2005年10月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2005年10月


第59巻 第10号


先進のスクリーニングコンセプト

株式会社 アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー エンジニアリング部    
アンドレアス・サウアー,岩重 尚之

スクリーニングは製紙原料から異物を取り除くための,決定的な工程である。スクリーニングを検討する場合,異物の種類に応じた手法でこれを行うことを検討しなければならない。原料がバージンパルプなのか古紙パルプなのか,漂白パルプなのか未漂白パルプなのか,除去したいのはシャイブなのかスティッキーなのか,そのような異物が最終製品にとってどのような影響をおよぼすのか,つまり「何をスクリーニングすべきか」という命題のもとに,スクリーンのホールサイズやスロットサイズを検討しなければならない。
しかし,これらの検討を行う前にスクリーニングという処理方法について検討しておくべき重要な事柄がある。
ヨーロッパでは最近「先進のスクリーニングコンセプト」が開発されている。スクリーニングシステム内で,たとえばフィードフォワード,カスケード,タンデムなどをいかに組み合わせるかといったもの。または,従来のMC丸孔スクリーニングとLCスロットスクリーニングからなる粗選精選システムに加え,最近のDIPスクリーニングシステムで用いられるようになってきたICスロットスクリーニングをどのように経済的に導入していくかなどがその開発のテーマとなっている。つまり,これらは常に投資コストと精選効果やファイバーロスを高次元で妥協させるためのコンセプトなのである。
本報告では,最新のシステム技術とそれに伴う投資コストと精選効果の検証を取り上げた。
(本文1ページ)


新しい時代のカンバスクリーナー

株式会社 KGKエンジニアリング 芝田 明義

製紙業界に於いては古紙の利用率増加と共にもたらされた最大の課題が正に品質の安定である。品質の安定にはいくつかのファクターが有るが,その中でも旧来より取り組まれてきた手法の一つが所謂カンバス洗浄と云う発想である。
古くは多量の清水を使用したシャワー式洗浄から始まり全面洗浄を標榜するトラバース式洗浄,環境ホルモンの問題が発覚し今日ではイメージ的に殆ど使用出来ない状態に有る薬品洗浄,ブラシロール洗浄から高圧水洗浄に至るまで多岐に亘る。しかしながら今日に於いても完成度の上で今一歩であった事は否定できない。
今回紹介するプロジェット社は「カンバスの汚れは蓄積されてから問題を起こす」「高機能・多機能をいくら標榜していても現場が使いやすい物でなければならない」「中途半端な理論の洗浄はかえってたちの悪い洗浄ムラを起こす」「どんなに高価なクリーナーを準備してもカンバス自身の交換は避けられない」等を重要要件と定め1997年より開発を開始した。
今回,旧来の洗浄システムの問題点を再考し,旧来とは違ったプロジェット社の洗浄システムの紹介をする。
(本文6ページ)


メンテナンス性に優れた一軸ネジポンプ
―メンテナンス間隔が長く,分解・組立性に優れた一軸ネジポンプ―

株式会社イワキ 設計4部 敦賀 義朗

一軸ネジポンプがメンテナンスフリーであれば,消耗品が無くメンテナンスコストはかからない。
ここで紹介する一軸ネジポンプはメンテナンス間隔が長く,よりメンテナンスフリーに近くなっている。さらに分解・組立も容易な構造を持っており,これらの特徴をポンプの構造・構成を通して説明する。
モノポンプは既に紹介されているが,このポンプの特徴は5年保証のフレキシャフトとポンプシャフトが二重シャフト構造になっていることにある。この構造がメンテナンス間隔を長くし,保守点検時には分解・組立を容易にしている基本となっている。
これらの構造に加え,液性に合ったロータのコーティング種類を選択し,シールメーカと共同開発した信頼性のあるメカニカルシール構造を採用することで,ポンプ全体の寿命を長くすることが可能となる。このためロータ・ステータの交換以外のメンテナンスを長期間行っていない場合がほとんどである。
一般的に使用されているピンジョイントやギヤージョイントは定期的なメンテナンスが必要で,特にギヤージョイントの分解・組立には熟練した作業者を必要とする。
従来の一軸ネジポンプをモノポンプに更新することにより
@ メンテナンスコストが1/3
A 口径150A以上では年間60万円以上のオーバーホール代が不要
という具体例が増えている。
モノポンプの構造は熟練者を必要とせずに分解・組立が可能なため,小型から大型のポンプまでメンテナンスが自社内で充分対応できる。更に適切な部品を選定することにより,ポンプ全体のメンテナンス間隔が長くすることができ,部品代,人件費などメンテナンス費用を総合的に抑えることが可能である。(本文10ページ)


製紙機械に適用する非汚染性皮膜の要素技術開発

株式会社野村鍍金 技術部 田口純志,藤田得生,仲井啓治  
財団法人応用科学研究所 鄭 容宝

1980年後半頃から,製紙マシンの高速化と紙料中の古紙含有量の増加など諸々の要因により,各種製紙用ロールの「よごれ」の問題がクローズアップしてきた。非汚染性に優れた表面被覆材料として,まずフッ素樹脂コーティングの製紙用ロールへの適用が始まり,それなりの効果が認められた。
しかし,皮膜損傷のトラブルに加えて耐久性に問題のあることもあって,適応範囲がかなり制限される状態にあった。そこで,本技術開発では,フッ素コーティングに代替できるだけでなくこれを凌駕する非汚染性を有する新規めっき皮膜の開発を目指して,検討を重ねた結果,水との接触角が150°以上の超撥水性を有するだけでなく,皮膜厚も自由に制御できる新規皮膜を創製できる見通しを得た。この皮膜はフッ素樹脂よりも高い硬さと離型性を有するので,非汚染性皮膜としてフッ素樹脂コーティングが用いられていた製紙機械用ロールに代替し得る非汚染性に優れたロール特性を有する。
なお,この皮膜をメタリングロッドコーターのメタリングロッドに適応すべく,繰り返し塗工試験を行った結果,従来用いられているCrめっき皮膜と比べてスジムラが極端にすくなく極めて良質な塗工面が得られることを見出し,メタリングロッドに最適な皮膜になり得るとの知見を得た。
(本文17ページ)


欧米の製紙メーカーにおける改良タルクでのピッチ,粘着物対策の実績

日本ミストロン株式会社 早川 伸吾 
ルーゼナック J. YORDAN,V. LASMARIAS,P. BIZA,G. WILLIAMS

最新の製紙技術には,最新の添加薬品が求められる。特に,環境保護への重要性が求められるにつれて,経済性の改善と製品の安全性への要求も高まっている。タルクは天然産物であり,次の3つの大きな特徴で製紙産業にて使用されている。
@ 疎水性/親油性である
A 硬度の柔らかな鉱物である
B 扁平板状である
最終需要者に対しての品質の向上あるいはコスト低減を目的としタルクは使用されているが,作業安全性および環境保護の観点でも使用されている。
本稿では,新規に上梓された表面処理タルクに関して,欧米の工場での実績を記す。2種類の表面処理タルクを使用した,新聞工場,上質紙工場,板紙工場での様々なパルプ(含TMP,GP,DIP)での実績である。
(本文24ページ)


高不透明性を付与したピグメントの開発

白石工業株式会社 田村元志,松田紀昭,細井和幸

製紙業界では長年の間,紙の白さ,不透明性を向上させる目的で炭酸カルシウム,二酸化チタンなどが填料として広く使用されてきた。しかし,不透明性を改善するために,例えば炭酸カルシウムを用いると,充填量を多くする必要があり,品質面で表面強度や耐磨耗性の低下を招く。一方,二酸化チタンは不透明性付与効果は大きいが,高価であり,また粒子径が小さいためにワイヤーパートでの歩留まりが低く,白水回収系内での負荷が増加するという問題があると言われている。
近年個々の欠点をカバーし,互いの利点を付与する複合材料の研究開発が行われ,二酸化チタン―炭酸カルシウム複合粒子において数例の特許が報告されている。
今般開発したピグメント「Valkofil」は,二酸化チタンと水酸化カルシウムの混合水系懸濁液を高剪断領域で炭酸化させることにより,二酸化チタンをより均一に分散し,さらにその粒子の周りを炭酸カルシウムで被覆させることに成功した。これを内填した手漉き紙の特性は,優れた不透明性を付与することが見い出されたので,ここに紹介する。
(本文30ページ)


安定化臭素―アルカリ抄紙工程での微生物制御の新技術

Nalco Pacific Pte社 紙パルプ事業部 グレイ・W・ジョンソン

世界的な中性―アルカリ域での紙製造方法の導入に伴い,ウェットエンドに適用する微生物制御技術が脚光を浴びている。ここ10年ほど操業効率向上やコスト削減に向けた努力がなされてきたが,ハロゲン酸化系殺菌剤の広範な利用に伴い,腐食の増加,ウェットエンド添加物への影響,抄紙工程のクローズド化,AOX放出による環境問題への懸念の増大など,操業上の問題が浮上してきた。
このような問題に対処するために新たに開発した安定化臭素ベースの殺菌剤は,ハロゲン放出速度が遅く,即効性と持続性の両方を兼ね備え,その他の添加物との適合性に優れていることから,腐食の減少や有害な殺菌剤の減少が実現できた。
(本文36ページ)


新しいワインダー・コントロールの実例
―AWAシステム導入によるワインダーの運転効率向上―

コグネックス株式会社 SIS営業部 黒崎  篤

コグネックスが新しく提案するワインダー・コントロール・システム「アドバンスト・ワインダー・アドバイザー(Advanced Winder Advisor:以下AWA)は,上流側の抄紙機やコーターにおいてコグネックスの欠陥検査器の検査結果に基づき,ワインダーまたはリリーラーをコントロールしながら欠陥位置を±10cm以内の精度で停止させることを可能にしたシステムである。
 ±10cm以内の停止精度を実現する事により,従来のワインダー作業に比べて,ワインダーで処置する欠陥個数や枠数が大幅に増加した。また,オペレーターによるワインダーの停止作業が不要となり作業負担を軽減することに加え,任意の位置でも停止可能なため,リール・エンドで正確に停止させることにより歩留まりアップを図ることも可能である。
本稿では,システム構成例,運用方法を紹介する。本システムの導入効果は,生産ラインの状況により異なるが,(1)処置時間の短縮と(2)巻き芯損紙の削減において,大きな効果を得ることができる。
(本文42ページ)


「生産現場の可視化」と「オペレーション環境統合」
 ―OperationAnywhere(オペレーション・エニイウェア)―

株式会社 山武アドバンスオートメーションカンパニー 道司  学,牧野  豊

デジタル分散制御システム(DCS)の導入により,プラントの中央監視/操作によるプラントの自動化がなされてきたが,様々な理由から現場作業が依然として多く残っている。その状況において,現場を支えているのが団塊世代を中心とするオペレータであるが,その高齢化に伴い,生産現場の中核となる中堅層が減少し,熟練オペレータから若手への世代交代が確実な状況にある。安全で安定したプラント操業を維持するには,熟練オペレータのノウハウをいかに次世代に継承していくかが大きな課題である。
従来のDCSでは,中央集中オペレーションアーキテクチャーを採用しているため,現場作業への支援機能は充分であるとは言えなかった。そこで山武はこの課題を解決するコンセプトとして,「OperationAnywhere」を提唱する。「OperationAnywhere」とは,場所に制約されずに「生産現場の可視化」と「オペレーション環境統合」を実現する次世代プラントオペレーションの姿である。「生産現場の可視化」とは,オフィスや遠隔地から生産現場の状況と,現場において他工程も含めたプラントワイドな生産状況が把握できることである。「オペレーション環境統合」とは,一つのWindows端末から複数のシステムを同時に運転監視できる統合環境であり,オペレーション環境統合のためのコストは従来と比べてミニマムとなっている。ここに「OperationAnywhere」とそれを実現する製品群を紹介する。
(本文46ページ)


最新の段ボール古紙の処理技術について

アンドリッツOy K.ヌルミネン  
アンドリッツ株式会社 竹下 陽介

本稿では,段ボール古紙原料の消費量及び値段の向上,また原料品質の低下に対して対応する新しいコンセプトのパルピングシステムの紹介を行う。
アンドリッツは,すでに140機以上に及ぶドラムパルパーの実績を持ち,洋紙分野で多くの経験をもっていた。ドラムパルパーは,既存のいかなるパルパーより穏やかでかつ効率的なパルプ化を行うことができ,また得られるパルプ品質が高い特徴を持っている。段ボール古紙分野にたいしてドラムパルパーを有効に活用できるかについて説明したのが本稿である。
最初に,アンドリッツのテストプラントを使用し性能確認を行い,その後実機導入後の操業結果の比較を行った。結果としては,繊維強度及び異物混入(特に粘着系異物)がすくなく非常に良質のパルプ原料を得ることができた。本プロセスは現在の原料品質の低下に対応する可能性をもったシステムであると言える。
(本文53ページ)


第72回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会 木材科学委員会

第72回紙パルプ研究発表会は,2005年(平成17年)6月23日(木)〜24日(金)の2日間,東京都江戸川区の「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計41件で,口頭発表が29件,ポスター発表が12件であった。参加者は273名であった。発表内容の概要をまとめた。
(本文64ページ)


第13回 木材,繊維およびパルプ化の化学に関する国際シンポジウム参加報告

東京大学 大学院農学生命科学研究科 飯塚 尭介

第13回木材,繊維およびパルプ化の化学に関する国際シンポジウムが,平成17年5月16日〜19日,オークランド(ニュージーランド)において開催された。第59回APPITA年次大会に併せて開催された今回の大会は,大会の名称をそれまでのInternational Symposium on Wood and Pulping Chemistry(ISWPC)からInternational Symposium on Wood, Fiber and Pulping Chemistry(ISWFPC)に変更し,一層の発展を目指す最初の大会であった。
二年毎に開催されるこの国際会議は,1981年にストックホルム(スウェーデン)で第1回が開催されて以来,毎回非常に多くの参加者を得ており,現在では関係分野の研究者にとって最も重要な国際会議の一つとして定着している。ここでは発表された報告の概要とともに,全般的な会議の模様,大会会場の雰囲気等,について報告する。
(本文86ページ)


段ボールシートの垂直圧縮に関するフルート構造の最適設計

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 三上英一,茨木孝昌,小高 功

段ボール箱は様々な製品の包装用途で幅広く用いられており,段ボール箱の圧縮強さは最も重要な要求品質の一つである。段ボール箱の圧縮強さは箱を構成する段ボールシートの圧縮強さに大きく依存する。段ボールシートの圧縮強さを向上させるためには,従来から構成原紙の坪量を大きくしたり,バージンパルプの配合量を多くしたり,中しんの使用量を多くする等の方法がとられてきたが,これらはどれもコストアップを伴うものである。そこで我々はコストアップを伴わずに段ボールシートの垂直圧縮強さを向上させるため,有限要素法による非線形構造解析を行いフルート形状と垂直圧縮強さとの関係を考察した。なお,解析モデルはシェル要素(殻要素)にてモデル化し,入力する物性は直交異方性弾塑性を仮定して解析を行った。また,原紙の層間はく離等による破壊を考慮するため,ショートスパン圧縮試験の測定値とシミュレーションから規定した新たな破壊基準値を導入して垂直圧縮強さの算出を行った。
その結果,原紙の破壊を考慮したシミュレーションによる圧縮強さの計算値は実測値とよく一致した。ライナーと中しんの接触近傍の曲率半径Rが小さく,糊幅gが大きいフルート構造が,垂直圧縮強さが大きくなり,コスト面からも有利であることが分かった。
さらに,実際にフルート形状の異なる5種類の段ボールシートを作製し垂直圧縮強さを比較したところ,曲率半径Rが小さく,糊幅gが大きいフルート構造の垂直圧縮強さが大きい結果となりシミュレーションの傾向と一致した。
(本文94ページ)


和紙の力学的性質の特徴

京都大学 大学院農学研究科 山内 龍男,宇佐美直治

木材パルプを原料とする一般洋紙と比較して,楮を主原料とする市販の和紙には以下のような特徴が見られた。坪量が小さく,厚さは比較的薄い。シート密度および弾性率は小さく,繊維間結合もあまり発達していない。しかしながら紙面方向の各種強度は大きく,とくに引裂強度や耐折強度は極めて大きい。一方厚さ方向の強度である紙層剥離強度はかなり小さい。
(本文104ページ)