2005年3月 紙パ技協誌
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紙 パ 技 協 誌 2005年3月


第59巻 第3号


エレベーター制御の最新技術動向
三菱電機株式会社 稲沢製作所 匹田 志朗  

エレベーターはビル内における縦の重要な交通機関であり,乗客を安全・快適かつ速やかに目的階まで運搬する役割を担っている。
エレベーター制御は駆動制御・各台制御・群管理制御など多岐にわたるが,本稿では特に群管理制御に焦点をあてる。
群管理システムは,通常3〜8台のエレベーターを一群として効率的に管理・運用し,多数の乗客を乗場で待たせることなく乗車・移動できるように制御している。近年のビルの高層化に伴い,群管理システムの役割はさらに重要になってきている。 
近年の群管理システムでは,ファジー理論や,ニューラルネットなどのAI(Artificial Intelligence:人工知能)技術が応用されるようになってきており,群管理の性能向上が進んできている。
本稿では,最初にエレベーター群管理システムの概要と歴史的変遷について解説し,開発事例として,最新のAI技術を適用したエレベーター群管理システム「ΣAI―2200」の概要につき紹介する。さらに最近話題を集めている,エレベータードア周辺の最新センシング技術についても紹介する。
(本文16ページ)


ICタグの最新動向  ―基礎とその応用&将来性―
オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
            営業統轄事業部 情報機器課 大塚  裕  

最近,ICタグ(RFID)が大きな注目を集めている。ICタグはこれからの社会やシステムを大きく変革する要素を持っている素晴らしいツールである。しかし,その本質が正しく理解されているかと言えば疑問が残る。メディアの中にはICタグの良い点だけを強調して紹介するところも多く,ICタグがあたかも魔法のツールのように思えてしまう。
そのため,本稿ではICタグの特徴や種類を始めとする基礎を紹介すると共に,ICタグの活用にあたって失敗をしないための重要なポイント,および国内や海外,各業界等におけるICタグの標準化動向について述べたいと思う。また,紙パルプ業界において実際にICタグを応用しているアプリケーション事例,および紙の製造・流通工程だけでなくICタグと紙との融合アプリケーション等を始めとした,今後,ICタグの活用が大いに期待されるアプリケーションイメージについても簡単に紹介したい。
(本文22ページ)


DCS老朽化更新における工期・工事費の削減工夫
北越製紙株式会社 新潟工場 電気計装課 小林 康夫  

DCSが北越製紙叶V潟工場の監視制御に初めて採用されてから20年以上経過し,年々の進化とともに製造設備において生産性向上のためにはなくてはならない存在になっている。しかしながら一方で,DCS登場初期に導入されたシステムは,長い年月の間に当然老朽化が進んでいる。導入からの時間とともに故障発生確率が高くなり,同時にメーカーの保守を打ち切られる機種が年々増えているなかで,故障発生時のリスクや設備改造に対応できない等,様々な制約を受けなければならない状況となっている。反面,より安定した操業,生産性の高い設備への要求が年々高まっている。老朽化したDCSを取り巻く状況の中で,その要求を満たすためには古いシステムの更新が必要であった。しかし,電気計装品の老朽化対策を目的とした更新には直接的な生産メリットがでないため投資額を最小限に抑えることが求められた。そのために切り換え工期や工事費を削減する方策の検討が必要であった。
新潟工場では,DCS老朽更新工事を最近2例実施した。どちらも老朽化したDCSの機種は同じであるが,それぞれのケースに応じた最適な更新方法を検討し,異なった方法を用いた。本稿では主にこの2例のDCS老朽更新工事において実施した工期・工事費の削減工夫の概要について報告する。
(本文30ページ)


紀州工場におけるDCS更新
紀州製紙株式会社 紀州工場 施設課 山中 裕二  

紀州工場ではパルプ,動力,抄紙調成設備などにDCSを導入して,CRTオペレーションによる操業を行っている。紀州工場にDCSを導入してから20年近くが経過しており,プラントの改造や保守上の問題,省力化などによりシステムの更新を行ってきた。紀州工場におけるDCS(HMI及びコントロールステーション)は,導入したタイミングによってタイプの違うシステムが使用されており,画面構成や操作方法の違い,予備品の管理,ソフトの制御上の制約等が問題となっている。また部品の製造中止や保守対応の打ち切りなどもあり,ユーザーにとっては故障が起きた場合,取り返しのつかないことにもなりかねない。これ以外にも省力化によるオペレータステーションの機種統一の必要性が顕在化してきた。そこでパルププラントの改造に合わせて,東芝製CIEMAC―DSを中心としたシステムの導入を実施した。
今回はパルプ漂白工程ECF化工事に伴う,パルプ工程一連のDCS更新事例について報告する。
(本文36ページ)


計画保全システムの構築
日本製紙株式会社 設備技術部 大澤  進  

設備保全部門では生産効率の向上と生産設備の維持,操業安定化のために日々設備の保全を実施しているが,限られた予算の中でこの目的を達成するためには,設備の特徴を捉え,適切で計画的な保全を実施する必要がある。このような保全管理を実現させるためにはコンピューターによる情報のデータベース化が必然であり,ここに蓄えられたデータの活用が保全管理業務の効率化と迅速な保全情報の伝達において重要な役割を果たすことになる。
今回構築した計画保全システムは,入力作業の繁雑さや負担をできるだけ軽減し,計画・履歴・分析・改良という計画保全のPDCAサイクルをスムーズに実現させるための最良のツールとなるように構築した。このシステムを保全管理業務に定着させることで,業務の効率化に加え,設備故障の削減と保全費用の圧縮が行えるものと期待している。
本稿では,八代工場で計装設備を対象として構築を進めている計画保全システムを紹介する。このシステムは,電気設備や機械設備への展開も行われており,日本製紙各工場で導入が可能となるように構築を進めている。
(本文41ページ)


計装システムのライフサイクルに関する調査報告
紙パルプ技術協会 自動化委員会  

設備投資案件が少ない昨今,計装システムのリプレースもなかなか進んでいないのが現状ではないだろうか。そこで今回,自動化委員会として計装システムのライフサイクルについて,計装メーカと紙パルプユーザとの考え方の違いを調査し,今後の紙パにおける計装システムのリプレースのあり方について考えてみることとした。
調査の方法としては,計装メーカと紙パルプユーザによるアンケート方式により調査した。計装メーカへのアンケート調査は,紙パ業界に導入実績のある計装機器メーカ:8社,対象機器:7機器を対象に,また,紙パルプユーザへのアンケート調査は,自動化委員会の構成委員会社:10社を対象とし50工場から回答が得られた。
  本稿は,その調査結果がまとまったので報告する。
(本文49ページ)


新型オンラインパルプ分析計によるプロセス最適化と工場導入例
ソーダラセルR & D ヨーゲン リンドストローム、ローレンツェンアンドベットレーAB ホーカン カールソン     

スウェーデンの代表的なパルプメーカーであるソーダラセルは,自社工場にオンライン・パルプ分溜計を設置した。その目的はより高い品質のパルプを長期にわたり安定供給することにあり,その実現にはオンライン測定が不可欠であると考えたからである。このオンライン計はもともとスウェーデン製紙研究所STFIで開発されたもので,現在ではL&W社より商品化されている。
STFIの開発目的は,繊維変形時でも繊維長や変形状態などをより正確に測れることを主眼においていた。このためユニークな測定法が開発され従来の欠点を補っている。またパルプの剛性など新しい物性測定も開発され,プロセス管理の実務的な測定器として期待されている。このオンライン計はメンテナンスが最小になるように設計が施された実用機である。ソーダラセルでは1号機を2000年に導入し,その投資効果,またオンライン計としての安定性などを見計らい随時導入を進めていった。現在ではスウェーデンにある4工場すべてに導入されている。
本発表はこのオンラインパルプ分溜計導入による操業経験を中心に説明をおこなう。また,パルプ物性と紙物性との関連実験などを紹介し,パルプ物性の測定から製品予測の可能性を説明した。この見地からもパルプ物性のオンライン測定は有効である。
以上からオンラインパルプ分溜計は今後導入が進むものと思われる。
(本文66ページ)


TIAコンセプトによる最適システム構築
安川シーメンスオートメーション・ドライブ株式会社 システム設計グループ 横尾 伸幸  

TIA(Totally Integrated Automation完全統合オートメーション)はオートメーションの様々な課題に対する総合的な取り組みのコンセプトを示しており,最良のシステムを提供することである。
TIAのコンセプトにもとづいて開発された電気品により,製造・加工機械へ最適なドライブシステムを提供できる。
TIAはオープンな通信環境を提供するため,他社製品との接続,上位システムとの情報統合システムも容易に構築できる。
TIAは,将来に亘って最新技術の導入を低コスト低リスクで可能にする。
シーメンスはあらゆる階層のオートメーションにおいてTIAコンセプトに適合した製品を提供している。
TIAは,オートメーションシステムの3大要素である,エンジニアリング,データ管理,通信等を統合するものである。
シーメンスの最新の技術,製品,システムおよびサービスと組み合わせることにより設計,試運転,操業,保守における全てのエンジニアリングにおいて操作性が統一されて,PCは1台で可能である。
全てのエンジニアリングツールは,1個のシェル(Simatic Manager)から一元化して呼び出せ,全プロジェクトデータも一括して保存,管理でき,通信の統合により,任意の場所からプログラミングツールの操作やダウンロードが可能である。
(本文72ページ)


B/M計7SP ―B/M計に対するライフサイクルソリューションの紹介―
横河電機株式会社 ライフサイクルソリューション統括部 瀧川  憲  
             ライフサイクルソリューションセンター 吉房  実  

B/M計は四半世紀にわたり,抄紙機の性能を評価する計測制御装置として高い信頼性を発揮してきた。現在弊社のB/M計は約600システム稼動しているが,最も古いもので1979年から25年稼動しているものもある。ライフサイクルの状況は過半数が10年を超えており,三分の一は15年を超えている。
弊社はお客様がB/M計メーカに要求するソリューションを大きく2つあると捉えている。
 @ システムの老朽化による信頼性低下と保全費増加
 A 生産管理システムの高度化にともなう品質・生産性改善に対応するB/M計の高度化
本紙では,弊社が2004年4月に発表したDCS(分散型制御システム)における「7SPライフサイクルソリューションプログラム」の主旨を説明し,引き続きB/M計に特化した7SPの取り組み事例を紹介する。
事例1では,信頼性向上と保全費削減のソリューションとして「保全解析」による故障分析・信頼性回復とSP―Note(整備手帳)を紹介する。事例2では,設備付加価値向上に関するソリューションとして「オフライン検定」による短時間,損紙ゼロ,最小工数,高精度の技術を紹介する。
(本文78ページ)


新開発オンライン透気度センサと塗工技術への応用
ハネウェル株式会社 営業開発部 中濃礼二郎  

透気度はほとんど全ての紙に対して大変重要な特性である。特にクラフト紙,エアフィルタやシガレット用紙など空気の透過が重要な紙についてはもちろんのこと,紙の印刷特性に対しても大きな影響を与える要因の一つに挙げられる。紙の透気度はかなり前から測定はされているが,これまでCD(幅方向)のオンライン測定は不可能であった。固定点によるオンライン測定もこの数年前からであり紙工場のほとんどはサンプリングによる手動測定やオフラインの計測器などを使用したラボデータからCDプロファイルを得ている。
ハネウェルの新しい透気度センサは初めてオンラインによるCDプロファイル測定を実現し,透気度のMD(流れ方向)とCD制御を可能にした。その結果,エンドユーザのさらなる品質向上に対する要求に答えるためのツールを提供できるようになった。透気度のプロファイルは様々な要因により影響されることが知られている。水分蒸発に起因する要素,プレスのニップ圧,スチームボックスの出力パターン,乾燥収縮プロファイルやカレンダリングなどが透気度のプロファイルに影響を与える。
オンライン透気度センサによる測定は,リファイナからウェットエンドの薬品添加量,ワイヤにおけるバキュームやカレンダにいたるまでの最適化制御を可能とし,塗工プロセスにおいても塗工品質の向上や塗工液や添加物の削減に寄与し,加えて抄き替え時間の短縮,損紙やダウンタイムの最少化に貢献する。本稿ではオンライン透気度センサの概要を紹介するとともに,透気度プロファイル測定の重要性について述べる。
(本文83ページ)


紙ロールの巻き取り硬度測定機 RQP  ―連続測定方式で,瞬時にプロファイル表示―
野村商事株式会社 松田 光彦  

紙ロールの巻き取り硬度は印刷工程等での紙切れ事故,印刷ずれ事故等の防止のために製紙工業では重要な品質管理項目の1つとなっている。
紙ロールの硬度測定としては,木棒で紙ロールの表面を叩いてその音を耳で聞くいわゆる「打音方式」とシュミットハンマーにより測定する「シュミットハンマー方式」の2方式が一般的に行われている。
しかし打音方式は検査員の勘のみに頼るものであり,品質を数値管理することもできない。一方のシュミットハンマー方式でもその操作に熟練を必要とし,検査員のスキルに依存しているのみならず,その測定と,結果の解析には労力と時間が要求される。
今回,紹介する,RQP(Roll Quality Profiler)は,フィンランドのTAPIO Technologies社で開発された連続測定方式の紙ロール巻き取り硬度測定機である。
RQPは小型ハンマーを連続的に紙ロール表面に打ち当てながら移動させることにより,その小型ハンマーの紙ロール表面に当って停止するまでの減速度を正確に測定するとともに,移動距離を自動測定して,紙ロール表面の硬度を連続測定するものである。測定に要する時間は短時間であり,測定結果は瞬時にプロファイル表示され,容易にラベル印刷することも出来る。
再現性も非常に良く,検査員による属人性も皆無であり,測定結果の保存,活用にも十分対応しているので,紙ロールの品質管理に威力を発揮するものである。
RQPの概要,実際の測定事例,従来方式との比較結果等を紹介する。
(本文89ページ)


第2回パルプ・紙製造技術および繊維植物の生物工学に関する国際シンポジウム参加報告
東京大学 大学院農学生命科学研究科 飯塚 尭介  
九州大学 大学院農学研究院 北岡 卓也  

第2回パルプ・紙製造技術および繊維植物の生物工学に関する国際シンポジウムが,平成16年10月13―14日,中国・南京市において南京林業大学の主催により,また東京大学大学院農学生命科学研究科の共催によって開催され,中国国内,国外から合計156名の研究者が参加した。我国からは中国国外からとしては最大の19名が参加した。発表総数は口頭44件,ポスター89件,133件であった。非木材資源の利用に関するもの,排液リグニンの利用に関するもの,および古紙利用に関するものが多数みられたことは,中国における関連分野への関心の高さを示しているものといえよう。
(本文95ページ)


非干渉制御を併用した抄紙機ウェットパートのリテンション制御
王子製紙株式会社 製紙技術研究所 森 芳立            
             技術部(現 春日井工場) 今井直樹            
             呉工場 原 良信,西村倫明,平野史朗  

10年ほど前から北欧を中心とする海外の研究機関や製紙工場で,高性能のオンライン低濃度計を活用した抄紙機ウェットパートでのリテンション制御システムの開発や実機への導入の取り組みが報告されている。
リテンション制御システムの導入は,抄紙機ワイヤーパートでのパルプや灰分成分の歩留り(リテンション)の安定化を通して,ウェットエンド脱水の安定や,抄紙機の操業性の安定,紙質の安定を計ることを最終的な目的としている.今回,我々も大型の高速抄紙機のウェットエンド・セクションにメッツォオートメーション社製の特殊センサーであるオンライン低濃度計(RMi)を導入した際に,「リテンション制御システム」の自動化に取組んだ。
当初,従来から取組まれているように,ワイヤーパートから脱水され白水サイロに流入する白水のトータル濃度をPIフィードバック制御(Proportional plus Integral feedback control)で一定にコントロールする「リテンション制御」を実機に組み込んでいこうとしたが,BM計で既に稼動している「紙中灰分制御」と非常に強い相互干渉を起こし,制御量が発散振動を始め,コントロール不能な状態に陥ることが判った.我々は,その発生原因を突き止め,この相互干渉の問題をプロセス制御面から回避して限られた制御装置の資源の中で問題解決を計っていく必要に迫られたが,リテンション制御に「非干渉制御」手法を併用していくことにより簡便に,目的とした白水濃度の一定化制御に留まらず,紙中灰分含有率やアッシュ添加流量など抄紙機の操業安定化を同時に実現する信頼性の高い制御システムを開発することができた。尚,諸外国では大掛かりな多変数制御手法を適用してこの問題を回避している。
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