2006年12月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2006年12月


第60巻 第12号 和文概要


塗工技術概論

日本製紙株式会社 研究開発本部 技術研究所 大篭 幸治

 日本における塗工紙の生産量は年々増加傾向にあり,非塗工紙および新聞用紙の生産量の伸びと比較して,顕著である。塗工紙の消費は,北米,ヨーロッパ,アジア等,全世界的に伸び続けており,地域差はあるが,今後もこの傾向は持続されると予測されている。また,塗工紙の低坪量化の動きは顕著である。
 年々増加してきた需要に対応するために,実機操業速度は1965年当時600m/minであったのに対して,2006年現在で約2,000m/minに迫り,3倍以上になっている。また,広幅化の傾向も顕著で,近年導入されているコーターの幅は8m以上が主流になっている。
 高速化,広幅化,低坪量化,高品質化等に対応するために,塗工設備の技術革新に加え,塗工層を構成する顔料,ラテックス,澱粉,助剤等の材料の高性能化,塗工紙製造時の現象解析等に関する研究が進められてきた。近年,カーテン塗工,スプレー塗工等の塗工時原紙への付加が少なく,原紙被覆性が相対的に良好とされる低負荷塗工方式(Low Impact Coating)に注目が集まってきている。今後もこれらの動向に注目していきたい。
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最近のカラーとラテックスの動向

JSR株式会社 高分子研究所 松井  尚

 カラーとラテックスについての「最近の動向と知見」についてまとめた。カラーの動向を成分の低コスト化,塗工紙品質の向上,生産性の向上から捉えた。低コスト化については,強度の強いラテックス使用によるバインダーの減量が進み,炭酸カルシウムリッチ化も,なお進行している。品質的には,白色度の向上が蛍光染料の増加により,白紙光沢の向上が微粒顔料や有機顔料の使用により進んでいる。印刷光沢は,塗工層の平滑化とインキ浸透の抑制により向上が図られており,アスペクト比の大きい顔料やインキセットをハードにできるラテックスが使用されている。また,生産性向上に関しては,高速塗工化・高固形分塗工化のために,カラー流動性の向上が炭酸カルシウムリッチ化,澱粉の減少,ラテックスの小粒径化により図られ,少量の澱粉や適切な保水剤使用により保水性の維持が図られている。そして,乾燥条件が過酷になってもバッキングロール汚れを起こさない粘着性の低い,洗浄され易いラテックスが求められている。
 最近,求められているラテックスは,上記から分るように,「強度・操業性の良好なラテックス」と「印刷光沢の良好なラテックス」の2つに集約される。前者は,小粒径化による流動性と強度の向上,粒子モルフォロジーの制御による粘着性低下と耐衝撃性付与による強度の向上,そして,ポリマー構造・分子量制御による強度の向上による改良が進められている。後者は,塗工層の平滑化,インキ浸透抑制に加えて,インキ層を厚くして効果を高めるべく,粒子モルフォロジーの制御による改良が試みられている。
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最新のコーティングカラー調薬設備について

メッツォSHI株式会社 山崎 秀彦

 カラーキッチン関係の近年の技術として,カラー調製システム,カラー供給システムおよびカラー回収リサイクルシステムのなかから代表的な設備を紹介する。連続式カラー調製システムGradeMaticはまだ導入例は少数であるが,迅速なグレードチェンジ,原料の節約,省スペース,省エネルギーの面から注目されつつある。
 加圧スクリーンOptiScreenは工程がインライン化され,効率,省エネルギーへの寄与も大きい。Opti Airデエアレータは欠陥のない塗工を実現する上で不可欠であり,ColorMatはオンラインでのカラー特性の追跡が行え,効率的な品質制御に有効である。OptiDoserは今後のフィルムコーターOptiSizerの発展とともにカラーの節約,省スペースなどの面でさらに着目されるであろう。
 また,カラーの回収,リサイクルを行うシステムであるOptiCycleは,カラーの節約といった経済面のみならず,環境負荷低減,クローズド化が求められるなかでこの技術の重要性は増していくと考えられる。
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製紙顔料の最新技術と動向

イメリスミネラルズ ピグメントフォーペーパ クリス ナットビーン

 紙や板紙の塗工技術は,広告業界からのビジュアルイメージ向上の要求を受け,日々進歩を重ねてきた。この事とマシンの進歩が重なった結果,過去20〜30年に亘り,顔料は著しい発展を遂げた。多くの発展は革新的というよりはむしろ進化的なスピードで果たされたが,過去10年間における新しい顔料の開発品と既存製品との入れ替わりには目を見張るものがある。
 しかしながら現在,製紙業界はかつてない程のコスト増加問題と,紙の値段の横這い化問題に対応するべく変化を始めている。そんな状況下においても,印刷用紙や筆記用紙グレードの開発は続けられ,そして,顔料需要の増加,特に炭酸カルシウム顔料の需要増加がもたらされるだろう。その結果として,顔料,その中でも特に,付加価値の高い顔料の開発や使用法が変わることは十分に予想される。
 製紙メーカーにとって価値のある塗工コンセプトの為の,有効な顔料利用方法は重要なテーマである。複数顔料の組み合わせに対応すべく,新しい顔料が日々開発されている。複数顔料の組み合わせにおいて,顔料の持つ特性や価値を最大限に引き出し,顔料の相互作用を引き出す為には,それぞれの顔料が塗工層にどのような影響を与えるかを理解することが必要不可欠である。アスペクト比の高いカオリンと,エンジニアード炭酸カルシウム顔料の組み合わせによっては,品質調整,紙の軽量化,酸化チタン等高価な顔料との代替,白紙光沢の向上といった効果が期待でき,製紙会社にとって強力なツールになっている。
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No.1コータの操業経験

日本製紙株式会社 石巻工場 抄造二部抄造三課 西川 利彦

 石巻工場1C/Rは,1981年,当時新聞マシンとして稼動していた7M/Cコート原紙化改造に合わせ操業を開始したオフマシンコーターで,現在ではオフ輪用紙およびグラビア用紙を中心に日産330Tの生産を行っている。
 1C/R最大の特徴は生産効率の高さで,日本製紙生産効率指標として使用される加工歩留で表記すると97.3%と社内でも最上位に位置している(加工歩留は製品取幅差分を控除した原紙生産量を用い最終製品出来高率を表した指標)。
 一方設備面から見れば,稼動当初から使用していたコーターヘッドにおいて,ファウンテン内外へのカラー粕付着による欠陥や塗工不良の発生,また塗工プロファイルにおいてもカラー幅方向吐出不均一に起因する乱れが発生していた。そこで平成15年の1C/R品質改善対策としてコーターヘッド更新およびオートプロファイラー設置工事実施した。今回は工事実施にともないそれらの問題点がどのように解消されたか,また更新工事後,新たに発生したカラー吐出脈動問題を如何にして解決したのかをなどを中心に,高い生産効率を継続するための品質安定化に向けた取り組みの一端を紹介する。またオペレーター作業負荷軽減対策として導入したコーター原反仕立装置に関する操業経験もあわせて紹介する。
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ゲルビューセンサによる塗工乾燥システムの最適化

ハネウェルジャパン株式会社 営業技術部 増田 淳一

 当社では,抄紙機におけるウェットパートからリールまでの全パート測定や最適化制御を行うための新しいセンサ/制御技術を開発し,日本国内でも昨年から販売を開始している。その中でも海外にて技術や実績が評価され,表彰されたGelView(ゲルビュー)というコーターパートに焦点をおいたセンサ/制御技術について紹介する。
 ゲルビューセンサは,高輝度LEDから発せられた光を塗工層表面にある角度で照射し,その反射光を二つの異なった角度の受光部で受ける。その二つの受光量の違いにより塗工層の乾燥状態を判断し,数値化する。その数値化されたものをゲル値と呼び,塗工層乾燥の進行具合をこのゲル値で表現する。また,このセンサを流れ方向に数点設置することにより,塗工層乾燥状況を流れ方向でプロファイル化することができる。
 従来のセンサでは表現することのできなかった塗工層の乾燥状態が,このセンサ技術によって数値やプロファイルの表示が実現され,塗工層の乾燥の速度や乾燥位置の把握が可能となった。また,このセンサ技術を制御に活用することにより,塗工層の最適な乾燥速度や乾燥位置を任意に決定することができる。
 このセンサ/制御技術により,塗工紙の問題点のひとつであるバインダーマイグレーションの解決や様々な要因により影響を受けていた品質問題の改善が図れることになる。また,最適な制御により製品の品質安定化や乾燥エネルギーの削減,或いは製品の増産にも繋がることとなる。
 この技術により,塗工技術に更なる貢献が期待できる。
(本文50ページ)


八戸工場5号コーターの操業経験

三菱製紙株式会社 八戸工場 製造部紙四課 白石 雅人

 三菱製紙八戸工場は,1966年に操業を開始以来40年間,三菱製紙の主力工場としてアート紙,コート紙,高級白板紙,上質紙,情報用紙等を生産し続けている。その中で,コーターマシンは5台を有し,うち2台はオンマシンコーター操業を行っている。今回の発表は,八戸工場にて1988年に稼動を開始したオフコーターである5号コーターに於いて1,575m/minの高速操業を安定的に実現させるために取り組んできた操業面,技術面の課題の3項目
 1) スプライス技術の向上
 2) ブレードの能力向上による最適選定
 3) BM計更新による工程測定技術向上
について紹介し,更に今後を見据えて八戸工場で検討している
 4) 2,000m/min操業への検討
 5) CFD技術のコート分野への導入検討
について簡単に述べる。
(本文59ページ)


塗工ブレードがおよぼす塗工操業への影響

BTG エクレポン・スイス・アジア担当 ジェローム ミショー
スペクトリス株式会社BTG事業部 前川 卓彌

 コーターマシンの高速化に伴いブレードによる塗工は最も一般的な塗工方式とされてきている。塗工ブレードは常に原紙とカラーに接触している装置であることから,最終的な塗工紙の品質とマシンの操業性を左右する重要な役割を果たしている。したがって塗工ブレードのセッティング条件や材質,またはブレードのデザインの最適化は,高品質の塗工紙を抄造するための極めて重要なファクターと言える。耐摩耗性に優れた塗工ブレードを採用することにより,ブレード刃先のセッティングを長時間同じ状態で維持できるため,操業を安定化させ品質が優れた塗工紙の生産に大いに寄与することは既に周知の事実である。
 本稿ではBTGの20年以上にわたる塗工ブレードの経験と知識から,ブレード塗工の基本であるベント―スティッフ(ベベル)の関係を明らかにし,スティッフ操業における塗工ブレード刃先の状態とブレード下で起きている現象を明確化するとともに,操業や品質に影響を与えるブレード材質,デザイン,セッティング条件などについて述べる。
(本文64ページ)


8M/Cオンコーターの操業経験

北越製紙株式会社 新潟工場 工務部 高済 和弘

 新潟工場8M/Cは1998年6月に稼動し,A2・A3コート紙を生産しており当社の中では最大の生産能力を有するオンコーターマシンである。
 塗工紙においてコーターパートは当然の事ながら品質・操業に大きなウエイトを占め,オンコーターの場合は特にマシン全体の操業効率に直結してくる。その中でブレードコーターの操業において避けて通れないのがストリークや塗工プロファイル安定性といった問題であり,稼動以来様々な角度から改善に向けての取り組みを実施してきた。
 具体的には,カラーのスクリーニング設備の運用方法やハード・ソフト面での改善及び塗工プロファイル制御方法の見直し等を進めた事により,ストリーク減少やプロファイル安定時間短縮が図られ,品質及び生産効率の改善に大きく貢献している。
 本報では,これらのコーターパートに関連した操業経験について報告する。
(本文70ページ)


国際紙及びコーティング化学シンポジウム(PCCS2006)参加報告

日本製紙株式会社 技術研究所 後藤 至誠
国立印刷局 研究所 濱田 仁美

 2006年6月7日から9日にかけてストックホルム(スウェーデン)にてInternational Paper & Coating Chemistry Symposium(PCCS)2006が開催された。PCCSはコロイド・界面化学研究者が中心となった,ウエットエンド及びコーティングの化学に関する基礎研究の討論会であり,スウェーデンとカナダの研究者が主体となって約3年毎に両国で交互開催されている。今回の参加者は約220名で,北欧や北米の大学・研究機関や企業からの参加が多かった。口頭発表は,12セッション計90件(含む招待講演19件)であり,今回からポスター発表(17件)も開催されていた。発表内容としては,ウエットエンドが約6割,コーティングが約4割となっていた。
(本文76ページ)


省資源化が可能な製袋用伸張紙の開発

日本製紙株式会社 商品研究所          才高 聖士
             情報・産業用紙営業本部 羽藤 信弘
             旭川工場           川ア 秀一
日本製袋株式会社 技術本部           佐竹 寿巳

 重包装袋用紙袋(重袋)は,強度保持,破袋による内容物漏洩防止のために,クラフト紙を2層以上重ねて製造しているが,近年はコストおよび環境対策による省資源化が進み,重袋用クラフト紙の減層化およびクラフト紙の低坪量化が浸透してきている。しかし,既に省資源化は強度面で限界となっており,更なる省資源化のためには高い破断強度をもつ原紙が必要である。
 今回紹介する新規製袋用伸張紙は,原材料が主に間伐材であり,100%針葉樹クラフトパルプを使用しているため,リサイクル可能であり,環境にやさしい素材である。
 紙質上の特徴として,クラフト紙や従来の伸張紙よりも格段に破断伸びが大きく,落下や突き刺し等の衝撃に対して伸びることによりエネルギーを吸収するため,破壊が発生しにくい。従来のクラフト紙やクルパック紙と比較すると,引張エネルギー吸収量は縦:約3〜10倍,横:約1.5倍,衝撃穴あけ強さは3倍以上と製袋用原紙として各段に優れた特性を持つ。
 新規製袋用伸張紙を使用した重袋については,破袋強度を落とさずに従来のクラフト紙3層袋を2層袋(外層:製袋用伸張紙1層,内層:クラフト紙1層)とすることが可能であり,その場合全体の原紙の使用量を27%減らすことが可能であった。また,傾斜試験,実機によるフレキソ印刷・製袋・充填適性の点でも問題なく,現在一部粉体製品包装用に使用されている。
 このように,新規製袋用伸張紙は,原料として主に間伐材を使用してリサイクル可能である上,破袋強度を維持したまま重袋の層数を減らすことができる。これらのことより,環境問題に対応する次世代の製袋用伸張紙であるといえ,今後様々な分野での利用拡大が期待される。
(本文86ページ)