2004年8月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2004年8月 

第58巻 第8号(通巻第641号) 和文概要


最新型ID―ScreenとFiberNetの紹介―システムの大幅な簡素化を可能とする複合スクリーン―
相川鉄工株式会社 技術部 藤田 和巳  

 ID―Screenとはバスケット中間位置に繊維のフロックを壊し原料の流動性を高めるデフロキュウレーション機構とリジェクト側の原料濃度を下げる希釈機構を備えた複合スクリーンである。従来のスクリーンでは原料がスクリーンバスケットのリジェクト排出側に移行するに従いスクリーン通過効率が低下していた。ID―Screenは通過効率の低下が始まるバスケット中間位置に繊維のフロックを破壊する機構とリジェクト側の原料濃度を下げる希釈機構を備えたことで,再度100%の通過効率が得られるようになった。この結果,一台のスクリーン内部で従来の二次,三次処理まで行うことが可能な複合スクリーンが実現した。更に,このID技術を応用して連続運転でありながら異物のみを確実に系外に排出可能な末端テールスクリーンとして開発されたのがFiberNetである。
 ID―ScreenとFiberNetを組合わせることで大容量プラントのスクリーン工程でも二次処理まで,すなわち一台か二台のスクリーンで完結させることができる。スクリーン工程に劇的な簡素化,大幅な省エネ効果をもたらすものである。
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高性能リール「シリウスリール」
株式会社アイ・エイチ・アイフォイトペーパーテクノロジー エンジニアリング部 安藤 英次  

 近年のリールパートでは巻きロールの大径化,下巻きからの外巻きに至る,優れた巻き上げ技術が求められている。これらの要求にシリウスリールは新しい巻き上げコンセプトで対応している。シリウスリールは,従来のサーフェイスリールと異なり,ニップ制御を可動式リールドラムが行うことを特長としている。リールドラムによる単一ニップ制御によりプライマリからセカンダリ受け渡し時のクロス制御を排除し,外巻きまで精密なニップ制御を可能にした。さらに適切な巻き上げを行うためスプール軸の駆動化(センター駆動)によって,巻き上げの主要なパラメータである紙張力,ニップ圧,巻き取りトルクを独立した制御で大径かつ様々な品種の巻き取りに対応する。このシリウスリールの数々のメリットを実績とともに紹介させていただく。
(本文11ページ)


新規な高密度カチオンディスパージョンポリマーの製紙用薬剤への展開
ハイモ株式会社 湘南研究センター 製紙化学研究グループ 山口 佳也  

 弊社は世界で始めてディスパージョンポリマーを開発し「ハイモロックDRシリーズ」として製紙用薬剤業界をリードしてきた。
 ディスパージョンポリマーとは,ポリマー粒子を特殊技術により水に分散させており高濃度液状品であるにも関わらず,従来の濾水性向上剤や歩留向上剤等に使われる液状タイプや粉末品に較べて溶解性が良好であり溶解液も低粘度であることから,良好な分散性を示し,使用時のハンドリングが良いことや紙製品品質に与える影響が少ないことを特徴としている。
 今回,弊社はこれまでのディスパージョンポリマー技術をベースにしたこれまでにない全く新規な高密度カチオンディスパージョンポリマーを開発した。このポリマーは市販されているポリアルキレンポリアミンと同様に高密度カチオン電荷を有するだけでなく,数万〜1千万までの幅広い分子量分布を併せ持つことを特徴とし,製紙用薬剤として広範囲に適用できると考える。
 現在,ベースモノマー組成・重合処方を最適化,用途によりシリーズ化しており,原料処理剤「ハイモロックMTシリーズ」・濾水性向上剤「ハイモロックFRシリーズ」・歩留向上剤「ハイモロックSRシリーズ」としての展開を紹介する。
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VentaShoeTMによるブレードフォーマ性能改善―次世代ブレードフォーマへのアップグレード:MH―Former iFB―
三菱重工業株式会社 紙印刷機械事業部 藤木 恵一
広島研究所 岩田 弘,増田 和彦  

 現在,MHフォーマを始めとするブレード型ツインワイヤフォーマ(以下ブレードフォーマと称す)は,その優れた地合形成能力ゆえ,上質紙及び新聞用紙の分野を中心に国内外で広く採用されている。しかしながら,日々増大する高速化及び高紙品質化要求の中で,その原料ジェット着地調整の敏感さ,紙品質表裏差及び低リテンション等改善すべき点も指摘されている。
 一方,当社が昨年セールスリリースしたMJフォーマに代表されるもう一つのツインワイヤフォーマ:ロールブレード型ツインワイヤフォーマ(以下ロールブレードフォーマと称す)は,原料ジェットの着地調整が容易である,表裏差が少ない及びリテンションが高い等上記ブレードフォーマの欠点を補う特徴を有している。
 この度,当社は,ブレードフォーマの優れた地合形成能力を維持しつつ,上記ロールブレードフォーマの特徴を従来型ブレードフォーマに適用する技術:VentaShoeテクノロジを開発した。ここでは,その開発コンセプト及び実機検証結果を中心に紹介する。
(本文23ページ)


高速カーテン塗工による顔料塗工紙の検討(2)
JSR株式会社 高分子研究所 伊藤 一聡,松井 尚,樋口 篤  

 カーテン塗工は,塗液をノズルから流下して基材へと直接塗布する非接触型の塗工法である。その機構は非常にシンプルで複雑な制御を必要としない上に,断紙の軽減や基本的にストリークが生じないこと,カラーロスの低減や摩耗・交換部品の低減,作業環境が良好であることなど多くの利点を有している。
 加えて品質面でも,他の塗工法と比べて極めて良好な被覆性を持つ塗工紙が得られることなどが報告されている。しかしながら,高速塗工条件下で生じる様々な問題により,現在も一般塗工紙用途には導入されて来ていない。本報では,ブレード塗工に匹敵する塗工速度での良好なカーテン塗工紙の作成を目的に,高速条件下で生じる問題に対する原紙の平滑性(表面粗さ)や塗料の流動性が及ぼす影響を検討した。また得られた塗工紙の品質の特徴について述べ,市販のA2あるいはA3コート紙との印刷品質の比較を行った。
 その結果,カーテン塗工で得られる塗工層は,厚みが均一で,非常に嵩高である特徴を持ち,@低塗工量化による印刷ムラの顕著な悪化は認められないA低塗工量での白紙光沢の発現性が高いB不透明性が高いなどの利点を導くことが判った。またこれにより,市販のA2あるいはA3コート紙と遜色のない品質が低塗工量の領域で得られる可能性が示された。
(本文30ページ)


白紙光沢に関する考察2
日本エイアンドエル株式会社 ラテックス研究所 北村 典子  

 近年塗工紙の高品質化への傾向はますます顕著になってきている。それに伴い,コート紙の白紙光沢の向上への要求も高まる一方である。前回の発表において塗工紙の白紙光沢は,表面粗さに影響され,より平滑な面は光沢が高いことが判った。前回はラボ塗工紙の検討であったため今回の実験に先立ち市販塗工紙についても調査した結果,市販紙においても表面粗さSmと白紙光沢は非常に良い相関が得られ,顔料サイズより大きな表面粗さが光沢に影響していることが明らかとなった。
 今回の実験では,その表面粗さに影響を及ぼす要因として,塗工から乾燥までの工程における原紙の膨潤収縮性と塗料の体積変化に着目した。原紙の膨潤収縮性は塗料中の水分が原紙へ移動することにより膨潤し,その後乾燥によって収縮すると考え,塗料の保水性という観点から調べた。要因として,塗料固形分,顔料種,保水剤種を変更した。また原紙への水分の浸透の影響を比較するため,塗工原紙とポリエステルフィルムに各々塗工した。
 その結果,塗料の保水性が低下するほど白紙光沢が低下するという傾向が得られた。一方塗料が乾燥する際の体積変化が小さい方が,塗工層表面は平滑であり,たとえ保水性が劣っていても,白紙光沢が高いことが判った。また塗工フィルムと塗工紙の白紙光沢の発現性を比較したところ,傾向は変わらなかった。すなわち,今回の実験では最終的な塗工紙の白紙光沢は,塗料の保水性に起因する原紙の膨潤収縮性よりも,塗料が乾燥する際の体積変化に大きく影響を受けている結果となった。
(本文37ページ)


修正クラフト蒸解へのSAQの適用
川崎化成工業株式会社 技術研究所 田中 潤治  

 蒸解助剤SAQ(以下SAQ)は,“キノン蒸解”の名で広く知られた薬剤であり,数多くのKP工場で長年にわたりご使用頂いている。本稿では,当社にて独自に設計・開発した修正クラフト蒸解に対応した新型ラボ実験装置を用いて,修正クラフト蒸解へのSAQの適用を検討した。
 その結果,以下の点が明らかになった。
 @ SAQは,従来のクラフト蒸解同様,蒸解開始時に白液と同時に添加する方法が最も効果を発現した。
 A 蒸解開始時にSAQを添加した場合,白液の分割比率によるSAQ効果への影響は見られなかった。
 B 蒸解初期における黒液の抽出に伴うキノン量の減少は僅かであり,従来の回転式ラボ実験装置による実験結果と併せ,キノン量の減少による蒸解効果への影響は少ないと言える。
 以上のことから,従来のクラフト蒸解と同様に修正クラフト蒸解でもSAQは非常に有効であることが示唆された。
 今後も紙・パルプ産業の発展に役立つことができるよう,本実験装置を用いて新手法を含めた修正クラフト蒸解における,SAQのより有効かつ効果的な利用方法,すなわち最も効果を発揮するゾーンへ,最も有効にSAQを添加し使用する方法の開発に検討を継続していく。
(本文44ページ)


製紙工程における粘着現象の基本と応用
テサテープ株式会社 岡元征也,向笠宗孝,吉村 功  

 粘着テープは民生用および工業用に幅広く普及しており,製紙業界においても大量に使用されている。ただし,粘着の概念についてユーザーの皆様には必ずしも明瞭に理解されていないため,ややもするとテープの選択や不具合が生じた際の対応に判断を誤るケースが認められる。
 本文では,製紙工程用粘着テープの製品設計の観点から,以下の項目について述べる。
 1) 粘着現象を把握する,基本的な3つの概念について。
 2) 3つの概念と実用上の要求特性の関係について。
 3) 実施例として,抄紙および塗工工程の各段階に適するテープのラインアップを紹介。
 4) 最後に,新商品としてイージースプライス・ワインダーラインの紹介を行う。
(本文50ページ)


ウエットエンドの最適化による抄紙マシンの操業性向上 その2
ソマール株式会社 製紙薬品本部技術開発部 谷口 昌,但木 孝一,山路 宗利, 黒瀬 茂,常川 謙二

 近年,環境に対する関心の高まりから古紙の大量使用が進み,歩留り・濾水・紙力など紙質に影響を与えるだけではなく,マシンの汚れなどマシンの操業性にも大きな影響を与えている。また,中性抄紙化への転換と過剰添加によるスケール問題などから,これまで酸性抄紙で大量に使用されてきた硫酸バンドは,使用量が減少してきているのを始めとし,使用薬剤の大幅な見直しが行われている。また,操業性向上と品質は相反する性質であり,一方の物性が良くなれば他方の物性が悪くなることが多く,単純な薬剤効果のみでは要求課題の解決が困難になってきている。
 そこで我々は,このような状況下でマシンの操業性・生産性の改善という課題を解決するために,マシン状態を化学的・物理的・生物的に分析し,システム的な薬剤の添加を行なうことを検討してきた。前報では,「ウエットエンドの最適化による抄紙マシンの操業性向上」と題して,特にマシンの汚れを微生物・無機物・有機物の観点から分析し,課題解決のための提案を行った。
 今回,我々は長年培ってきたノウハウを活かし,微生物対策法とピッチ・アニオントラッシュ等の夾雑物を効果的に捕捉するウエットエンド改質法,さらにスケールや起泡等による操業性の改善方法までを含めたトータルデポジットコントロールシステムの紹介を行う。
(本文56ページ)


STFIオンラインパルプ分析計によるプロセス制御の改善―画像分析によるパルプ品質のオンライン測定とラボラトリー測定―
ローレンツェンアンドベットレーAB ホーカン カールソン  

 現在の紙パルプ産業では生産方式が多種多様で,これがパルプの特質を知る上で複雑性を増し,従来からの分析法に限界をつくる。現場ではこの理由からパルプ担当,抄造担当そしてエンド・ユーザーもまじえた新しいパルプ物性の測定が議論されている。これをパラダイム・シフトと言い,考察をこころみる新しい流れである。そしてそれは,カッパー価,粘性,引裂き指数などの従来からの物性に変わり,またはさらに補完する物性として真の繊維長,幅,変形,粗さ,たわみ性,などの物性がある。
 スウェーデン製紙研究所STFIはこの要望に応えるべく,ラボラトリーのみならずオンラインでも測定可能な新しいパルプ分析計の開発をおこない,現在L&W製のパルプ分析計STFI Fibermasterに技術提携されている。それは原料変化が与える紙物性の影響に関して,品質を理解する上での有効な測定器で,プロセスと製品との関係を明白にするばかりでなく,繊維と最終製品の物性に関して新しい見地を与えうる測定器である。本報はこの新しい分析計について,応用例も含め述べる。
(本文67ページ)


O. M. C. 社(排水処理機)の紹介
平和紙業株式会社 産業機械部 山口 章,村田 康幸  

 この度,2002年4月に新しいビジネスをスタートさせた。新ビジネスとはイタリア北部,スキオ市に本社・工場を有するO. M. C.社から世界的に広く実績がある白水・排水・スラッジ処理の機器・システムを我が国に紹介し,ご利用いただく事業である。
 紹介する機器・システムは7種からなり,それらを作動原理から分類すると以下のようになる。
 1) フローテーション(浮上)方式
  @ デルタフロート:浮上方式の原点・モデル,ASRとの組み合わせが特徴
  A タイガーフロート:設置場所制約解除を狙った「矩形浮上ユニット」
 2) ろ過方式
  @ ガンマーフィルター:回転ドラムの表面をV字型にしてろ過面積の拡大に成功
  A オメガフィルター:セルフクリーニングの砂ろ過。
  B シグマフィルター:ろ過方式による懸濁物の2分割。繊維とフィラー分離
  C デンシディスク:回転ディスクによるスラッジ・繊維などの濃縮に最適
 3) 浮上と沈降の組み合わせ方式
  @ セディデルタフロート:浮上・沈降し易い懸濁物の同時処理
 本文では,応用分野,上記各機器の組み合わせによる高効率処理システムを紹介する。
(本文73ページ)


2004Pan Pacific Conference報告―2004年4月19日〜21日キャンベラ(オーストラリア)にて開催―
東京大学大学院 飯塚 堯介,江前 敏晴  
王子製紙株式会社 河村 綾乃        
日本製紙株式会社 黒須 一博,藤田 啓子  
紙パルプ技術協会 豊福 邦隆        

 2004Pan Pacific ConferenceがオーストラリアのキャンベラでAPPITA年次大会(4月18日〜4月22日)に併設して開催された。紙パルプ技術協会の代表として,飯塚東大教授と豊福専務理事が参加した。Pan Pacific Conferenceは環太平洋の加盟7カ国の技術協会が2年に一度持ち回りで開催する会議で,2002年は台湾で行われた。今回は日本から企業と大学をあわせて4件の発表が行われた。
 Conferenceと日本の発表概要及びAPPITA年次大会の講演概要について紹介する。
(本文78ページ)


アカシアマンギウム植林木のクラフト蒸解特性
日本製紙株式会社 技術研究所 渡部 啓吾  
伏木工場 宮西 孝則  

 環境の維持と社会との調和を目指し,長期的視野にたって循環型社会の形成と環境の保護が求められている。森林資源を活用する製紙産業にとっては,積極的な古紙活用(都市ゴミの軽減)に加え,効率的な森林資源の育成(植林事業の推進,森林資源の節約)が存続の重要基盤となる。クラフトパルプは木材チップを原料に,チップ中の不要なバイオマスをエネルギー源として製造される。そのため高成長の樹木を原料として高収率でクラフトパルプを製造することが重要となる。Acacia mangium(以下A. mangiumと略す)は生長旺盛なマメ科の植物で樹齢4年を待たずに樹高20mに達するものもある。熱帯の植生であることに加えて,生長旺盛なため短期伐採が可能で,根粒菌を共生させるマメ科植物のため,地力低下も少ない。
 本研究ではA. mangiumのクラフト蒸解特性の位置づけを行なった。A. mangiumは容積重は低いが,蒸解収率は非常に高く,Eucalyptus globulusと同等であった。A. mangiumの晒クラフトパルプは,高白色度でチリが少なく,パルプ粘度は高かった。繊維長は短く,繊維細胞壁が薄いので,A. mangiumの晒クラフトパルプを配合した紙は,密度,不透明度,平滑度が高かった。
 インドネシアTEL社Musi工場は隣接地に管理されたA. mangium植林地を有し,原木を全て植林によってまかなうことが出来る21世紀型の紙パルプ工場である。主なるパルプの用途は,上質紙,軽量コート紙,ティシュ,白板紙などである。今後も,高生長で高収率な樹種の植林を積極的に活用し,環境と調和したパルプ生産を持続する。
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