2003年5月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2003年5月 

第57巻 第5号(通巻第626号) 和文概要


第5回自主行動計画フォローアップ結果とエネルギー関連情報

日本製紙連合会 間 邦彦  

 日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め活動している。その中の地球温暖化対策の1つとして,CO2の排出抑制があり,省エネ目標として「2010年における紙・板紙の化石エネルギー原単位を1990年比10%削減する」を掲げている。
 1998年度から1990年を基点とした前年度の省エネ実績についてフォローアップし,結果を公表している。今回2001年度実績について報告する。
1990年に対して2001年度の化石エネルギー原単位は92.7%まで順調に削減されているが,CO2排出原単位は96.0%にとどまっている。これはコスト上有利な石炭が多用されたことによる。
また,1990年に対して2001年度の生産量は8.1%増加したがCO2排出量は3.8%増にとどまっている。その差の4.3%の削減のうち,3.3%は製紙業界の努力によるもので,1.0%は電力会社の努力(発電・送電効率向上)によるものである。
2001年度の省エネ投資額(回答27社)は169億円で,省エネ量(原油換算)は193千kl/年であった。今後の投資計画(回答23社)は1,019億円,省エネ量は523千kl/年が見込まれている。
また,日本におけるエネルギー消費量,CO2排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置づけについても触れた。
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RPFの現状と今後の見通し
株式会社関商店 関 勝四郎  

 バブル経済が崩壊して十余年,いまだデフレ不況からの出口すらも見出すことの出来ない日本経済であるが,そんな中にあっても企業には更に重い負荷がかけられようとしている。
 環境面ではCO2削減により地球温暖化の防止を図ろうという目的の京都議定書の批准が決定し,その影響を受けての事なのかどうかは定かではないが経済産業省が行っている「エネルギー特別会計」の見直しが実現の方向で動き出し,1トンあたり700円という石炭への課税も現実となりつつある。この課税が実施されれば,製紙業界や化学業界等の石炭消費型産業は大変大きな負担を背負うことになる。本稿では石炭の有望な代替燃料として普及しつつあるR.P.F.(Refuse Paper & Plastic Fuel)についてRPF事業の現状と見通しについて御紹介したい。
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RDF焚き内部循環流動床ボイラの特長と運転実績
川崎重工業株式会社 プラントビジネスセンター火力プラント部 武藤 貞行,末光 信夫  

 川崎重工では一般廃棄物(ごみ)焼却ボイラの高効率化を図るために,輸送性,貯蔵性,燃焼特性等に優れたRDF(廃棄物固形化燃料)を利用した内部循環流動床ボイラを開発した。本ボイラは内部循環流動床部分に二重仕切壁構造を採用し,RDFの燃焼を行う燃焼セル,熱回収を行う収熱セルおよび流動媒体を燃焼セルから収熱セルへ循環させる循環セルの各セルに分割している。二重仕切壁構造により,収熱セル内での腐食環境を燃焼セルで発生する廃棄物燃焼特有の激しい塩化物腐食環境から隔離・抑制することが可能となる。この収熱セルに最終過熱器を配し,これまで400℃止まりであった蒸気条件を500℃まで可能とした。また,単一仕切壁構造では困難であった低負荷運転が,二重仕切壁構造の採用により容易に調整可能となった。
 1996年7月より当社廃棄物処理センター内に実証試験設備を建設し,運転特性,制御特性等を把握したあと,これらの試験結果を基に,商用機として国内初となるRDF焚き高効率発電プラントを大牟田リサイクル発電所殿向けに建設した。2002年10月よりRDF燃焼試験を開始し,環境規制値ならびにボイラ所期性能を確認するとともに,廃棄物発電の実績でこれまでおよそ20%であった発電端熱効率について,31%の高効率化を達成した。ここでは内部循環流動床ボイラの特長と運転実績について紹介する。
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リサイクル燃料を利用した流動床ボイラの開発と運転実績
三菱重工業株式会社 原動機事業本部 横式 龍夫  

 わが国では,急激な経済成長の一方で自然界の物質循環系の破壊による環境問題が顕在化し,これを解決するために地球温暖化防止や資源の有効活用という観点から廃棄物を再利用したリサイクル燃料が見直されてきた。
 当社ではこのニーズに合わせ,リサイクル燃料の一種である製紙スラッジの低NOx・CO・ダイオキシン類燃焼流動床ボイラ及び建築廃材をチップ化したリサイクル燃料である木屑焚ボイラの開発に取組み,独自開発した環境適合性に優れたM―STAR燃焼法(Mitsubishi Multi―Stage Air Re―firing Method:当社特許)を適用することにより実用化した。M―STAR燃焼法は,多段投入した燃焼用空気の配分を最適化し,NOx抑制及びCO・ダイオキシン類分解の促進を図る燃焼技術である。
 本燃焼技術を取り入れた流動床ボイラは試運転時にCO,NOx,SOx,ばいじん排出濃度等良好な成績で厳しい環境規制に対応可能であることを確認し,現在営業運転中である。
 更に現在,廃タイヤ処理と言う社会的要望から,上述のM―STAR燃焼法とごみ焼却に代表される環境部門の異物抜出し技術を組合せた廃タイヤを燃料とするボイラの開発・実缶計画に取組んでいる。
(本文29ページ)


製紙工場における廃棄物燃焼ボイラ―内部循環流動床ボイラと内部循環流動床ガス化炉―
株式会社荏原製作所 環境プラント事業統括 塚本 圭祐  
株式会社荏原製作所 環境・エネルギー開発センター 三好 敬久  

 地球温暖化問題からCO2削減は製紙業界においても大命題であり,昨今ではバイオマスエネルギーと廃棄物エネルギーを上手く組合せ有効活用することが大切である。
 バイオマス及び廃棄物エネルギーの利活用には,現在は直接燃焼とガス化技術が有力であり,前者にはエバラ内部循環流動床ボイラ(ICFB)が,次の特長を持つことから多品種の燃料を適用することが可能なため最適である。@砂の旋回流により流動層温度が均一。A砂の動きが活発なため不燃物の排出が容易。B流動床からの回収熱量を調節して流動床温度を制御することが可能。当社ではその特長を生かし,ペーパースラッジと廃タイヤ・石炭を燃料とするボイラを大昭和製紙(株)本社工場富士事業所にPS焼却炉として納入し,2000年3月から営業運転を開始している。
 また,後者のガス化技術の発展形として内部循環流動床ガス化炉(ICFG)を開発中であり,ICFGは一つの炉の中にガス化・チャー燃焼・層温制御の3つの機能を持った内部循環型の流動床ガス化炉であり,次の特長を持つ。@原料の範囲が広い(バイオマス〜石炭〜可燃性廃棄物)。A不燃物混入も可。Bガス化室で発生したタールは流動媒体に付着して燃焼室で燃焼されるため,タール・チャーによる問題を回避できる。C熱回収室を設けることで層温を任意に制御できる。D燃焼ガスが混ざらず高カロリーガスが得られる。E生成ガスが水素(H2)リッチである。
 今後,バイオマス/廃棄物の有効利用が一層進むであろう社会状況の中で,当社の流動床技術を用いることで少しでも環境に貢献できたら幸甚である。
(本文41ページ)


新エネルギー政策の現状
資源エネルギー庁 新エネルギー対策課 濱田 康次  

 わが国のエネルギー政策では,エネルギー安定供給の確保が不可欠であるとともに,加えて,地球温暖化問題という大きな課題も抱えている。我が国の場合,1997年12月に採択された京都議定書における温室効果ガス6%削減約束を達成するには,2010年度におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量を1990年度レベルに抑制することが必要である。このため,2002年3月に地球温暖化対策推進本部において決定された「地球温暖化対策推進大綱」では,省エネルギー対策とともに,新エネルギー対策としても具体的な導入目標や追加対策を盛り込んでおり,今後更なる対策の実施により,一層の新エネルギーの導入を推進していくこととしている。
 具体的には,2002年1月に政令を改正し,バイオマスと雪氷のエネルギー利用を新エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法(平成9年法律第37号)上の新エネルギーと位置づけ,国の支援の対象とした。また,2002年6月には,電力分野における新たな市場拡大措置として,電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法を制定した。本報では,これら新エネルギー政策の現状について紹介する。
(本文50ページ)


メタン発酵設備について
日本製紙ケミカル株式会社 江津事業所技術環境室 浜田 真治  

 江津事業所は,国内で唯一の亜硫酸法によるパルプを生産しており,蒸解排液の濃縮前後の液を利用し,リグニン製品,酵母・核酸の製造,パルプを原料としたCMC(カルボキシメチルセルロース),セルロースパウダーなどを生産し,木材資源の完全有効利用を目指している。
 当事業所では,昭和56年,国内のパルプ工場として初めてメタン発酵(嫌気性排水処理)設備を導入した。しかし設備の運転開始から約20年が経過し,事業所を取り巻く環境も変化するともに,環境設備に関しても省エネ,省資源,高効率化が求められるようになり,平成12年1月,新たに高効率型のメタン発酵設備ICリアクタを導入した。
 今回導入した高効率型メタン発酵設備は,原水量などの排水負荷変動に強く,安定した処理が可能であった。メタンガス発生量は平成13年度で310万Nm3,当事業所のエネルギーの2パーセントに相当し年間数千万円のコストメリットが得られた。また,本設備導入により大幅な省力化にも繋がった。
 今後は難分解性排水の処理についても検討し,パルプ生産能力改善ならびに環境対策に努めたい。
(本文63ページ)


固定ストーカー式水管ボイラーにおけるバイオマス燃料使用実績
王子製紙株式会社 日南工場施設部汽力課 岩田 龍馬  
 1号ボイラー(固定ストーカー式水管ボイラー)は,1960年に重油とバークの混焼ボイラーとして稼動し,現在も蒸気負荷変動吸収缶として活躍している。
 オイルショックを契機に重油使用量削減を図るため,1981年にバークの増焚き及び燃料用タイヤチップの燃焼,1990年には損紙の燃焼を開始し,バイオマス系燃料の利用促進の都度,燃焼テストや設備改善を繰り返してきた。
 バイオマス系燃料使用による問題として耐圧部(火炉管,過熱器,缶管)及び付属設備(ガス式空気予熱器,マルチサイクロン)の減肉摩耗,及び炉床上に形成する溶融灰(クリンカー)がある。減肉摩耗対策として減肉部材料をグレードアップし,定期的に取替えを実施している。又溶融灰(クリンカー)については,未だに原因がつかめていないのが現状である。
 本稿では,バイオマス系燃料の活用事例として,1号ボイラーにおけるバイオマス系燃料への転換過程と使用実績について紹介する。
(本文69ページ)


製造工程ロスの熱源利用
リンテック株式会社 熊谷工場原動課 長谷 光晴  

 リンテック(株)は,特殊紙をはじめ剥離紙・粘着紙などを製造・販売している会社である。その製造工程で発生する工程ロス品については再生困難なものは焼却するか外部の処理業者に委託して処理してもらわざるを得ない。そこで熊谷工場では当工場を含む関東5工場の工程ロス品を熊谷工場に集め,固形燃料にし焼却炉ボイラーで燃焼させることにより蒸気を発生させ紙の乾燥に利用している。
 焼却炉ボイラーから発生する年間合計蒸気量は約5万トンであり工場で使用する蒸気の約1/5を工程ロス品を熱源とする蒸気で補っていることになる。これは年間約3,800klの灯油を節約していることに相当している。産業廃棄物処理費用は確実に上昇する兆しがありメリットはさらに増加する方向にある。また化石燃料使用によるCO2の削減にも貢献している。
(本文75ページ)


#1SLBにおける廃棄物燃料の有効利用について
王子製紙株式会社 苫小牧工場 福沢 大樹  

 近年,埋立処分場の不足による廃棄物削減及び化石燃料代替の観点から廃棄物燃料が非常に注目を集めている。これらの廃棄物は従来埋立並びに焼却等,熱利用されない物質として扱われてきた。
 しかし,燃料技術の確立,固形化燃料製造技術の進歩により化石燃料に替わる新たな燃料として脚光を浴び,将来を担うであろう新エネルギー源として有望視されている。
 弊社苫小牧工場ではパルプ原料の丸太から発生するバークや抄紙工程の排水より沈降分離した製紙スラッジ等の廃棄物が発生する。これら廃棄物を流動層方式の#1スラッジボイラー(以下#1SLB)にて燃焼することにより廃棄物削減,化石燃料代替によるエネルギーの有効利用及びコストダウンを積極的に進めて来た。
 ここに#1SLBでのスラッジ,バーク及びRPFの導入経緯及び導入時における問題点とその対策方法並びに廃棄物の有効利用方法について紹介する。
(本文80ページ)


スラッジ固形燃料化設備について
日本製紙株式会社 勇払工場工務部 土田 直道  

 日本製紙(株)勇払工場は,KP・TMP及びDIPの原料設備と5台の抄紙機で新聞紙,上質紙,コート紙,カップ原紙などを年間約30万トン生産している。これらの各工程から発生する排水は,クラリファイヤーを経由し放流される。排水スラッジ発生量は設備計画当時に絶乾7,600トンであった。廃棄物の削減及び有効利用する対策として排水スラッジの固形燃料化設備を2000年10月に設置し,操業開始した。従来排水スラッジは低位発熱量が低く燃料とはみなされていなかったが,場内で発生する廃パレットを解体した木片や紙管片等を混合し成形することにより固形燃料化できた。当工場では,この固形燃料を流動床式石炭ボイラーにて燃焼し,発電することによりサーマルリサイクルを達成するとともに最終処分量も大幅に削減できた。本報では,排水スラッジ固形燃料化設備の概要について報告する。
(本文84ページ)


ペーパースラッジ・木屑混焼ボイラーの操業―地域への貢献・化石燃料からの転換・エネルギーコストの削減―
東海パルプ株式会社 島田工場原動部動力課 平川 弘行  

 当社では,包装容器リサイクル法の施工等,強化される環境改善への社会的動向に鑑み,未利用資源の有効利用の観点から,製紙原料の古紙利用率のアップや,再生紙の用途拡大に努力してきた。しかし,これらの取り組みは,都市ゴミ発生の削減に少なからず貢献すると同時に,工場内にて発生するペーパースラッジやパルパー粕,スクリーン粕など,いわゆる「産業廃棄物」の排出量増大を引き起こすこととなった。
 こうした事業活動によって発生する産業廃棄物を焼却処分するために,当社では4基の施設を保有していたが,設備の高効率化,老朽化及び熱回収に対応する必要があり,ペーパースラッジ・木屑混焼ボイラーの建設を計画した。
 本報告は,今回新設したペーパースラッジ・木屑混焼ボイラーの操業経験を報告するものである。
(本文90ページ)


PS焼却炉改造と運転経験
大昭和製紙株式会社 岩沼工場工務部動力課 鈴木 裕,菅野 義照  

 当工場の焼却炉は,ペーパースラッジ(PS)と古紙パルプ(DIP)工程で発生するDIP粕を,補助燃料を使わずに焼却処理している設備である。
 この焼却炉は平成9年12月のダイオキシンに関する法改正に伴う新基準に適合させるため,さらにDIPの増産に依るPS量増加に対応するため改造が必要であった。
 これらを背景に焼却炉の改造工事を計画し2002年5月に完工させた。ダイオキシン対策のほか,この改造により焼却能力を絶乾量190t/日から250t/日と60t/日増加させた。さらに廃熱エネルギーを回収するため廃熱ボイラーと蒸気タービンを設置し最大3,100キロワットの発電が可能となった。営業運転を開始し数ヶ月が経ち,ほぼ順調に運転してきたが問題点も発生している。供給系統の詰り・灰搬送設備のトラブルといった今後改善が必要な部分もあり,対策案を検討中である。本報では改造の概要や特徴などの紹介,またこれまでの運転経験について報告する。
(本文99ページ)


新エネルギー関連支援制度紹介
新エネルギー産業技術総合開発機構 新エネルギー導入促進部 杉本 和弘,河井 信之  

 新エネルギーとは「新エネルギー利用などの促進に関する特別措置法」において,「技術的には実用化段階に達しつつあるが,経済性の面での制約から普及が十分でないものであって,石油代替エネルギーの導入を図るため必要なもの」と定義づけられている。
 1980年の設立以来 NEDOは新エネルギーの開発,普及促進を重要な任務のひとつとして実施してきた。
 NEDOは,新エネルギーの開発,普及促進のため,@コスト低減や効率向上のための研究開発,A開発された技術が現場に適応するかどうかを実証する実証試験,B確立された技術を速やかに普及させるための導入支援,以上の3つの事業を三位一体の形で推進してきた。
 さらに,新エネルギーの加速的促進を目的として,設備設置費用のみならず,新エネルギーに対する理解と認識を深めるため,きめ細かい情報提供,指導及び普及啓発などの事業を行っている。
 本稿では,新エネルギー導入の背景,支援制度のアウトラインについて触れるとともに,平成14年度の新エネルギー導入促進事業の概要を,採択案件の例を含めて説明をする。
(本文104ページ)


磁性パルプ紙の製造(第3報) ―磁性材料を内腔に充填した磁性パルプ紙の製造方法と物理特性―
愛媛県紙産業研究センター 藤原 勝壽,森川 政昭 
 
 (1) マグネタイト及びフェライトをパルプ内腔に充填した磁性パルプ100%の磁性紙を試作した。磁性パルプ紙の裂断長及び比破裂強さは,各々5.1km及び313kPa/g/m2であった。繊維状PVAバインダーを2〜3%添加することにより,磁性パルプ紙の裂断長及び比破裂強さが各々6.51km及び461kPa/g/m2となり,NUKP紙とほぼ同等以上の紙力が得られた。
 マグネタイト,マンガンフェライト及びマンガン亜鉛フェライトをパルプ内腔充填した磁性紙の磁気特性を測定した結果,飽和磁化は各々16.1,15.7,21.2emu/g,残留磁化は各々3.5,3.1,4.5emu/gであった。
 (2) マグネタイト及びフェライトをパルプ内腔に充填した磁性パルプをNUKPと混合抄紙した磁性パルプ紙の裂断長は,磁性パルプの添加量が増加するに従って裂断長は減少した。磁性パルプ100%の磁性紙にPVAバインダーを2%添加した場合,NUKP紙と同等の紙力が得られた。
 マンガン亜鉛フェライトをパルプ内腔に充填した磁性パルプ混抄紙の磁気特性は,磁性パルプの混抄率が減少するに従って飽和磁化及び残留磁化も減少した。
 (3) マグネタイト及びフェライトをパルプ内腔に充填した磁性パルプ紙とNBKP紙の抄き合わせ紙の試作試験を行った。磁性パルプ紙と木材パルプ紙の抄き合わせ紙の層間剥離強さは,二層抄き合わせ紙及び三層抄き合わせ紙の双方とも,PVAバインダーを1〜2%添加することにより,剥離強さが幅50mmの試料で1.7Nとなり,抄き合わせ層間接着の強い抄き合わせ紙が得られた。
 (4) マグネタイト,マンガンフェライト及びマンガン亜鉛フェライト等のソフトフェライトをパルプ内腔に充填した磁性パルプをNBKP紙に疎に抄き合わせることにより,高度なセキュリティ性を付与したセキュリティ紙を試作することができた。
(本文112ページ)


レーザ変位計と画像処理を用いた画用紙の異同識別法
警視庁 科学捜査研究所 宮田 瞳  
兵庫県警察本部 科学捜査研究所 下山 昌彦  
王子製紙株式会社 新技術研究所 篠崎 真  

 筆者らはこれまでに紙からワイヤーマーク等の周期性を特徴として抽出しそのパワースペクトルから相互相関法によって紙同士の類似度を求める方法を提唱してきた。本報では本法を光を透過しにくい紙に適用するために抄紙工程で生じるさまざまな紙表面の痕跡に着目しその取り込み方法としてレーザ変位計の適用を試みた。
 レーザ変位計により画用紙表面までの距離を測長し同時に紙をXYステージで動かすことにより,画用紙表面の凹凸を測定しこれを2次元画像とした。その時の測長間隔を100,200,500μmにかえて縦横128点で測長し画用紙に適した間隔を求めたところ,500μm間隔での取り込みの場合にピークがパワースペクトル図内で分散して読みやすかった。画用紙の凹凸の状態を読み取るためにもっとも適したものと考えられる。
 そこで14種類の画用紙についていずれも500μm間隔で測長して2次元凹凸画像を得ることとした。2次元凹凸画像,パワースペクトル図,逆変換図を目視で比較することによって一部の画用紙は異同識別ができた。
 しかし14種類の中にはパワースペクトル図や逆変換図ともに比較的類似したものが多くあり,銘柄の識別は困難であった。
 類似したものが多くなった原因は測定方法およびアルゴリズムに改善の余地があること,および日本国内では上質画用紙の製造会社が少ないこと,使用される画用紙用フエルトの種類も豊富ではないことなどが影響したためと考えられる。
(本文120ページ)