2004年7月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2004年7月 

第58巻 第7号(通巻第640号) 和文概要


ヨーロッパ・北米製紙産業における排水量削減の現状とそのドライビングフォース
株式会社日本紙パルプ研究所 荒木 廣  

 日本の紙パルプ工場排水の平均原単位(2000年90m3/adt)は,北欧(40m3/adt)やドイツ(18m3/adt)との間にかなりの差があり,北米と比べても1.5〜2倍程度になっている(米国:53,カナダ:66m3/adt)。パルプ紙一貫製造工場排水を比較しても原単位は相当高い。北欧の代表的なパルプ紙一貫製造工場の原単位は日本の紙パルプ工場の半分以下(全製品当り,日本59〜218,北欧15〜99m3/adt)である。その理由は紙生産用水の原単位が低いことによる。一方,日本のBKP製造プロセス排水の原単位は,主要生産国の中でも低いレベルに抑えられている(日本:38,米国:56,カナダ:71,北欧:40,ドイツ:15m3/adt)。
 削減が進んでいるこれら主要紙パルプ生産国の削減技術には,特に目新しいものは見当たらない。現行技術でも,BKP工場排水は25〜35m3/adt,製紙工場排水は10〜15m3/adt,紙パルプ一貫製造工場排水では45〜50m3/adtまでの削減は可能であると考えられている。
 我が国より排水原単位の低い国々では,総じて,国の環境規制により排水削減が促進されてきたと言うことができる。日本においても,昨年の化審法の改正により化学物質の魚,ミジンコおよび藻類急性毒性のモニタリングが義務づけられているが,関連生物規制が排水に対して直ちに適用される情勢にはない。しかし,現在は急性毒性に問題がない工場でも,排水原単位の削減が進むとCOD,重金属濃度や嫌気性が急激に増加し,その結果として急性毒性が増大する可能性がある。ドイツでは,全工場が総排水全量の生物処理によって魚毒性(ウグイ遊泳阻害)を規制値より十分低くして放流している。また,カナダBC州では,日本の平均的規模のパルプ紙一貫製造工場(排水原単位50〜70m3/adt,1,500t/d,総排水量7〜10万m3/d)でも,生物影響(ニジマス,ミジンコ急性毒性)削減のために工場排水全量を活性汚泥処理する工場がある。日本では,製紙排水の削減と総排水全量の生物処理は将来的な課題であるとの意見が大勢を占めているが,今から十分に考慮しておく必要がある。排水量の削減は紙パルプ産業が取り組むべき課題の一つである。(本文3ページ)


高濃度オゾンECF漂白の操業状況と晒排水クローズド化
王子製紙株式会社 日南工場 望月秀一郎  

 ECF漂白のシーケンスは,塩素の代替薬品として二酸化塩素を主体に使用するシーケンス(D―ECF)が主流であるが,王子製紙日南工場は,国内で初めての高濃度パルプのオゾン処理を導入したシーケンス(Z―ECF)を採用し,2002年より操業を開始した。
 現在までの操業経験より,オゾン段の操業ではパルプ濃度とpH管理が重要なファクターである事が分かっており,現在は安定した操業を行っている。高濃度オゾンECF漂白での,パルプ及び紙製品の品質,抄紙機の操業性は,塩素漂白時と比べて目立った変化はなく,ほぼ同レベルであると考えている。排水中のAOX並びにクロロホルムは,塩素漂白時と比べてそれぞれ90%減,99%減と大幅に減少し,環境負荷の削減を図ることができた。
 現在は,さらなる漂白技術向上を目指して,漂白排水回収,洗浄段削減などについて検討を行っている。
(本文19ページ)


BKP水廻しの現状と今後の計画
中越パルプ工業株式会社 能町工場製造部 懸高 敏博  

 中越パルプ工業,能町工場ではN・Lそれぞれに連釜〜酸脱・漂白までのパルプ製造ラインを有しており,そのうちN系連釜でNS(高カッパー価,クラフト紙用),NE(低カッパー価,NBKP用)のスイッチ操業を行なっている。
 今回,節水の観点からBKP水廻しの1例として,漂白設備の洗浄水フローを取り上げた。漂白設備の洗浄機はN系・L系共にドラムフィルターで構成している。漂白シーケンスはN系がC―Ep―H―D,L系がC/D―E/O―H―Dで現状はコンベンショナルなシーケンスとなっている。
 洗浄水は,節水対策として後段(H段・D段)の白水を前段シャワーへ有効利用しているが,このような洗浄水フローの現状とN系過酸化水素漂白強化後の改良点,また今年4月末にN系漂白ラインECF化後の洗浄水計画フローを紹介する。
(本文24ページ)


5KP漂白工程の操業事例  ―増産による原単位改善―
日本製紙株式会社 岩国工場 西口 恭彦  

 当社岩国工場では平成6年に新KPプラント(5KP)をスタートさせた。この新パルプ設備は設計生産量1,200ADT/Dで,各晒タワーにディフューザー洗浄機を持つ3段晒の漂白設備を備えている,当時の最新鋭のプラントであった。設計構想として省エネルギーを各所に取込んでいたが,スタート後も各洗浄機の洗浄効率及び用水原単位の改善に積極的に取組んだ。
 洋紙生産の拡大に合わせ1,350ADT/Dまで増産を行ったが,それと伴に用水原単位は向上した。しかしその後ディフューザー洗浄機スクリーンのスケールトラブルが発生,洗浄効率が低下し晒各原単位の悪化を招いた。また,これ以上の増産は非常に難しい状況となっていた。
 そこで,対策としてE/H及びDディフューザースクリーンの薬剤洗浄を実施した結果スケールの大半を除去することが出来た。その後スケール付着防止を検討し,C/Dディフューザー洗浄機の2次洗浄水に苛性ソーダを添加することでE/H段でのスケール付着場所を変えることが出来た。それ以来E/H及びDディフューザースクリーンの目詰まりトラブルは皆無となり,それ以降晒各原単位は向上,更に平成10年には1,450ADT/D,14年には1,550ADT/Dの増産まで可能とした。
 増産の結果,晒用水原単位は15m3/ADTと格段に良化し,当社の工場の中でも最高レベルの数値となっている。
(本文27ページ)


新潟工場の節水事例
北越製紙株式会社 新潟工場 佐藤 武志  

 北越製紙新潟工場は,1998年7月のオンコーターマシン8号抄紙機の運転に先駆け,1997年11月にクヴァナ社のITC(Isothermal Cooking)蒸解釜,そして,それに続くファイバーラインとして1998年2月に日産1,200トンの未晒・晒ライン(E系)を稼動させた。これに伴い,老朽化し品質や効率の低いエスコ連釜系列(C系)を停止し,カミヤ連釜系列(D系)と合わせ1,900トンのパルプ製造能力を持つ工場となった。
 この新プラントは地域との共生を主眼とし環境負荷へ最大の配慮をし,ECF(Elemental Chlorine Free)漂白を採用した。その後,2000年4月にはカミヤ連釜系列(D系)にもECF漂白を導入し,現在では北越製紙の製造するL―BKPは全てECF漂白パルプに生まれ変わった。
 これらの新設・改造に際しては,用水使用量を増加させないことが大きな課題であった。未晒最終段の洗浄機には置換プレスを導入したことから,洗浄水として使用しているエバコンデンセイトに余裕が生まれ,それを有効利用することで大幅な節水効果を得た。
 その第一は苛性化工程での生水温水との代替であり,第二はE系未晒最終プレスの洗浄水の見直しである。また,油圧ユニット冷却水の回収にも取組み,その効果を得ている。これらの取組みにより,用水原単位は新プラント導入前に比べ大幅に改善した。
 本報では,このクヴァナ連釜系列導入から現在までのL―BKP製造工程における用水使用状況と上記節水事例について紹介する。
(本文33ページ)


漂白工程における排水セミクローズド化の操業経験
三菱製紙株式会社 八戸工場 古井 正美  

 三菱製紙八戸工場では,漂白白水の部分クローズド化を可能とすることを条件として,新しいECF漂白シーケンスを開発した。このシーケンスは,キレート剤(Q)とキシラナーゼ(X)の同時前処理を行う(QX)処理を持つ過酸化水素ベースのECF漂白シーケンス(QX―P1―H―P2―D)である。
 このシーケンスを用いた工業実験を行う前に,工程内における金属バランスの調査を行った。工程内へ流入する金属は,チップ由来が殆どである。回収系へ流入した金属は,その殆どがドレッグスとして排出される。しかし,SiとAlは,ドレッグスによる除去率が低いため,系内への蓄積が懸念される。
 工業実験は,八戸工場にある3系列のパルププラントのうち1つを使い72時間にわたり実施され,ECF漂白によるLBKPの生産が行われた。この中で,前段の漂白排水を回収しセミクローズド化を行った。回収系へ持ち込まれる金属量は,カルシウムで約3倍,珪素で約4倍と増加する。漂白排水の回収系への回収により黒液中の金属濃度が上昇傾向にあったが,それほど顕著なものではなかった。コスト面や長期操業における金属蓄積の影響等の検討が今後の課題である。
(本文38ページ)


KP工場における水の有効利用について
株式会社荏原製作所 エンジニアリング事業本部 塚本 祐司  

 用水型産業と言われる製紙工場では,大量の用水を必要とするため,一般的に利水条件の良い場所に位置する工場が多く,河川水や湖沼水などの地表水を用水の水源としているのが一般的である。地表水は,大水量を確保できるメリットがある反面,渇水期には取水量が制限されること,増水時には濁質が多くなること,季節による水温変化が大きいことなどの問題を抱える。
 近年,製紙工場を取り巻く水事情は,国内工場集約化などの動きから残る工場は増産の方向にあり,古紙需用の拡大も手伝い,総じて厳しい方向に向かっている。利水条件に余裕のあることが増産計画の前提となるため,各工場にとって用水原単位を低減することは重要なテーマとなりつつある。そのために節水対策を進める必要があることは言うまでもないが,従来きれいな水を利用していたプロセスで,循環水や中水を処理して再利用した場合,従来の運転と比較して大なり小なりの弊害を伴うことは避けられない。製品の質や生産効率が落ちるような節水対策では検討の余地は無いが,再利用先での維持管理面の強化や回収水設備の導入でこれらが維持できるのであれば,その節水対策は十分検討に値するものであろう。
 弊社では,節水検討を目的に,クラフトパルプ工場全体を対象とした水バランス調査を,過去に国内2工場について実施した。本稿ではこれら調査結果を元に,KP工場排水の特徴と有効利用のポイントについて紹介する。
(本文42ページ)


パルプ洗浄・漂白におけるDDウォッシャー,新高性能DDウォッシャーの開発と効果及びPTシックナー,MODU Fスクリーンによるプロセス改善
アンドリッツ株式会社 福沢 民雄,萩原 幹児,土棚 政人    
アンドリッツ・オイ ペッカ・テルボラ,オラビ・ピッカ  

 DDウォッシャー(Drum DisplacerTM―Washer)は,洗浄効率の向上,操業,メンテナンス,及び設備投資コスト低減の要求を満たすべく設計されている。今日,DDウォッシャーは世界のパルプ工場において広範囲に使用されており,約120機が稼動している。
 DDウォッシャーは,供給入口濃度が,低濃度(3〜6%)あるいは中濃度(8〜11%)で供給できる洗浄機である。洗浄段数は,1台で1〜4段まで対応できる。新に開発・改良した新DDウォッシャーは,非常に高い置換洗浄効率を示すことが実証された。DDウォッシャーの特長は,1)高い洗浄効率,2)高い連続操業性,3)LC/MC操業,4)濾液中の低SS含有量,5)密閉型クローズの為臭気漏洩が少ない等のメリットがある。濾液分別の特異技術は,ファイバーラインでのパルプ純度を高め,COD系外除去を高め,系内CODレベルを低減し漂白性を向上させる。この濾液分別技術は,プロセス最適化においていくつかのプロセスメリット及び可能性を向上するものである。DDウォッシャーは,未晒洗浄,酸素脱リグニン後の洗浄,及び漂白プラント全に適応できる。
 PTプレッシャー・シックナーは低濃度パルプを系内濃縮し洗浄機の効率,能力を向上させる。ModuスクリーンF型は従来のクリーナーに代わり,漂白後のパルプを高除塵効率でスクリーン処理し,系内循環水量を1/3以下に低減出来る。
(本文49ページ)


クラフトパルプ工場のシステムクローズド化と最新のファイバーライン技術
クヴァナパルピング株式会社 具   延  

 システムクローズド化に伴い,スケール問題,有機と無機物質の蓄積,及び漂白負荷の増加などのトラブルが生じ,クラフトパルプ工場の生産効率と製品品質を低下させる。今まで漂白工程を含んだシステムクローズド化は多く試みされたが,完全にクローズド化されたクラフトパルプ工場はまだ実操業まで至ってない。最近のシステムクローズド化の動向としては如何に排水を作らないことが焦点の一つとなっている。また,ファイバーラインにおいて環境に対する影響を低減するアプローチとしては,如何に蒸解液また木材の抽出成分を含んだ廃液の流失を防ぐこと,またパルプ洗浄の強化による廃有機物を漂白段に持ち込まないことが重要となっている。その意味では,改良クラフト蒸解技術,酸素脱リグニン技術,スクリーンのクローズド化,プロセスコントロールの改善,及び新しい漂白技術などは排水負荷を低減する有力な方法である。
 システムクローズド化の動向及び現状から,クヴァナパルピングが提唱した新のファイバーライン,及びそれを構成したCOMPACT COOKINGTMシステム,KOBUDOMARI蒸解システム,加圧型ディフューザー,DUALOXTMシステム,DUALDTMシステム,COMPACT PRESSTM等がシステムクローズド化において重要な役割を担うと考えている。
(本文61ページ)


漂白プラントのクローズド化について
メッツオSHI株式会社 小林 達  

 漂白プラントのECF/TCF化に伴って,KPプラントのクローズド化への要求が高まってきている。クローズド化に伴う問題点はかなり指摘されており実機においてどう対処してきているか,現状の技術ではどのような方策が取れるか,実際のプラント例を見ながら検証した。
 クローズド化は,漂白プラントからの酸排水を減らすこと・アルカリ排水を回収すること,といえる。漂白シーケンスおよび洗浄機器の選択,など現在の技術でかなりクローズド化ができる。
 漂白プラントでのプレス洗浄機は洗浄水・排水量の低減になくてはならない洗浄機となりつつある。特に各漂白段での運転条件を容易に制御できること,それの伴い薬品消費量を適正に無駄をなくすことができることがあげられる。漂白シーケンスは,塩素の代わりとしてオゾンが極めて有効な漂白薬品となっている。高濃度オゾンシステムと抽出段を組み合わせたZeTracは,漂白プラント抽出段からのろ液回収を容易にし,HexAの除去率が高く,色戻り問題・スケール対策・排水量の低減などクローズド化に伴う問題点への解決が図られている。
(本文70ページ)


ヨーロッパにおけるクラフトパルプ排水の状況 ―現状と将来の可能性について―
エカケミカルス株式会社 クリスチャン・ブロム,ピア・ジュール  
日産エカケミカルス株式会社 坂本 宗男               

 この発表ではN材パルプの生産が殆どであるノルディック諸国を例題としてヨーロッパにおける漂白クラフトパルプの排水状況について述べる。どのようにして,またどんな方法によって現在の状況に達したのか,また紙・パルプ工業の状況とそれに対する規制がどのように調和させられてきたかについて言及する。現在ヨーロッパの紙・パルプ生産(漂白クラフトパルプを含む)の方向については“best available technology, BAT”に基づく指針がある。環境への影響を減らす努力はパルプ生産工程の中で実施する内部的処理方法と,排水が下水にいく前に処理を実施する外部的処理方法に分けることができる。
 内部的,外部的処理方法の利用によりCODおよびAOXのような汚染物のレベルを相当減らすことが可能である。2001年に規定された紙・パルプ工業のEU BATを考慮すればパルプ工場からの排出量はCOD8―23kg/ADTおよびAOX0.25kg/ADT以下でなければならない。ノルディック諸国の12のパルプ工場でのデータはそれが実行可能であることを示しており,かつ多くの工場がすでにこれらのレベルに達している。
 現実的でかつ環境に最適な紙・パルプ生産プロセスを開発することを目的とする大規模な研究開発計画であるEcocyclic Pulp Mill Project―KAMという名称のプロジェクトがノルディック諸国で実施され,結果として高度なクローズド化やChip Kidneyを含む技術が得られた。これらの技術は汚染物質のレベルをさらに低下させうる可能性があるが,まだ殆どの技術が商業化にいたっていない。
(本文76ページ)


可変速カプラー・マグナドライブASD ―大型モーターの省エネ用永久磁石・非接触方式カプラー―
野村商事株式会社 松田 光彦  

 エネルギーを使用する産業においては地球環境問題のみならず,コスト削減のための省エネ活動は益々重要であり,従来考えられていた可能な手段は既に実施済みであるが,更なる省エネが求められているケースが大多数である。
 モーターを動力源とするポンプ,送風機等は生産現場では数多く設置されており,負荷制御はバルブの開閉,循環ループ,ダンパー等によっていたが,これは効率が悪く制御性も低いものであった。このため省エネ対策として,流体カプラー,電磁カプラーによる負荷回転数制御が行われるようになった。更にインバーターによるモーターの回転数制御が行われるようになったが,特に高圧モーターでは設備投資額が大きく導入の障害になっていた。
 1999年より米国で販売を始めたマグナドライブASDは希土類永久磁石を採用した非接触型の可変速磁気カプラーである。従来の電磁カプラー,流体カプラーより高効率であり,インバーター方式に比べても,効率の差は少ない。構造がシンプルであるがゆえに信頼性,保守性,設置環境等々を含めたトータルコストを考慮した場合にはその優位性は明らかである。特に既存のモーターと負荷との間に挿入設置するだけなので,既存モーターがそのまま流用でき,高圧モーター使用時のメリットは非常に大きい。また非接触方式のため振動の吸収,設置の容易性,ソフトスタート等多くのメリットも併せ持っている。マグナドライブの動作原理,性能,メリット,設置事例を説明する。
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