2004年2月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2004年2月 

第58巻 第2号(通巻第635号) 和文概要

中国におけるメッツォ最新技術の導入について 
メッツォSHI株式会社 山崎 秀彦   

 近年,中国での製紙産業の急速な発展はわが国の製紙業界でも大きな関心が寄せられている。日本を始めとする先進国での紙・板紙の需要がほぼ横這いであるのに対して,中国での紙・板紙の需要は急速な成長を示している。2002年の中国の製紙産業の総生産は3,780万トンであり,前年に比べて8.4%の成長を示した。抄紙機の新設が続いているものの,経済発展と膨大な人口による潜在的消費者の数から大方の予測では将来にわたって中国国内での需要が伸び続けるものと考えられている。
 メッツォペーパーは,中国では北京に支社,西安に合弁会社であるValmet―Xian社,無錫(ウーシー)にサービス技術センターを有し,中国でのビジネス,製造,サービスに努めている。これは,とりもなおさず近年,中国での製紙会社からの受注の増,それに伴うマシン稼動,そしてサービスを充足するためのものである。近年の特筆すべき点は,メッツォの技術の粋を集めた最新式のOptiConcept抄紙機が中国に設置,稼動し,さらに成果を上げていることである。1998年,メッツォペーパー(旧バルメット社)は21世紀に向けての革新的な抄紙機コンセプトであるOptiConceptを発表した。これは抄紙機のすべてのセクションを含んでおり,抄速2,000m/minの達成を目標として開発されたものである。現在では,既に何台かのOptiConceptマシンが世界で稼動しているが,その第1号機を中国の南平(ナンピン)造紙廠ナンピン工場に新聞用紙用マシンPM5として納入し,1999年12月にスタートアップさせている。その後,同型の抄紙機をチチハル製紙にも設置している。その後も最新型マシンの導入は続いている。メッツォペーパーにとって,現在,将来ともに極めて重要な市場である。
 本稿では,中国の今後の展望とこれまでメッツォペーパーが中国に導入した製紙機械技術の代表的なものについて紹介する。
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アニオントラッシュ処理とろ水・歩留向上―生産性向上システム―
栗田工業株式会社 紙パ営業推進部 駿河 圭二,陳 嘉義,三枝 隆  

 近年,古紙の利用率向上,ブロークパルプの配合率向上,系のクローズド化などが進み,ピッチの原因になる物質,カチオン性の内添剤(歩留剤など)の働きを阻害する物質,いわゆる,アニオントラッシュが増えてきている。さらに,中性抄紙化にともなうバンド添加量減によって,アニオントラッシュの定着不良が起こり,アニオントラッシュによる欠点発生,ろ水・歩留の低下が,生産性を大きく阻害している。
 このような背景を踏まえ,アニオントラッシュ処理と弊社2剤歩留システムを組み合わせた,新しい生産性向上の取り組みについて紹介する。具体的には,アニオントラッシュ処理により,ピッチを抑え,欠点減少を図るだけでなく,原料改質および弊社OPTI(2剤)歩留システムを組み合わせることで,地合を崩さず,ろ水・歩留を改善し,断紙減少,生産スピードアップといった生産性を向上するシステムである。
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抄紙マシンのクローズド化とウエットエンドコンディション
ソマール株式会社 製紙薬品本部 技術開発部 黒瀬 茂,但木 孝一,山路 宗利  

 世界的な環境問題に対する関心の高まりの中,抄紙工程ではより一層のクローズド化が進んでおり,クローズド化に伴う各種トラブルが増加している。
 抄紙条件の中性化,古紙回収と利用率の上昇,DIPやコートブロークの配合量増加は,微生物によるスライムトラブルの増加や,硫酸バンドの効果低下によるピッチ,アニオントラッシュ等の夾雑物の系内蓄積を増長し,歩留り,濾水性等のウエットエンド物性や紙力,サイズ度等の紙質低下を引き起こし,抄紙マシンに汚れトラブルを生じさせる。更に,各種トラブルに起因する生産性,操業性低下に個別に対処するため,近年,様々な薬剤が過剰添加される傾向が観られ,クローズド化に伴う系内への余剰蓄積と連動して更なる抄紙マシンの汚れトラブルを引き起こすという悪循環をもたらしている。
 ソマールは,長年培ってきたスライムコントロール剤「ミクロサイド」を中心とする微生物対策の様々なノウハウと,ピッチ・アニオントラッシュ等の夾雑物を効率的に捕捉するウエットエンド改質剤「リアライザー」の経験を活かし,クローズド化の進んだ抄紙マシンでの汚れトラブルをトータルに捉え,且つ総合的に分析することによる改善策を種々提案・紹介する。
(本文15ページ)


ウエットエンド化学とオンライン計測
日本製紙株式会社 技術研究所 長尾 一史,茂木 茂  

 近年の高速抄紙化,用水のクローズド化,古紙配合率の増加などにより,ウエットエンド化学はますます重要になっている。ウエットエンド化学で最も重要な現象である凝集と吸着をコントロールすることにより,プロセスの安定化が図られる。そのために,各種の測定を行い,その値を基に適切なレベルにコントロールすることになる。最近まで,測定のほとんどはオフライン測定であった。しかし,近年,ウエットエンドでのオンライン計測機が各種開発されており,測定頻度を多くし,ウエットエンドでの変化を捉えるために,オンラインでの測定も増えつつある。そこで,本報では,ウエットエンド化学と密接な関係をもつオンライン計測の概要として,低濃度計・灰分計・リテンション計,カチオン要求量計,ゼータ電位計,濁度計について,各測定機の原理,測定例を中心に,測定機メーカー,国内使用実績と共に説明する。その他の測定機として,MOAS,混入エア測定機,スライムモニタなどについても簡潔に説明する。
(本文27ページ)


ウエットエンドの安定化による効率生産について
三菱製紙株式会社 総合研究所 佐藤 達也        
八戸工場 東山 正人,佐藤 啓一  

 調成工程においては,抄紙機に目的にあった均一な紙料を安定して供給することが,抄紙工程の安定操業,安定した品質を得る基本である。近年の多品種少量生産化の流れは,プロセスの簡素化,容量系・循環系の減少,配合・混合設備の改善が図られ,濃度や流量の制御性・品種変更の容易性・安定性等に格段の進歩が認められている。しかしながら,我々はワイヤーパートにおけるろ水性の変化やワンパスリテンションの変化に遭遇するのが現実である。これらを含めたウエットエンドの解析と安定化が,更なる効率生産・品質安定に不可欠であると考えられる。
 本報は,ウエットエンド安定化の取り組みの一環として,7PMにてオンライン・チャージ計のテストを行った概要を述べるものである。
 今回のテストから凝結剤によるCBの電荷調節が可能であり,ろ水性・OPRの向上に効果が認められた。電荷制御として凝結剤の添加を行う場合,系の電荷をモニターせずに添加すると添加場所等の電荷負荷が変動した際に過剰あるいは過小の添加が起こり,かえって系を乱すという弊害を作りかねない。従って電荷制御による操業性向上などの効果を安定して得るためには,センサーとしてオンラインの電荷測定機を利用したシステムが有効であると考えられる。
(本文34ページ)


POMシステムの操業経験
王子製紙株式会社 春日井工場 白尾 剛之  

 王子製紙(株)春日井工場4マシンでは,多品種小ロット生産の効率改善を目的として白水循環系にPOMシステムを導入し,2002年3月から操業を開始した。POMシステムとは,従来の白水循環系からタンク,ピット類を無くし,その代りに遠心脱気機能を有したPOMポンプとそのヘッドタンクを設置することで,系の循環量を大幅に減らすシステムであり,その効果として紙替時間の短縮及び系内汚れの抑制が見込まれる。
 POMシステムの導入により,色相及び灰分が同時に変化する紙替で最大47%のロス時間短縮を実現した。更に,従来の系内汚れに起因する洗浄停止回数も減少した。本報では,4マシンに導入したPOMシステムの概要,これまでの操業上の問題点とその対策,そしてシステム導入による効果について紹介する。
(本文38ページ)


高濃度オゾンECF漂白の操業経験
王子製紙株式会社 日南工場 望月秀一郎  

 ECF漂白のシーケンスは,塩素の代替薬品として二酸化塩素を主体に使用するシーケンス(D―ECF)が主流であるが,王子製紙日南工場は,国内で初めての高濃度パルプのオゾン処理を導入したシーケンス(Z―ECF)を採用し,2000年より操業を開始した。
 1年余りの操業経験より,オゾン段の操業ではパルプ濃度とpH管理が重要なファクターである事が分かっており,現在は安定した操業を行っている。
 ECF漂白への転換によって,漂白コストは従来の塩素使用時より若干増加した。この増加分は,オゾン製造及び原料酸素製造用の電力費分にほぼ一致しており,Z―ECFのコスト増減に最も影響を与えるファクターは電力コストであると言える。
 排水中のAOX並びにクロロホルムは,それぞれ90%減,99%減と大幅に減少している。
 また,パルプ及び紙製品の品質,抄紙機の操業性は,塩素使用時と同レベルと考えている。
(本文43ページ)


粘着異物測定用シート自動作製装置(SCAN―U)
日本製紙株式会社 勇払工場 橋場 峰夫  
技術本部 杉野 光広  

 日本製紙勇払工場は,再生紙の利用率向上のためにDIP(110ADt/d)を増設した。このDIP設備は,雑誌古紙を優先的に使用している。DIP配合率向上や雑誌古紙の使用量増加により,DIPから持ち込まれる粘着異物の増加が懸念されることから,DIP中の粘着異物の個数変化を把握するために,粘着異物測定用シート自動作成装置(SCAN―U)を導入した。
 SCAN―Uは,自動的にDIPの各工程からサンプルを採取し,粘着異物の個数を計測できるシートを作成する。これにより従来人手によって行っていたフラットスクリーン処理と粘着異物の計測に関わる作業を簡略化することができた。また,DIP工程中の粘着異物個数の変化を迅速に捉えることにより,製品中に含有される粘着物の変化や抄紙機でのピッチトラブルなどへの素早い対応が可能となっている。
 本報では,SCAN―Uの基本的な動作内容と実機プラントでの稼働状況について紹介する。
(本文49ページ)


ペーパーカウンター装置
日本製紙ユニテック株式会社 島津 孝夫  

 従来仕上げ工程では,積替機から出てきた製品及び手積み製品をパレットに積み上げられた状態の紙山を人手により枚数計測を行っていたが200μm厚用紙枚数を自動測定する検討を行ってきた。
 弊社では,このたび日本製紙株式会社殿,ソニー宮城株式会社の技術協力を得て,ラインCCDカメラを使用し非接触画像処理技術を用いた高精度・高速に計数するペーパーカウンター装置を製品化した。

 この装置の特徴は,作業の効率化及び人手作業により生ずる誤差,製品品質の安定化を計り,測定値をデータとして残すことが出来る点である。本報では,この装置の概要を紹介する。
(本文57ページ)


夾雑物測定システムの開発
三菱製紙株式会社 北上工場 パルプ製造部 パルプ技術グループ 及川 信雄 

 パルプスラリー中の夾雑物測定を目的として,独自の夾雑物測定システムを開発した。本システムは,スリットスクリーン,夾雑物濃縮装置,循環タンク,ポンプ,CCDカメラ,付属のソフトウェア等から,構成されている。
 また本システムは,オンライン無人測定により,代表性を確保できる大量のサンプルを処理可能であり,更に迅速かつ信頼性が高く,測定精度も良い等の特徴を有する。これらのメリットについても,本稿で述べる。
(本文64ページ)


光透過型オンライン繊維配向計の開発
日本製紙株式会社 技術研究所 阿部 裕司,轟 英伸  

 紙全層の繊維配向をオンラインで計測することを目的として,非接触,非破壊の繊維配向測定方法の検討を行い,光透過法の有効性を確認した。光透過法とは,紙に集光したレーザー光を照射すると紙層内で光は繊維に沿って広がり(光ガイド効果),裏面に発生する小さな光の楕円(繊維配向反映)像の形状から繊維配向を評価する方法である。
 抄紙機上を高速で走行する紙を計測するために,ナノ秒パルス(YAG)レーザーを用いた静止画像の取得,用紙のバタツキ等の走行不安定性に対してはピントがズレ難い超被写界深度レンズを採用し試作機を作成した。パイロットコータにおいて1,000m/minで走行する各種用紙の計測テストを行った結果,従来のオフラインの繊維配向測定機との間に高い相関関係を確認した。
 さらに,実機BM計へ搭載するために装置のコンパクト化を実施し,高輝度の半導体レーザーを光源に使用した。半導体レーザーは発光部が矩形であるため,真円の微小光スポットを得ることが困難であったが,小径(φ60μm)の光ファイバーを結合することにより,良好な光スポットを得ることができた。コンパクト化を実施した装置は,YAGレーザーと同様に高速走行紙の計測が可能であり,紙全層の繊維配向のオンライン計測が可能であることが確認された。
(本文70ページ)


LCA/環境ラベル研究会活動経過報告
日本製紙連合会 LCA/環境ラベル研究会 松井 基  

 産学官協同によるLCA日本フォーラムの設立に伴い,日本製紙連合会は紙パルプ産業のLCAを検討するために,1997年に技術環境部会技術委員会にLCA研究会を設置した。タイプV環境ラベルに呼応し,1998年に研究会をLCA/環境ラベル研究会と改称した。研究会の活動を以下に要約する。本報ではこれらについて概説する。
 (1) 紙パルプ製造に関するLCI値の集積
 (2) タイプV用の業界ガイドラインの作成
 (3) 製造ステージにおけるLCI簡易算出法の提案
 (4) NCASIによる紙パルプ工場からのGHG排出量推計法の翻訳と内容の検討
(本文76ページ)


脱墨工程の界面化学―雑誌古紙の発泡性に関する脱墨剤と脂肪酸の効果―
日本製紙株式会社 技術研究所パルプ研究室 後藤 至誠,宮西 孝則  

 雑誌古紙の配合の増加に伴う泡トラブルの対策の一環として,古紙および脱墨剤の発泡性について,脱墨剤の動的表面張力と泡立ちの関係および脂肪酸添加効果について調べた。
 雑誌古紙を新聞古紙に50%配合することにより,フローテーションでのフロス液量が1.5倍に増加した。処理前のパルプを分析した結果,灰分および濁度が増加し,ゼータ電位がより小さくなり,カチオン要求量および表面張力が低下していた。系内に泡に吸着されやすく泡沫を安定させる灰分が増加すること,疎水性の溶存物質が増加することから,雑誌古紙配合パルプは泡立ちやすく泡切れにくいことが判った。これらの結果から,雑誌古紙には,従来よりも泡立ちの低い脱墨剤が効果的と考えられた。
 脱墨剤水溶液の動的表面張力を測定し発泡性との関係を調べた結果,初期動的表面張力の高い脱墨剤ほど発泡性が低いことが判った。初期動的表面張力の高い脱墨剤は,複数の成分からなる混合物であり脂肪酸を含んでいた。脂肪酸の添加により,脱墨剤水溶液の動的表面張力が高くなり泡立ち難くなることが明らかとなった。ステアリン酸/パルミチン酸混合物とオレイン酸は,共に動的表面張力の上昇効果があるものの,表面粘弾性については異なる挙動を示していた。ステアリン酸/パルミチン酸混合物を添加した系では,時間の経過と共に表面粘弾性が変化したが,オレイン酸を添加した系では変化が無かった。従って,融点の高い固体状のステアリン酸/パルミチン酸混合物と融点の低い液状のオレイン酸では,異なる作用機構が働いていると推測された。
 動的表面張力を指標として適切な脱墨剤を選定することで,雑誌古紙の発泡性を低減でき,高い白色度の高品質DIPを得ることができると考えられた。
(本文88ページ)


ゼオライト原料としてのペーパースラッジ(PS)の評価(第3報)―PS化学組成の週変化とゼオライト原料としての適性―
静岡県富士工業技術センター 紙リサイクルプロジェクトスタッフ 安藤生大,齊藤将人,村松重緒,日吉公男  
愛媛大学 農学部 春名 淳介,松枝 直人,逸見 彰男       
岳南第一製紙協同組合 嶋田 修治       

 静岡県富士市内に所在するPS協同処理組合(16工場)の協力を得て,PSの化学組成,鉱物組成の週変化傾向を4週間にわたり詳細に検討した。具体的には,PS協同処理組合から排出された全体のPS焼却灰と,組合を構成する16工場から排出された各PSを,それぞれ週1回の間隔で合計4回採取し,化学組成の分析とゼオライト合成を行った。その結果,(1)各工場から排出されたPSの化学組成は変動するが,PS協同処理組合から排出された全体のPS焼却灰の化学組成は極めて安定していること,(2)ゼオライト原料として適するPSのみを選別したと仮定して,計算によって求めた化学組成は,PS協同処理組合から実際に排出された全体のPS焼却灰の化学組成と大きく変わらないこと,(3)このため,工業的にゼオライト合成を行う場合,ゼオライト原料として不適と判断したPSを分別する必要はなく,化学組成の安定した全体のPS焼却灰を原料として用いるのが,作業性,経済性の観点から適すること,等が明らかとなった。
(本文98ページ)