2002年8月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2002年8月 

第56巻 第8号(通巻第617号) 和文概要


最新のドライブ・監視制御システム
東芝GEオートメーションシステムズ株式会社 産業システム技術部 関根 茂  

 最新の抄紙機ドライブ・監視制御システムは,抄紙機の大型化,高速化に対応して高速LANにてデジタルデータ伝送が行われて,省配線,集中監視,操作を可能にしている。ドライブ装置の各種データは,監視CRT上にリアルタイムに表示され,常時状態監視が行われている。一方,情報処理技術の急速な進歩に伴いインターネットへの接続の容易性が飛躍的に進歩してきていると共に,携帯電話の急速な普及とインターネットへの接続,メール環境が整ってきた。
 主機ドライブシステムのリモートメンテナンスは,遠隔地からインターネット経由にてドライブ装置の各種データの確認,読み取りを行うことを可能としている。従来から実施されてきた電話回線モデム経由のリモートメンテナンスシステムに比較して,データ伝送速度向上,接続料金の低下を実現し,リモートメンテナンスの実用性を飛躍的に向上できるようになった。これにより,リモート診断が容易になった。
 また,インターネット経由にて接続されたリモート監視システムでは,異常発生時にメール機能対応の携帯電話へ異常データをメール送信することにより,遠隔での監視が容易に行えるようになっている。
 専門保守員の不足やオペレータの減員に対応して,リモートメンテナンス,リモート監視システムは,インターネットの環境整備推進に伴い,適用が拡大することが予想される。
(本文1ページ)


Sensodec6Sランナビリティーモニタリングシステム
メッツォオートメーション株式会社 ペーパーオートメーション事業部 出倉 潔  

 近年において振動モニタリングや圧力モニタリングは抄紙機やプロセス機器の不安定さを知り問題点の早期発見及び解決に寄与してきた。これによって機器のダウンタイムを軽減し,しいては生産性向上につなげてきた。
 また工場内ネットワークが発達した今,これらの情報はネットワークを通じて工場全体に伝達されるようにもなっている。
 しかし従来の振動や圧力に関するモニタリングでの機械診断は,専門知識をもった技術者が必要で通常の操業を司る人にとってはなじみづらいものがあった。
 弊メッツォオートメーション社のSensodec6Sランナビリティーモニタリングシステムはこういった“わづらわしさ”を一掃したものとなっている。即ち“振動・圧力測定”―“データ取込”―“解析”―“故障予知”―“予測メンテナンス”―“機能保全”を一貫して可能にしている。これはビジュアルな故障個所の特定によって次のアクションが容易に誰でも特定できることから可能になっている。故障個所の特定は総てシステムが行う。このような設備診断システムこそが21世紀のシステムということができると確信する。
(本文6ページ)


抄紙機/塗工機操業支援ツール(MOAS)による抄紙機操業監視の実際
新光科学有限会社 根岸 冲  
和光アキュテック株式会社 三石 尚武  
日本製紙ユニテック株式会社 塩越 陽平  

 MOASは,新たに開発されたP&Dアプリケーションにより,ドライヤー部のエネルギ推移処理技術とB/M計,ドライブ,ドレネージ,プレスの脱水量情報から,抄紙機全工程中の湿紙水分率,原料の性質を熱的特性で表現した熱伝達率係数,プレスの搾水性能を一義的に表現するプレス係数をリアルタイムで観測するシステムで,この特徴は操業を以下の形で体系化することである。
 抄紙工程全域の湿紙水分の挙動(脱水/乾燥)は常時観測され,その挙動に関係する要素は具体的に特定され,且つ数学的に関係付けられる。したがって,工程中の任意の位置の水分率が変動した場合,その原因は常に把握されている状態にあり,また変動の制御は合理的に行うことができる。
 以上のような体系化を伴う観測システムは,様々な操業環境や目的に対応した操業管理を標準化して常に最適な操業を可能にする。この観測システムによる抄紙機操業管理の基本的概念は以下となる。
 1. 水分挙動と操業課題の関係
 合理的な操業管理は,以下の2つの要素に大別される水分挙動の適正化制御を行うことである。
 @湿紙中の脱水速度に関係する監視と制御
 ウェット部での脱水管理は,湿紙中の流体圧を適正化することである。この適正化は,安定紙層の維持,欠陥,地合,プレスでの砕け,ドライヤセクションでの初期乾燥にかかわる障害に関係する。このとき,水分率は流体圧を表現する基本要素となる。
 A紙の走行性に関係する監視と制御
 湿紙の安定走行は水分率が必要な紙強度範囲に制御されていなければならない。
 従って,抄紙機操業における種々のトラブル防止や生産性の向上,操業管理の標準化その他各種目的を達成する場合,水分率変動の監視と制御は必要事項となる。
 このとき,操業目的の達成を阻害する個々の現象と水分率を対比観察すれば抄紙工程中の各脱水/乾燥機器位置の出入口水分率あるいは脱水速度の適正範囲が把握できる。(操業の標準化)
 2. 水分率制御
 プレス係数や,熱伝達率係数で体系化されたとき,抄紙機工程中の水分率制御は合理的に行える。例えば,プレスセクション出口水分率は原料,坪量,抄速,ウェット諸元で基本要素が決定し,この要素による計算値は実測値と高い精度で一致する。従って,プレスセクション出口水分率の制御は迅速かつ正確に行える。このことは,全抄紙工程位置での水分率制御についても同様である。
 MOASによる各種観測値や処理値の体系化は,操業管理の最適化の他に以下の利点が期待できる。
 @操業の標準化
 A用具や薬品,その他メンテナンス関係経費の削減と省エネ
 B新たなノウハウの発見/開発
 C確実で小規模な自動化の開発
 D設備改造時のポイントと能力を的確にする。
(本文13ページ)


カラーシート検査装置COLOR・AGE―導入事例―
オムロン株式会社 ビジョンシステム事業部生産管理部シートグループ 遠藤 誠,松井 秀人  

 カラーシート検査装置は現在9台が稼動しており,それぞれ導入効果を上げている。今回,カラーシート検査装置導入事例として,リンテック株式会社様にて稼動している4台のカラーシート検査装置の稼動状況,およびその導入効果について紹介する。
 また,従来型モノクロ検査装置と比べて,カラー検査装置の優位性。そして,その優位性を実機においていかに活用しているかを,実機にて検出した生画像を用いて事例紹介する。
 最後に,現状での問題点と改善策,そして今後,カラー検査装置がどのように発展していくのか,その動向について記載する。
(本文24ページ)


プラント情報管理システム―紙パ製造業におけるプロセスデータの活用―
システムプラザ株式会社 プラントシステム事業部 伊藤 静雄  

 グローバル化や経済的規制緩和といったビジネス環境の大きな変化の中で,もはや作れば売れていた時代の「経験と勘」による意思決定は通用しなくなり,より環境の変化に即応した最適な生産活動が求められている。もの作りの製造業にとって日々の生産情報は企業の舵取りに必要な経営資源である。昨今,リアルタイム経営という言葉をよく耳にするが,これら日々の生産情報の活用を含め,企業内外で発生しているあらゆる事象や変化について,いかに迅速に情報を得てタイムリーな経営判断に結びつけていけるかがますます重要になってくる。
 個々に分散配置されたプロセス制御システムや品質管理システム,あるいは設備保全管理システムといった個別システムの情報を集約し,プラントワイドな統合プロセスデータベースの構築が急速に進んでいる。本稿では,とりわけ欧米の紙パユーザで大きな導入効果を上げている米国OSISoftware社のプラント情報管理システム「PI」の概要を紹介する。
(本文30ページ)


全自動きょう雑物測定システムDCW―パルプのオンラインきょう雑物測定システム―
野村商事株式会社 川端 祥行  

 今日,リサイクル紙は市場に出回り,消費者にとって身近な存在となった。生産者側である紙パ業界にとってはその需要を満足させる品質をいかに安く供給できるか,が大きな課題であると言える。
 DCWは,Metso automation Finland社がオンライン全自動パルプ測定システム“パルプエキスパートPEX”と,それに付属するきょう雑物測定ユニットの製造に関わる豊富な経験と知識をベースにパルプのきょう雑物測定専用システムとして開発した。以下にあげた主な機能により生産現場での省力化に大いに貢献出来るものと確信している。
 (1) 迅速な測定。>1画像当たりの解析時間は約1秒,送り時間を含めても測定間隔は2〜3秒で,1サンプル当り200フレーム測定しても10分以内の高速測定。
 (2) 大きな測定容量と,長年の経験と豊富な知識が反映された解析プログラムにより,正確な信頼性の高い測定結果が得られる。
 (3) 測定中の画像はディスプレイ画面に常時表示されているので,目視でのチェックが容易。測定されたきょう雑物はディスプレイ上で緑色に縁取られる。
 (4) 測定画面は3000フレーム以上保存が可能。測定後も容易にチェックが可能。
 (5) データ転送機能で容易にミルネットワークに接続できる。
 (6) オープン構造により,各部へのアクセス,保守が容易。
(本文34ページ)


仕上巻取ロール用シングルドラムワインダー―巻取ロール品質改良及び自動化―
ヤーゲンベルグ・ペーパーテック株式会社 ワインダー事業部技術部 ピーター・トリリング  

 ヤーゲンベルグ,バリプラスワインダーは仕上巻取ロールの品質向上を可能とし,かつ省力化のためにワインダーの自動化をした。印刷機の高速化,大型化に伴い供給する紙ロールの高品質が要求されて来ている。その要求に合致するためにヤーゲンベルグ社はシングル・ドラムワインダー“バリプラス”を開発した。バリプラスの特徴は,巻取りロール品質向上と自動化にある。本報はこの点に焦点を当てて解説する。
(本文40ページ)


ポリアクリルアミド系表面紙力剤について―ポリアクリルアミド系表面紙力剤のキャラクタリゼーションについて―
星光化学工業株式会社 紙薬品事業本部技術開発部 長嶋由美子  

 ポリアクリルアミド(PAM)系表面紙力剤は主にデンプンやPVAと併用されて使用されているが,最近では表面紙質に求められる特性の多様化や,デンプン及びPVAのかかえる種々の問題を解決するためにPAM系表面紙力剤をメインとし,デンプンやPVAが併用されないケースを検討対象とすることも増えてきた。しかし,PAM系表面紙力剤をデンプンやPVAと併用せずに使用する場合にはその特性が顕著に現れ,表面サイズ剤との相溶性が悪くなったり,高濃度塗工や着量が多くなる場合にサイズ性が低下する現象が見られることがある。今回はこれらの現象の確認とその抑制の方法について,PAM系表面紙力剤の機械的安定性,及び表面紙力剤に求められる性能のうちの一つである内部強度の向上について,PAM系表面紙力剤の原紙への浸透性という方向からの検討を行った。
(本文46ページ)


新ホフマンPAM「H520B」について
三井化学株式会社 フォーミュレーション研究所 亀岡泰治,大山 晋,伊藤 博,土岐 宏俊,淀谷 隆 
工業樹脂事業部 坂本 直哉,松原 次男,吉田 堅吾   

 三井化学では,多面的な観点より紙力増強剤の開発に取り組んでいるが,その中でも,理論的に最も優れた性能を有するとされているホフマン分解PAMを新しいコンセプトで見直し,当社独自の技術を駆使した新ホフマンPAM「H520B」を新たに開発した。
 新ホフマンPAM「H520B」の特徴は,次の通りである。
 @定着能の高い1級アミンを活性基としたホフマンPAM
 A当社独自の分岐架橋構造制御技術を駆使して開発した「コア―ブランチ構造」を有する新型ベースPAM
 Bお客様のマシンサイトで高温・短時間で簡便に反応させることができるホフマナイザーの融合
であり,この融合技術により,これまでになかった高定着,高強度,高濾水性,高歩留り性を,特に中性領域を含むpH5.5〜7.5の広範囲で達成することができる。
 この三井化学の新ホフマンPAM「H520B」とホフマナイザーシステムを用いることによって,お客様においては,以下の多くのメリットが期待できる。
 @紙力剤原単位を削減することができる。
 A濾水性が向上し,濾水向上剤などを使用することなく抄速向上に寄与する。
 B安価なパルプ(古紙パルプ,雑誌古紙など)を増量できる。
 C廃水処理負荷を低減できる。
(本文53ページ)


ウエットエンド改質剤「リアライザー」による抄紙条件の最適化
ソマール株式会社 FC部 但木 孝一,常川 謙二,新井 修一,谷口 昌  

 近年の抄紙条件は,中性抄紙化に伴いますます厳しくなってきている。これまで酸性抄紙条件下で大量に使用されてきた硫酸バンドの効果が,中性抄紙条件下では大きく低下している。また,世界的な環境問題に対する関心の高まりなどにより故紙の使用量が増加し,抄紙系に持ち込まれるコンタミネーション,アニオントラッシュ,夾雑物など抄紙工程に悪影響を及ぼす様々な弊害物質が増加している。これらは,スケールやピッチと言った抄紙マシンの汚れ問題を引き起こすばかりでなく抄紙速度,歩留り,紙質などの低下をもたらし,生産性,操業性を大きく損ねる要因の一つとなっている。
 我々が「ウエットエンド改質剤REALIZER」を開発した目的は,ますます厳しくなる抄紙条件に対し,アニオントラッシュなどの弊害物質の封鎖を効率良く行い,各種ウエットエンド薬剤の定着効率を高め,余分な薬剤を削減し抄紙条件を最適化すること。また,それと同時に歩留り,濾水性などのウエットエンド物性を改善し,最終的に生産性,操業性を向上させることである。
 今回は,REALIZERによる抄紙条件の最適化について,以下の3つのStageごとに検討した結果を報告する。
 T―Stage:使用する原料や抄紙マシンに最適なREALIZERの選定
 U―Stage:REALIZERによるウエットエンド薬剤の添加量の最適化
 V―Stage:REALIZERによる地合い,サイズ度など紙質の向上
(本文58ページ)


ハイモツインズシステムの紹介
ハイモ株式会社 湘南研究センター製紙化学研究グループ 若松 英之  

 抄紙系への硫酸バンドの添加から始まった歩留向上剤の歴史は,カチオン変性澱粉の添加,更に現在ではアクリルアミド(AAm)を主原料とする高分子量のポリアクリルアミド変性物(PAM系)へと変化し,今や合成系歩留向上剤の添加は必須条件の一つとなっている。
 近年,抄紙条件はツインワイヤー化による抄紙速度の向上,中性化,故紙比率の増大,用水原単位削減等大きく変化している。このような条件変化の中,安定した抄紙を行なうためには安定した歩留率を保つことが第一であり,歩留向上剤としてはより強力なシェアーに耐えるべく強靭なフロックを作る処方が要望されてきた。
 抄紙条件の変化は,これまでのPAM系一液添加処方では対応が困難な場合が多く,これに呼応すべくこれまで種々の新しい添加処方が提唱,検討されてきた。主にその代表的な処方が合成系ポリマーと無機系を利用したマイクロパーティクルの活用といえるが,当社では長年にわたって培った水溶性高分子の合成技術を応用することにより,これまでに無い,全く特殊な物性を持った水溶性ディスパージョン型ポリマーの開発に成功した。
 このディスパージョン型ポリマーについてイオン性の異なるアニオン性,カチオン性二種類のポリマーを組合せることによって,これまでの二液処方と比較し,高い歩留率と濾水性を得ることが可能となり,更に紙の地合いも良好であることを確認した。本稿ではこの新しい歩留システム「ハイモツインズシステム」を紹介する。
(本文66ページ)


紙パルプ用脱水機ロータリープレスフィルタ
巴工業株式会社 営業技術部 井出 正広  

 ロータリプレスフィルタはカナダのフォーニア社により製造,販売されている新しい脱水機構を持つ回転加圧脱水機である。その特徴は高脱水性能,密閉構造による悪臭防止,コンパクト,省エネルギーである。当社ではフォーニア社より技術導入しており,実験機による脱水試験を行ない良好な結果を得ている。製紙工場における排水に対しては,生産ラインや再利用ラインより発生するパルプ分や無機物の多い排水(凝沈汚泥,浮上汚泥,一次汚泥,抄紙排水等)と,生物処理をされた有機物の多い余剰汚泥があり,これらを単独あるいは混合して処理をしているが,ロータリプレスフィルタはパルプ分を含んだ原液の分離脱水を得意としている。本報では,この新しい脱水機構をもつ回転加圧脱水機について紹介する。
(本文73ページ)


紙パルプ用汚泥炭化装置―連続高速炭化装置―
巴工業株式会社 営業技術部 村岡 靖基  

 製紙工場における排水に対しては,生産ラインや再利用ラインより発生するパルプ分や無機物の多い排水(凝沈汚泥,浮上汚泥,一次汚泥,抄紙排水等)と,生物処理をされた有機物の多い余剰汚泥があり,これらを単独あるいは混合して処理をしているが,ロータリプレスフィルタはパルプ分を含んだ原液の分離脱水を得意としている。
 ロータリプレスフィルタによって高脱水処理した汚泥は再資源として期待されている。従来の焼却処理等に替わる新たな処理方法として「汚泥炭化処理」が挙げられている。弊社が開発した「連続高速炭化装置」は,炭化炉内に上下方向の多段スクリュコンベヤ外熱キルンで,予備乾燥した汚泥を上段スクリュコンベヤから下段へ移送する間にスクリュコンベヤ外側ケーシングを加熱することにより汚泥を乾留する。
 同装置の特徴として,装置運転が安全且つ容易,機器配置がコンパクト,排気ガスの熱利用による脱水汚泥の予備乾燥による省エネルギーがある。
 製紙汚泥サンプルにより,当社技術開発センターの簡易試験装置にて実験を行なうことにより炭化物性状やその収率を把握でき,実際の設備設置計画にあたっては実証試験装置で基本設計に必要なデータを採取することにより,炭化設備仕様や炭化物性状等様々なデータを提示できる。
(本文77ページ)


タイ国の紙パルプ産業の現状と展望(その2)―パルプ原料の供給動向と紙パルプ研究機関―
Dr.小林技術士事務所 小林 良生  

 タイ国の1970年代から80年代前半の非木材ベースの紙パルプ支援政策はそれ以降大きく転換して木材ベースになった。パルプ原料としては,いくつかの叢生樹の中からユーカリ,特にEucalyptus camldulensisか選定され,イサーンと呼ばれる東北タイを中心に栽培が普及した。ケナフベースで出発したフェニックス社は1987年を境にケナフからユーカリに大きくシフトして1994年にはユーカリ主体の工場に転換して,生産能力を倍増した。また,スーン・ファ・セン・グループもユーカリを契約農家の田畑に植え出した。それらの動きの中で,1980年代前半まで農民の中にあったユーカリ植樹に対する反対運動も徐々に収まっていった。FAOでは,ユーカリ植樹に対する様々な風評に対して,科学的に回答を与えるべくユーカリの識者を集めてシンポジウムを開催し,また,文献的なサーチをもとに賛否両論相分かれるユーカリ論議にはっきりした回答を与えた。最後に,タイ国の紙パルプ産業関連の機関について紹介した。
(本文81ページ)


広葉樹材酸素漂白クラフトパルプの二酸化塩素漂白におけるダイオキシン類の水準(第1報)
筑波大学 農林工学系 大井  洋        
独立行政法人森林総合研究所 細谷 修二,真柄 謙吾  

 塩素を用いずに二酸化塩素を用いて行うパルプ漂白(ECF漂白)工程は,ダイオキシン類をほとんど生成しない施設として海外において導入が進められ,我が国においてもその導入が計画あるいは実施されている。しかし,2000年1月に施行されたダイオキシン類対策特別措置法では,ECF漂白工程を含めて塩素系漂白施設を特定施設として指定している。パルプ漂白工場の工程水と工場廃水に含まれるダイオキシン類の量については,環境基準の観点から把握することが重要になっている。ECF漂白工程におけるダイオキシン類が環境基準を超えて検出されるならば,その存在理由と生成機構について解明することが求められている。
 本研究の目的は,ECF漂白工程水のダイオキシン類の水準を明らかにし,漂白におけるその生成機構についてより多くの知見を得ることである。特に,我が国において広く行われる広葉樹材酸素漂白クラフトパルプのECF漂白におけるダイオキシン類の発生機構について知見を得ることである。本報では,実験室において二酸化塩素の添加率とダイオキシン類発生の関係を把握するため,実験室ハイシェアーミキサーで,過剰の二酸化素を添加した二酸化塩素漂白を行い,ダイオキシン類の水準を明らかにした。
 二酸化塩素を工場の通常の条件の6倍程度添加した条件(KF=1.14)においてさえ,環境基準の観点から見て,ダイオキシン類の生成は認められなかった。塩素(Cl2)を用いずに二酸化塩素(ClO2)を用いるECF漂白について,2000年1月に施行されたダイオキシン類対策特別措置法において塩素(Cl2)漂白と同様に取り扱われていることは明らかに不合理である。
(本文92ページ)


低質セルロース資源からの高性能吸水剤の開発(4)―吸水剤の多孔性構造―
東京大学大学院 農学生命科学研究科 肖 月華,飯塚 堯介  

 広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)のカルボキシメチル化(CM化)およびポリエチレングリコール・ジ・グリシジルエーテル(PEGDGE)による架橋によって得られる水不溶化物は,良好な吸水剤としての性能を有している。本報告ではこのようなセルロース系吸水剤の性状の中で,特にその多孔構造について主として溶質排除法によって検討している。得られた架橋CM―LBKPは非常に多孔性に富む構造であり,孔径560Å以下の孔の総体積は未処理LBKPのそれの最大約100倍にも達していた。しかし,架橋剤の添加量が増大するとともに,総体積のみならず孔径も明瞭に減少した。また,架橋体の収量の向上を目的として,架橋反応で水可溶部に残存する区分について再架橋処理を行ったところ,高収率で良好な吸水性能を有する架橋体が得られることが明らかとなった。
(本文99ページ)