2006年6月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2006年6月


第60巻 第6号 和文概要


2005年度フォローアップ結果とエネルギー関連情報

日本製紙連合会 間  邦彦

 日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め,積極的に活動している。その中の地球温暖化対策の1つとして,CO2の排出抑制があり,省エネ目標として「2010年度における紙・板紙の化石エネルギー原単位を1990年度比13%削減する」を掲げている。
 1990年度を基点とした省エネ実績について1998年よりフォローアップし,結果を公表している。今回2004年度実績について報告する。
 1990年度に対して2004年度の化石エネルギー原単位は90.7%まで順調に削減されているが,CO2排出原単位は95.7%にとどまっている。これは政府の脱石油政策に従い,コスト上有利な石炭が多用されたことによる。このCO2削減対策が今後の課題である。
 2004年度は,省エネに加え,各社の燃料転換設備の稼動がはじまり,前年度に比べて化石エネルギーから再生可能エネルギー・廃棄物エネルギーへの転換が大きく進んだ。
 今後の各社の投資計画を踏まえて試算すると,2010年度は目標を達成できる見通しである。
 また,日本におけるエネルギーバランス,紙パのエネルギーバランス,全産業のCO2排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置づけについても,関連情報として触れた。
(本文1ページ)


無効電力制御による配電損失削減

日本製紙株式会社 勇払工場 工務部 電装課 保坂 智行

 勇払工場発電所では,発配電設備の非効率運用により,無駄なエネルギーを消費していた。非効率運用を着眼したきっかけは,受電点力率が進み10%となっていることを発見したことであった。その後,発配電フローを調査した結果,1号発電機が力率限定制御で運用しており,受電点における流出無効電力が余剰であることを判明した。受電点の力率は昼間帯において力率割引制度の関係上,受電点無効電力ゼロ(力率100%)で運用することが理想である。しかし,無効電力が工場外(北電側)に流出する運用は,発電機や変圧器などの損失に繋がる事となる。
 以上より,今回の発表では,電気的な見地から発配電設備が抱える問題点の洗い出しを行い,平成17年11月に実施した「受電無効電力制御化による配電損失削減」について紹介する。
(本文16ページ)


ニュービジネスモデルHDRIVEによる高圧モータの省エネルギー

株式会社日立製作所 情報制御システム事業部 薮谷  隆

 「京都議定書」の約束もいよいよ再来年がスタート年となる。物事には限界は無く省エネルギー(以下省エネと略す)にも終わりはないであろう。しかしながら古くはオイルショック当時から省エネに取組んできた製紙業界はじめ我が国産業界としては「乾いたタオルを絞る」領域に到達して久しい。
 筆者らは「高圧モータに関して省エネのポテンシャルは分かってはいるが,経済性などの課題から手が打てない」というユーザの現場サイドの悩みに応えるべく新しいビジネスモデルを構築した。「HDRIVE(エイチドライブ)」と名づけた「省エネサービスモデル」では,インバータという既存技術を使った高圧モータの省エネをユーザのイニシャルコストを不要とし,操業により刻々と変化する省エネ量(kWh)を測定すると同時に増減する省エネ量合計(月単位)リスクの一部を当社が負担するものである。
 今回,特許出願以来サービス累計台数が50台を超えた実績からHDRIVEの詳細を紹介する。
(本文22ページ)


リサイクルボイラの操業経験

三菱製紙株式会社 八戸工場 原質部 動力課 河村 定幸

 地球環境問題への関心が高まる中,三菱製紙では地球環境に「負の遺産」を残さず健全な状態で次世代へ引き継いでいくことを重要な経営課題とし,「三菱製紙環境憲章」の行動指針の筆頭に「CO2総排出量の削減」を取り上げている。その中で地球温暖化ガスの排出抑制を実現するために,2005年度中に1999年度CO2排出量実績の20%削減という目標を当社の取り組み目標として設定し,この目標達成への対策案の一つとして廃タイヤ,廃木材,工場内で発生するペーパースラッジ及びその他の可燃性廃棄物を燃料とするリサイクルボイラを八戸工場に建設し,2004年7月より営業運転を開始した。
 この設備の稼働により,重油・石炭消費量の削減,購入電力量の削減,余剰電力売電量の増加といったエネルギーコストの削減,及びCO排出量の削減に大きく寄与することとなった。本稿では,このリサイクルボイラの導入によるCO2排出量の削減およびエネルギーコストの削減事例について紹介する。
(本文30ページ)


二酸化塩素発生装置(R8)冷水製造設備における省エネ

王子特殊紙株式会社 江別工場 製造部 パルプ課 浜本 啓史

 紙パルプ産業では近年ダイオキシンによる環境問題が注目され,漂白薬品に塩素を使用しない漂白方法(ECF・TCF)への転換が求められている。江別工場でも2003年に漂白工程のECF化を実施した。それに伴い主な漂白薬品も塩素から二酸化塩素へと変更になり,二酸化塩素製造設備の変更(増産)も行っている。二酸化塩素製造ではまず二酸化塩素ガスを発生させ,そのガスを冷水にて吸収し二酸化塩素水を製造している。この冷水は蒸気エゼクター方式で冷却して得ていたがエネルギー消費が大きいため冷水製造装置を冷媒・コンプレッサー方式(チラーユニット)へ変換することで省エネルギーを実施出来たので報告する。
(本文36ページ)


発電設備の省エネルギー対策

大王製紙株式会社 三島工場 動力部 エネルギー企画課 長尾 義行

 三島工場は,地球温暖化防止対策として,2010年度までに化石エネルギー原単位を23%削減(1990年度比),二酸化炭素排出原単位20%削減(1990年度比)するために,省エネルギー及び燃料転換に取り組んでいる。中でも工場の電力供給元である動力設備は,ボイラー・タービンの運転効率を高めることで,大きなエネルギーの低減効果が得られることから,重点取り組み設備として省エネルギーを実施している。省エネルギーの実施については,ボイラー・タービン毎にエネルギーロスの仮説を立て,それを着眼点に検証することで,省エネルギー実施後のエネルギー低減効果を算出し,効果の高い設備から順に高効率化のための設備を導入することとしている。
 また,燃料転換については,ボイラーの助燃で使用する燃料を石炭などの化石燃料からバイオマス燃料へ転換することで二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる。
 本稿では,三島工場で実施を計画しているボイラー・タービンの省エネルギーの取り組みにおいて,タービン設備の効率の向上,及びエネルギー損失低減による発電出力の増加など,発電設備についての事例について紹介する。
(本文41ページ)


紙パルププラント用メカニカルシールの技術動向
 ―アウトサイド・静止形カートリッジ式メカニカルシール―

イーグル工業株式会社 営業技術部 高橋 秀和

 メカニカルシールは,有害な化学物質の機外漏出低減及び防止,省エネルギー・省資源化により直接,間接的に環境保全に貢献する重要な環境装置の一つと言ってもよい。紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,水ポンプ,パルプ用ポンプ,各種薬液用ポンプなどのポンプが多数使用され,これらのポンプ軸封部にはメカニカルシールが標準的に採用されている。最近では,メカニカルシールの取扱いの容易さ,組立誤り防止などのメンテナンス性も求められるようになり,カートリッジ式メカニカルシールが普及している。さらに,集約化・統合化による予備品の削減や部品の共通化も求められるようになって来ている。これらの要求を実現する新型カートリッジ式メカニカルシールを紹介する。
(本文46ページ)


トランプジェット™システムによる製紙薬品の効果的なミキシング
 ―清水不要の薬品ミキシングシステム―

ウェットエンド・テクノロジー社 ヨウニ・マトラ
株式会社マツボー 江島  顕

 トランプジェット™を使用した新しい薬品ミキシング技術により,フィルター清水を薬品希釈水として使用する事無く,ヘッドボックスストックへの効率的且つ迅速な製紙薬品の注入,ミキシングが可能となった。効果的なミキシングにより,品質の改善,マシーン運転性の向上,薬品使用量の適正化が実現できる。ミキシングできる薬品は,歩留向上剤を主として,更に,紙力増強剤,サイズ剤,填料,染料,スターチ,殺菌剤,消泡剤にも適用できる。同じ原理が,シックストック及びスラッジ処理でも機能する。この場合,インジェクションフローはシックストックそのもの,又はスラッジ処理前液が使用される。トランプジェットの革新技術およびシステムは,シンプルでプロセスの運転は容易である。稼動しているいくつもの生産設備で,本薬品ミキシングシステムにより抄造コストの削減およびフィルター清水消費量の大幅な節減を達成している。
(本文53ページ)


リファイナー(叩解機)の省エネルギー
 ―最新の取り組みと可能性―

相川鉄工株式会社 技術部 技術課 青嶋 和男

 世界的に環境保護対策が叫ばれている中,わが国の紙パルプ業界でも省エネルギーが大きな課題となっている。製紙原料調整設備において最も大きな動力を消費している工程の一つが叩解“Refining”である。本稿では現状の標準的なリファイナー,ツインディスク(ダブルディスク)リファイナーの更なる省エネルギーが可能か,その取り組み方は如何にすべきかを検討すると共に,より積極的に省エネルギーを図るための新しい叩解機の開発,ダブルコニファイナーの省エネルギーの可能性について,実績と試験結果について紹介する。
(本文61ページ)


中性領域での新聞古紙の脱インキについて
 ―北米での操業結果及びアジア―太平洋地区での可能性―

エカケミカルス インク ジム・マーザ

 通常,脱インキ処理工程はアルカリ領域で行われているが,中性領域へ変更する事により様々なメリットが得られる。エカケミカルス・PAPRICAN(Pulp & Paper Research Institute of Canada)・ボーウォーター社サンダーベイ工場の三社で,亜硫酸ナトリウムを使用する中性領域での脱インキ処理の開発に成功し,今回,一年間にわたる三工場での操業結果を報告する。
 脱インキ処理を中性領域下で行う事により,使用薬品コスト低減,パルパーでの有機コロイド状物質生成の抑制,夏焼け古紙の影響を低減,抄紙機でのピンホール減少等の結果が得られた。
 紹介する三工場すべてで,コスト削減や抄紙機の操業性改善,環境負荷低減などの効果により,現在も中性領域での脱インキ処理が継続して実施されている。
(本文72ページ)


ニューコンセプト・高効率ターボブロワ

伊藤忠産機株式会社 プロジェクト機器部 細谷 浩之,谷  直記

 韓国の会社である,ケイターボ社は高効率のターボブロワ(TB)シリーズを開発した。TBシリーズは半永久的なエアーフォイルベアリングと高效率高速モータを適用し,ルーツブロワに比べて30%以上のエネルギー節約及びメンテナンスの削減で長寿命のターボブロワである。機械的な摩擦が無いことと低騒音の構造にすることにより,低騒音75dBと画期的に減少し,速回転するので重さと設置面積を大幅に削減できた。振動がないので防振工事の必要がない。
 汚排水処理曝気用,セメント工場の搬送システム,製紙工場,纖維工場などProcess Airの供給装置として使用できる。また遠隔操作も可能であり,お客様の幅広いニーズに対応できる。
(本文82ページ)


磁気分離による製紙工場の廃水処理
 ―再使用可能な水の製造―

MSエンジニアリング 福西興至,井田 寛,柿原義行

 製紙工場からの廃水処理を高勾配超伝導磁気分離技術によって容量2,000トン/日規模での処理が可能。2,000トン/日プラントは担磁槽,沈澱槽,磁気分離槽の主要な槽からなり,担磁槽では懸濁物質,水溶解性物質の汚濁物質をマグネタイト微粒子,凝集剤として硫酸バンドを用いて担磁する。このようにして担磁した磁性フロックは沈澱槽において急速に沈降する。沈降し得なかった磁性フロックは磁気分離槽で磁性フィルターによって捕捉,分離される。このようにして処理された水はリサイクル水として再使用可能。
 用いた製紙廃水のCOD値は60〜200mg/Lの範囲にある。凝集沈澱と磁気分離処理によりCOD値は40〜60mg/Lに減少した。また,透明度も著しく上昇した(濁度5〜10NTU)。
 磁気分離部には3Tの超伝導磁石が設置され,口径400mmの円筒状の筒に磁性フィルターが詰められている。磁性フロックは98%以上の高い効率で磁性フィルターに捕集された。汚泥の付いたフィルターの洗浄と交換が連続的に行なえるシステムを開発し,超伝導磁石を止めることなく,連続的に廃水2,000トン/日の廃水処理の実用化試験を行っている。
(本文86ページ)


木材の科学と技術に関する国際シンポジウム(IAWPS2005)報告

東京農工大学大学院 岡山 隆之
東京大学大学院 空閑 重則

 2005年11月27日より30日までの4日間,パシフィコ横浜にて木材の科学と技術に関する国際シンポジウム2005(IAWPS2005)が開催された。本シンポジウムは,日本木材学会50周年事業の一環として,International Association of Wood Products Societies(IAWPS)との共催で行われた。シンポジウムの参加者は508名に達し,海外からも149名の参加を得た。発表件数は,基調講演4件,口頭発表163件,ポスター発表228件の併せて395件に上った。紙パルプ分野に関連する研究発表は,口頭発表12件を含む33件であった。
(本文93ページ)


加圧脱水方式の保水性測定に及ぼす濾過膜細孔径の影響と塗工実操業および印刷品質との相関性

三菱製紙株式会社 総合研究所 柴  裕一

 各種の塗工方式における塗工液の脱水挙動をラボレベルで完全に再現することは容易で無いが,比較的良く相関するデーターが取れる方法としてAA―GWRに代表される加圧脱水方式が広く定着している。これまで非常に一般的であったカオリンと澱粉を使用する塗工液の場合,5.0m細孔径のフィルターが利用されてきた。しかし,顔料の微粒化,各種材料のノニオン化などの新たな要因により,ある特定の塗工液中の粒子はフィルターを透過して吸水紙へ到達してしまう為,保水性を示すはずの脱水量が異常に大きい値を示す例が見受けられるようになった。そこで,本研究では,これまで一般的に使用されてこなかった塗工液成分にも対応できるフィルターの細孔径の検討行うために,5.0から0.05mの細孔径を有するフィルターを使用した実験を行った。また,塗工工程での塗工液の保水性の影響を調べる為に,実機レベルに近い高速パイロットブレードコーターを使用した。
 その結果,PVAやHESなどイオン性官能基を持たない水溶性バインダーを使用した場合や,比較的微細な炭酸カルシウムや酸化チタンを使用する場合に,ブレード塗工機での操業性や塗工紙品質の実態と相関しない,異常値とも言える非常に大きな値を示すことがわかった。しかし,0.4m細孔径のフィルターを用いた場合は,このような特定の塗工液でもより正確な予測や考察が可能であることがわかった。5.0mと0.4mのような複数の細孔径のフィルターを併用することで,これまで蓄積されてきた保水性の検討結果を生かしながら,様々な塗工液,塗工方法,塗工用原紙(基材)へ対応してその操業性や品質の予測や考察が可能となるであろう。
(本文101ページ)