2005年9月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2005年9月


第59巻 第9号


MJパルパの開発とその性能について

三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 三浦 俊和

最近は,環境問題の観点から使用済の物を可能な限りリサイクルする資源循環型社会への移行が進んでいる。しかし,近年は生産性の向上,輸送手段および利便性の変革から耐湿性を非常に強化した機能紙が増加の一途をたどっている。
こうした機能紙は,食品包装容器を初めとし,従来は木材梱包していた様な機器の梱包容器等にまで,多方面に非常に多く使用されている。
これらの機能紙の回収古紙に共通して言える事は,従来型のパルパではとても離解が困難または離解して再利用するとしても,離解の為に多くの設備,エネルギーが必要につき製紙会社では敬遠される古紙で,従来は大半が焼却処理または産業廃棄物として処理されていた。
しかし,この様な難離解性古紙も,これからは前記の社会情勢から回収処理し,再利用する事が義務づけられる様になってきた。
この度,弊社ではそうしたニーズに応えるパルパとして,新しいコンセプトに基づいて設計した省動力型のMJパルパの開発に成功し,既に納入した初号機も順調に稼動したので,以下にMJパルパとその省動力効果についての紹介をする。
(本文1ページ)


新しい外添薬剤による製紙工程の問題解決
―「スパノールN―3250」の紹介―

ニチユソリューション株式会社 製紙薬剤事業部 研究室 安藤 嘉浩

我々が「ダラスプレー」「スパノール」などの外添型カチオン性デポジットコントロール剤を上市してから,13年余が経過した。抄造工程のワイヤーやフェルト,ロール部分に薬剤を直接スプレー(外添)することによりウエットエンドで発生するデポジット問題を大幅に低減するこのプログラムは,国内初の画期的なものであり,操業性を向上させる薬剤として多数の製紙工場において使用されている。ワイヤーやフェルトなどの用具から移行した薬剤でパルプシート表面近傍のデポジットを選択的に処理することにより,効率的にデポジット問題の解決を図る点が外添の特長である。
白水のクローズド化,古紙利用率の増加,古紙品質の悪化,中性抄紙化,抄速の高速化など近年の操業状況に起因して,デポジットに由来するトラブルは増加傾向にある。このような背景から我々は,「表面を親水化する」というコンセプトに基づき,デポジット表面および用具表面を親水性に改質する新しい外添型非イオン性デポジットコントロール剤「スパノールN―3250」を開発した。
「スパノールN―3250」はデポジット付着防止効果が優れているだけでなく,デポジット問題の有無に関わらずウエットエンドにおける脱水効率を向上させることも見出されている。本報では,製紙工程における操業性向上を目的とした,「スパノールN―3250」による新しい解決法を提案する。
(本文8ページ)


BTFダイリューションシステム導入による効果
―品質向上により期待されるもの―

川之江造機株式会社 設計部 第一設計課 矢野 順一

既設ヘッドボックスからテーパヘッダを撤去して,ヘッドボックス自体は改造することなくCP化することで製品のプロファイルが著しく向上することは納入実績データから最早明らかである。繊維配向性の改善,カールの減少,シートエッジ部の品質向上などから十分に改善の期待を満足するものであった。では,それらの品質改善が具体的にどのようなメリットとなるかという一歩踏み込んだBTFシステムの導入結果の考察を行なった。
品質改善から派生した種々のメリットを通じて,我々のBTFシステムが皆様のお役に立てればと願っている。
(本文16ページ)


軸受の予防保全と機械停止時間の短縮

エフ・エー・ジー・クーゲルフィッシャーAG J.ニットケ

製紙メーカーで,多くの場合予測できないベアリングの損傷が運転停止と大幅な生産ロスを生じ,予想外のコスト発生を招く原因となっている。このような予測不可能な運転停止を阻止するために,製紙工場では定期的なベアリング交換やモニタリングなどいろいろな予防保全が行われている。
最近,事前に軸受の損傷を発見することができることからオンラインモニタリングが注目を浴びている。最新のマシーンでは,主要のロールだけではなくガイドロールなどほかのロールにもセンサーが取り付けられている。オンラインモニタリングでは,ベアリングの振動を監視し周波数分析を行うことによって損傷が見つけられる。経験を重ねることによって周波数分析結果から残存寿命の予測が可能になる。
残存寿命の予測が可能になれば,マシーンのシャットダウンの時期を計画し,損傷のベアリングを効率よく交換できるようになる。しかし,潤滑不良や設計不良などの損傷の根本的な原因を知りその対策を行うこと,そして部品の交換が容易にできるような設計を行うことが更なるシャットダウン時間の短縮と保全コストの削減につながる。
(本文21ページ)


製紙用ゴムロールの超音波探傷システムの開発

日鋼検査サービス株式会社 渡辺 茂樹  
国策機工株式会社 有路 光直  
日本製紙ユニテック株式会社 小林 和夫

現在まで抄紙用ゴムロールの剥離検出方法は打音,触覚,視覚等,検査員の感性による定性的な検査手法で行われている。そこで非破壊検査で定量的な剥離検出を目標に製紙用ゴムロール超音波探傷システムの研究開発に着手し,判定手法の確立,並びに特許申請を経てシステムを完成させた。本システムはロール表面から超音波を入射させ剥離部境界面から生じる反射波の位相情報に着目することにより剥離を検出する。
開発装置は現在まで全国で6工場,検査本数で数十本の検査実績があり,装置運用により,ゴムロールの剥離を迅速かつ定量的に検出可能なことが確認されている。更に本システムの検査データは電子的に保管されるため,経年的なデータの追跡,調査,評価を行うことによりゴムロールの信頼性向上,製品の品質安定に寄与することが可能である。本稿は本システムの原理,開発内容及び実際の検査事例について紹介する。
(本文25ページ)


積分球型UV分光光度計によるラテックス表面濃度分析

JSR株式会社 高分子研究所 松井  尚,松田 信弘
JSR株式会社 物性分析室 橋谷 龍紀
JSR AMERICA INC. 座間 義明

本報では,拡散反射光の全てを検出し反射率の絶対値を直接的に測定できる積分球型UV分光光度計を用いて塗工層のラテックス表面濃度を評価する手法について検討を行った。
今回の検討では,ラテックスが均一に分布する系を想定したKubelka―Munk式を用いて散乱係数と吸収係数を決定し,異なるラテックス量を含有する塗料の測定から,これら係数のラテックス濃度依存性を決定した。また,実測した散乱係数と吸収係数のラテックス濃度依存性を用い,ラテックスが深さ方向に分布することを想定したKubelka―Munk式を解くことにより,塗工層表面からある与えられた深さまでの領域に存在するラテックスの平均濃度(ラテックス表面濃度)と反射UV測定の反射率との関係を検討した結果,塗工層表面から深さ約1〜1.5μm程度までの領域に存在するラテックスの平均濃度を決定できることが導き出されたのでここに報告する。
(本文34ページ)


微粒子型アニオンポリマーにおける歩留り向上システム

ハイモ株式会社 湘南研究センター 技術研究所 境  健自
開発研究所 平田 和之

近年,マシンの高速化,硫酸バンドの減少,古紙比率の増加等の理由により,濾水性歩留り向上剤の重要性はますます増大している。当社は,カチオン性ディスパージョンポリマー(DRシリーズ)とアニオン性ディスパージョンポリマー(FAシリーズ)を組み合わせて用いるツインズシステムを開発し,多くの製紙工場でこの分野に実績を上げてきている。
このFAシリーズは,水溶性ポリマー粒子を水系に分散させる当社独自のディスパージョン技術を用いたアニオン性のPAM系高分子であり,抄紙プロセスにおいて,良好な地合を維持しつつ,灰分歩留りが高いという特徴がある。この特異的な凝集挙動は,アニオンポリマーFA―230の微粒子特性が関与していることがわかった。
当社は,その微粒子挙動の機能を解析し,高速マシンに適用するために改良を加えた結果,改良アニオン微粒子型ポリマーを開発することに成功した。このアニオンポリマーは,分子レベルでの構造制御により,ポリマーでありながらより強い粒子性の側面を持ち,溶解性,分散性に優れる。
このアニオン微粒子ポリマーを,カチオンポリマーと組み合わせツインズシステムとして使用することで,高シェアにおいても,高い歩留り率を維持しながら,細かい緻密なフロックを形成し,高地合,高濾水性,低含水率を実現できた。この従来にない微粒子特性をフロッキーテスター,動的濾水試験機DDA,および歩留り試験機DDJで証明した。
(本文43ページ)


コンポジルシステム(歩留り・ろ水システム)のライナー抄紙機への適用

エカケミカルス株式会社 曽根原克和,今泉 之嗣

近年,古紙使用量の増加によりライナー/板紙での抄紙pHが上昇し,歩留り・ろ水性の悪化や,内添薬品による欠点やデポジットなど系内の汚れが問題となってきている。
エカケミカルスはアニオン性コロイダルシリカとカチオン性ポリマーを組合せ使用する歩留り・ろ水システムである「コンポジルシステム」を販売しており,国内T社と共同でこのシステムをライナーへ導入した結果,大きな改善が得られた。
コンポジルシステムの歩留まり,ろ水向上効果により,当初の目的であった紙中欠点の減少,抄紙機洗浄頻度の減少,及び抄速のアップは予想通り達成でき,平均抄速は2〜3%増加,平均生産量も約6%増加し,マシン総効率は2.3%アップと大幅に改善された。また,電力原単位も大幅に改善された。特筆すべき点は,断紙回数の減少である。コンポジルシステムの導入後,断紙回数は順調に減少しており,特に最近7ヶ月間,無断紙での運転に成功した。
(本文53ページ)


紙厚向上剤“PTシリーズ”

星光PMC株式会社 研究開発本部 市原研究所 曽根成彦,松島輝幸,川村正明

近年,パルプ原料を減らし,軽くても従来の品質を維持した紙,いわゆる「嵩高紙」の需要が伸びている。特に書籍用紙,印刷用紙などの軽量化あるいは低密度化が求められている。最近の報道によると,これらの「嵩高紙」を用いた単行本や文芸書,新書は厚みがあり,読後達成感があるという理由も購入の動機の一つとなって,これらの図書の売れ行きが好調になっているようである。また,パルプ原料の使用量を減じることは,地球環境への負荷の軽減,省エネルギーにも繋がるものである。このような状況下で,種々のグレードの「嵩高紙」が製紙各社から上市されている。今後,「嵩高紙」の需要は更に伸びると予想され,高品質化も要求されると考えられる。
紙の軽量化,低密度化はパルプ原料,マシン操業条件などを最適化することや各種紙薬品を使用することにより達成される。しかし,単にパルプの使用量減による軽量化では,紙厚の低下による不透明度の低下や裏抜けなどの問題が起きるため,紙厚を保持した軽量化あるいは低密度化が求められる。我々紙薬品メーカーの立場からは,これらのニーズに応えるため,より低添加率で効果的な薬品の提供に努めるべきである。最近,紙の軽量化,低密度化に寄与する紙薬品,いわゆる「嵩高剤」あるいは「紙厚向上剤」と称される紙薬品が上市され,関係文献も発表されている。
弊社は最近新たな「紙厚向上剤」,PTシリーズを開発した。PTシリーズは紙厚向上機能を持つばかりでなく,低発泡でサイズ度を維持あるいは向上させることができる機能を併せ持つ特長がある。今回の発表では,市販の各種紙厚向上剤の特長を纏め,弊社PTシリーズの諸物性とその効果について検討を行い,紙厚向上効果の発現機構を提案する。また,PT8102の特長およびその応用例を報告する。
(本文60ページ)


BM計における最新の幅方向制御技術

横河電機株式会社 システムセンター P&Wソリューション部 佐々木尚史

BM計における最新の幅方向制御技術をご紹介する。一つは,サンプル値制御理論における有限整定応答法を用いた新しいCLP幅方向制御である。この制御を適用したあるマシンにおいて,紙切れ通紙後の整定時間が従来のサンプル値PI制御に比べて50%以上短縮された。
もう一つは,CD適応制御である。坪量プロファイルの濃調制御においては,操作端間隔が従来のスライスボルトに比べて狭くなるので,位置対応精度の許容範囲がより小さくなる。また,幅広マシンでは,位置対応が変動する可能性がより大きくなる。従って,CD制御実行中に自動的に位置対応を同定する機能の実現が強く望まれてきた。
弊社は,CD適応制御と名付けたこの革新的な技術の開発に成功し,実機への適用を行った。CD適応制御は,従来のステップ応答テストによる位置対応同定手法に代わるものであり,これを長期間適用することで,坪量プロファイルの2σも改善される。
(本文69ページ)


RCS社製ロール包装 & 搬送システムの紹介

伊藤忠産機株式会社 生活産業機械課 芝木 雅史

RCS社はスイスに本拠を持ち,ロール包装,ロール搬送設備の設計,エンジニアリングに特化した会社で,その前身会社の実績を含めて全世界で約460ものシステムを納入している。今日,ロール包装,ロール搬送に対する要求は汚れ,破れ,湿気などからの保護のみならず,低コスト,環境性,ロールの外観など多様化しつつある。RCS社はそれらの要求に応えるべく長年に渡って,ロール包装,搬送設備の技術やノウハウを培い,現在も改良,改善を続けている。
RCSシステムの最大の特徴は最大で時間当り180ロールもの処理が可能なことである(全幅一括包装システム)。また処理能力により5つのシステムに分かれており顧客の要望により自動化の範囲の設定が可能なシステムと完全自動化運転のシステムに分かれている。完全自動化の際,オペレーターは包装,搬送作業には携わらず,接着剤やインクなど消費財の補給,システムの監視などを行うのみで,1シフト1人でも可能であり大幅な人員削減が期待できる。ここではそれらを含めたRCSの包装システム,搬送システム,機械システムなどを中心に紹介する。
(本文78ページ)


ケナフ靭皮繊維の層状分離と各層が紙強度に与える影響

高知大学 農学部 王 宇,スウィナルティ・ウイウイン,藤原新二,鮫島一彦
同済大学(上海) 生命科学与技術学院 程  舟

ケナフ靭皮繊維は一次師部繊維と二次師部繊維からなり,前者は1層,後者は複数の層状に分離することができる。ここでは,両者の分離を行い各々が紙強度に与える影響を検討した。
一次師部繊維の繊維長(2.65―3.00mm)は二次師部繊維(2.25―2.60mm)より長く,細胞壁の厚さも厚い。二次師部繊維の層数は茎の下部の位置ほど多くなる。しかし,二次師部繊維の各層間の繊維長の差は小さく,すべて一次繊維より短い。層状に分離して単籬した繊維の銅エチレンジアミン粘度は一次師部繊維で小さく(76―96cP),二次師部繊維では大きかった(121―142cP)。
一次師部繊維の配合割合の異なる手すき紙を作成し,紙強度への影響を検討した。その結果,一次師部繊維の存在は紙強度には負の影響を与えていることが分かった。一次師部繊維の繊維長は二次師部繊維よりも長いものの,粘度が低いことから,これが最も大きく紙強度に影響している可能性が高い。
(本文86ページ)


箱の圧縮に関するシミュレーション

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 平野大信,小林孝男,小高 功

段ボール箱等の紙製箱の設計最適化においては,それらの荷重下での挙動,特に実際に箱が使用される状況を考慮すると,圧縮荷重下での挙動を把握しておくことが重要である。この目的のために圧縮試験を行うには,多くの試作,実験が必要となるのが難点である。また,箱は複数の板により互いに拘束されている複雑な構造物であり,さらに箱の圧縮は塑性変形,座屈をともなう現象であるため,理論的な解析には多大な困難がつきまとう。そこで本研究では,非線形有限要素解析により,箱の圧縮挙動を予測することを試みた。
箱モデルは単純化のため,蓋と底のない側面のみの構造とし,これをシェル(薄板)要素で均等に分割した。境界条件として,圧縮試験機の2枚の平行板間における箱の上面から垂直方向への一定速度による圧縮を想定し,モデルの下端部全節点を完全拘束し,上端部節点には圧縮方向の規定変位を与えた。材料は白板紙の物性を有する弾塑性体と仮定した。また,箱の圧縮による座屈現象においては,構造物の剛性が,モデルの材料,幾何形状特性に加えて構造物の応力状態や変形にも依存するため,初期応力と初期変位の剛性マトリクスを考慮し,Newton―Raphson反復法による増分解析を行った。
その結果,紙製箱の圧縮挙動,すなわち座屈後も含めた詳細な圧縮変形過程,および圧縮強度を予測する手法を確立し,これにより,箱形状,材料特性が圧縮挙動に与える影響について検討することができた。したがって,有限要素解析シミュレーションにより,箱の最適設計すなわち,どのような特性の段ボールや板紙でどのような形状の箱を作ればよいかといったようなことを,実験や試作の繰り返しを排除することで,開発期間の短縮を図りながら検討できる可能性が示唆された。
(本文99ページ)