2006年3月 紙パ技協誌
 
紙パ技協誌 2006年3月


第60巻 第3号 和文概要


一人勤務支援システム ―作業員の安全をどう確保する―

東芝三菱電機産業システム株式会社 産業システムソリューション技術部 中野  浩

 最近の装置産業系会社の工場では省コスト化のために,作業の省力化,少人数化を推進している。従来は複数人で行っていた作業を1人で行うことが増え,作業者の安全をいかに確保するかが,課題となっている。
 味の素株式会社殿においても業務効率改善に伴う一人作業化に際し,作業者の安全確保が急務になっており,そのため構内PHSインフラを活用したライフセンサを共同開発し,フィールド適用評価を実施した。結果は,作業者の安全確保に対しての有効性があると判断,適用拡大のためには,より小型化したセンサを開発する必要があると考えた。フィールド適用評価での課題を制約条件の中で解決し実用タイプのライフセンサ新たに開発をした。本稿では,ライフセンセの開発に焦点をあてながら一人勤務支援システムを紹介する。
(本文22ページ)


プロセスオートメーションへのシーケンサ応用最新技術

三菱電機株式会社 機器事業部 機器フィールドエンジニアリング部 上田  淳

 現在,製造業はますます厳しい環境に置かれており,一層の効率化,コスト削減,生産性向上が要求されている。企業の競争力強化,企業体質のスリム化,利益拡大を図るため,究極のコストダウンを目的に計装制御システムのダウンサイジング化が加速している。ここにおいて,オープン化・マルチベンダー化によるコストダウン,拡張性・柔軟性の向上,メンテナンス性向上が可能な計装システムに対するニーズが増大している。
 このような,ニーズに対し,シーケンサは,PIDなどの制御演算の強化やエンジニアリング環境の強化,アナログI/Oの品揃え強化,二重化システムによる高信頼化強化等の対応をすることで,計装分野においても広く使われるようになってきた。
 大量生産から変種変量生産へのニーズの変化にともない,小規模プラントの迅速な立ち上げや,バッチプロセス制御におけるプロセス制御とシーケンス制御の連携強化等が求められている中で,これからの計装制御システムとして,高速ループ制御と高速シーケンス制御の融合,柔軟性・オープン性・分散性に優れ,そして量産効果による低コストと信頼性を実現してきた,最新のシーケンサによる計装の有効な活用が重要となってきている。本稿では,このような現状を踏まえ,最新のシーケンサによる計装に焦点を当て,その市場動向,ユーザの期待,ユーザ要求と懸念,最新応用技術,DCSとの競合と補完などについて紹介する。
(本文26ページ)


PAにおけるPLC活用の現状と今後の展開

オムロン株式会社 コントロール機器統轄事業部 アナログコントローラ事業部 商品開発部 浪江 正樹

 PAにおけるPLC活用の方法としては,以前はDCS(分散型制御システム)などの下で,一部分だけの制御を担う形態がほとんどであったが,1990年代後半にPLC計装と呼ばれる本格的な計装制御システムが登場してからは,PLCをFA/PA統合コントローラとして活用するケースが増えている。
 PLC計装の適用は,当初は小規模バッチプラントに限られていたが,実績を重ねるに従い適用範囲が拡大し,2重化システムの登場もあって,現在では連続運転のプラントへも適用されている。また業種面でも,化学,製薬,食品,環境,新エネルギー,電力,金属,そして製紙と,活用の場が広がっている。
 本稿では,具体事例を含めたPAにおけるPLC活用の現状と,当社PLCおよびPLC計装の進化のコンセプトである,“Smart Platform”と“SMARTPROCESS”について紹介する。
(本文37ページ)


計器用空気の最適管理とコスト削減対策

王子製紙株式会社 釧路工場 計装システム課 村山  勧

 99年より当工場において新たな要員効率化工事がスタート,その他の新設,改造などの大型計画工事から2,000ループに及ぶ計装機器の増設が予想された。
 それに伴い計器用空気の消費量が大幅に増加することからコンプレッサ増設の検討を余儀なくされた。しかし設置費用は莫大であり何とか運転台数を増やすことなく対応ができないか検討し,徹底した配管の洩れ,無駄な消費をなくすことで03年その実現を見た。
 しかし,コンプレッサ運転台数は変わらず電力削減も無いことから表向きには何の変化もなく,成果はさほど評価されなかった。その後,工場の更なるコスト削減対策の推進もあり,これを契機にコンプレッサ運転台数の削減に向け新たな取組みを開始した。その結果,年間200万kWhの電力と7万7千tの冷却水量削減を実現した。
 本稿では空気源の最適管理に向けリスクの回避を含めた取組みについて述べる。また,消費空気量削減に大きな役割を果たし,耐振構造や安定制御に向け共同開発を行ったSP研究所製のバルブポジショナも合わせて紹介する。
(本文44ページ)


計装用空気リーク点検による計装設備の保全

株式会社テック東海 村松  智

 紙・パルプ工場の計装設備は,DCS化に伴いフィールドの計器類はその殆どが電子式となった。しかし,自動調節弁をはじめとしてまだ数多くの計装用空気を利用した重要な機器が使用されている。
 テック東海(東海パルプ)では,省エネルギー対策の一環として計装設備を中心に“空気漏れ検出器”を使った点検作業を行っている。この“空気漏れ検出器”は,気体や液体が配管から漏洩するとき発生する超音波を検出するもので,誰でも簡単な操作で使用でき,漏れ個所の特定や微小な漏洩の発見が容易に行える。そして,単に空気配管からの空気のリーク個所を発見するだけでなく,計装機器の異常な空気漏れの検知により,故障の未然防止という面で有効に活用している。
 2003年から2年間の活動からの,空気漏れ点検の実施方法とその成果及び点検作業上の問題点について報告する。
(本文52ページ)


簡易PLC計装によるプラント運転実績

北越製紙株式会社 長岡工場 工務部 施設課 神田 欣也

 近年,DCSあるいはパソコンDCSに変わるものとしてPLC計装の採用が広がりを見せている。
 そのような中で,北越製紙株式会社長岡工場では,2003年7月より試運転を開始した炭化材製造設備の制御に簡易PLC計装を採用した。
 本プラントは,メーカの初号機と言うこともありシーケンス,制御の変更の優位性からPLC計装を採用した。
 当工場では,初めてのPLC計装であったが,その導入経緯,エンジニアリングについて報告する。
 特にエンジニアリング部分に関しては,初めから当社で行ったので,DCSと比較するなかでラダーシーケンスと制御ループのインターフェイス,PLCとHMIのインターフェイスについて色々と面倒な部分があったので,この部分についても報告する。
(本文57ページ)


PC方式によるフィールドバスシステム構築

日本製紙株式会社 勇払工場 工務部 電装課 野々村博之

 従来のFoundation Fieldbus(以下,フィールドバス)システムは,専用の通信カードを実装可能なDCSを必要とするため,導入事例は新規のシステムに限られていた。そのため「導入コストが高い,システム立ち上げに必要な段取りが不透明,メーカ技術員の不足」などの問題点を抱えていた。本来の特徴である「マルチベンダ(対応機器であればメーカを問わず),プラグインディスプレイ(割付作業の簡素化),高信頼性(機器単体での制御確立)」と相反しているため,制御システムに依存しない構成を開発し,巻き返しを推進している。
 そういった流れの中で,2004年7月に「安価で誰もが扱えるフィールドバスの確立」を目指し,当時全く採用事例のない「汎用パソコン(以下PC)+Ethernet+SLD(リンキングデバイス)+フィールド機器(制御は個々で行う)」という構成で排水嫌気性設備の新設プラントに設置した。本格稼働に無事漕ぎ着けることが出来たので,今日まで得られた知見と今後の展開について報告する。
(本文63ページ)


PLC監視モニター導入による故障原因解析の迅速化

日本大昭和板紙東北株式会社 工務部 電装課 成田 浩悦

 マシンの高速化,抄出し時間の短縮等,運転効率向上を追及する生産工場では,設備トラブルでの時間ロスは極力回避したい。その為にはトラブルが発生した時に,短時間でその原因を見つけ出し,迅速な故障復旧が必要となる。
 自動抄出し・自動抄止め等,抄紙機の運転は年々自動化され,それに伴い制御系は複雑化している。通常シーケンスは順調に機能するので便利極まりないが,条件の不成立で渋滞が発生した場合,制御が複雑なほど原因調査に時間を必要とする。
 機器の起動インターロック条件をフローチャートとIBD(インターロック・ブロック・ダイヤグラム)で表示し,それを監視しながら運転する手法を取ったら,シーケンス渋滞の発生頻度は大幅に減った。
 PLC監視モニターで制御ロジックの遷移状態を監視可能にすることは,運転員や修理担当員の負担軽減,如いては運転効率向上に繋がるものである。
 本稿では,導入の動機,システム構成,画面内容について報告する。
(本文71ページ)


シーケンサのDCS接続による監視方法改善

大王製紙株式会社 三島工場 電気計装部 新工場電気課 森本 英和

 三島工場のKP設備の中で84年に稼動したLKP設備は建設時よりDCSで稼動しており,ECF化増設工事とあわせ既設DCSを更新する事になった。従来DCSとPLC(シーケンサ)は内部速度やインターフェースの問題で接続できなかったが,PLC内部には,単に操作/監視に必要な情報だけでなく保守,設備保全等に役立つ情報が存在する場合も多くあり有効活用が課題であった。
 最新のDCSへの更新により,PLCとの接続がより高速に大容量で可能となり,既存のパルプ洗浄設備向けのPLCも更新して統合監視できるようになった。長期のデータ推移をトレンド画面で見て,異常の早期発見や操業の安定状態をDCS画面で確認できるようになった。単に操作性の改善だけではなく,PLC内部の情報を可視化する事により保守,設備診断にも役立てることが可能となった。
 汎用PLCネットワークと最新DCSの接続による監視方法改善の事例を報告する。
(本文81ページ)


PLC計装の紹介と適用事例

株式会社オーネスト 大村  博

 計装・制御の分野では,コストパフォーマンスの優れたEI統合型コントロール機能を備えた「PLC計装」が従来のDCSの中/小規模のシステムにおいてその適用範囲を拡大している。特に紙パルプ工場においては,用/排水制御等の環境サテライト制御,監視機能として今後導入が急速に進んでいくであろう。
 この「PLC計装」にアドバンスドコントロールとしてファジィコントロール機能を付備し操作部として無段制御ポンプを適用して,従来の課題であった非線系pH制御システムを開発させたものである。これらの技術は今後,リプレースが活発におこなわれていくであろう環境監視用/排水処理システムのキーシステムとして,活用されことを期待している。
(本文85ページ)


調節弁メンテナンスの最適化・高効率化に向けて
―調節弁メンテナンスサポートシステム「Valstaff」―

株式会社山武 アドバンスオートメーションカンパニー  IPマーケティング部 福田  稔

 昨今,プラントの火災事故,人身事故などが頻発していることから,プラントの安全性,および安定操業に向けてのプロセス制御システムの見直しが始められている。その中で,調節弁はその動きが直接プラントに影響するため,調節弁に対するメンテナンスは,ポンプ,タービン,圧縮機などの回転機器などとともに非常に重要な役割を担っている。しかし,調節弁のメンテナンスは,今までの実績と熟練者の経験に頼るところが多く,うまく技術継承ができておらず,このままではプラントに何らかの影響を及ぼすような事態が起きるであろうことは容易に推測できる。
 ここでは,調節弁メンテナンスの現状を再認識するとともに,今後の調節弁メンテナンスを最適化,高効率化するための解決策の一つとして,当社で開発した調節弁メンテナンスサポートシステム「Valstaff」を提案する。
 調節弁メンテナンスサポートシステム「Valstaff(バルスタッフ)」(以下:Valstaff)とは,制御システムのサブネットワークとして構築するメンテナンス支援情報システムであり,調節弁の稼動状況に関わる情報をスマート・バルブ・ポジショナから収集し,調節弁メンテナンスに必要な意思決定の支援,メンテナンス業務の最適化・高効率化に貢献できるシステムである。HARTシステム,FOUNDATIONフィールドバスシステム,アナログ/FOUNDATIONフィールドバスハイブリッドシステムの3種類のシステム構成から,制御システム,現場の状況などに合わせた最適なシステムを選択できる。
 このシステムにより,定期修理で分解点検する調節弁選定のための追加指標,プラントに異常が起きた場合の作業工数削減,調節弁監視強化による予知保全,調節弁メンテナンスインフラの確立の実現を目的としている。
(本文93ページ)


最新のCD適応制御による濃調プロファイル制御パフォーマンスの改善

横河電機株式会社 システム事業センター P&Wソリューション部 丸野 裕展,佐々木尚史

 最新のCD適応制御技術を中心として,弊社の濃調プロファイル制御のコンセプトについて紹介する。弊社の濃調プロファイル制御は,次の4つの基本コンセプトを持つ
 仮想操作端対応最適化制御
 モデル予測制御
 自動チューニングツール
 CD適応制御
 CD適応制御は,世界で始めて位置対応同定の完全自動化を実現した。プロファイル制御実行中に,常時,自動的に位置対応の解析,修正を行なうことができる。
(本文101ページ)


CaCl2,LiCl及びコロイダルシリカを用いて処理した多孔及び緻密全熱交換紙の水蒸気透過挙動

延世大学(韓国 ソウル) 化学工学科 ヨム ボン ヨル,ミン ビョン リョル

 この論文は,空調用全熱交換器に使用する紙に関するものである。二つの形態の全熱交換紙(多孔紙と緻密紙)についての水分透過特性について観察した。全熱交換紙の水分透過性能を向上させるため,吸湿材としてCaCl2,LiCl及びコロイダルシリカを使用した。ASTM規格によるウェットカップテストにより,テストセル内部の水面と全熱交換紙の試料間の距離変化による水蒸気透過度のテストを施行した。多孔及び緻密全熱交換紙の両方の場合について,空気層の幅を13mmから6mmに減らした時,2―2.5倍の水蒸気透過度の増加を観測した。また,吸湿材の処理によって全体的に水蒸気透過度が増加したが,一定量の吸湿材処理以後はそれ以上の増加は見られなかった。緻密全熱交換紙の場合,吸湿材処理による水蒸気透過度の増加が多孔性のものに比べて顕著に現れ,また処理時には,多孔全熱交換紙に匹敵する水蒸気透過度を持つ事が分かった。
(本文111ページ)