2003年11月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2003年11月 

第57巻 第11号(通巻第632号) 和文概要


最新のプレス出口直後の水分プロファイル管理―超小型スキャンニングプロファイルシステム―
フォイトペーパーオートメーション株式会社 内河 英臣   
Voith Paper Automation GmbH R. P. シード  

 抄紙機の各パートでは,それぞれの固有の機能を発揮するために測定や制御を必要とされている。紙の主要な特性はフォーミングとプレス出口との間で生まれると考えられているにもかかわらず,測定や制御はほとんどされていない。実際,抄紙機における全脱水量の50%以上はこのパートにおいてなされている。またフォーミングファブリック,フェルト,トランスファーベルトの状態を正確に表示する測定器も無い。従って多くの場合,操業者の経験と推測による操業が行われている。この状況を解決するにはプレス出口直後の正確な水分プロファイル測定を常時しなければならない。しかしプレス出口の劣悪な環境と設置スペースを考えると実現は容易ではない。このような実情を打開するために開発された信頼性の高い水分プロファイル測定分析システム,エンバイロスキャンTMを活用してプレス出口の水分プロファイルを正確に測定する事が可能となった。そのデータをもとにプレス機械の最適操業により紙の品質と抄紙機全体の稼働率を著しく向上させることが可能となった。
 本報告では既にエンバイロスキャンTMを使用しているユーザーから提供されたデータを中心にしてまとめたものである。
(本文1ページ)


プレスロール用剥離剤について
株式会社メンテック 販売技術部 澤田 拓  

 プレスロールへの粘着異物(ピッチ)および微細繊維の付着は,欠点や断紙,紙表面の毛羽立ちといった様々な問題を引き起こす原因となる。特に抄速1,200m/分以上の高速マシンでは,その問題が顕著に現れている。
 つまりプレスロールからの紙の離れ易さ(剥離性)は,抄速を制限するだけでなく,紙の品質にも大きな影響を与えることになる。
 ロール表面をクリーンに保つ方法としては,一般的にカチオン系ポリマー(洗浄剤)が使われてきたが,ドローの低減や紙の毛羽立ち防止には効果が見られなかった。
 弊社のプレスロール汚れ防止技術では,ワックス系エマルジョン『オンプレス』をプレスロールに常時適用することによりロール表面に剥離膜を形成。ロールの剥離性を向上させることによって,ロールへの粘着異物の付着,およびその成長を防止している。
 この新技術は,ロールの粘着異物の付着や紙の毛羽立ちを防止するだけでなく,マシン増速による生産性の向上,紙面保護による品質の向上を可能にしている。
(本文7ページ)


製紙機械の潤滑管理と省力化について
広和株式会社 東京支店油機営業グループ 田中 和彦  

 製紙機械設備にはあらゆる個所に,潤滑を必要とする軸受けが存在しており,その潤滑方法も,中国の後漢時代に蔡倫が現在の抄紙機となる原形を構築して以来様々方法が考えられ現在に至っている。
 主な潤滑方法として,鉱物性潤滑油,脂肪性潤滑油,混成潤滑油,グリース等の潤滑剤を使用した,手差し潤滑,滴下潤滑,浸し潤滑,リング潤滑,重力潤滑,はねかけ潤滑,噴射潤滑,強制潤滑,グリース潤滑他様々な潤滑方式がある。
 本報では,製紙機械に多く用いられている鉱物性潤滑油を用いた強制潤滑の管理に関する問題点と,その対応方法に触れ,皆様方が日々の潤滑管理に悩まされている事柄から,多少なりともお役に立てれば幸いである。
(本文12ページ)


ろ過・分離技術活用による製造利益創出―ポールのトータル・クリンリネス・コントロール―
日本ポール株式会社 伊澤 一康  

 製紙機械を含むすべての機械においては,異物が機械故障の主原因となることは,すでによく知られている。そして,機械内の異物の除去が,故障防止の有効な手段であることも,数多くの調査研究結果によって明らかにされている。しかしながら,現在はまだ,故障の修理や部分的な改善という狭い範囲で,異物の問題が検討される場合が多く,様々な工程におけるトータル的な異物量の低減によって得られる効果については,十分には理解されていないようである。
 ここでは,製紙機械の清浄度管理への組織的なアプローチであるトータル・クリンリネス・コントロール(TCC)について提案する。TCCは,部品の製造から機械の運転および寿命による廃棄,またはリサイクルまでの機械寿命全体において,流体中の異物の発生率と異物による影響の最小化をめざした製造工程で使用される流体の総合的な清浄度管理である。機械の清浄度をモニターし,記録しながら,その傾向を分析することによって,メンテナンスの効率化が達成できるだけでなく,さらにモニター結果をもとにした機械の寿命延長や,効率化,生産性向上,品質向上をめざした改善を図ることができる。すなわち,このような予測保全としてのTCCアプローチは利益の創出に貢献できる。
(本文15ページ)


最少生涯コストの一軸ネジポンプ
モノポンプ社 ジェレミー ジョーンズ  

 一軸ネジポンプの選定には「最少生涯コスト」,即ちポンプ購入者への最少のポンプ生涯コストを提供するという原則について検討しなければならない。
 初期投資コストと設置以降の運転維持コストとのバランスを考えることによって,最も経済的な解決方法を得ることができる。
 概して,その寿命が20年にも及ぶポンプに対しては,その補修経費や運転経費の算出に電力消費量と部品消耗代を考慮しなければならない。10年におよぶ科学的調査から得られた部品の消耗に至るメカニズムははっきりしている。
 最少生涯オストを可能にできるのはモノポンプである。そして,その具体化のために実際の現場から得られた経験に基づくアドバイスを提供している。
(本文20ページ)


PAM系層間強度向上剤「ハイモロックMJ―450」
ハイモ株式会社 湘南研究センター製紙化学研究グループ 中村 智法  

 紙層を重ね合わせて抄造される板紙において,層と層との接着強度が重要となる。従来,層間強度向上剤としては,コーンスターチ,馬鈴薯澱粉やリン酸エステル化澱粉などの澱粉が主に使用されており,澱粉を糊化せず,水に懸濁させたまま湿紙上にスプレーし,乾燥工程で澱粉が糊化することにより,接着効果を発現させている。澱粉を使用する際には,腐敗の問題,虫害の問題等があるため,合成系層間強度向上剤への要望が多く,ポリアクリルアミド系の層間強度向上剤も使用されている。弊社では,水系中で分散重合を検討し,カチオン性ディスパージョン製品として濾水,歩留剤を開発した。さらに,アニオン性のディスパージョン製品の検討を重ねた結果,層間強度向上剤「ハイモロックMJ―450」を開発した。「ハイモロックMJ―450」の特徴としては,低添加量で大きな効果が得られ,作業環境の改善がはかられる。「ハイモロックMJ―450」の物性については,粒子径が澱粉とほぼ同様の大きさで,従来のPAM系と比較すると格段に大きいものである。「ハイモロックMJ―450」の化学組成,物理的性質から,層への定着機構を澱粉,および従来のPAM系と比較して考察する。また,「ハイモロックMJ―450」の性能を実施例として紹介する。
(本文28ページ)


コンパクトウェットエンドシステムは最先端技術であることが検証された―17基の設備から得た経験―
POM テクノロジー社 ポール オロフ メイナンダー  

 10年前,ほとんどの製紙会社では制御のし易さと安定性の理由でシステムは大容量でなくてはならないという認識であった。抄替え時の短縮化を図るため本論文の筆者はコンパクトな抄紙機ウェットエンドシステムの開発を開始した。その結果はコンパクトであることはより広範囲な面で有利であることを示している。Voith社によれば「世の中の流れは今逆の方向で,即ちシステマチックな白水回収と個別の白水フローをシステムへ直接戻す方向にむかっている」。POMテクノロジー社のパテントにより,それが脱気された形で実際に行われ,既に17基の設備を通して実証されている。本論文ではこれらの設備から得られた経験を元にPOMコンパクトウエットエンドシステムの内容を更に掘り下げて紹介している。
(本文32ページ)


紙パルプ用脱水機―ロータリプレスフィルタ―
巴工業株式会社 営業技術部第2課 松本 光司  
 ロータリプレスフィルタはカナダのケベック工業研究所(CRIQ)により開発され,同国フォーニヤ社により製造,販売されている新しい脱水機構を持つ回転加圧脱水機である。2002年からは巴工業株式会社で国産を開始した。高い脱水性能を有し,機構が簡単,密閉構造で臭気の発生がない,コンパクトでエネルギーコストを低減でき維持管理性に優れているため,これからの時代に合致した脱水機と考えられる。現在日本国内だけで14台(下水含む)の納入実績を油脂,製紙工場排水汚泥向けにも,2ヶ所(3台)の納入実績がある。また,実験機による各種処理物の脱水実験も継続して実施しており,良好な結果が得られている。本稿ではロータリプレスフィルタの機構,脱水原理について紹介する。また,製紙排水汚泥の脱水の際に起こった問題を解決した,バーチカルリストリクタ型のロータリプレスフィルタの機構,脱水原理及びこれまでに実際に行った実験データを他機種との比較を交えて紹介する。
(本文40ページ)


「カバカーブ」(ハイドロカーブCC)―光学的性質を増すために開発された新しい塗工用重質炭酸カルシウム―
Omya AG ギレルモ ブルボール  

 製紙業界での湿式重質炭酸カルシウムは毎年飛躍的に伸びている塗工顔料で色々の紙に使用されている。
 塗工用顔料としての湿式重カルは現在まで高白色度,バインダー量低減,塗工機のランナビリティー,オフセット印刷適性,経済性等の効果が期待されてきたが,しかし使用用途によっては不透明性,隠蔽性が低く,グロスの点では限界がある。
 OMYA社は粒子の光散乱性に関する理論から,光散乱係数を高くする,即ち粒度分布をシャープにし,理想の不透明性をもたらし,かつ湿式重カルが持つ多くの品質の優位性を損なわなくする塗工顔料を粉砕技術で調整することにより,この問題を解決した。これが7年前に開発され,現在100万トン(スラリー)まで著しく伸びた商品“カバカーブ”である。この特殊な顔料の生産能力を新規に増大する計画で進んでいる。
 本報において,“カバカーブ”についての説明と従来の湿式重カルとの比較をLWC配合(ウェブオフセット),コート紙(シングル塗工),及び塗工板紙(ダブル&トリプル)にて例証する。
(本文46ページ)


環境に配慮した紙パ用染料・薬品の展開
株式会社日本化薬カラーズ 市場開発SCグループ 菅谷 邦夫  

 環境問題が叫ばれて久しいが,今や企業にとって環境への対応は当然のこととされている。
 日本化薬も「生命と健康を守り,豊かな暮らしを支える製品と技術で人類に貢献し続ける会社」を基本理念として「環境と安全と品質に関する私たちの宣言」を制定し,1916年の創業以来80年以上にわたり事業を推進してきている。
 環境改善にいち早く対応した製紙業界では,増白を目的にした蛍光染料やカラフルさを目的にした有色染料等が広範囲に使用されている。これらの製品を提供する日本化薬としても,製紙業界のその様な動向に沿った製品の開発を推進している。本報では,溶媒に水のみを使用した液状の蛍光染料やリサイクルを前提にした脱色性の良好な有色染料のシリーズ化,更には,蛍光増白紙から蛍光発光を取り除く,蛍光消光剤などの環境に配慮した製品の品質について検討状況を述べる。
(本文51ページ)


平成13年度産業廃棄物実態調査結果報告
紙パルプ技術協会 環境技術委員会   
日本製紙連合会 廃棄物対策委員会  
日本製紙連合会 環境保全委員会   

 平成13年度分については,平成12年度の廃棄物分類に準じて調査した。回答数は,48社111工場で,カバー率は,日本製紙連合会傘下企業の生産高に対しては98%,国内全生産高に対しては85%であった。
 平成12年度の調査結果と比べて全体の発生量は53%減,その含水率は1.2ポイント減少した。再資源化量は平成12年度に比べて1.6万トン強増加し,直接再資源化分及び中間処理後再資源化分の合計で131.4万トンに達した。
 主として再資源化の対象になっているのは,燃えがら,有機性汚泥,ばいじんの3品目で,再資源化量の86%を占めている。再資源化と処分に当っては,総発生量の70%弱が何らかの中間処理を受けている。その内の97%強は自社内で中間処理されており,最も量の多い有機性汚泥は略全量(99%)が自社内で中間処理されている。
 最終処分量は266千トンであるが,中間処理されずに直接処分されたものが96千トンあり,夫々,46千トン,22千トン減少した。直接処分量は全体の36%であった。処分場別では,自社処分場が20%,処理業者処分場が19%,公共団体等処分場が61%であった。前年に比べて,自社処分場,処理業者処分場の比率が下がり,公共団体等処分場の比率が上がった。
 日本製紙連合会の廃棄物最終処分量目標は2010年度に450千トンとしているが,本年度は554千トンと1990年度比78%減であり,達成率は95%となった。
(本文56ページ)


スギTMPの製造技術
日本製紙株式会社 技術研究所 小野寺勇雄,上條 康幸,宮西 孝則  

 スギは国内に豊富に存在する樹種であり,建築材や家具等,様々な用途に利用されているが,パルプ原料とした場合,リグニンや樹脂成分を多量に含み,容積重が低いことからKP原料としては適していないとされている。しかし,容積重が低いというスギの特徴はKP原料ではなく,機械パルプの原料として適性があると考えられたことから,本研究では実験室スケールでスギを原料としたTMP製造技術について検討を行った。
 ラジアータパインに対するスギの配合率を種々変更した原料チップからCTMP法を用いて機械パルプを調製し,パルプ物性の評価を行った。その結果,スギ配合率の増加に伴って,パルプの比散乱係数が増加した。各パルプにおけるファインの性質について調査を行ったところ,スギ配合率が増加するにつれて,光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することが明らかとなった。従って,スギを配合することにより比散乱係数が増加したのは,生成するファインの性質が変化したためであると推定される。
 また,過酸化水素を用いた漂白実験において,スギを20%配合した場合は,配合しないものに比べて到達白色度が約3ポイント高いという結果が得られた。
 以上の結果から,スギを原料として製造した機械パルプは,光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することから比散乱係数が高く,紙の不透明度向上に対して有望な原料であると考えられる。さらに,今回評価を行ったスギCTMPは白色度が高く,漂白性にも優れていることがわかった。
(本文65ページ)


ゼオライト原料としてのペーパースラッジ(PS)の評価(第2報)―PS化学組成の日変化とゼオライト原料としての適性―

静岡県富士工業技術センター 紙リサイクルプロジェクトスタッフ 安藤 生大,齊藤 将人,村松 重緒,日吉 公男   
愛媛大学 農学部 春名 淳介,松枝 直人,逸見 彰男         

 PSの化学分析値を基にノルム計算を行いタルク―カオリナイト―カルサイトの3成分図から(A),(B),(C),(D)の4領域を定義し,これら各領域に属する代表的な製紙工場4工場の協力を得て,連続5日間のPSをサンプリングし,主成分元素の分析とゼオライト合成を行った。この結果を基にPSのゼオライト原料としての評価を行なった。その結果,以下の結論が得られた。(1)製紙工場A〜Dに対応するグループA〜DのPSのCaO含有率に対するZ index/10,000の回帰曲線(y=−0.51Ln(x)+1.92)から,ゼオライト合成に適するCaOの含有率を求めると,CaO含有率が21.5%以下のPSはゼオライト合成に適し,28.8%以上のPSはゼオライト合成に適さない。(2)カオリナイト以外の反応性の高いSi(ホワイトカーボンなど),Al(排水処理に用いられる硫酸アルミニウム等の焼成物)によりゼオライトが生成する場合,主にフィリップサイトとソーダライトが形成される。(3)グループA〜Dの化学分析値から,CaOの分子比をSi,Alの原子比で割ったXCa/Si―XCa/Al図において,XCa/Si/XCa/Al=0.97の高い直線関係がみとめられた。(4)タルク―カオリナイト―カルサイトの3成分図を用いてPSの鉱物量比の変化を観察すると,明らかにゼオライト合成に有利なPSを排出する工場が存在し,その傾向は5日間程度の短期間において変化しない。(5)製紙会社の製造品目により,ゼオライト原料としての適否が決まる。具体的には,カオリナイトを主とするコート処理を施した製品を製造している製紙工場のPSはゼオライト合成に適する。
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