2006年10月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2006年10月


第60巻 第10号 和文概要


新規フェルトコンディショナー
 ―プレスショット®シリーズ―

栗田工業株式会社 紙パプロセス部 和田  敏,木幡 賢二

 近年,添加剤の変更および古紙配合率の増加,用水のクローズド化に伴い,抄紙工程において従来と異なる汚れが発生するようになった。この汚れは,断紙や欠点の原因となり,生産性低下や品質低下を引き起こしている。
 プレスパートのフェルトの汚れに対しては,フェルトコンディショナーが適用され,汚れを防ぐことで搾水性能や紙のピックアップ性を維持している。しかしながら,現状の抄紙条件と汚れの変化を捉えながら,適切に対応できるフェルトコンディショニング技術は報告されてない。
 そこで,種々の汚れを正確に分析する技術を確立するとともに,汚れ防止の新しいコンセプトを取り入れたフェルトコンディショナーを開発した。本報は,新しいフェルトコンディショナー「プレスショット®」シリーズによりプレスパートの障害を改善し,生産性を向上させた事例について報告する。
 「プレスショット®」シリーズは,様々な汚れに対応できるようにラインナップしている。特に,新しい防止メカニズムにより,炭酸カルシウム汚れに対し,優れた効果を発揮する。この汚れは,填料および古紙の高配合により増加していくと予想されることから,プレスショットは今後の抄紙条件に対し合致した商品と言える。
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BTFヘッドボックス及びBTFダイリューションダイリューションコントロールシステム
 ―実機操業データによる性能の評価―

川之江造機株式会社 第一設計課 矢野 順一

 現在,日本国内では2台のBTFダイリューションシステムが順調に稼動中であり,今年の8月にスタートアップするものを加えると3台が稼動することになる。既設ヘッドボックスの形式は,3台の内2台がハイドロリック式ヘッドボックスであり,残りの1台がイブナーロール+エアーパッド式ヘッドボックスである。
 また,2006年の1月には,日本第一号機のBTFダイリューションヘッドボックスのスタートアップが開始される予定である。BTFシステムの新たな歴史が始まる。
 本来,ヨーロッパにおいては,BTFシステムはヘッドボックスを含めた全ヘッドボックスシステムの提供を得意としていた。北米でも,全40台の納入実績の内の半数はヘッドボックスを含めたトータルシステムの提供である。
 本稿では,既設ヘッドボックスをそのままでダイリューションヘッドボックス化する従来のBTFシステム技術に加えて,ヘッドボックスの新作を含めた全ヘッドボックスシステムの提供についても精力的に,紹介する。
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新しい繊維及びシャイブ測定機能付全自動パルプ試験システムkajaaniPulpExpert

メッツォオートメーション株式会社 フィールドシステムズ 佐藤 武志,下崎 正憲

 これまでに全世界で160台以上の導入実績を持つ全自動パルプ試験システムPulpExpertが,測定部の拡張を行うとともにKajaani社のブランド名を冠して,kajaaniPulpExpertとして一新されることになった。測定は,実験室で行われるようにパルプサンプルからドライシートを作り,パルプ特性を測定するためにそのシートを用いるものであり,一般的な工場の実験室の10倍以上の試験処理能力を持っている。
 モジュール式のデザインにより,必要に応じて数種の測定の組み合わせの設定が可能であり,重量濃度,フリーネス,光学特性,ダートカウント,強度特性,キャリパー,透気度,繊維,シャイブ測定,pH及び電導度測定が含まれる。
 その中の高容量画像解析に基づく新しい繊維及びシャイブ分析モジュールは,毎分1gに相当するドライパルプの分析が可能である。繊維分析については,画像システムがサンプル中の300万本以上の繊維を測定し,シャイブ分析については,画像システムがパルプサンプルの画像を毎秒50以上取り込み,測定する。
 オンライン(工場現場),オフライン(実験室)両者での使用が可能であり,原料の品質管理,パルプ工程,ウェットエンドも含めた調成工程等の管理に使用される。その測定結果は,発生する問題の原因究明に役立ち,様々な問題の解決手段となっている。
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健康機能性作物の開発

日本製紙株式会社 森林科学研究所 杉田 耕一

 日本製紙褐、究開発本部・森林科学研究所では,パルプ原材料に適した植林木の育種を目的として,独自の植物遺伝子組換え技術の開発を進めてきた。一例としては,塩濃度が高い環境で生きている微生物の遺伝子を,遺伝子組換え技術でユーカリに導入して,塩害に強い遺伝子組換えユーカリを開発した。遺伝子組換え技術の植物への応用研究は世界中で進められているが,中でもユーカリは,遺伝子組換え技術の適用が難しいとされてきた。当研究所では,遺伝子組換えユーカリを作成する独自技術を開発にする過程で,様々な植物種に応用できる遺伝子組換え技術を開発した。
 遺伝子組換え技術は,今後人類にとって欠くことができない重要な技術とる。中でも,医薬品の生産手段として約20年程前から利用されていて,ヒトのインスリンや成長ホルモン等は遺伝子組換え大腸菌で生産されている代表例である。最近では,ペット医薬品の中にも遺伝子組換え技術が利用され始めている程である。
 本報では,当社独自の植物遺伝子組換え技術を利用した,健康機能性作物の開発について紹介する。健康機能性作物とは,ヒトの体に良い物質(ペプチド/タンパク質など)を植物の可食部に蓄積させた作物を言う。当社では様々な健康機能性作物を開発中であるが,中でも,スギ花粉症や糖尿病に効く遺伝子組換え米の開発が進んでいるので紹介する。いずれも,マウス細胞を用いた基礎評価試験で効果が確認できた段階にある。今後,各種の動物試験による食品安全性と,ヒトでの有効性を確認した上で,商品化を進める計画である。
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一般産業界における音に関して
 ―トラブルフリーオペレーションの一環として―

日本エスケイエフ株式会社 コンディションモニタリングサービス部門 山崎 安彦

 今回は2004年に紹介したSKFの“SKFのトラブルフリーオペレーション”の中を少しズームアップして,回転機器を用いて日常の業務を行っている産業に従事している方々が日常体験している回転機器からの不可解な音とその発生源について考えて見たい。
 その音も運転開始時のみに出るものであったり,温度が低いときに,あるいは午前中のみに等,様々である。しかし,それ等は全てきちんとした理由があるはずであり,その中の例の一部を紹介する。
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カッティング技術のソフトとハードにわたる最新開発技術
 ―貴社のスリッティングシステムは利益向上に貢献しているか―

ディーネス ジャパン ハインツ・ハーケンラート,大貫 守健

 ディーネス社による最近の「完全自動スリッターシステム」機器の開発とその技術進化には目ざましいものがある。その一つは,常に変わらない「カッテングポイント」を保持するための堅牢な機構とその制御システムである。機械的には既に数百台に実績を持つ特殊2軸(隙間ゼロ)機構と熱処理された各機械部品の組み合わせ。制御的にはPLC制御により「再研磨後の自動噛み合わせ(精度0.005mm以内)」と「連続的な側圧制御システム」である。又,位置決め機構とその制御システムは全く新しい機構により振動に強く且つ精度の高いシステムで構築されている。位置決め速度は一秒間に1,500mm且つ位置決め精度は±.0.1mm以内である(上下スリッターユニット5個から6個の組み合わせで30秒前後での設定)。
 その他数え切れない新しいシステムの組み合わせにより今まで起きていたスリッターでの多くのロスを減少し,同時に「多層紙のカッテング(ノンコート紙850g/m2,8層切り)」が可能になって来ている。又,繊細なカッテングの要求される紙質のものや新しい素材等に益々活用されて来ている。又,伝統あるドイツの刃物のメーカーとして,新しい素材による寿命の長い,切れ味の鋭い刃物の供給も続けている。
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効果的な防虫管理活動

アース環境サービス株式会社 開発部 横尾 暢哉

 アース環境サービス鰍ヘ,各食品関連工場や医薬品関連工場の製品に異物混入を予防するために,製品を取り巻く環境(内容物,容器や包装紙施設設備や機械器具,空調関連,使用水関連,廃棄物や排水の衛生管理,および作業者(外部業者も含む)の衛生意識など)の改善活動の支援をしている。
 しかしながら,各社のこれらの活動が効果的でないケースがある。なぜなら,ある特定の人しか関与しておらず,他の人が活動について理解していなかったり,問題と問題点を区別していなかったりするからである。
 今回は,効果的な防虫活動について説明する。
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抄紙法を用いた機能性発熱シートの開発

花王株式会社 加工・プロセス開発研究所 熊本吉晃,石川雅隆,宇賀神徹,大賀英俊,河尻浩宣

 抄紙法を用いて,パルプ繊維に発熱粉体(鉄粉)と発熱反応触媒(活性炭)を固定化したシートタイプの発熱体を開発した。この発熱シートはパルプ繊維が骨材となり,その周りに鉄粉および活性炭が約90重量%と高密に充填された構造となっているため,従来の粉体型発熱体と比較し,優れた発熱効率を有し,「薄くてしなやか,幅広い発熱特性,多蒸気発生能,均一発熱,形状自由度が高い」等の特長を持つ。
 また,当社のヘルスケア研究所において,蒸気温熱効果による「血めぐり」に着目した温熱医療機器の研究が進められおり,この発熱シートはその商品の蒸気温熱基材として用いられている。蒸気温熱による生理活性効果に加え,非常に薄くしなやかでかつ発熱温度が均一であるため,装着時の違和感が低減され,心地よく使用できる商品構成となっている。
(本文46ページ)


全幅水分計測装置

メッツォSHI株式会社 エンジニアリング本部 森  純一

 BM計が開発されてから50年余,この間QCS(BM計・紙品質制御システム等)は改良を重ねられ,当初の固定式センサからスキャニング方式となり全幅に渡る計測が可能となった。そして90年代のマイクロエレクトロニクスの発展により,より高分解能でインテリジェントなセンサが開発されるに至っている。
 一方,抄紙機全体も,2,000m/分に達する高速化,そして10mを超える拡幅化を達成している。しかし,未だQCSのバックボーンである紙品質の計測はその重要性が強く求められているにも関わらず,抄紙機プロセス制御に比べて非常に遅く,更にスキャニングセンサの特性からMD/CDの分離が困難な為,真のMD/CD値を計測する事は出来ていないのが現状である。
 更に,抄紙機の高速化における安定操業の為にも水分プロファイルの向上は重要となって来ている。そこで,これらの問題を解決するために開発されたのがIQ Insightである。
 IQ Insightは従来のスキャニング方式ではなく全幅同時計測を行える斬新な水分計測装置である。本装置は,マシン診断ツールとして,また操業用ツールとして使用出来,マシン効率のUP及び紙品質の向上の両方に寄与することが出来る。
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塗料・コーティング材料の新しい流動特性評価法

日本シイベルヘグナー株式会社 科学機器部 宮本 圭介

 近年,塗料・コーティング材料の多様化,高機能化に伴いその流動特性が複雑化している。このことから塗布工程管理,品質管理基準も高いレベルを要求されている。これまで塗工工程における重要な流動特性であったたれ性,レベリング性などは,経験的な判断や簡易的な回転粘度計,フローメーターなどでその特性を管理されてきた。しかしながら,これらの手法では複雑な流動現象や特異的な流動挙動を評価することは非常に困難となっている。そこで,複雑化する流動特性の評価手法として,粘弾性測定による粘弾性特性(レオロジー特性)の評価が注目されている。本測定は,本報告記載の図1のように製品の開発から塗布工程の作業条件,塗布後の品質管理に応用できるだけでなく,塗料・コーティング材料の複雑な流動特性を幅広い流動速度(せん断速度)で評価できる。また,塗布工程時の粘度変化のシミュレーションや塗布後の流動挙動の時間変化なども数値化し,管理することができる。
 本報告では,ドイツ国アントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCRを用い,塗布工程時の流動挙動をシミュレーションし,その粘度変化から塗布後の重要な流動特性であるたれ性,レベリング性の新しい評価手法と,コーティング材料を紙へ塗布した後の溶媒の浸透に伴う粘度上昇の評価手法を紹介する。
(本文59ページ)


平判カッター新技術
 ―FS PROマーク フリー シーティング技術―

E.C.H. Will社 ロバート ドイチェル
株式会社イリス 重田 公雄

 今日のフォリオ シーティング産業は,困難な状況に直面している。印刷産業は顧客のニーズを満たすよう高品質印刷結果に達する為に高品質洋紙,板紙材料を必要としている。同時に製紙工場やコンバーターは,発注規模の縮小や納期の短縮の為高い価格やコストのプレッシャーを受けている。
 この状況下では,高品質洋紙や板紙上のマークや引っかき傷は製品の品質が不十分であり,生産高が低く,無駄が多く,装置の効率性と生産性が低いことを意味する。そして顧客からのクレームを招き,イメージの低下になる。最悪の場合,将来の注文の損失につながる。
 E.C.H. Will社は,350m/分までのスピードの場合に,最高品質洋紙や板紙の表面に傷がつくのを防ぐ解決法を見付けた。
(本文64ページ)


第73回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会 木材科学委員会

 第73回紙パルプ研究発表会は,2006年6月15日(木)〜16日(金)の2日間,東京都江戸川区「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計43件で,口頭発表が29件,ポスター発表が14件であった。参加者は267名であった。発表内容の概要をまとめた。
(本文69ページ)


2006Pan Pacific Conference報告
 ―2006年6月6日〜9日ソウル(韓国)にて開催―

東京農工大学 岡山 隆之      
東京大学 江前 敏晴      
筑波大学 大井  洋      
九州大学 小名 俊博      
王子製紙株式会社 岩崎  誠,内田 洋介
日本製紙株式会社 宇野俊一朗      
紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 2006Pan Pacific Conferenceが韓国のソウルで(6月6日〜6月9日)Korea TAPPIの主催で開催された。紙パルプ技術協会の代表として,岡山東京農工大教授と豊福専務理事が参加した。Pan Pacific Conferenceは環太平洋の加盟8カ国の技術協会が2年に一度持ち回りで開催する会議で,2004年はオーストラリアのキャンベラで行われた。今回は日本から企業と大学をあわせて8件の発表が行われた。Conferenceでの日本からの発表と注目発表の概要について紹介する。
(本文93ページ)


2006TAPPI Coating and Graphic Arts Conference参加報告

日本製紙株式会社 研究開発本部 商品研究所 牧原  潤

 2006年4月24日から27日まで,米国ジョージア州アトランタ市において,Coating and Graphic Arts Conferenceが開催された。これは,TAPPI主催で毎年開催されている塗工紙に関する技術会議であり,全体で21のセッション,69件の口頭発表が行われた。この会議に参加する機会を得たので,概要について報告する。
 また,今回初めて開催されたTAPPI主催のナノテクノロジー部門の学会,International Conference on Nanotechnology(26〜28日)についても参加したので,興味深く感じた発表についても若干ではあるが,併せて報告する。
(本文101ページ)


スウェーデン王立技術大学留学記

王子製紙株式会社 研究開発本部 製紙技術研究所 木皿 幸紀

 2005年1月から12月までの一年間,スウェーデン王立技術大学(Kungliga Tekniska Hogskolan,以降,KTHと表記)に留学する機会を得,研究員として,Department of Fibre and Polymer Technology(繊維・高分子化学専攻)のDivision of Wood Chemistry and Pulp Technology(木材・パルプ技術研究室)に在籍した。本留学を通して,パルプ蒸解分野の知識を学ぶのに加え,異なる文化,知識を持つ人々と交流することができた。本稿ではKTHでの研究活動および,留学の概要を紹介する。
(本文108ページ)


酸化チタン含有人工ゼオライトの合成及びその消臭能

愛媛県紙産業研究センター 福垣内暁,浦元 明,市浦英明,森川政昭
リンテック株式会社 京極昌一,永島孝作          
愛媛大学農学部 山本 徹,松枝直人,逸見彰男

 愛媛県四国中央市内の製紙事業所から排出された酸化チタンを含有する製紙スラッジ焼却灰を原料として酸化チタン含有人工ゼオライトの合成を試みた。原料の製紙スラッジ焼却灰の化学・鉱物組成分析を行った結果,約21wt%のアナターゼ型酸化チタンを含有することが明らかになった。この製紙スラッジ焼却灰に含まれる酸化チタンの有効活用を図るため,製紙スラッジ焼却灰中に,結晶構造の異なる3種類のゼオライト(NaP1,ゼオライトA,フォージャサイト)の合成を試みた。合成された各種酸化チタン含有人工ゼオライトの化学・鉱物組成分析を行った結果,いずれの酸化チタン含有人工ゼオライトにも約19wt%のアナターゼ型酸化チタンが含まれており,酸化チタンを含有した人工ゼオライトを得ることができた。
 得られた各種酸化チタン含有人工ゼオライトの評価として,代表的な悪臭物質であるアセトアルデヒドの除去試験を行った。アセトアルデヒドの除去試験結果から,原料の製紙スラッジ焼却灰ではアセトアルデヒドを吸着することが困難であったが,酸化チタン含有人工ゼオライトはアセトアルデヒドの吸着能を有する結果を得た。アセトアルデヒドの残存濃度の変化が小さくなった時点で,波長365nmのUV(紫外線)を照射したところ,製紙スラッジ焼却灰はUV照射によるアセトアルデヒドの濃度減少が認められなかったが,酸化チタン含有人工ゼオライトは,UV照射によりアセトアルデヒドの濃度減少が確認された。ゼオライト種がフォージャサイトの酸化チタン含有人工ゼオライトについてアセトアルデヒドの除去能が最も大きい結果が得られた。
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