の地であり,吉永工場として昭和初期より紙作りを行ってきた。昭和60年代から板紙マシンの集約化を進め,既設の3台のマシンで抄造していた特殊板紙を移抄するとともに,新たに高級板紙の分野にも進出すべく,平成4年5月に51マシンが稼動した。日産能力は250t,ワイヤー幅は3,950mm,リール紙幅は3,500mm,設計抄速は450m/分である。操業開始から13年が経過した現在でも,印刷適性,作業性などの品質面において,各ユーザーの皆様から高い評価を頂いている。
 51マシンはオンマシン上に4コーターヘッド+2スタックのソフトカレンダー+2スタックのハードニップカレンダーをもつ板紙抄紙機である。現在,洋紙の塗工紙においてもオンマシンコーター化,オンマシンカレンダー化が進行しつつあるが,51マシンはその先駆けとして,操業性・作業性・生産性・省力化の面から様々な技術が集約された板紙抄紙機であると言える。
 本報では51マシンの設備概要と,コーターパートにおける操業経験を中心に報告する。
(本文12ページ)


最新のコータの技術動向について

メッツォSHI株式会社 畑野 泰宏

 メッツォペーパーは,抄紙機の各パートはもとよりコータも含めた新世紀対応のマシンコンセプトとして“OptiConcept”を発表し,以来,世界で数多くの納入実績を上げている。また,年々,マシンの各セクションに新技術の導入が図られており,現在,すでに設計速度2,000m/minのOptiConceptマシンが稼動している。コータに関しても,この間の塗工技術,乾燥技術の継続した進展がみられ,これはオールオンラインのLWC生産でのフィルムコータの実績,上質コート紙生産,塗工板紙生産でのブレードコータの実績において明らかである。また,メッツォは世界に先駆けて非接触スプレーコータOptiSprayを完成させ優れた実績を上げている。さらに,カーテンコータ技術も完成させている。
 本稿では,メッツォオペーパーの近年の代表的なコータラインコンセプトのうち,中質コート紙製造用コータライン,上質コート紙製造用コータラインそれぞれの代表例を示すとともに,メッツォペーパーの各種コータヘッドの用途別機能,最新のコータドライヤコンセプトを紹介する。
(本文17ページ)


ウォータージェット枠替装置の操業経験

王子製紙株式会社 春日井工場 今井 稔直

 春日井工場3号コーターは1991年2月に稼動し,A2塗工紙を主に生産している当工場の主力設備の一つである。
 本マシンでは同系列にある10号マシンの3Pシュープレス化改造による増速,また3号コーターでの高米坪品における枠替失敗回避の為の速度制限からマシン平均抄速がコーター平均速度を上回っていた。
 そこで,2005年8月に高速での枠替え安定化を目的として,ウォータージェット枠替装置を設置した。
 結果,枠替え安定による増速化及び枠替え時の紙片混入による損紙減少等の効果が得られた。
 本報では改造工事概要,操業経験及び導入効果について報告する。
(本文26ページ)


塗工紙における欠陥とその検出方法について
 ―欠陥検査システムの最新技術―

コグネックス株式会社 SISD営業部 鈴木  聡

 コグネックス社の欠陥検査システム「SmartView¥外字(8064)(スマート・ビュー)」は塗工紙向けの検査システムとしても広く活用され,抄紙機,コーターはもとより,スーパーカレンダー,カッター,ソーター(枚葉選別機)などの仕上げ工程にも多く導入されている。これらのプロセスにおいて欠陥を検出するための照明方法やソフトウェアを解説する。近年導入された新しいLED照明やコグネックス独自の検出アルゴリズム(ソフトウェア)の考え方を紹介する。
(本文31ページ)


Low Intensity叩解
 ―叩解機と叩解刃物の取り組み―

相川鉄工株式会社 技術部 藤田 和巳

 古来より紙製品の特性を決定する重要な工程である叩解の形態は製紙原料,抄紙技術とともに変遷してきた。この観点から主な原料であるLBKPと古紙原料の繊維長がともに短くなってしまった今日は,叩解工程の新たな転換点にあると考える。繊維長が短く,フリーネスがはじめから低い原料をどのように叩解し,特性の優れた紙を大量に,低コストで生産するかと検討すると,当然のように従来のカッティング叩解だけでは対応しきれないことに思い至る。繊維長をなるべく保持したまま,繊維の形態を変化させて紙力強度を改善する粘状叩解,Low Intensity叩解は抄紙機のプロファイル制御が未熟な時代に紙力強度を得るために必要な技術であったが,今また注目しなければならない技術となった。ただし,今回の対象は以前のように繊維長の長い針葉樹ではないために,以前とは叩解刃物も叩解機自体も変わらざるを得ない。本書はこの様な背景での弊社のLow Intensity叩解への取り組みを紹介,報告する。
(本文33ページ)


新規ASAサイズ剤の開発とそのシステム化

ソマール株式会社 R&D部 常川 謙二,春日 一孝
            技術開発部 但木 孝一,沼本 啓良

 近年,古紙の配合の増加や更なる生産性の向上に対して,製紙業界では安価な抄紙薬剤の見直しが進んでいる。これまで酸性抄造で使用されてきた硫酸バンドは,ロジン系サイズ剤の定着に効果を発揮してきた。しかし,中性抄造では硫酸バンドは効果を発揮しにくいという理由から硫酸バンドの使用頻度が少なくなり,ロジン系サイズ剤の定着に支障をきたし,サイズ効果の低下が生じてきている。
 また,中性抄造で使用されてきたAKDは品質とコストの面から使用が頭打ちとなり,これらに変わりASAサイズ剤が注目され始めてきている。ASAサイズ剤は欧米では普及しているが,日本での使用はごく少量であり,今後,中性抄造でのサイズの効果が高く安価なサイズ剤として普及することが予想される。
 ASAサイズ剤が普及するためにはデポジットの発生を抑える必要がある。我々はASAサイズの分散乳化方法を検討し,最適な高分子乳化剤の設計を行ってきた。さらに,弊社が開発した分散システムを使用することにより均一で安定した粒径と粒度分布に調整し,デポジットの発生を抑えたASAサイズ剤を開発することができた。
(本文43ページ)


マシン最適化とそのツール
 ―スキャンプロ,新フェルト水分計の特徴と分析法―

ローレンツェン&ベットレー株式会社 大川 義弘

 操業の安定には,プレスパートの適正化が重要である。プレスバランスやフェルトの状態,洗浄の状態が操業性や紙質に影響をもたらす。このため随時プレスパートのコンディションをチェックすることが必要である。
 この工程を分析する測定器としてScanpro(スキャンプロ)フェルト水分計がある。1970年初めにScanpro社(現在のローレンツェン&ベットレー社)が開発したこの測定器は,全世界でプレスパートの総合的な工程分析計として使われている。今では,フェルトのオープンネスを測定する通水度計も加わり,分析を容易にしている。
 本公演は,Scanpro水分計と通水度計の特徴とその分析例を幾つか紹介するとともに,2006年に発表された新しい水分計の特徴も紹介する。
(本文48ページ)


キャンバス洗浄機AOKIクリーナーの操業事例

株式会社青木機械 亀山 寿夫

 近年の製紙原料における古紙再利用の増加傾向は,ここ数年間続くものと考えられている。古紙使用量の増加は,抄紙工程おいて粘着物による欠点トラブルを発生させ,生産性を著しく低下させている。この粘着物除去対策として一番有効な方策と考えられているのが,キャンバス洗浄システムである。製造現場では,より洗浄効率の高い,安価な導入しやすいシステムを求めている。本稿では,弊社が開発したキャンバスクリーンロールの操業実績を踏まえ,これに改良・改善を加えた新型キャンバス洗浄機“AOKIクリーナー”を紹介する。
(本文54ページ)


低粘度コーティング材料の高せん断速度流動特性評価

日本シイベルヘグナー株式会社 科学機器部 渡邊多津子,宮本 圭介

 近年,薄型テレビ向け偏光フィルターのコーティング用途として,インクジェットプリンター専用紙の表面塗布用などとして用いられるコーティング材料は多様化・高機能化の傾向にあり,その塗工時における材料の流動特性はより複雑化している。また,生産効率の向上のため塗工作業時間をできるだけ短時間で終了させるようコーティング材料は,さらなる低粘度化が求められている。これまでコーティング材料の流動特性は経験的な判断やB型粘度計に代表される簡易的な回転粘度計,フローメーターなどで粘度管理されてきた。
 しかしながら,従来の手法ではより複雑な流動現象や特殊なレオロジー挙動を評価することは非常に困難である。そこで,複雑な流動特性を評価するために粘弾性測定装置を用いて,粘弾性特性(レオロジー特性)を測定することにより,経験的な評価でなく数値で評価する手法が注目されている。近年コーティング工程において近年作業時間の短縮化,塗膜厚さをより薄くさらに塗膜厚さをより一定(優れたレベリング性能)とするといった傾向から,コーティング材料もより低粘度のタイプが好まれている。さらに,上記コーティング手法は材料に非常に高いせん断速度(〜104,105[1/s])を与えることが良く知られている。そこで,本稿では回転式粘弾性測定装置を用いて,低せん断速度から高せん断速度(〜105[1/s])までのせん断粘度を求め,流動特性の差から塗工性能の差を評価する。
(本文60ページ)


非汚染性および耐摩耗性を両立させた皮膜の製紙用部品への適用

株式会社野村鍍金 技術部 池田篤美,北川晃之,田口純志
財団法人応用科学研究所 鄭 容宝

 弊社はいままで,種々の製紙業界向け耐摩耗部品および離型性部品を提供してきた。
しかしながら,すべてが満足するのもではなく,なしかしらの要望に応えきれない場合があった。そこで,本発表では,弊社が現在提供できる皮膜を凌駕する種々の皮膜を紹介する。この皮膜は実用化段階であるため,全てのニーズを把握できるわけではないが,実用化にむけて弊社で進捗している皮膜である。
(本文63ページ)


炭化PSゼオライト(CPSZ)のリサイクル性の評価(第1報)
 ―CPSZの化学・鉱物学的評価と量産可能性の検討―

千葉科学大学 危機管理学部 安藤 生大,坂本 尚史
静岡県静岡工業技術センター 日吉 公男      
愛媛大学 農学部 松枝 直人,逸見 彰男

 静岡県富士市内のPS協同処理組合から排出された炭化PS(CPS)を原料とする炭化PSゼオライト(CPSZ)の量産可能性を検討した。具体的には,同組合から排出されたCPSについて,(1)300mL三角フラスコを用いた実験室スケールでのCPSZの合成基本条件の確立を行い,その条件にて,(2)50L煮沸式反応槽を用いたセミプラントスケールでのCPSZの合成実験を行い,スケールアップの可能性を検討した。さらに,それらの結果をもとに,¥外字(8073)CPSZの用途を提案した。詳細を以下に示す。
 1) 300mL三角フラスコ(溶媒容量20mL)を用いた実験室スケールでのCPSZ合成実験から以下の3点の結論を得た。@流入空気を抑制する炭化焼成は,通常の焼成に比べて酸素分圧が低下し一酸化炭素及び二酸化炭素分圧が上昇するため,PSを構成するカルサイトの脱炭酸分解が抑制される。その結果,ゼオライト合成を阻害するCaO生成が抑制されるため,炭化焼成はゼオライト合成に適する焼成方法である。A炭化PSと灰化PSのゼオライト合成物の鉱物組み合わせは基本的に同じであることから,炭化物の共存はゼオライト合成に影響を与えない。B供試体のCPSの場合,人工ゼオライトの最も一般的なゼオライト種であるNaP1を結晶化させるためには,3MNaOH水溶液を用い,沸点維持2時間の条件で,Siを0.5M添加する水熱合成条件が最適である。
 2) 50L煮沸式反応槽を用いたセミプラントスケールでのCPSZ合成実験から以下の2点の結論を得た。@300mL三角フラスコ(溶媒容量20mL)の実験室スケールで合成したCPSZと,同一の合成条件で50L煮沸式反応槽を用いたセミプラントスケールで合成したCPSZは基本的に同じ鉱物組み合わせを有することから,溶媒容量で2,000倍(40L/20mL)にスケールアップが可能である。ACPSを構成する炭化物の比表面積は,ゼオライト転換を目的とするアルカリ水熱合成により55.2m2/gから170.5m2/gと約3倍に腑活化された。
 3) 以上の実験結果から,CPSZを構成するNaP1の高いイオン交換能と賦活化された炭化物の吸着能を利用して,水溶液中で各種陽イオン,極性有機分子等に対する吸着材(製紙排水処理剤)としての用途が有望である。
(本文72ページ)