2003年4月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2003年4月 

第57巻 第4号(通巻第625号) 和文概要


KAMYR Technology―過去,現在,そして未来について
クヴァナ パルピング株式会社 中村 二郎  

 現代のパルプ製造技術を事実上創設したと言われるのがKAMYR(カミヤ)の技術であり,クヴァナパルピングはそのKAMYRの技術を引き継いだ会社である。KAMYRは長年にわたり多くの画期的な業績を持っており,それらの豊かな歴史は未来の計画を立てる上で大きな強みになるが,本稿の目的は,過去ではなく,現在と未来に焦点を当てることである。
 パルプ業界の大きな傾向を概観すると,“生産能力”に焦点を当てることよりも“技術”,“費用効率”,そして“最終製品”に関連した話題への興味が深まることと予想される。そして,クヴァナパルピングの最新の技術,“COMPACT COOKINGTM”,“KOBUDOMari”,“DUALSTEAMTM”,“COMPACT FEEDTM”,“Pressure Diffuser”,“DUALOXTM”,“DUALDTM”,“Ozone Bleaching”,“PREPOXTM”,“COMPACT PRESSTM”がこのパルプ業界の大きな傾向に適合した技術であると確信する。
 クヴァナパルピングとして判断した設備サプライヤーとしての更なる発展に向けた目標は,“単純化”,“ソフト的/プロセス的解決策”,そして“フレキシビリティー”である。クヴァナパルピングは,パルプ製造設備のサプライヤーとして,製品とプロセス,ハードとソフトの両方の更なる開発に多大な努力を払っている。KAMYRには歴史があり,それを継承したクヴァナパルピングには未来がある。今後共に研究開発分野へ注ぐ努力を更に強め,一層加速していく所存である。
(本文1ページ)


新しいスクリーンで更なる省エネルギーに挑戦―スクリーン(I,II,III),GFDグランフロー,キャニスタースクリーン―
相川鉄工株式会社 技術部 藤田 和巳  

 国際的な環境保護運動の高まりにつれ,板紙用原料処理,洋紙用脱墨の両部門において,ここ数年の間に大幅な省エネルギーが進められてきた。そして今日,CO2削減対策の推進に関する国際的取り決め,グローバルな価格競争に対処するためのコスト低減,等々の目的から更なる省エネルギーの推進が強く求められている。これら古紙処理の分野ではその消費動力の大きな部分をスクリーン工程が占めることは衆目の一致するところである。
 板紙用古紙処理では3―3.5kW/Ton,脱墨プラントでは4―6kW/Ton程度の動力がスクリーン工程で消費されてきたと推定される。本稿ではスクリーン工程を簡素化し,より一層の省エネルギーを達成するために開発が進められている幾つかの新しいスクリーンとそのシステムについて報告する。
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抄紙機高速化技術の適用(三菱MJシリーズ)
三菱重工業株式会社 紙印刷事業部 飯島 秀昌  

 当社は1999年Beloit社からの自立化を図りMHシリーズの優れた紙品質を維持しながら高速運転能力,容易な運転性,メンテナンス低減を目指したMJシリーズ抄紙機の開発に着手した。開発の手順としては,要素研究,Simulation解析から概略の機械構成を選定し,その後Pilot機にて最終抄紙検証を実施する手法をとった。MHシリーズで構成されていた弊社Pilot machineを順次MJシリーズに改造し,また種々の問題を解決することにより,新聞用紙で抄速2,060m/min.にてリール巻取りを達成するに至っている。
 本報ではPilot機の高速化の過程において直面した問題点を述べ,その対策案として開発されたプレスピックアップ部の“トリムバキュームボックス”及びドライヤBel―Run部の“MJ Attracter”等について説明し,またヘッドボックス“カーボンフローシート”及びフォーマ“On―Line地合計”等操業上有益思われる新技術についてもご紹介する。
(本文15ページ)


紙中薬品の形態及び分布状態の分析―最新機器を用いるアプローチ―
荒川化学株式会社 研究所 池田 淳  

 従来,製紙用薬品(サイズ剤,紙力増強剤)の性能の発現は,紙中にどれだけの薬品が何%含有されているかという“量”の影響が大きいと考えられてきたため,性能評価の一環としては,“量”の評価が行なわれ,実際に定着している“形”については,深い検討はなされていなかった。これは,従来の分析技術では,パルプの微細な構造の観察,パルプ上での薬品の形態や分布について,自然な状態で知る事が容易ではなかったという事情もあった。
 近年の分析技術の発達により,紙・パルプの表面について,常圧あるいは低真空下で詳細な分析が容易に行なえるようになり,ミクロフィブリル上の薬品の観察などの分析が可能になってきた。
 本報では,XPS(X線光電子分析装置),SPM(走査型プローブ顕微鏡)などの機器を用いて行なっている表面紙力増強剤やAKDサイズ剤,ロジン系サイズ剤,表面サイズ剤のパルプ繊維上での形態や分布状態について検討の現状を報告する。
 SPMを用いた分析では,サイズ剤,紙力増強剤などの薬品が効果を発揮しているときには,薬品がミクロフィブリルを覆って太くなるように見える現象が観察された。サイズ剤,紙力増強剤などの薬品が性能を発揮するためには,パルプ上で広がりやすいことが重要な物性であると視覚的に確認できた。
(本文23ページ)


塗工層中におけるバインダーラテックスの観察―バインダーの直接観察技術―
日本ゼオン株式会社 総合開発センター 荒井 健次,斉藤 陽子,任田 英樹,葛西 潤二  

 塗工紙の印刷適性は塗工層構造の影響を大きく受ける。塗工層はこれを構成するバインダーラテックスの性質により異なるため,塗工層中におけるバインダーラテックスの形態を詳細に観察することを試みた。塗工層中の顔料を塩酸とフッ化水素酸で溶解除去することで,顔料に邪魔されることなく塗工層中のバインダーラテックスの形態を直接,電子顕微鏡観察することができた。顔料が残留していないことは電子線マイクロアナリシスにより確認した。断面観察用のサンプル作製には,バインダーラテックスの形態破壊を抑制するため,集束イオンビーム加工装置及びクライオウルトラミクロトーム装置を用いて作製した。この観察結果よりバインダーラテックスは塗工層内部で顔料を包み込むように三次元網目構造を形成していることが明らかとなった。また,塗工層断面の超薄切片を作製してTEM観察することも試みた。さらに,この断面観察手法を市販ダブル塗工紙に応用した実例を紹介する。
(本文29ページ)


製紙関連製造施設における防虫対策について
イカリ消毒株式会社 応用生物学研究所 田近 五郎  

 医薬品工場や食品工場およびこれに準ずる製造工場では有害な生物による汚染から免れている義務がある。また,ここ数年で消費者の異物混入に対する関心は急激に高まりつつある。このため各製造現場ではこれら有害生物に対し更なる注意が必要となっているのが現状である。
 実際に食品や医薬品工場における有害生物防除を効果的にするためには,4つの業務が必要と考えられる。まず第一に昆虫類侵入・発生に対しての防御力を確保することである。つまり有害生物が侵入しにくい,発生しにくい施設,設備がどの程度整備されているかということである。第二の業務としてはこれらの防虫機能を持つ施設・設備を維持する活動である。日常で気が付くことはもちろんのこと,最低年1回は施設の監査を行ない設備の不良箇所をただす必要がある。3番目は実際にどの程度の昆虫が製造現場内に侵入,もしくは発生しているかを明らかにするモニタリング業務である。このモニタリングにて危険と判断された場合に初めて最後の駆除業務が発生する。ただし,駆除といっても薬剤の使用は最小限に抑える必要がある。よって発生源の特定を行ないながら,これを除去する活動が求められるのである。
 異物混入を未然に防ぐ,あるいは混入事故があった場合でも対策を立案しやすい環境をあらかじめ備えておくのが防虫においては重要であり,また効果的な防虫システムとはこの4業務をPDCA活動に組み込んでいる状態であるといえよう。
(本文35ページ)


製紙機械用電機品のリニューアルと省エネ
東芝GEオートメーションシステムズ株式会社 産業システム技術部 関根 茂  

 1951年に日本初のセクショナル駆動方式の抄紙機が稼働開始して以来,セクショナルドライブシステムは飛躍的な進歩を遂げ,現在は,最新鋭全デジタルACドライブシステムが完成され,新設抄紙機には,広く適用されている。このように長い間に適用されてきたドライブシステムは故障率の増加が心配される磨耗故障期に達しているものでも,まだリニューアルされていないものがある。ドライブ装置は,アナログDCドライブから,デジタルDCドライブ,デジタルACドライブへと急速な変遷を遂げており,アナログドライブ装置については,予備品確保の困難さ,制御性能の不安定さ等の問題が表面化する時期が近づこうとしている。今後,機械のスクラップアンドビルド計画と同様にドライブ装置の早め早めのリニューアル計画が推奨されるが,リニューアルに当っては,技術的な検討項目をいろいろな観点からクリアーにして行く必要があり,概略的なポイントの紹介をした。また,旧来の高圧省エネ用インバータの更新には,最近になって商品化された高圧インバータの適用が可能になってきた。また,今まで固定速で運転していた高圧モータも高圧インバータを適用し,可変速運転により大幅な省エネ効果も期待できる。
(本文43ページ)


SPMショックパルス方式軸受診断システム
野村商事株式会社 二葉 勝  
ジェイテク株式会社 亀井 稔  

 転がり軸受は広く回転機器に使用されており,その異常診断には振動法が多く使われているが的確に軸受の状態を把握することは困難であった。スウェーデンのSPMインスツルメンツ社により開発されたショックパルス方式(SPM)による転がり軸受の診断方法は稼動中の軸受の外部に検出部を当てることにより瞬時に転がり軸受の損傷度合いを捉えるのみならず潤滑油の膜厚を定量的に計測することができる。これは,稼動中の転がり軸受から発射されるショックパルス(衝撃波)は非常に微弱ではあるが,転動面と転動体の間に介在する潤滑油の膜厚に依存し,油切れ,接触面の傷により著しくショックパルスが大きくなる事を利用している。SPM法は,転がり軸受の損傷の発見,予防保守のための交換時期の判断に役立つことは勿論のこと,最適な潤滑油管理を可能にし,転がり軸受の疲労寿命(L10)の2倍まで寿命を延長させることが期待される。
 野村商事鰍ナはSPM輸入総代理店ジェイテク鰍ニ一体となり紙パルプ分野でのSPM製品供給にあたり,ショックパルス方式の概要とSPM社製品の紹介をする。
(本文52ページ)


紙パルププラント用メカニカルシールの技術動向―スラリ用メカニカルシール―
イーグル工業株式会社 営業本部技術部 高橋 秀和  

 紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,各種ポンプや攪拌機,スクリーン,リファイナほかさまざまな回転機が多数使用されている。これらの軸封部には,省エネ,省資源,省メンテナンスなどの経済性追求及び環境保全の目的で,多数のメカニカルシールが採用され,大きな効果が得られている。スラリ用メカニカルシールも多い。スラリ液は,固着性と摩耗性があるため,メカニカルシールの取り扱い液としては厄介なもので,短寿命のものも少なくなかった。特に,塗工工程における高濃度炭酸カルシウムやコーティングカラーを扱う機器周辺及びピットは,漏洩液により,白く汚れているのが現状である。しかしながら,ラバースプリング形高濃度スラリ液用メカニカルシール(F764型)の開発,実用化により実効を上げている。F764型の適用拡大により,装置周辺が白い汚れから開放されることを期待してやまない。スラリ用メカニカルシールの考え方,紙パルププラントにおけるスラリ用メカニカルシールの適用例を紹介する。
(本文58ページ)


BTFダイリューションシステム―BTFダイリューションシステムの実機操業経験―
川之江造機株式会社 第一設計課 矢野 順一  

 BTFシステムの基本コンセプトや,その構造については,前回2001年版の本稿を含め,各所で述べてきた。今回は,さらに進んで,BTFシステムを導入した製紙会社において,BTFダイリューションシステムによりどのような変化がもたらされたか,どれ程の製品品質の向上(主としてCDプロファイル)が達成されたかについて実際の運転データを用いながら紹介する。
 BTF全自動ダイリューションシステムを導入すると,グレードチェンジ後の立ち上がりが極めて早くなるが,これについてもドライエンドスキャナーのデータを使って,時間経過とともにどの様にプロファイルが収束していくかをご紹介したい。これにより,スタートアップやグレードチェンジにおいて,いかに早く運転が安定するかがよくお分かりいただけることと思う。
 ヨーロッパではすでに100台以上,北米,カナダでも7台,BTFヘッドボックスの新作を含めた受注あるいは改造の受注が続いている。
 何故これほどBTFシステムが歓迎されるのか,そのキーポイントを本文で紹介できればと願っている。
(本文68ページ)


米国製紙産業における重要な環境問題
NCASI レイド マイナー  

 昨年の秋に製紙産業の二酸化炭素排出量の算定法についての意見交換と日本の製紙産業の温暖化への取組み状況把握のためNCASIの副社長であるReid Miner氏が来日した。この報告は,平成14年11月20日に銀座大和ビルで行われた紙パルプ技術協会主催の講演会の内容をもとに演者によってまとめられたものである。
 NCASIとは北米の製紙・木材産業が基金を提供して運営している非営利の環境研究機関である。1943年に設立され,ノースカロライナの本部を中心に全米5カ所に研究施設を有し,2002年にはカナダに支部を開設している。1970年代から製紙工場排水の環境への影響について広範囲な調査研究を実施してきたが,近年は大気を含めた環境全般に研究範囲を拡大し,米国環境保護庁(US EPA)とも密接に連携した研究活動をおこなっている。
(本文74ページ)


製紙工場のクローズド化が機械パルプファイン物性に及ぼす影響
日本製紙株式会社 技術研究所 上條 康幸,宮西 孝則  

 TMP白水中に含まれている溶存コロイド成分(DCS)が,TMP手抄きシートの強度及びファイン凝集性に与える影響に関して検討を行った。
 白水により希釈,篩い分けを行った白水TMPファイン,水による希釈洗浄,篩い分けを行った洗浄TMPファインを調製し,それぞれをTMP長繊維に配合して手抄きシートを作成した。作成した手抄きシートについて,裂断長とIGT印刷試験による表面強度の評価を行ったところ,ファイン配合量が増加するに従い繊維間結合が強化され裂断長,表面強度が増加する結果が得られた。配合したファインを比較したところ,白水TMPファインを配合したシート強度は洗浄TMPファインを配合した場合よりも低く,ファインの結合能が低下することが明らかとなった。白水TMPファインは白水中に含まれているDCSがファイン表面上に吸着されており,繊維間結合が阻害されたことが結合能に影響を及ぼしていたと考えられる。
 また,カチオン性歩留向上剤添加による新聞マシン白水中のファイン凝集性に関しても評価を行った。白水により篩い分けを行った白水ファイン,白水ファインをアセトンで抽出した抽出ファインの凝集性を光度分散分析器(PDA)を用いて比較したところ,抽出ファインの凝集性が高い結果が得られた。この結果もファイン表面上のDCSが除去されたためであると推定される。また,凝集性は歩留向上剤の分子量に依存しており,分子量が大きいほど凝集性が高いことが明らかとなった。
 抄紙工程での白水はパルプ化工程での希釈水等として用いられる。本研究で得られた知見は,ワンパスリテンションの向上や溶存コロイド成分の処理がより重要な課題であることを示唆している。
(本文83ページ)


磁性パルプ紙の製造(第2報)―In situ合成反応法によるフェライト内腔充填パルプの調製―
愛媛県紙産業研究センター 藤原 勝壽  

 in situ合成反応法によりフェライトをパルプ内腔に充填した磁性パルプを調製した。
 二価金属イオンを含む第一鉄塩水溶液にパルプを共存させアルカリを添加し,100℃以下で空気酸化することにより,マンガンフェライト,亜鉛フェライト及びマンガン亜鉛フェライトのin situ合成反応条件を見出した。この反応条件を応用して,フェライトをパルプ内腔にin situ合成する新たな方法を明らかにした。
 マンガンフェライトが生成する領域は,アルカリ添加量が1.0当量付近で反応温度は50℃以上の領域でマンガンフェライトが生成し,1.5当量では60℃以上で,2.0当量以上では80℃以上でマンガンフェライトが生成した。亜鉛フェライト及びマンガン亜鉛フェライトが生成する領域は,アルカリ添加量が1.0〜1.1当量付近で反応温度は50℃以上の狭い領域でフェライトが生成した。
 フェライトのパルプ内腔充填量は,フェライト充填パルプをベースにして,マンガンフェライトで30.9±2wt%,亜鉛フェライトで32.4±2wt%,マンガン亜鉛フェライトで36.2±2wt%であった。第1報のマグネタイト内腔充填量に比較して,ほぼ同量ないしは若干多い充填量であった。
 フェライト内腔充填パルプの磁気特性は,マンガンフェライト及びマンガン亜鉛フェライトの内腔充填量が各々30.9wt%,36.2wt%の場合の飽和磁化は各々15.8emu/g,21.4emu/g of ferrite loaded pulp,残留磁化は各々3.2emu/g,4.7emu/g of ferrite loaded pulp,保磁力は各々107Oe,119Oeであった。
(本文90ページ)