2006年7月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2006年7月


第60巻 第7号 和文概要


世界のパルプ需給と発展する中国の古紙事情

丸紅株式会社 パルプ部 新井  稔,野間 隆行
丸紅ペーパーリサイクル株式会社 井原 信之

 国際市況商品である市販パルプは,常に需給バランスに左右されながら価格は上下を繰り返してきた。市販パルプ生産者を取り巻く環境は,エネルギー高騰,為替変動,原材料確保などの観点から大きく変動しつつある。今後の需給バランスを考えると,供給面では南米を中心にLBKPの新増設が目白押しであり,NBKPの供給能力を上回っていく。需要面では,欧米,日本などでは成熟市場となっているが,今後も中国におけるパルプ需要は伸び続けると考えられる。また,原燃料費の高騰,対米ドル自国通貨高はサプライヤー各社の収益を圧迫している。特にカナダにおいてはコスト増大が顕著であり,NBKPを中心に市販パルプからの撤退も起こりつつある。以上のような状況より,今後NBKP/LBKPの価格差は拡大傾向にあるものと思われる。
 昨今,中国での古紙需要は年々増加して,日本からの古紙輸出先も中国向け80%を超えてきた。その状況下,中国における古紙市況が日本の古紙市況に与える影響は大きくなりつつある。今後の中国の紙・板紙生産の新増設がある中で,原料確保のためには,輸入調達と国内での回収率を高めることが重要となる。
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ユーカリ及びアカシア植林木パルプ繊維のリサイクル特性

東京農工大学大学院共生科学技術研究院 岡山 隆之

 木材パルプ繊維に乾湿繰返しのリサイクル処理を施すと,不可逆的な変質が生じ,シートの物理的性質が低下する。パルプのリサイクル性を客観的に評価し,リサイクル性の優れた個体を選抜,植林し,製紙用原料として用いることができれば,全体としてフレッシュパルプの使用量を減少させることができる。
 Eucalyptus globules及び3種のアカシア材から調製したクラフトパルプに,乾湿繰返し処理を施し,パルプのリサイクル性に影響を及ぼす因子についてパルプの繊維形態及び膨潤性を中心に検討し,シート物性との関係を述べた。リサイクル処理によるシート物性の変化は樹種間,個体間において相違があること,アカシア・ハイブリッド材(Acacia mangium×Acacia auriculiformis)の中にはAcacia mangium,Acacia auriculiformisと同等以上の高い引張強さを有する個体があること,リサイクルによるシートの引張強さの低下現象が指数関数による回帰式で表されること,回帰式によって求められるリサイクル時の引張強さの漸近値がシート密度,パルプの膨潤性,繊維形態と良好な相関を有することなどを明らかにした。
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ユーカリ植林木におけるKP操業経験

セニブラ社 アレシャンドレ・ラナ,彌富 俊治

 セニブラ社はユーカリ晒クラフトパルプを生産している世界でも有数なパルプメーカーである。1973年9月設立され,2001年7月に日本(日伯紙パルプ資源開発株式会社)の100%出資会社となった。
 234,827haの社有林面積を有し,植林面積は123,398haでE. Grandis及びE. Urograndis(E. UrophyllaとE. grandisのハイブリッド)を植林している。92,087haは保護林及び法定保護林となっている。パルプ生産能力は94万tで,現在20万t増産工事を行っており,2007年初めには完了予定である。
 パルプの増産及び品質安定には継続して取組んでおり,パルプ適正に優れた材種の改良も行っている。また,パルプ製造プロセスの安定を目的として,様々なパラメーターや分析方法導入を検討している。
 本稿では,セニブラ社の概要とこれまでの操業経験を報告する。
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低品質古紙の利用技術

株式会社 アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 江口 正和

 近年の古紙リサイクル率の向上,印刷技術の発達は,古紙原料の低級化に拍車を掛けている。一方,廃棄物処理,環境負荷軽減対策,完成原料の高品質化目標は,年々厳しくなり,古紙処理技術は,従来技術では対応しきれなくなっている。異物除去の追求は,機器単体の性能追求だけではなく,他のサブシステムとの組み合わせを踏まえたトータルシステムとしてエンジニアリングされなければならない。
 板紙,洋紙における低品質古紙の利用技術について新しいシステムや機器について実施例を含め一部を紹介する。
(本文19ページ)


低品質古紙の利用拡大と求められる技術的な対応

相川鉄工株式会社 技術本部 金澤  毅

 環境,エネルギーに関する世界的な対策の一環として日本製紙業界では古紙利用率の向上を強力に推し進めてきた。更に最近では,中国での製紙生産量の急激な伸びに伴い原料古紙の確保競争といった状況も見られるようになって来た。このような状況下においては,今までよりも品質の低い古紙の利用技術の確立が重要な課題となってきている。
 本稿では,洋紙用低品質古紙として,混入異物の種類や量の多い原料,難脱墨印刷やUV加工などの多い原料,例えば上質系雑誌や下級雑誌の混合物,MOWなどを想定して,その利用拡大に際しての技術的な課題と対策について検討を行った。特に,@パルパー以降に異物を持ち込まないパルピング,AUV,トナー印刷等に起因する色チリ,黒チリ,B粘着物の混入量増加問題,C原料種類の不安定に起因する灰分,白色度の変動を四大課題としてその具体的な対策案を報告する。また板紙用低品質古紙として,従来は焼却処分していた難処理古紙(耐水,耐湿,ラミネート,硬質ボード)や使用済み紙管を想定して,実際操業例を報告する。
(本文25ページ)


酵素製剤オプティマイズによる故紙由来スティッキィコントロールについて

バックマンラボラトリーズ株式会社 木村 漢明

 古紙再生パルプの需要が増大するにつれて,原料の品質は必然的に悪化してきている。古紙パルプ使用の抄造システムは,接着剤を始め,幾つかの有機物から発生する粘着物(スティッキィ)と呼ばれるデポジット問題を常に内包している。これら粘着物は完成品のグレードの低下,生産性の低下,リジェクトの増加等によるごみ処理コストの増加といった様々なトラブルの原因となっている。弊社は環境に優しい安全性の高い薬剤を使用して,完成品・損紙等を含めたこれら粘着物問題への解決の一手法を見出した。
 その薬剤はスティッキィコントロール剤オプティマイズである。本製品は新たに開発され,特許登録済みの酵素をベースとしている。オプティマイズは特別な安定化技術により製剤化されており,オフィス古紙・新聞古紙・ダンボール古紙といった古紙原料全般に効果を発揮する。粘着物を分解し,粘着性を低下させる働きに特化しており,結果として異物の量を減少させ,デポジットを抑制する働きを持つ。
 オプティマイズは危険性の高い薬剤に代わりうる酵素製剤であり,2004年に米国EPAよりその安全性を評価され,グリーン・ケミカル・アワードを受賞している。
(本文35ページ)


Aker Kvaernerによる最新の大型パルプ工場建設

クヴァナ パルピングAB スヴェンエリク・オルソン
クヴァナ パルピング株式会社 プロジェクト部 手塚 知行

 今日のパルプ産業界において明らかな投資傾向がある。新規設備は,主に早成樹産地にアクセスし易くかつ製造コストに強みがあるアジアと南米に建設されている。他の地域では主に既存の工場や設備機械の合理化や省エネ化が焦点となっている。これらアジアおよび南米における新規設備の建設の波は近年のAker Kvaernerの活動に大きく反映されており,本稿では近年世界に建設されたAker Kvaernerに関連する大型のパルプ設備,とりわけアジア及び南米に建設されたものについて取り上げることとする。
(本文42ページ)


中国・南米に於ける最新アンドリッツ社KPプラント,機械パルプ設備及び古紙処理設備の概要

アンドリッツ株式会社 萩原幹児,竹下陽介,福沢民雄

 アンドリッツ社は,特に2000年以降南米に多くのKP製造プラント一式を納入している。また,中国においては,過去10年間に多くの機械パルプ製造設備及び古紙処理設備を納入している。アンドリッツ社の最新KP製造設備は,蒸解設備としてダウンフロー型Lo―SolidsTM蒸解法(DFLS蒸解),未晒洗浄及びECF漂白プラントとして濾液分別型DDウォッシャーで構成されている。
 アンドリッツ社の最新機械パルプ設備として省エネ型のPRC―APMPTMリファイニング法及びRTSTM―TMP法が数多く導入されて来ている。
 本稿においては,アンドリッツ社の最新KP製造設備,機械パルプ設備及びDIP設備のフロー,特長等についてその概要を紹介する。
(本文50ページ)


中芯製造における紙管古紙の利用について

レンゴー株式会社 金津事業所 製紙工場 中西 武文

 近年は環境保全,資源保護に対する意識の高まりからリサイクル活動が活発化し,循環型社会の構築が進められている。こうした動きの中で国内の古紙利用率は着実に上昇し,2003年度には60%を達成するに至った。反面,利便性を追求する中で耐湿性を強化させるなどの機能紙の多様化が進み,従来の設備では離解が困難な難離解性古紙の増加が問題となっている。これらはその難離解性のため,離解に多くの設備動力を費やさねばならず,従来は大半が原料として再利用されることなく産業廃棄物として処分されていた。今後更なる古紙利用率アップが求められる中で,これら難離解性古紙の再利用は避けて通れない課題になりつつある。
 レンゴー金津製紙工場は1961年に稼動を開始した2台の中芯マシンを有し,1993年に古紙利用率100%となるなど古紙の利用促進を図ってきたが,上述のような問題に対応するため,2004年に紙管古紙処理設備を導入した。
 回収紙管古紙はそのままの形で投入され,加温,薬品添加等は行わない。離解原料は既設段古紙パルパーへ直接投入され,以下同じ工程にて精選処理される。このような条件で製品品質にどのような影響があるか調査した結果,テーブルテスト,実機試験結果ともに強度の低下が無く,特に問題なく運転可能であることが明らかになった。
(本文57ページ)


植林木LチップのKP操業への影響

日本製紙株式会社 石巻工場 原質部 安藤 和彦

 近年の地球温暖化対策や自然保護活動等による植林の増加,天然木伐採の減少から,日本の多くのKP工場では,年々植林木チップの使用比率が増加しており,その傾向は今後加速していくと予想される。我々製紙産業にとって,この原料特性の変化に上手に対応することは使命であり,それには操業工夫が求められる。
 石巻工場LBKP工程は,コンベンショナル蒸解,D―ECF漂白の正にオーソドックスなKPプラントである。当工程では,植林木チップは天然木チップに比べ,蒸解・漂白薬添が低く,歩留も高いため,経済面において大変有利であることを確認し,反面,粕発生増によりノッター詰まりを起こし易く,脱水悪化により漂白フィルターシート剥がれを起こし易いため,操業性の悪化も確認している。工場では,チップ配合組み合わせの工夫,その他操業工夫により対応している。ここではそれらを含めた,操業影響と対策例を紹介する。
(本文62ページ)


外材オール植林木への対応
 ―チップの低容積重化に対する操業対応―

北越製紙株式会社 新潟工場 工務部 パルプ課 鈴見 竜一

 当工場は,1989年に稼動したD系列と1998年に稼動したITC蒸解釜に続くE系列,2つのL―BKPファイバーラインを有している。平成12年には最適樹種の見直しを行い,その結果を踏まえて植林木比率を年々増加させてきた。現在は,外材はすべて植林木であり,全体の95%が植林木,残り5%が国内の天然木である。これにより,原木原単位,黒液発生率の改善,漂白薬品費や品質の改善など大きな効果を得ることが出来た。しかしその一方で,チップ容積重の低下が顕著となり,特にITC蒸解釜での操業が不安定となる問題が発生してきた。実際には抽出温度や缶壁温度が急激に低下し,ノット粕が増加する現象として現れた。
 その対策として抽出ストレーナーを変更してアップフローを弱めるなどの対応を執っているが,釜内洗浄の低下は,漂白薬品費や品質悪化にもつながる。そこで今現在も,極力アップフローを行いながら操業安定が図られるよう,最適な蒸解条件を模索しているところである。本稿ではこれらの対策や経験について紹介する。
(本文68ページ)


樹種の多様化による操業性への影響

中越パルプ工業株式会社 川内工場 森越  保

 近年,輸入木材チップの植林木比率が増加すると共に樹種も多様化し,操業面における変動要因が大きくなってきている。また今後も樹種の多様化が進むと考えられ,安定した操業を継続することが困難となる可能性がある。
 川内工場においては広葉樹チップの嵩比重の低下に伴う生産性の悪化,チップ配合による漂白性の変動を受けてきた。また樹種配合によるピッチトラブルも度々経験し,特にNBKP/LBKPスイッチ操業によるピッチトラブルが大きな問題となっていた。本報では広葉樹,針葉樹の材種配合の変動に伴う操業への影響,及び近年取組んでいる竹パルプ製造の操業経験について報告する。
(本文73ページ)


植林木チップの性状とパルプ特性の関係について

王子製紙株式会社 研究開発本部 製紙技術研究所 内田 洋介

 ユーカリ5種(E. globlus,E. nitens,E. grandis,E. camaldlensis,E. exerta)およびアカシア3種(A. mangium,A. auriculiformis,A. hybrid(A. mangium×A. auriculiformis))について,チップ品質(化学組成比,繊維形態)とパルプ化特性(蒸解性,パルプ収率)およびシート特性の関係について調査した。ユーカリ材,アカシア材別に見ると,チップ中のリグニン含有率と蒸解性およびパルプ収率は概ね相関したが,両材の間には大きな差があり,また相関から大きく外れる樹種もあった。一方,パルプの繊維形態とそのシート特性は材にかかわらず概ね相関し,繊維長は引裂強度と,繊維断面の形態は間接的に引張強度,層内強度,耐折強度と相関することがわかった。以上のことから,樹木のパルプ適性を評価するには蒸解試験は必須であるが,得られたパルプの繊維形態からシート特性を予測できることから,シート特性評価試験は省略できると考えられる。
(本文80ページ)


第92回カナダ紙パルプ年次大会参加報告

日本製紙株式会社 企画本部海外部 宮西 孝則

 2006年2月にカナダ・モントリオール市で第92回カナダ紙パルプ年次大会(92nd PAPTEC Annual Meeting)で開催された。米国紙パルプ技術協会(TAPPI)が主催する技術会議がテーマごとに別々の都市で開催されるのに対して,本大会は紙パルプの殆どの分野を網羅しているので,どの分野に紙パルプ産業の関心が集まっているのかがわかり,最新技術動向を把握することできる。工場の抱えてる課題を様々な視点から見直し,それに合った新技術を導入する絶好の機会でもある。
 発表分野は機械パルプ,化学パルプ,脱墨パルプ,漂白,非木材繊維,抄紙,塗工,環境,印刷,パルプ紙試験,設備保全,電気計装,プロセスコントロール,情報,エネルギーとコスト削減,バイオマス燃料,研究と多岐に渡っていた。発表者は大学,研究機関,機械メーカー,薬品メーカー,製紙会社と多彩であった。発表件数が249件,参加者が947名に及ぶ大会議であった。並行して開催された展示会(EXFOR 2006)には約250社のサプライヤーが製品を展示し盛況であった。
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ESCAによる水性グラビアインキの塗工紙への浸透性評価法の検討

国立印刷局研究所 尾崎  靖,内田 道治

 ESCAにより塗工紙へのインキ浸透を解析した。相対強度(Si2p/C1s)と相対強度(Cu2p/C1s)がESCAによって測定された。相対強度(Cu2p/C1s)はインキ顔料の露出率として表し,相対強度(Si2p/C1s)はインキが塗工紙を被覆した割合として表した。相対強度(Si2p/C1s)はインキ転移面積の増加によって減少し,最低値で一定となった。相対強度(Si2p/C1s)が一定になった領域では,インキが塗工紙のほとんどを被覆していた。この領域の相対強度(Si2p/C1s)は,ほぼインキビヒクルに対するインキ顔料の露出率を表した。
 細孔の多い塗工紙に印刷した試料の相対強度(Cu2p/C1s)は高かった。グラビア印刷物のインキ顔料の露出率はブリストー法による同じ紙の吸液性と相関があった。
 塗工紙への水性グラビアインキの浸透性がESCAにより得られた相対強度(Cu2p/C1s)から評価できることが分かった。この手法はグラビア印刷物に直接適応された。
(本文91ページ)