2002年9月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2002年9月 

第56巻 第9号(通巻第618号) 和文概要


ロールブレードフォーマにおける紙層形成
三菱重工業株式会社 広島研究所 岩田 弘,増田 和彦 紙印刷事業部 松本 正信 

抄紙工程への高生産・高効率化の要求は製紙機械の高速化を進展させ,設計速度が2,000m/min.を超える製紙機械の開発が求められている。このような製紙業界の要求に対応するため,当社では高速運転能力,容易な運転性,メンテナンス低減等を実現するMJ抄紙機の開発を行った。
紙層形成を担うフォーマでは,原料ジェットの着地感度を鈍化させて煩雑な調整作業を解消すると共に抄速2,000m/min.でも均質なマットを安定して形成するため,初期脱水部にサクションフォーミングロールを採用した。また,ブレード部では抄紙速度の増加に伴って脱水圧力パルスのピーク値が増大する楔形脱水ブレードと対向脱水ブレードを組み合わせ,広範囲な抄紙速度で高い繊維分散性を維持するロールブレード脱水方式とした。本報では,MJフォーマの開発過程で実施してきた要素研究の結果を中心に,ブレード脱水方式との特徴的な差異を述べた上でロールブレード脱水方式の紙層形成特性について紹介する。


最新の高速板紙抄紙機 −高抄速で高品質を得るために−
住友重機械工業株式会社 機械事業本部製紙機械事業センター 田埜 浩祐

上質紙と板紙は,同じようなタイプの製品と見なされることがある。実際に,多くの共通した特徴が見出される。例えば,両グレードは,引張強さの縦横比が低い,坪量範囲が広い,表面サイジングが必要といった特徴をもっている。したがって,なぜ板紙マシンより上質紙マシンの方が高速走行できるのか疑問に思うかもしれない。多分簡単には答えられないだろう。しかし,いくつかの類似点があるにしても,明らかに相違する点もある。例えば,板紙の平均坪量は高い。そこで,多くの場合,スピードが制約されるのはドライヤーセクションである。ドライヤーセクションは,もはや拡張できない。他の相違点は,例えば,強度対地合いのような紙質要求の違い,紙料の違いなどである。段ボール製品の中味が変われば,必要な原料も変わる。ミクロフルートには低坪量の方が有利である。古紙の利用をもっと効率的に行なうためには,サプライヤーへの大きな働きかけが必要である。これらのすべてが,次に紹介する新しい高効率の高速板紙抄紙機に対する要求につながる。


ウェットエンドプロセスの新しい波Wet End Process(tm)テクノロジー
株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー エンジニアリング技術開発本部 ベルンハルド ミューラー,江口 正和,高橋 淳

印刷紙および包装紙の何れの分野とも,次世代の抄紙機は,高速化と同時にMD,CD方向プロファイルの安定性を含むより高い品質を満たすことを要求される。一方ではより高い品質をより低いコストといったジレンマがありそれらは設備の最適設計,簡略化や原料構成の変更によって解決されようとしている。
我々は,この新しい要求に答えるためには,抄紙機周りのアプローチフロー,繊維回収システム,ブローク処理を含む,抄紙機廻りのウエットエンドプロセス (WEP(tm)) は再設計される必要が有ると考え,原料や填料の混合,白水による原料の希釈,原料の精選や脱気,歩留り向上剤等の薬剤の添加方法,及び白水処理全体について新しいシステム,機器をここに紹介させて頂く。


抄紙機操業安定のための最新ウェットエンド・コンセプト- オンライン・チャージ分析 -
MUETEKアナリティックGmbH ローランド・ビィアガー,リディア・ブレイ,ライナ・ラウフ

オンライン電荷滴定装置は,抄紙工程の分析に十分に役立つ。特に高濃度原料の精選装置では,抄紙機のさまざまな位置で電荷要求量の測定が可能である。個々のプロセスの変化と電荷要求量の変動は,以前より効率よく監視および分析ができる。すなわち,オンライン電荷測定により,調査する工程の連続的な監視と制御が可能になった。送られる原料の品質変動を今では早い段階で検出して,より迅速に対策を実行できる。このために,さらに効率の良い抄紙機の運転ができる。
本稿では,最新の抄紙でオンライン電荷要求量測定をどのようにして用いるか,可能性を示した。電荷測定は薬品添加量の制御が目的である。多くの場合,オンライン測定装置の導入に要する投資は,マシンの操業性が大幅に改善される利益は別にしても,薬品の節減で短期間に回収される。近い将来には,抄紙に用いる薬品の添加位置をより厳格に見極めて,各薬品補助剤の間に起こる可能性のある相互作用を検討する必要があろう。


BTFヘッドボックスシステム 実証されたダイリューションテクノロジー
川之江造機株式会社 第一設計課 高橋 博

BTFシステムは,セントラルディストリビュータの働きにより,均一なストックを  マシン全巾にわたり供給することで,プロファイルの向上及びグレードチェンジ後のプロファイルが安定するまでに要する時間を飛躍的に短くするというものである。さらに,BTFシステムはヘッドボックスのフローレンジが1:4であり,従来のテーパヘッダ式ヘッドボックスでは難しかったフローレンジを可能にするので,まさに多品種少量生産にはうってつけのシステムであると言える。
BTFシステムでは,既設ヘッドボックスの改造や新設を行うことなくダイリューションシステムの導入が可能である。ダイリューションシステムを導入することで,繊維の配向性や,水分プロファイルを乱すことなく坪量プロファイルの調整が可能となる。このダイリューションシステムを,既設のドライエンドスキャナーとコンピュータによりリンクさせることで,全自動ダイリューションコントロールシステムを導入することも,もちろん可能である。


最新のオンラインカレンダ技術 ヤヌスMK2カレンダ
株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー エンジニアリング部 安藤 英次

高い光沢性・平滑性を要求される品種においては,従来スーパーカレンダが操業されており,さまざまな要因から現在の抄紙機・塗工機の高速化・効率化においてボトルネックとなっている。近年の樹脂ロールの飛躍的進歩やその他の技術的進歩を背景に,フォイト社は“ヤヌスコンセプト”と称してスーパーカレンダのオンライン化に取り組み,1996年に初のオンラインスーパーカレンダの導入に成功した。以来多くの実績をもとに,市場のニーズに満足すべくこのヤヌスカレンダを発展させ,第二世代のヤヌスコンセプトカレンダ,“ヤヌスMK2”を開発した。ヤヌスMK2はロールスタックを従来の縦置きから45度傾斜配置させたことに大きな特徴がある。これにより高速運転時に走行安定性の向上,フリーパスを極力短くし,カレンダパートにおける紙への理想的な環境作り等,特にオンライン設置を主眼に置いた数々のメリットを実績とともに紹介させていただく。


ドライパート汚れに起因する欠点防止対策(その1)欠点発生のメカニズムとその防止対策について
株式会社 メンテック 販売技術部 山田 明尚

 近年,古紙の高配合や中性化などにより,ドライパート汚れに起因する製品欠点の問題が深刻化しつつある。一方,ピッチコントロール剤の内添やドクタリングの強化といった従来の対策では十分な効果を得られていないのが現状である。当社では既に,オイルやワックスをベースとした汚れ防止剤をシリンダやカンバス表面に散布し,紙粉やピッチ汚れの付着を防止するシステムを実用化しており,本稿ではこのシステムによる欠点防止対策について報告する。
 ドライパートにおいては湿紙上の粘着異物が,シリンダやカンバスの表面へ付着し,表面上で成長した後,紙に転移することにより欠点が発生する。実際に工場を訪問し,抄紙機や欠点サンプルの調査および操業担当者とのインタビューにより,欠点の原因となる汚れと発生箇所を推定し,適切な装置(ミストランナー・カンバススプレーズ)と設置場所および薬品を提案した。結果としてライナーM/Cにおいては
・欠点数の大幅な減少
・紙切れ回数の低減
・汚れ損紙の低減
・乾燥効率のアップ
などの成果を得ている。


三菱高速フィルムコータ
三菱重工業株式会社株)技術本部広島研究所 杉原 正浩,山田 建治
紙印刷機械事業部 三浦 洋司,宮倉 敏明

ロッドメタリングなどのフィルムコータは,ブレードコータのように原紙に強いストレスが作用する部分がなく,微塗工でも原紙内への塗工液浸透を最小限に抑制した被覆性の良い塗工紙を生産することが可能であることから,微塗工紙から軽量コート紙生産に対する対応性に優れている。一方で,このコータを高速塗工に適用する場合の課題として,計量ロッド出側におけるリングパターン(スジむら),アプリケータロールニップ出側におけるミスティング,塗工紙面のオレンジピール,といった現象が挙げられている。特にミスティング現象は,作業環境の悪化,塗工液の歩留まりと塗工紙品質の低下に繋がる恐れがあることから,その発生特性について様々な研究がなされている。
当社では,新シリーズ高速抄紙機(MJシリーズ)の開発に併せ,ミスティングを抑制する高速フィルムコータ(MJフィルムコータ)の開発を行ってきた。本報では,この高速フィルムコータの概要と,開発過程で得られたフィルムコータにおけるミスティングの発生メカニズム,ミスト発生量特性とその抑制コンセプト,及び塗工紙品質の改善方法について報告する。


FLOW-3Dによるコーティング解析
株式会社エス・イー・エイ CFD研究所 宮本 義弘

FLOW-3D(r)は,米国フローサイエンス社より非圧縮性,圧縮性を考慮した自由界面及び2流体界面を精度よく捕らえることのできる汎用3次元流動解析コードとしてリリースされて以来,複雑な流動計算に適用されている。種々の物理モデルの拡張及び,実験データと実測データとの比較検証が行われ,インクジェット解析や,コーティング解析を含め幅広い産業分野で有益な設計支援ツールとして使用されている。
 FLOW-3D(r)は,コントロールボリューム/有限差分法に基づいて流動方程式を解く汎用3次元数値流体力学ソフトウェアである。構造直交メッシュとFAVOR(r)(Fractional Area Volume of Obstacle Representation)関数法を用いて幾何形状を記述する。流体形状,自由表面形状あるいは,界面形状はVOF(Volume of fluid)法を用いてモデル化される。インクジェット及びコーティング問題を解く際,流体の質量保存式,運動保存式,エネルギー保存式が適用され,例えば,液体には慣性力,粘性応力,表面ガス圧力,表面張力,重力等を考慮する必要がある。また,壁との接触角も考慮する必要がある。動的接触線位置及び動的接触角はコーティング流動計算の予測に重要な要素である。
 本文ではFLOW-3D(r)による動的接触線の直接計算,及びコーティング解析事例について説明する。


イージースプライス・ファーストラインの開発 特殊構造のフライングスプライステープ
テサAG 柏原 有紀

 製紙工業における,新規な直線仕立て方式の自動紙つなぎ技術を紹介する。
まず,イージースプライスと名づけた特殊構造の粘着テープについて,その構造と機能を説明する。次いで,従来の幾つかの仕立て方式について述べ,新方式との比較を行う。
 本方式のオフラインコーター工程における主な改善点は,新ジャンボロールを加速中にエアポケットを生じないこと,塗工時に塗液の潜り込みによるウェットポイントを生じないこと,タックラベルが不要で,必要なテープの長さも短くて済むことである。これらの特性により,紙つなぎ成功率の向上,スプライス時ライン速度の増加,仕立て作業時間の短縮が可能となり,塗工紙生産性を向上させることができる。
 海外におけるイージースプライスの適用例と,機械メーカーにおけるモデル試験結果について紹介する。また,イージースプライス・ラインアップの充実をはかるべく,開発中の新商品について概要を述べる。


新面感評価法の各種塗工紙への適用について
JSR株式会社 高分子研究所 冨士田嘉介,松田 信弘,松井 尚,座間 義明

塗工紙において白紙面感は重要な物性の一つである。この白紙面感の良否は塗工紙表面の微小な光沢の均一性に影響を受けていることが既に知られている。多くの場合,白紙面感評価は目視判定法により行われている。しかし,目視判定法は主観的且つ非定量的であるため,機器を使用した白紙面感の客観的定量的評価法について,いくつかの報告がなされている。
以前の報告において,我々は白色光干渉方式の非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO New View system)を用いることにより,塗工紙の白紙面感に関する新規な評価法を開発したことを述べた。その中で,塗工紙表面での傾斜角面積率の標準偏差と白紙面感評価値との間に高い相関性があり,傾斜角面積率の分布がより均一になるほど白紙面感は良好になることを見いだした。
本論文において,我々はさらに上記の新規な白紙面感評価法の適用範囲を広げ,種々の市販塗工紙を用いて本法の有用性について検討を行った。
その結果,塗工紙の種類によって二値化する上で最適な傾斜角のしきい値が存在しており,A2塗工紙では±7°,A3塗工紙では±10°であることが明らかとなった。加えて,その最適な傾斜角のしきい値とは塗工紙の種類に関わらず,傾斜角面積率が70%程度になるような範囲の角度であり,人間の目視による白紙面感の良否判定がミクロ領域の約70%の明部と約30%の暗部にあたる微小光沢ムラを認識し,その均一性により判断していることが示唆された。


2002年国際パルプ漂白会議に参加して
日本製紙株式会社 技術研究所 宮西 孝則

 1955年から始まった国際パルプ漂白会議(International Pulp Bleaching Conference:IPBCと略する)は今年で17回目を迎え,2002年5月19日から23日までの5日間にわたり,米国オレゴン州ポートランド市で開催された。
研究発表論文については,カナダ,米国,スエーデン,フィンランドの4強に加え,ブラジルからの投稿が増加している。会議は13のセッションに分かれて口頭発表が31件,ポスター発表が15件,合計46件の発表があった。本報告では全てを限られた誌面ですべてを紹介することはできないので,筆者の興味のある発表を幾つか紹介させて戴きたい。


紙製品の溶融化処理における環境的評価
科学技術振興事業団 中澤 克仁
東海大学工学研究科 片山 恵一
静岡大学サテライト・ベンチャービジネス・ラボラトリー 宮崎 英敏
東京大学生産技術研究所 坂村 博康,安井 至

現在,一般廃棄物の増加,それに伴う最終処分場の不足が深刻な問題となっている。特に,紙製品は一般廃棄物の50%以上を占めており,この焼却灰の減量・減容対策が最終処分場の延命に向けた課題となっている。本研究では,紙製品の減量・減容における溶融化処理の効果を調査した。また,そこから発生する燃焼ガスや燃焼灰に含有されている塩素量を評価した。
その結果,溶融化処理は紙製品の減量・減容化に効果的であり,最終処分場の延命に向けた対策として有用であると考えられた。また,紙製品から生成された溶融スラグの組成を分析した結果,二酸化珪素(SiO2),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化カルシウム(CaO)を主成分としており,ガラス状スラグの生成が可能であった。また,ガラスカレットを燃焼灰中に混入することによって,溶融温度を低下させられることも確認された。溶融スラグおよびガラス状スラグを埋立処理した場合を想定した純水,塩水,pH3硝酸水溶液による鉛(Pb)やアンチモン(Sb)の溶出実験では,燃焼灰からの溶出量よりも大幅に減少させられることが認められた。さらに,紙製品から発生する燃焼ガスや燃焼灰中に含有されている塩素量は比較的小さく,紙製品の溶融化処理による有害塩素系化合物による影響は小さいと推察された。


広葉樹材酸素漂白クラフトパルプの二酸化塩素漂白におけるダイオキシン類の水準(第2報) 二酸化塩素漂白の工場操業前後の水準
筑波大学 農林工学系 大井 洋

二酸化塩素(ECF)漂白におけるダイオキシン類の水準,および生成機構について知見を得ることを目的とし,二酸化塩素漂白に転換する前後の漂白工場の工程水について,ダイオキシン類の水準を明らかにした。塩素漂白操業中の工程水では,ダイオキシン類対策特別措置法の排出基準(10pg-TEQ/L)以下ではあるが,環境規準(1pg-TEQ/L)を上回る場合があった。上回った原因の一つは,1,2,3,6,7,8-HxCDDと1,2,3,7,8,9-HxCDDの寄与が大きかったことである。我が国では,塩化フェノールを原料とする農薬を除草剤として水田などに使用してきた経緯があり,CNP(クロロニトロフェン)は最近まで散布されている。CNP中には1,3,6,8-TeCDD,1,3,7,9-TeCDD,2,4,6,8-TeCDFが含まれていることが明らかにされている。クラフトパルプ漂白工場の工程排水の分析結果では,1,3,6,8-TeCDDと1,3,7,9-TeCDDが多い場合があることがわかった。二つの化合物の毒性等価係数(TEF)は未決定であるが,塩素が2つ導入されると,1,2,3,6,7,8-HxCDD,1,2,3,7,8,9-HxCDDが生成し,それらのTEFは0.1である。工程排水中の1,2,3,6,7,8-HxCDDと1,2,3,7,8,9-HxCDDは,リグニンと塩素の反応から生成したのではなく,CNP中の1,3,6,8-TeCDDと1,3,7,9-TeCDDが塩素化されたものと考えられる。
二酸化塩素(ECF)漂白操業時の工程水では,2,3,7,8-TeCDDが検出されなかった。A工場では,2,3,7,8-TeCDFの濃度は毒性等量で0.34pg-TEQ/Lであり,環境基準以下であった。B工場では,2,3,7,8-TeCDFの濃度はECF操業時には減少し,毒性等量では環境基準以下であった。B工場ではECF操業時においても,農薬として使用されたCNP(除草剤クロロニトロフェン)のダイオキシンパターンが認められ,高濃度(440pg/L)の1,3,6,8-TeCDDなどが認められた。