2004年6月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2004年6月 

第58巻 第6号(通巻第639号) 和文概要


排水からの熱回収対策
王子エンジニアリング株式会社 釧路事業部 渡辺 博之  

 近年の環境改善への社会動向に伴い,王子製紙葛路工場では,古紙利用率向上を目的としてD1P増産工事が計画された。D1P利用率の向上は,持ち込まれる粘着異物の増加等,抄紙工程でトラブルが懸念されるため,古紙に付着するインクの脱墨・洗浄による多量の用水を必要とするが,厳寒地に位置する当釧路工場では,従来より,これら用水加温に使用される蒸気使用量が多く,D1P増産による用水使用の増加は,そのまま加温用蒸気使用量の増加を伴う状況にあった。
 今回,D1P増産に必要な用水の加温を,D1P工程から発生する排水熟を利用する事で,大幅なエネルギーコスト(蒸気)削減を達成することができた。
 本報では,今回導入した排水熟との熟交換システムの概要と,これまでの操業上の問題点と対策,そして効果について紹介する。
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スラッジ濃度アップによるスラッジボイラー石炭削減―ペーパースラッジ含水率低減への改善事例―
日本製紙株式会社 釧路工場 保坂 達巳,加藤 健,小林 克宏  

 近年の古紙の利用促進に伴い,当工場の製紙用原料は従来の機械パルプ中心から脱墨パルプ(DIP)中心に推移し,ペーパースラッジ(PS)の発生量もDIPの増使用と共に増加の傾向にある。
 一方,雑誌古紙等の高灰分含有古紙の使用比率も増加し,工場排水中の灰分(填料分)が上昇することで,PSの単位重量当りの発熱量は年々低下している状況である。
 本稿では,PS含水率の低減を目指した設備改造とスラッジ凝集フロックの安定化に関する改善の事例について紹介した。脱水機本体の老朽化がかなり進んでいたこともあり,思い切った対策が取れない状況もあったが,スラッジ凝集用薬剤の見直しも併せて実施し,脱水効率の改善によるPS含水率の低減を果たした。
 今回の取り組みでは,PS中の灰分上昇による発熱量の低下を抑制することができたといえるが,今後も高灰分含有古紙の使用量が増えることとなれば,PSの発熱量は大幅に低減することとなる。化石エネルギーに代わる再生可能エネルギーの活用を今後推進して行く上で,留意しなければならない点である。
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タービン高効率化による省エネルギー
王子板紙株式会社 佐賀工場 岡本 健司,畠山 俊明  

 王子板紙轄イ賀工場2号タービンは,1967年に定格出力9,700kWの抽気背圧タービンとして設置された。1993年に抽気不要となったため,抽気調圧弁出口閉止,抽気調圧弁を撤去しただけの状態で操業していた。
 稼動後34年を経過し,経年劣化によるタービン効率の低下や,抽気部の改造による圧力損失が発生していたため,合せて12.0%(最大出力時)の効率低下が認められていた。一方,既設タービンに高効率化の新技術を適用することにより,2号タービンの場合更に2.8%の効率向上が期待できた。
 今回,2号タービンのローター,仕切板及びノズルを高効率型に更新することにより,効率の回復と新技術適用による高効率化とで,合せて14.8%(最大出力時)の効率向上を図ると共に,定格出力を10,500kW(+800)に上げた。
 この工事により,復水発電(燃料石炭)及び購入電力から,効率の高いプロセス蒸気発電にシフトすることが可能になり,プラントの総合効率が向上し,省エネルギー及びコストダウンを図ることができた。
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大気放出削減による省エネ
日本製紙株式会社 八代工場工務部 古瀬 信栄  

 八代工場では,平成5年に石炭ボイラー・タービンが建設され,それまでの重油中心のエネルギー構成から,石炭へのエネルギー転換を図り,工場のエネルギーコスト削減に大きく寄与している。また,平成10年には世界トップレベルの新聞用紙専抄マシンのN2マシンが稼動し,国際競争力のある逞しい工場へと更なる躍進を続けている。
 N2マシンは八代工場の全生産量の約半分を1台で生産している大型マシンであるため,計画休転時にはボイラーの負荷も大幅に減ることになる。しかし,N2マシン停止時にボイラーの負荷追従が間に合わず,やむなく大気放出をして対応していた。今回,オペレーターによる小集団活動において,石炭ボイラーの微粉炭機(ミル)の停止タイミングに関する検討がなされ,大気放出量が大幅に削減されたので,その成果について報告する。
(本文16ページ)


新潟工場エネルギー分科会の活動状況
北越製紙株式会社 新潟工場工務部技術室 新野 朋夫  

 北越製紙〓新潟工場は年間のエネルギー使用量は約50万kl(重油換算)である。本格的な省エネ活動は1980年頃から開始し,80年代後半から現場スタッフを加えた省エネプロジェクトを編成して活動を展開してきた。その後停滞していた時期もあったが,現在ではエネルギー分科会を中心として省エネを推進し,省エネ検討会を基点として操業・設計・管理部門が協力して省エネ活動を展開している。活動の特徴としては,省エネを安全・品質・コストと同レベルで管理することを基本にEMSとも関連して推進している。
 省エネ目標は年間購入エネルギーの1%削減を掲げていて,過去3ヵ年の省エネ実績では目標を達成していた。この間の省エネのパターンを分類すると,操業基準の見直しやフローの変更で余剰となった機器を停止するという実行しやすい省エネ事例が75%になる。ほかでは,パルプ中濃度ポンプのインペラー交換や,テスト用インバータによる省エネの検討も積極的に検討してきている。
(本文20ページ)


呉工場における省エネ事例
王子エンジニアリング株式会社 呉事業部 広岡 祥司  

 王子製紙は,「環境憲章」および「環境行動計画21」において,『2010年における購入エネルギー(化石燃料)原単位を,1990年対比,10%削減を目標とする。』を掲げており,全社的にエネルギー対策に取り組んできている。
 呉工場においても,従来より省エネ活動は続けてきていたが,2000年10月に,環境管理の国際規格であるISO14001を取得したことにより,以降はその環境マネジメントシステム(EMS)のプログラムの中で運用を行なっている。
 具体的には,中長期の環境マネジメントプログラムとして,2000年度から5年間の間に1999年度比の購入エネルギー原単位の5%を削減することを目標に定め,それに相当する電力換算値である4,000kWの削減を計画した。また,毎年の実運用としては,購入エネルギー原単位の1%を電力に換算した年間800kW削減を目標として,それを各部各課に割り振り,毎月の進捗状況を管理している。
 本報では,最近の省エネルギー実績の中から,特に紙パルプ工場として特徴的であると思われる数点の実例を交え,呉工場におけるエネルギー対策の取り組み方を紹介する。
(本文26ページ)


二塚工場におけるエネルギー原単位向上と省エネ事例―エネルギー・CO2原単位の推移と考察―
中越パルプ工業株式会社 二塚工場 増井 雅司  

 紙パルプ技術協会の2003年調査データーから,当工場のエネルギー原単位・CO2原単位の推移が,1993年をピークとして下降しており,製品の生産量指数から生産量の増加を起因とする原単位の向上だけでは無いとの指摘があった。
 「原単位の推移と省エネ事例」を主なテーマして効率向上対策,及びその要因について考察を加えて行った。1990年から10年間の社会情勢の変化が当工場の生産にも大きく影響を与えている。新聞用紙の急激な軽量化と品質問題,製品価格の国際化の進展。京都議定書に端を発した環境問題として地球温暖化防止対策,地球環境にやさしい製品造りと,古紙配合比率の増加,電力自由化の進展と電力単価の改定による操業方法の変更など多くの社会情勢の変化と操業努力が,要因となり現在に受け継がれている。
(本文32ページ)


春日井工場の省エネルギーへの取り組み
王子製紙株式会社 春日井工場動力部 中村 淳一  

 春日井工場は1952年上質紙工場として操業を開始し,今年で52年目を迎える。近年環境への意識の高まりから,工場に占める古紙入り製品の増加,および晒工程におけるECF化など工場全体の電気・蒸気の需要が年々増加傾向にある。またより良い製品作りに取り組むための設備改良などもその増加要因となっている。そういった環境の中で,春日井工場でのエネルギー概況・使用エネルギーの構成および省エネルギーの実績について報告する。
 また,春日井工場で1998年度から2002年度に実施した省エネルギー活動について,全工場で水平展開中の重点実施10テーマおよびその他6テーマについて分類し,それぞれの省エネルギー量を原油換算値(Oil Equivalent)で集計した。その結果2002年度末には約7,000kl,22,900CO2 tonの削減が達成できたことがわかった。その中で省エネルギー効果が大きく,その手法が他にも応用できそうな7つの事例について紹介する。
 さらに紙パルプ業界の自主行動計画「2010年までに製品当たり化石エネルギー原単位を1990年比10%削減することを目指す」を達成するため,2008年度末までにクリアーすべき数値目標を設定し,それに向け今後取り組みたい省エネルギーテーマについて言及する。
(本文39ページ)


三島工場の省エネルギー
大王製紙株式会社 三島工場動力部 渡川 正徳  

 三島工場は,地球温暖化防止対策として,2010年度までに化石エネルギー原単位を37%削減(1990年度比),二酸化炭素排出量を10%以上削減(1990年度比)するために,省エネルギー及び燃料転換に取組んでいる。
 動力設備は工場の電力供給元であり,操業管理を強化し運転効率を高めることで大きな省エネルギー効果が得られることから重点取組み設備とした。
 そこで,各ボイラー・タービン毎にエネルギーロスの仮説を立て,それを着眼点に,検証することで省エネルギーに繋げている。また,ボイラーで使用する燃料を化石燃料からバイオマス燃料へ転換することで二酸化炭素排出量の削減に取組んでいる。
 本稿では,三島工場で実施したボイラー・タービンの省エネルギー及び燃料転換の取組みの中で,圧力損失低減による発電出力の増加,排ガスの熱回収および石炭から廃棄物燃料への燃料転換の取組み事例について紹介する。
(本文46ページ)


BTFダイリューションシステム―BTF導入前後でのデータの比較―
川之江造機株式会社 第一設計課 矢野 順一  

 BTFシステムを既設ヘッドボックスに導入した結果,導入前と比較して製品の品質,特に幅方向の絶乾坪量プロファイルがどのように向上したかを,各種ヘッドボックスとの組み合わせによる実績データを元に述べた。
 今回は,イブナーロール式ヘッドボックスとBTFシステムの組み合わせによる実績データも掲載している。日本国内では,イブナーロール式ヘッドボックスが数多く稼動されている。イブナーロール式ヘッドボックスにダイリューションシステムを導入した場合の,ダイリューション効果についての問い合わせもかなりの件数頂戴している。
 BTFダイリューションシステムは,かなりの年数を経たヘッドボックスに導入された場合でも,ヘッドボックスのタイプに関わりなく,CD絶乾坪量プロファイルを飛躍的に向上させる。言い換えれば,BTFシステムは,ヘッドボックスが本来有している性能を100%引き出す上で,最も有力な装置の一つである。
(本文53ページ)


次世代塗工技術ニーズへの取組み
三菱重工業株式会社 技術本部広島研究所 堀江 茂斉,杉原 正浩  
紙印刷機械事業部 三浦 洋司        

 最近,紙の生産工程に対して,「軽量化」「高速化」に加え,「生産効率の向上」「省資源・省エネルギ」といったニーズが高まっている.コータおよびサイズプレスといった塗工工程においても,塗工液のロスおよび損紙の発生が直接温室効果ガス排出量と紙生産コストの増加に結びつくことから,高効率生産と安定操業の実現が必要とされており,各方面で高速生産時における塗工品質,操業性,生産効率の改善,および操業安定化に向けた様々な研究開発がなされている。
 上述のようなニーズに対応するため,当社ではパイロットコータの最高設計速度を3,000m/minとすると共に,フィルムコータでの両面同時塗工を可能とする改造工事を行った。また,この改造に併せ,MJパイロット抄紙機で抄紙したサンプル紙をパイロットコータで塗工できるよう,周辺設備の整備を行った.この改造により,高速・高品質・高効率・安定塗工を実現するための,ウエットエンドからコーティングまで一貫したテスト・技術開発が可能となった。
 本報では,改造後のパイロットコータの主要仕様と,これを用いて行っている高速化,高効率化および安定塗工の実現に対応する新技術開発状況について紹介する。
(本文59ページ)


紙パルププラント用メカニカルシールの技術動向―環境保全に対応するメカニカルシール技術―
新潟イーグル株式会社 第1生産部 高橋 秀和  

 メカニカルシールは,有害な化学物質の機外漏出低減及び防止,省エネルギ・省資源化により直接,間接的に環境保全に貢献する重要な環境装置の一つと言ってもよい。紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,水ポンプ,パルプ用ポンプ,各種薬液用ポンプなどのポンプが多数使用されている。最近では,これらのポンプ軸封部には,メカニカルシールが標準的に採用されるようになり,省エネ,省資源,省メンテナンスなどの経済性が追求されているとともに,環境保全に大きな貢献をしている。紙パルププラントではスラリー用メカニカルシールが多く,スラリー液は固着性と摩耗性があるため,メカニカルシールの取り扱い液としては厄介なもので,短寿命のものも少なくなかった。特に,塗工工程における高濃度炭酸カルシウムやコーティングカラーを扱う機器周辺及びピットは,漏洩液により,白く汚れているのが現状である。しかしながら,ラバースプリング形高濃度スラリー液用メカニカルシール(F764型)の開発,実用化により,装置周辺が白い汚れから開放されることが期待される。
 本報では紙パルププラントの代表的なメカニカルシールの適用例を紹介しながら,紙パルププラントにおける環境保全に対応するメカニカルシール技術について述べる。
(本文67ページ)


連続クラフト蒸解における広葉樹材パルプの高収率化とその評価法(第1報)―収率向上のための最適条件と炭水化物分析による収率評価―
筑波大学 大学院生命環境科学研究科 横山 朝哉,大井 洋  
北越製紙株式会社 技術開発部 中俣 恵一        
筑波大学 先端学際領域研究センター客員研究員              

 ダイオキシン類特別措置法による環境規制の強化に伴い,分子状塩素を用いない漂白法(ECF漂白法)の導入が進められている。ECF漂白法の導入により,漂白段における負荷低減のため,蒸解段での脱リグニンの促進と炭水化物分解の抑制がより重要な課題となってきている。全缶等温蒸解法(ITC法)は,これらを達成できる技術であるが,まだその最適反応条件が明らかでない。本研究では,この最適条件の確立を第一の目的としている。
 パルプ工場では,蒸解・漂白段と操業が連続的に行われているため,蒸解段におけるパルプ収率の測定が困難である。また,上記最適条件の工場実機レベルでの確認のためにも,連続操業の蒸解段におけるパルプ収率の測定が必要である。本研究における第二の目的は,パルプ収率測定法の確立である。
 実験室レベルにおいて,広葉樹材クラフトパルプの収率向上のためのITC法の最適条件が,アカシア材を用いて明らかにされた。カッパー価17付近で,1%の硫黄と0.04%の溶解性アントラキノン(AQ)の添加により,収率が約4.5―5%改善された。全アルカリの70%と硫黄およびAQの100%を反応開始時に添加し,温度135℃到達時に,黒液と全アルカリの残りの30%を含む白液とを交換添加したとき,最高の収率が得られた。
 パルプの加水分解により生成するキシロースとグルコースの量比(X/G比)とパルプ収率の間には,パルプ調製時の蒸解法によらない直線的相関関係があった。したがって,X/G比を分析することによって,パルプ収率の測定が可能であることが示された。しかし,アカシア材パルプの収率とそのX/G比の関係により作成された検量線は,他の材から調製したパルプとそのX/G比の間の相関には適用できないことが明らかになった。
(本文79ページ)