2006年9月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2006年9月


第60巻 第9号 和文概要


撥水(非汚染)機能めっきの特性と応用

株式会社野村鍍金 技術部 田口 純志

 前回,当社はジャパンタピーの年次大会において,撥水機能皮膜の開発に成功し,その大まかな特徴を発表すると同時に,当該皮膜を紙業界で使用できる可能性の一端としてロッドメタリングへの適応例を示した。今般の発表においては,製紙業界でのさらなる応用範囲の拡大を目指して皮膜特性の詳細を行ったので,そのデータの一部を公表する。
 また,撥水機能めっきは,前回も述べたようにテフロンと類似した材料であることから,テフロンとの比較もおこない,テフロンの代替用途としての可能性の検討をおこなった。
その結果,当社の開発した撥水機能めっきは,テフロンやPTFE分散めっきとは一種異なった特性があり,製紙機械のパーツにも十分効果を発揮するものであることを認識できた。
(本文1ページ)


ライパ シュエット PM4
 ―新世代のLWC生産ライン―

株式会社 アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 抄紙機技術部 藤村  修
フォイトペーパー株式会社 アンドレアス ケラー,ファルク アルブレヒト

 ドイツのオーデル河畔にあるシュエットのライパ ジョージ ラインフィールダー会社の新4号機が,2004年6月30日にスタートアップした。LWCペーパーが,シリウスリールで,高速で巻き上げられた。この新4号機は,高品質LWCペーパーを年産30万トン生産する能力を持ち,ワイヤ幅8,900mmのマシンである。原料は,DIP100%をベースに設計され,最高品質の製品を生産するために,フォイトは,全体にわたって“ワンプラットフォームコンセプト”の,生産プロセスを基礎にした。
 このプロジェクトでは,抄紙機全体のほかに,フォイト社の供給範囲は,原質調整システム,ブローク処理を含むアプローチフローとワインダ,ロール搬送,包装システムも含む。そして,フォイトファブリック社供給の最初の使用用具と包括的なオートメーション機器も,このパッケージに含まれている。
 また,このプロジェクトの,技術的な挑戦は,DIP100%の原料から,一級品のLWCを生産しようとの目論見であり,これを,具現化するために,ライパ社とフォイト社は,“システムパートナーシップ”を結び,予定の日程よりも4週間早く,成功裏に達成することが出来た。本文では,最新の操業状況も記述した。
(本文9ページ)


MJサイザーの実操業に於ける特長

三菱重工業株式会社 技術本部 広島研究所 堀江 茂斉,杉原 正浩
紙印刷機械事業部 三浦 洋司,宮倉 敏明

 ゲートロールやロッドメタリングを代表としたフィルムコーターは,アプリケーターロールのニップ部における原紙に作用する機械的な摩擦力と塗工液の浸透圧が比較的低いことから,断紙の抑制と良好な表面被覆性が得られる為,軽量・微塗工紙の生産に適していると言われている。これらのうち,ロッドメタリング型フィルムコーターは,その省スペース性,運転安定性,及び製品品質の良さからサイズプレスおよびオンマシンコーターとして多く採用されている。
 当社が開発したロッドメタリング型フィルムコータ“MJサイザー”は,操業安定性,生産効率およびメンテナンス性の改善をキーワードとして開発し,更に使い勝手の良いフィルムコータとすべく,実機での経験を通じたブラッシュアップを続けている。本報告では,これらMJサイザーの軽量塗工紙製造における実操業での特長を紹介する。
(本文16ページ)


紙・パルプ工場におけるプロセス応答をモデル化した予測コントローラー
 ―Brain Wave導入によるプロセス改善例―

アンドリッツ株式会社 水木 準二,福沢 民雄                
アイデアスシミュレーション社 デューカン ミィード,ビル ゴッチ,サヴァ コヴァック

 紙パルププロセスでは,動作が緩慢で変動が大きく,むだ時間が長いプロセスがおおく従来の制御方法の適用が難しかった。従来はカスケード制御,変動モデルパラメータ,あるいはフィードフォワード制御などの従来方式を採用していたが,制御が安定しない為,生産性,製品品質等に影響が出ないように,安全係数を見て操業していた。
 BrainWaveはモデルベース型予測コントローラで,ラーゲレ関数を採用した数学モデルで内部モデルを構築する。ラーゲレ関数の採用により,内部モデルは限りなく実プロセスに近づいた。更にプロセス応答中のむだ時間を効率良くモデル化したことにより,将来のプロセス応答の予測を可能として,設定値がすばやく修正・決定されその結果,オーバーシュートの防止などでプロセスを安定させる事ができる。
 BrainWaveによる安定操業により,動作限界まで操業を改善する事で,省エネ・省人等エネルギーコストの削減,生産性,歩留まりが向上する。又,品質の向上を実現した事例として,リール白色度コントロールへの導入による薬品原単位の改善がある。苛性化槽伝導度コントロールへの導入による原単位,生産性,品質の向上事例を紹介する。
(本文22ページ)


修正クラフト蒸解へのSAQの適用(その3)

川崎化成工業株式会社 技術研究所 田中 潤治

 本報では当社で開発したラボ蒸解装置を用いて,SAQとPSを修正クラフト蒸解に組み合わせた蒸解について検討を行った。蒸解薬液の分割添加が,SAQとPSを併用することにより現れる相乗効果にどのような影響を及ぼすか,現在修正クラフト蒸解で用いられている一般的な条件において検証し,以下のような結論を得た。
 ・SAQとPSを併用することにより現れる相乗効果は薬液を分割添加した条件と,薬液を一括添加した条件とでほぼ同じであった。
 ・蒸解途中(蒸解温度が130℃の時点)に添加する薬液をPS液から白液に変更することにより,カッパー価の低減が見られた。
 ・空気酸化法を想定したPS液とSAQを用いた今回の実験条件では,PS濃度が約6g/Lの時に最もパルプ収率が高かった。
 今回の結果から,当社の実験装置の特徴である,薬液の分割比率や蒸解途中での黒液の抽出,そしてそれらを行う蒸解温度等,様々な条件の組み合わせにより,更なるSAQとPSによるパルプ収率の向上が期待できる。
(本文32ページ)


染料インライン精密定量注入システム
 ―インライン注入による省力化と省スペース化の提案―

株式会社イワキ 大野敬一郎

 パルプへの染料注入工程は,染料とパルプの混合比率により,紙の品質が決まる重要な工程であり,この注入精度は一般的に±0.1%の誤差を要求される。しかしながら多くの現場では作業者が希釈水と染料を混合させた希釈タンクから希釈染料を取り出してパルプへ混合させており,この方法は作業者による液量の管理やタンクスペースが必要で,精密な濃度管理が難しく,配管や人員の省力化や省スペース化のためには染料を直接パルプラインへ注入できるインライン式が求められる。しかしながらインライン式においても連続流ポンプによるフィードバック制御を用いる場合,その注入精度は±5%であり,流量計や制御バルブ,またそれらを制御するコントローラを必要とし,大がかりなシステムを構築する必要がある。このため大幅な省力化は難しい。
 しかも変動するパルプライン圧に対して,常に定量的に液を送液しなくてはならず,フィードバック制御では,圧変動に対して素早い追従ができない。
 そこでハイセラポンプを用いたインライン注入システムの機能・特徴について報告する。
(本文37ページ)


歩留剤ナノクラスターディスパージョン(ND)ポリマーの特徴とその作用機構

ハイモ株式会社 湘南研究センター 山口 佳也,大原  工

 近年,古紙配合比率の向上による製紙原料中の微細繊維の増加,填料として微粒な炭酸カルシウムの使用比率が高まることにより,歩留りを維持,向上するには高分子量を有する歩留向上剤が必要とされる。しかし,高分子量の歩留向上剤を使用すると過大なフロックを形成,紙品質(地合い性)が悪化することが懸念される。
 従来から当社は,ポリマー粒子を特殊技術により水に分散させて得られる高濃度液状品ディスパージョンポリマー(ハイモロックDRシリーズ)を開発,歩留向上剤・濾水性向上剤として上市してきた。このディスパージョン技術を応用して,ポリマーの構造制御を行ない,ナノクラスターディスパージョン(ND)ポリマーを開発した。
 このポリマーは,重合中に形成される高分子が結晶核或いはクラスター構造を有するため,水中で粒子挙動を示す。そのため,パルプスラリーに迅速に分散,応力偏差の小さい,緻密で強固なフロック,均一な地合いを形成する。特に高速マシンで微細繊維や炭酸カルシウムを多く含む中性紙や新聞用紙でその特徴が発揮できると考えられる。
 今回,ナノクラスターディスパージョンポリマーの粒子性を検証したので報告する。
(本文42ページ)


新しい外添薬剤による製紙工程の問題解決(II)
 ―平板試料ゼータ電位の測定による外添型デポジットコントロール剤特性の解析―

ニチユソリューション株式会社 製紙薬剤事業部 安藤 嘉浩

 近年,紙・板紙の品質向上における製紙薬剤の役割はますます重要になっており,特にデポジットコントロール剤などの工程薬剤が需要を伸ばしている。外添型デポジットコントロール剤の特長は,ワイヤーやフェルトなどから移行した薬剤でパルプシート表面近傍のデポジットを選択的に処理することなどにより効率的にデポジット問題の解決を図る点にある。「スパノール」など弊社製外添型デポジットコントロール剤をワイヤーやフェルト,ロールなどに外添することで,ウエットエンドで発生するデポジット問題を大幅に低減することが可能となる。さらに「スパノール」が抄紙用具の表面を親水性に改質するという特性から,フェルト馴染み性や搾水性などを向上させる効果も副次的に得られる。
 本報では,外添型非イオン性デポジットコントロール剤「スパノールN―3250」による表面改質特性に関して,平板試料の表面ゼータ電位を測定するというユニークな手法を用いて解析した結果,抄紙用具材質である疎水性樹脂の表面に「スパノールN―3250」が速やかに親水性の吸着膜を形成することが確認されたことなどを報告する。
 また,炭酸カルシウムとスティッキーなどが複合したデポジットがフェルトを汚し目詰まらせている事例が散見される現状に対応し,「スパノールN―3250」のコンセプトを維持しながら炭酸カルシウムに対する優れた分散性も示す,新しい外添型デポジットコントロール剤「スパノールN―3253」についても併せて紹介する。
(本文50ページ)


カラー原料歩留り向上のためのCMCの新概念

シーピーケルコ社 テウボ ピーロラ

 新しい填料処方とコートスピードの増加が絶えず要望されるようになり,コーティングカラーに適切なレオロジー性と保水性を持たせることが,良好な操業と品質を持たせる上で必要不可欠な要素となってきている。
 すでによく知られた事実であるが,保水性が十分でない場合はカラーの固形分が上昇するだけでなく,コート層内で填料の粒度分布などが変化してしまうなどの重大な影響が出ることが明らかになっている。CMC(カルボキシメチルセルロース―Carboxy Methyl Cellulose)はその多機能性(保水性・レオロジー改良性・蛍光染料のキャリアー性)により,従来から良好な操業性のためにはコーティング処方に欠かせぬ重要な薬品の一つとされてきている。
 この論文では保水性という一般的な用語にとどまらず,カラー原料の歩留まりという概念とその意義を出来るだけ正確に論じていきたい。コーティングカラーにおいては,水以外にも微粒子顔料やラテックス,蛍光染料やステアリン酸系潤滑剤など多くの可動性原料が含まれており,それらもまたコーティング工程中に原紙内へマイグレーションを起こす対象となりうる。そしてこのことがコート紙の品質と操業性への影響において,コート原料の歩留まりシステムを論じることの重要性・必要性の根拠となる。
(本文60ページ)


新型レーザーピーク濃度計

スペクトリス株式会社 BTG事業部 バーテイル オルソン

 パルプ濃度調整の必要性は,パルプと製紙製造プロセスのコストが上昇し,工場利益が減少する時,コスト軽減に寄与出来る事である。
 製紙製造工程に関連するコストは,多くの場合全コストの50%以上になり,全体コストで大きな比重を占めている。
 濃度はコスト管理の一つの要素である。しかし,正確な濃度管理は,多くの問題を抱えている。パルプは,多くの異なった原料から構成され,繊維分,フィラー,薬品とその他添加剤の配合比が異なるか変化する場合が有る。これらは,異なった品質の紙が作られる一因になっている。
 品質の安定した良い製品を最終的に製造する事は製紙業界で成功する為のキーであり,最優先項目として捉えなければなりない。そして併せて重要な点は,パルプ濃度を明確に限定する事である。
 今日まで,濃度測定の一般的技術は,せん断抵抗を基本としている。この方法は堅牢でシンプルであるが,様々な影響を受け易く,使用の制限がある。この方式は繊維強度測定を基本として考えられ,それは繊維タイプとフリーネスに依存している。この方式での他の影響は,測定値は繊維だけが含まれており,微細粒子と填料は含まれていない点である。しかしながらこれらの制限があるにも拘わらず,BTG社製MEK―2400は,世界で最も信頼され紙パ業界で使用されている濃度計である。
 光学技術を基本とした濃度計として,反射又は透過式が有る。これらは一般的に繊維のタイプに依存し,フィラーとファインに過度に反応する事がある。
 マイクロ波技術を原理とした濃度計は,パルプ原料に含まれる気泡,電導度が測定に影響を与える恐れがある。マイクロ波技術は,ほとんど全体濃度の測定を行う,それでもフィラーは実際の60%程度の測定に留まる。
 以上の状況を踏まえ未来型パルプ濃度計としてスペクトリス社はレーザーピーク濃度計モデルTCR―2300を開発した。レーザーピーク濃度計はBTG社特許のピーク法を用い精度高くパルプ濃度測定を可能とした画期的な濃度計である。
(本文66ページ)


住友の脱臭放散システム:住友/SFLOW®
  ―「スチーム消費削減」&「COD低減」可能な高効率型―

住重プラントエンジニアリング株式会社 技術営業部 増田 浩二

 クラフトパルプ製造に伴う臭気の対策,特に蒸解関係のコンデンセートとエバポレータードレンを中心とした悪臭排水の処理に有効な設備として従来より放散(ストリッピング)技術が採用されている。弊社はスチームとエアの両方のストリッピング設備を多数納入してきた。弊社の保有する分離技術(蒸留,吸収,放散)の核となる規則充填物,住友/SFLOW¥外字(8064)(エスフロー)を中心に住友の脱臭放散システムを最新の納入実績も含めて紹介する。
(本文73ページ)


ペーパースラッジ焼却灰を主原料とする底質安定改良材を用いた海洋環境再生技術の開発

財団法人三重県産業支援センター 今井 大蔵

 英虞湾では海洋環境改善事業として浚渫工事が行われているが,高い工事費と処理した浚渫土の処分に困っている。我々はこの問題を打開するため,ペーパースラッジ焼却灰(PS灰)を主原料とする新しい底質安定改良材の開発と新しい浚渫土処理装置(ハイビアシステム)を開発した。この改良材と装置の組み合わせにより,含水率90%の浚渫土から含水率60%の固形物を得ることが可能となった。
 本研究では,得られた固形物を用いたアマモ場造成基盤としての利用研究や浅場・干潟造成に関する現地海域実験を通しての二枚貝などに対する生物親和性研究を実施した。また,固形物を常温にて微生物担体として加工し,硝化脱窒活性を評価する実験を行っており,微生物にとって担体自体が増殖環境を保持することが理想的であり,有機物がエネルギー源となるような多孔質体を目指している。さらに,石膏系等の固化材を併用し,魚礁や藻場造成基盤としての海洋ブロック製作の配合実験等も進めてきた。これらPS灰を利用した海洋環境再生についての研究について紹介する。
(本文80ページ)


全自動平判給紙ロボットシステム
 ―平判給紙完全無人化―

株式会社丸石製作所 青木 紀男

 平判給紙ロボットは製紙業界では導入が非常に難しいとされてきた設備である。
 オペレーターが製品を給紙する平判自動包装機では常に品質向上,高生産を目標として日々操業している。この環境を今回大きく変える革新的な設備,全自動平判給紙ロボットについて報告する。平判給紙ロボットは今までの操業をより効率よく,且つ高生産,安定操業を無人で行うことができる仕上げ工程で無くてはならない設備と位置づけている。またテープマーカー,インクマーカーを不要としたそのシート枚数のカウント方式についても併せて紹介する。
(本文89ページ)


2006日中紙パルプ技術交流シンポジウム開催報告

王子製紙株式会社 大槻 光明
王子製紙株式会社 佐治 聡一
北越製紙株式会社 越野 俊彦
紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 紙パルプ技術協会と中国造紙学会の共催による第1回「日中紙パルプ技術交流シンポジウム」が5月23日〜24日と中国の北京で開催された。日本側参加者は64名,中国側は100名以上であった。シンポジウム終了後には,研究所,工場の見学を行った。
(本文93ページ)


上下辺に一様圧縮荷重を受ける段ボール箱型容器(正方形筒)の弾性曲げ応力解析(等方性胴の場合)

愛媛大学地域共同センター 松島  理
愛媛大学名誉教授 松島 成夫

 上下辺の幅方向の変位零であるとして,一様圧縮荷重を受ける段ボール箱型容器(幅350mm,高さ300mm,板厚5.44mm,縦弾性係数291N/mm2,ポアソン比0.10)の側板の弾性曲げ変形表示を妥当な応力関数の組合を用いて導出することを試みた。この表示によって,諸曲げ応力を求め,それらの特性を議論した。  
 幅方向の曲げ垂直応力の絶対値最大値(
bxmax=−0.0652N/mm2)は側板辺中央に,高さ方向の曲げ垂直応力の最大値(bymax=0.262N/mm2),たわみ(=3.36mm)の絶対値の最大値,曲げ主応力の最大値(bymax=0.262N/mm2)は側辺中央にあり,曲げせん断応力(bxymax=±0.162N/mm2)および曲げ主せん断応力(=±0.163N/mm2)の絶対値の最大値は板4隅にある。諸曲げ応力(xmaxymaxxymax)と板の諸応力との比はbxmaxxmax=6.6,bymaxymax=2.6,bxymaxxymax=33.5であり,この値の大きさは薄く,広い側板の形状によって生じる。
(本文102ページ)