2005年6月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2005年6月


第59巻 第6号


大型ニッケル水素電池の開発

川崎重工業株式会社 技術研究所 化学技術研究部 電池グループ 堤 香津雄

川崎重工業は大型のニッケル水素電池を開発し,今後産業用の二次電池として用途,市場を拡大していく予定である。大型化にはスケールアップが可能な構造と低価格の材料を採用することによってスケールメリットを出すと共に,大型化しても出力の低下がないように工夫することによってエネルギー,パワー共大型化によって密度を増すことに成功した。耐久性については産業用用途においては民生用以上の性能が要求されるために耐久性の優れた材料と構造を採用して十分産業用として使用できる耐久性を得ることができた。
大型のニッケル水素電池は高出力が可能で蓄電効率が高く耐久性やコストパーフォーマンスにも優れている。この特性を利用して非常用のバックアップ電池などセキュリティー・アメニティーを目的とした電池の利用と風力発電への適用,電力ピークカット,負荷平準化,ピークシフトなどエネルギーの有効利用,節約,再生可能エネルギー利用といった省エネに利用し,エネルギー問題,二酸化炭素問題の解決に貢献しようと考えている。
2004年度に600V125kWの実証用電池を製作し技術研究所内で実証試験を終了した。今後製品化に向けて製造技術,メンテナンス技術などを整備して実用化をめざすものである。 
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最新の省エネルギー技術
 ―パルパー・スクリーン・リファイナーの省エネルギー及び
 省エネに寄与する原料調整システムの提案と実施例―

相川鉄工株式会社 技術本部 金澤  毅

環境保護対策の一環としての世界的な省エネニーズ,生産コストを低減しての国際競争力強化などを目的として,わが国の紙パルプ業界では,2010年までに更なる10%の省エネ達成を目標に種々の取り組みがなされてきた。かつて,省エネルギーとは直接的な電力削減,蒸気削減などを対象に検討されてきたが,更なる10%削減というレベルの高い要求にマッチするために,直接的な電力削減だけでなく,原料歩留まりの改善,白水循環による放出エネルギーの回収など,広義の省エネを追求するケースも増えてきた。
かつて省エネ原料として登場した脱墨パルプも現在ではかつての二倍の消費動力をかけての生産プロセスが一般的となってしまったが,最近では”原点に戻ろう”を合言葉に脱墨プロセスの動力原単位削減を図り,実プラントにおいてDIP当初の約250kWH/Tを再現するシステムも誕生した。板紙用古紙処理工程ではパルパーからリファイナーまでを含めて約6kW/T/D(144kWH/T)の動力原単位が一般的である。古紙処理の主要三本柱の工程であるパルパー,スクリーン,リファイナーの省エネ新技術を使用することで,古紙処理全体の動力原単位を約25%,1.0〜1.5kW/T/D(24〜36kWH/T)の動力を削減できる見通しもたった。
また洋紙,板紙を問わず原料調整工程で大きなエネルギーを消費するリファイニングについては,リファイナー自身の最適な使用条件の完備や,新しい形式のリファイナーを使用することで,15〜30%,用途によっては50%減の大きな省エネルギーも可能となることが分かった。
本稿ではこれらの省エネルギー達成に関連する機器およびシステムについての紹介を行う。
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省エネルギー型段古紙処理システムの設計

株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー エンジニアリング部     
堂阪 敏夫,岩重 尚之

製紙工場を取り巻く環境はますます厳しさを増している。その中でもエネルギー原単位の削減は永遠の課題になっている。それと同時にライナー原紙,中芯原紙のさらなる品質向上を満足するために,弊社では特にパルピング工程,粗選工程,精選工程毎の品質を考え,必要十分な機器の選定,フローの設計をしなければならないと考えている。
 単にエネルギー原単位の削減だけではなく,最も効率の良いエネルギーのかけ方を考慮し,高水準の完成品質を確保することのできる工程毎の省エネルギー型処理システム,機器について紹介する。
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RGP高効率レファイナー導入による省エネルギー
 ―低回転数レファイナー導入による省エネルギー事例―

日本製紙株式会社 岩沼工場 入川 圭介

近年,地球環境の保護と省資源に対する社会的要求が高揚する中,日本製紙株式会社岩沼工場においても「循環型社会づくりを目指した環境方針」を掲げている。
この環境方針に基づき種々の取り組みを実施してきた中で,RGP工程において大幅な電力削減が達成された。この工程は昭和43年の稼動以来,フローの改造や機器の更新をほとんど実施していなかったことから,機器の老朽化のみならず,電力消費面からも非効率な設備となっていた。そこで平成14年,この状況を打開すべく抜本的な改造工事(第T期工事)を実施し,機器の更新はもとより,電力原単位の大幅な削減を可能とした。さらに平成16年には,電力原単位のさらなる極少化に対して妨げとなっていた一部の機器(3次レファイナー)を更新する工事(第U期工事)を実施し,現在に至っている。
本報では,この第T・U期に渡る各改造工事を通して,省エネルギーを可能とした主要因である低濃度レファイナーを導入した経緯と,電力削減実績について紹介する。
(本文39ページ)


イオン交換樹脂法を用いた脱塩脱カリ装置による省エネルギー

北越製紙株式会社 新潟工場 工務部汽力課 片岡 陽一

クラフトパルプ製造・蒸解薬品工程はクローズドサイクルであるため,原料チップから混入したCl,Kは,回収工程循環プロセス内で徐々に蓄積・濃縮される。黒液中のCl,K濃度が高くなると,回収ボイラー内で,灰の軟化溶融温度を引き下げ過熱器管等にダストが付着して熱効率を低下させるとともに,燃焼ガス通路を閉塞させて連続操業を阻害することとなる。また,ダスト中のCl,K濃度の上昇は,高温部位の腐食速度を増進させることにもなる。この為,回収工程循環プロセス内のCl,K濃度の低減は回収ボイラーの連続操業を行う上では不可欠である。従来は,回収される電気集塵機捕集灰(EP灰)の一部を強制的に工程外に廃棄することにより過度の濃縮を防止していた。しかし,EP灰には蒸解に必要なソーダ分や硫黄分も多く含まれており,EP灰の廃棄による薬品ロスが大きく,蒸解薬品の補給量が多いことが問題とされてきた。
上記問題の解決法としては,溶解度の差を利用してEP灰中のCl,Kを選択的に除去する「結晶析出法・脱塩脱カリ装置」が既に実用化されている。しかし,EP灰溶解液を冷却し結晶析出させるため,動力費の大きな製氷機の運転が必要であり,省電力という点では大きな問題があった。そこで,省電力型の脱塩脱カリ装置の開発を目的にメーカーと共同で,「イオン交換樹脂法・脱塩脱カリ装置」を開発した。装置の導入により,回収ボイラー連続操業上の懸案事項であった諸問題において改善効果を得て,更に,スーツブロアー蒸気の削減による省エネルギーが可能となったので,ここに紹介する。
(本文45ページ)


ガスエンジン導入による省エネ事例

レンゴー株式会社 八潮工場 施設部 動力課 有福  聡

近年の地球環境保全に対する社会的要求が高まる中,レンゴーでは「エコチャレンジ009」を制定し,省資源・省エネルギーの取り組みを行っている。その中で製紙部門では,毎年1%のCO2排出原単位削減を目標として掲げ,達成に向け取り組んでいる。
その取り組みの一環として八潮工場では,ESCO事業を用い従来からある効率の低いガス焚きボイラー・蒸気タービンによる発電に替え,高効率なガスエンジンによる発電と排気ガスで蒸気を発生させる,ガスエンジンコージェネレーションシステムを導入した。
本稿ではガスエンジンコージェネレーションシステム導入に至った経緯,本ESCO事業の仕組み,省エネルギー効果などについて紹介する。
(本文54ページ)


焼却炉ファンの蒸気タービン駆動

王子板紙株式会社 富士工場 小糸 正昭

当富士工場は,北に富士山,南に駿河湾を臨む日本の中央部富士市にあり,生産設備として,No.8・10M/Cの2台の抄紙機を持つ日本で有数の中芯生産工場である。工場には,原料工程等より排出される粕類を焼却する焼却能力BD40t/日の流動床式産業廃棄物焼却炉(廃熱ボイラー付最大蒸発量5.7t/h)がある。この焼却炉廃熱ボイラーより発生する蒸気は,(1.75MPa)マシンの乾燥工程として送気し有効利用していた。
蒸気の圧力差の活用余地がある事に着目し,電動機の蒸気タービン駆動化に取り組んだ。同設備内で電力使用量の多い通風機に目を向け,1次押込み通風機(FDF)110kW―2P及び誘引通風機(IDF)90kW―4Pモーターの駆動補助としてスチームタービンを接続し電力量削減が図れたので,その概要を紹介する。
本システム(スチームタービン)は,蒸気条件さえ合って運転すれば運転しただけ,電力削減ができる設備である。運転管理も容易であり,停止起動も短時間で行う事ができる。残念ながら現状100%の能力を発揮できていないが,焼却炉の燃焼を安定させ,蒸気量を確保し,年間を通して運転さえすれば,電力量130kWh/H削減が可能となる(約10,000千円/年)。エネルギー費の増減は工場収益に与える影響が大きいため,今後ともより一層省エネに取り組んでいきたい。また工場従業員の更なる意識改革を図り,徹底した省エネ活動を推進していきたい。
(本文60ページ)


調成工程のフロー見直しによる省エネ促進

日本大昭和板紙関東株式会社 草加工場 製造部原質課 上田 英嗣,富田 清二

日本大昭和板紙関東株式会社草加工場は,平成15年4月に,日本製紙,大昭和製紙合併に際して,板紙事業再編成により発足した会社で,関東の古紙発生の中心に位置し99%古紙を使用した循環型資源リサイクル工場として生産活動を行っている。
日本大昭和板紙株式会社は,環境憲章の行動指針で2010年度までに化石エネルギーは,1990年度比10%削減する事に取り組んでいる。草加工場では長期的な視野にたって「省エネ委員会」を中心に年1%を目標として活動を展開している。
今回の事例は,生産会社4社の抄物見直しにより,草加1号マシンが中芯専抄となった事に伴い,調成工程のフロー全体を見直し,省電力化を実施した結果報告を行う。
改造の着眼点は,新規スクリーン導入による低動力化であり,草加工場では2000年11月から製紙機械メーカーと,実機での開発テストを行ったLPスクリーンの採用と,既設スクリーン改造による循環原料の減少によるポンプ動力の削減,適性離解動力機器の導入により,予定通りの省電力効果を得る事が出来たので報告する。
(本文67ページ)


最近の抄紙機密閉フードシステムについて
 ―高露点型密閉フードシステム及抄紙室環境改善―

株式会社シラトリエンジニアリング 田中 春夫

紙パルプ産業は典型的なエネルギー多量消費型であり,これまでも製紙工場では生産効率の向上はじめ木材繊維の高歩留りや古紙リサイクル,各種設備のエネルギー効率向上など各種の努力を重ねられてきた。しかし,近年は製紙機械の大型化が進められ,特に抄紙機においては幅広高速化が顕著な傾向となり一段とシビアなエネルギー管理が求められるようになってきた。また同時に,主力設備の長寿命化対策や作業環境改善も大きな課題となっている。当社ではそうした設備への要求に対応し,長年培ってきた研究開発努力と,多くの納入実績から得たノウハウを基に新技術の開発に取組んでいる。本稿では当社の抄紙機用密閉フードに関する最新技術を紹介すると共に,「抄紙室環境改善装置」とも呼べる新たなシステムを提案する。
(本文72ページ)


最新のプレスフェルト管理方法
 ―オンライン測定分析システムによる品質と抄紙機性能の向上―

フォイトペーパーオートメーション株式会社 内河 英臣   
フォイトペーパーオートメーションGmbH & Co. KG R. P.シード

本レポートは,抄紙機におけるプレスセクションの設定およびルーチン作業の最適化を促進するべく設計された最新のプレスフェルト測定システム,フェルトビューTMに関するものである。当該測定は,水分率,透気度および各フェルト温度についての特性ならびに傾向についての情報を与えるものである。この情報をプレスセクション直後の水分率測定システム,エンバイロスキャンTMと組み合わせることにより,製品の品質,フェルト性能及びプロセス効率の向上を可能とし,しかも加圧および乾燥作業のエネルギー消費を低減可能とする。特にこのパートは従来から操業者の経験と推測による操業が行われているが,これからはフェルトビューTMやエンバイロスキャンTMの実データをもとに合理的な操業指針をたてる事が可能になる。
本報告は既にフェルトビューTMを使用しているユーザーから提供されたデータをもとにまとめたものである。
(本文79ページ)


ロータリプレスフィルタの処理性能
 ―実設備の運転調査結果―

巴工業株式会社 営業技術部 営業技術課 松本 光司

ロータリプレスフィルタが日本に導入され,巴工業株式会社で製造・販売を開始してから数年が経過し,様々な処理物の実験データからその高い脱水性能が証明されている。また,脱水性能の他に構造が簡単,省スペース,低動力,洗浄水量が少ないなど,これまでの脱水機に比べて優れた特徴を有している。採用件数は年々増加し,日本国内だけで製紙工場排水向けに8台,その他各種処理物向けには27台納入されており(2002年,同誌投稿時の採用件数は14台),今後も更に増加する見込みである。
今回,A製紙会社で稼動中のロータリプレスフィルタの処理性能を約1ヵ月間調査した。また,うち2日間で供給汚泥の性状とケーキ含水率の変動についても調査した。結果,ロータリプレスフィルタに以下に示すような優位性が確認できた。尚,製紙排水汚泥の脱水データで,実設備のものを公表するのは今回が初めてである。
 1)ロータリプレスフィルタ,ベルトプレス及びスクリュープレスのケーキ含水率を約1ヵ月間測定した結果,ロータ  リプレスフィルタのケーキ含水率はその2機種に比べて常に低い値となり,良好な処理が可能であることが判  明した。また,ケーキ含水率の変動はロータリプレスフィルタが最も少ないということも判明した。
 2)約1ヵ月間の連続運転の中で2日間についてケーキ含水率測定の頻度を高くして時間による変動を調査  した。また,汚泥性状についても調査した。汚泥性状は調査した2日のうちで2日目の方が悪いと推定でき  る。ケーキ含水率の前日比はロータリプレスフィルタで2.2%,ベルトプレス脱水機で4.1%,スクリュープレ  ス脱水機で3.5%と汚泥性状の悪化によるケーキ含水率の上昇はロータリプレスフィルタがもっとも小さいこ  とが確認できた。
(本文86ページ)


修正クラフト蒸解へのSAQRの適用(その2)

川崎化成工業株式会社 技術研究所 田中 潤治

本報では修正クラフト蒸解にSAQを適用させるために,当社にて設計・開発した修正クラフト蒸解に対応したラボ実験装置を用いて,蒸解初期(浸透ゾーンに相当)における操業条件がSAQ効果にもたらす影響について検証すると共に,SAQがより効果を発揮する条件についても考察を行った。
その結果,白液分割添加による浸透条件(アルカリ濃度,温度,時間)を変更しても,SAQの添加効果は白液一括添加(コンベンショナル法に相当)条件と同等あるいはそれ以上に現れたことが分かった。さらに浸透条件の組み合わせにより,SAQの添加効果をより増大させる領域が存在する可能性が示された。
また,SAQのチップへの浸透に関する検討を行った結果,低温・低アルカリ濃度,そして短時間の浸透条件でもSAQはチップ内にすばやく浸透してチップ内に残存するために,抽出黒液中のキノン濃度はかなり低くなるが,スラリー状AQでは低温・短時間の処理ではチップ内に浸透できず,大部分がそのまま系外に抽出された。
(本文93ページ)


製紙用高粘度ケナフ靭皮パルプの製造法

高知大学 農学部 スウィナルティ・ウィウィン,王  宇,鮫島一彦  
同済大学(上海) 生命科学与技術学院 程  舟

ケナフの靭皮繊維のシュウ酸アンモニウム処理,水酸化ナトリウム処理,亜塩素酸ナトリウム処理を異なる順序と条件(A,B,Cの3種)で行った。得られたパルプと紙の性状をTAPPI実用試験法を含む各種の方法で測定して検討した。その結果,B法で調製したケナフBは最も長い荷重平均繊維長を示し,この方法が繊維長測定には最適な処理法であることを再確認した。しかし,ケナフAが粘度と紙強度では他のB,C法よりも最も高い値を与えた。粘度と紙強度を市販のケナフ靭皮パルプおよび木材パルプと比較したところ,上記3法ともこれらのいずれよりも優れていることが分かった。現在のところA法が最も優れていることが分かった。
(本文103ページ)