2002年6月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2002年6月 

第56巻 第6号(通巻第615号) 和文概要


最近の古紙処理に関するニーズと関連する技術―紙力・外観品質の改善,更なる省エネ,灰分除去と繊維回収―
相川鉄工株式会社 金澤 毅  

 リサイクル56計画の達成をうけて,新たに2005年までに古紙利用率を60%に引き上げるリサイクル60計画が設定された。この数値は古紙利用率の限界に近いとされているものであり,現状の56%から更に4%をアップするためには年間約120万トンの新規古紙原料ソースの手当てと古紙配合用途を確立しなければならない。板紙分野では既に極限の古紙利用率と言われており,この増加分は主として洋紙分野での達成が必要となる。低品質の古紙から高品質の古紙パルプを生産するために,多くの新たな技術的課題が浮上してきている。例えば,繊維のリサイクル回数が多くなることにより増加した微細フラワーや灰分を効率的に除去し,濾液中の有効繊維分を出来るだけ流失させないこと,低質古紙を処理するために古紙処理設備が複雑化する中でできるだけ動力エネルギーを少なくすること,等が問題となっている。一方,特に段ボール原紙などの板紙分野では,紙力劣化への対策としての紙力増強剤の使用がコストアップの原因として問題となっている。また更なる古紙利用率の増加を目的として従来のUKPを段ボール古紙原料で置き換えることも具体化され,古紙原料の強度改善対策が大きな課題としてクローズアップされてきている。本報告書では現状の古紙処理に関連するニーズがどこにあるかを検討するとともに,特にこれらの技術的課題に対する弊社の取り組みの概要を報告する。


新型濾液分別方式DDウォッシャーによる漂白プロセスの改善
アンドリッツ株式会社 福沢 民雄,萩原 幹児,川上 千明  

 2001年に北欧で,生産量2,000ADMT/Dの大型ファイバーライン設備2基が,稼動した。これらのファイバーライン設備には,未晒スクリ―ンからECF漂白プラントまで洗浄機は,全て中濃度DDウォッシャーが採用されている。これらに続いて,北米,南米で,中濃度DDウォッシャーによるフラクショナルウォッシング(濾液分別循環方式)のファイバーラインが採用されている。新型濾液分別方式中濃度DDウォッシャーの特性を応用して,未晒洗浄及び漂白工程全体に亘り効果的な濾液分別方式の洗浄が可能になる。DDウォッシャーは,汚染濾液と清浄濾液の2種類の濾液に分けることが出来る。DDウォッシャーからの1次濾液(汚染濾液)は,多量のCODと遷移金属を含んでいるが,2次濾液(清浄濾液)中のCOD及び固形分濃度は低い。濾液分別洗浄を実施し,1次濾液を集中的に系外排出し,清浄な2次濾液を系内循環することにより,ファイバーラインプロセス内の有機・無機物濃度プロファイルを低く維持できる。更に,高濃度プロセスと異なり,中濃度DDウォッシャーを用いることにより,プロセス全体を漂白反応塔と同じ中濃度で操業することができる。従って,漂白工程内で希釈・濃縮が不要となるため,系内の有機・無機物の蓄積が防止される。新型濾液分別方式中濃度DDウォッシャーにより,漂白薬品は節減され,また,スケール問題も減少する。 


過酸化水素漂白の最適化と制御
BTG パルプ アンド ペーパー センサーズ AB バーティル・オルソン  

 今日,過酸化水素漂白は,メカニカルパルプだけではなくケミカルパルプの脱リグニンのOP―またはPO―段で使われている(この記号は酸素または過酸化物のどちらが主体であるかにより決まる)。
 この論文に述べる方法は,主にメカニカルパルプ漂白のために開発されたが,原理的にはケミカルパルプの漂白にも適用できる。この漂白は,全アルカリに関して注意して最適化すれば,白色度は過酸化物の消費量で決まる。過酸化物の消費量は,基本的に漂白する際のパルプ濃度と反応時間の関数である。
 Moldenius博士が過酸化水素用に開発した数式モデルが一段および二段の漂白設備のために利用できる。いずれの場合でも,残留過酸化物を循環させる方式が使われ,新しい過酸化物の流れを安定化して,漂白塔に一定量を供給する。そのためには,漂白塔入口に戻る残留過酸化物の全量を正確に測定する必要がある。この目的のために残過酸化水素計RPA―5000が用いられた。この分析装置の機能は,この論文の最初の部分で説明する。
(本文21ページ)


板紙用紙力剤について―高クローズド化環境における共重合系紙力剤の効果―
ハリマ化成株式会社 製紙用薬品事業部技術開発部第1G 林田 裕一  

 最近の製紙業界では,抄紙機の合理化や高速化などの生産性向上を押し進めると共に,厳しいコストダウンへの取り組みを行っている。また,地球環境問題の高まりにより,資源である「紙」のリサイクルは社会全体として更に進められていくと思われる。
 このような社会情勢から,近年の板紙工場における抄紙環境も変化しており,雑誌古紙の配合量増加や古紙全般の低グレード化と共に,工業用水の削減と排水の抑制により水の再利用が進み,高度にクローズド化された抄紙環境が現れている。
 このような高クローズド化された抄紙条件では,系の状態悪化(電気伝導度の上昇)が顕著であり,これに伴う色々な弊害が取り沙汰されている。抄紙系で使用される製紙用薬品にとっても,その効果の面から極めて厳しい環境であると言え,より高性能な薬品が求められている。
 本報では,高度にクローズド化された抄造系における共重合系紙力剤の効果について,これまで行っている色々な改良への取り組みとその効果に関して検証し,クローズド化された板紙抄紙系に適した共重合系紙力剤の方向を明確にすることができた。
(本文27ページ)


抄紙機のエンベディド・ソリューション―性能と製品品質を向上させる製紙機械制御への新しいアプローチ―
フォイトペーパーオートメーション株式会社 内河 英臣,磯部 二郎  
 QCS(Quality Control System)とCD(Cross Direction)アクチュエータのメーカーは,ここ30年間,QCSやCDアクチュエータの高い効果を実証してきた。ここでは,QCSとCDアクチュエータの現在の限界を明らかにして,より高いレベルへ進む提言をする。すなわち,センサーやアクチュエータをプロセスやマシンの一部として,有効な位置に埋め込む(エンベディド・ソリューション)。このエンベディド・ソリューションによって,より高い制御を可能にする。
 最近,世界的なマシンメーカの考え方は変化した。今日,マシン性能の改善は,プロセス制御のスペシャリストとの協同作業によってもたらされると考えている。すなわち,設計当初から,マシンにセンサーと制御を組み込んだものにする。これらは以下の利点をもたらす。
 1) 短い制御ループ及び高速制御を可能にし,プロセス変動や品質変動を最小化または削除し,高いレベルの製品効率と,原材料とエネルギーの削減,品質均一性を上げる。
 2) プロセスの問題を,それがプロセス全体に広がる前に,その発生源で解決する。
 3) バッファーを削除し,スペースと経費を削減し,プロセスの応答性と高速のスタートアップと銘柄変更への柔軟性を改善する。
 4) 堅固な制御と高速検知のために,より良いマシンのモデリングを可能にする。
(本文35ページ)


製紙業界に於ける最新ロボット導入実例
マロール株式会社 技術部 加藤 公一  

 これまでに製紙各社の製造ラインに導入して頂いている装置の中から次の3種類の自動機について,導入前の問題点と導入による効果・改善点を紹介していく。
 1) 感圧紙のハンドリングロボット
 ロール状の感圧紙の外径を把持しても発色させることなく搬送できるロボットで,様々なサイズや質量のワークがランダムに供給されて来ても段取りの変更を加えることなくデータリンクにより選ばれたパレットまで搬送できる装置である。
 2) バッキングロール自動サンディング装置
 塗工機のバッキングロールの表面に付着したラテックス等の汚れ落としやロールの傷取り・段落としの作業を行う装置で,ラインが稼働中でも使用できるのが特徴である。導入によりロールの寿命が延びて交換・補修間隔が長くなり,またドクターナイフの偏摩耗が少なくなった。
 3) ヒートロール自動サンディング装置
 ソフトカレンダ設備のヒートロール表面のクリーニング作業を行う装置で,ロール表面に付着するラテックス等による紙の品質の低下をきたさないよう常に運転できるのが特徴である。発生するスラッジは集塵機で吸引し飛散を防いでいる。導入により紙の品質安定に寄与したばかりでなく,今までの手作業による危険で過酷な作業を軽減することができた。
(本文40ページ)


BM計とマシンモニタリングとの統合による新たな展開
ハネウェル株式会社 営業開発部 中濃礼二郎  

 近年抄紙機の合理化に対する要求はさらに高まり,これに伴う高速化による生産性向上や稼働率をあげるための予防保全,トラブルの早期原因究明に至るまで要求は広範囲にわたり,如何に最大効率を維持しながら,かつ品質及び生産を高めるかが重要な課題となっている。従来のBM計による測定だけではこれらの課題への対応は困難であり,計測制御システムにも新たな展開が望まれる。
 これらの要求を実現するために不可欠なコンピュータは,PC(パーソナル・コンピュータ)が目覚しい発展を遂げていることにより,低コスト,高性能なものを多目的に利用することが可能になった。ハネウェル社のダビンチ計測制御システムは,この汎用PCをBM計の世界にはじめて取り入れ,従来のBM計機能に加え,マシンの短周期変動を解析するトータル・マシン・モニタリングや最短時間で紙切れ原因を究明できるウェブ・モニタリング・システム(WMS)との統合など,新しい機能の追加により,さらに優位性を高めている。本稿ではダビンチシステム組込みの短周期品質変動モニタリング機能及び簡単な画面操作により紙切れ原因の究明が可能なWMSの概要と優位点を述べる。
(本文48ページ)


コンピュータグラフィックスを利用した“透かし模様”自動作成技術の開発
静岡県富士工業技術センター 日吉 公男,高田 勝己         
株式会社佐野機械 小野田利行             
静岡県技術コンサルタント事業協同組合 久保嶋勝己,羽根田博司,豊福正道  

 抄紙用ワイヤーへの漉き入れ模様(透かし模様)は職人が作製し,透かし模様毎に抄紙用ワイヤーを保管して置かなくてはならない等の理由から,限られた紙にしか利用されていない。そこで,我々はコンピュータグラフィックスの技術を利用し,誰でも簡単に透かし模様が作製できる方法や,透かし模様の描画材,透かし模様を抄紙用ワイヤーから剥がす剥離剤を検討した。その結果,以下の成果が得られた。
 @ スキャナを用いて所定の画像をパソコンに取り入れ,透かし模様として描画するシステムを開発した。これにより模様の保存だけでなく再現も正確にできるようになった。
 A 透かし模様を転写紙等に描画し,熱融貼着により転写紙から抄紙用ワイヤーに透かし模様を転写形成させた。この方法により様々な金網材質の抄紙用ワイヤーや大きさに関係なく,描画条件を設定できた。また,描画材が抄紙用ワイヤーの裏に廻ることがないので,抄紙用ワイヤーから透かし模様を完全に剥離することできた。
 B 剥離剤は有機溶剤を全く含まないため作業環境を考慮することなく抄紙現場で剥離作業が行える。また,部分剥離ができるため,描画途中で修正が可能である。
 本技術開発により,特殊な透かし模様紙の製造技術を除いて,経験の少ない技術者でも対応可能となるばかりでなく,1本の抄紙用ワイヤーで様々な透かし模様に対応できるため,透かし模様紙が安価に製造できるようになった。
(本文56ページ)


設備保全管理システム
横河電機株式会社 システム事業部 田伏 雅己  

 設備保全管理システム:eHOZENは社内LANを利用したWeb環境で稼動するパッケージソフトウエアである。同システムは,クライアント用のプログラム・モジュールを導入する必要がないことから,ネットワーク上に接続されたどのパソコンからでも,自由にアクセスすることができる。つまり,使いたい時に使えるシステムである。
 また,システムの導入効果を確実に発揮するために必要な,保全履歴/故障履歴の分析機能を標準的に搭載している。本稿では,eHOZENの特長とともに,保全履歴/故障履歴の分析機能の一端を紹介する。
(本文64ページ)


新しいスライムコントロール技術
栗田工業株式会社 紙パ推進部 杉 卓美,飯泉 太郎  

 古紙利用率の増加,中性抄紙化などにともない,抄紙系内はスライムがますます増殖しやすい環境となっている。この状況に対応するため,ハード,ソフト両面で新しい技術が開発されてきた。
 1) スライムコントロール剤としては,従来主に用いられてきた有機系の殺菌剤に対し,新しい無機系殺菌・殺カビ剤が開発され,優れた効果を発揮するとともに,安全で環境に対する負荷も少ない処理が可能となった。
 2) DNAを利用した菌の同定・菌相解析技術が実施され,スライムコントロール剤の選定,使用方法の決定に利用され始めた。
 3) モニタリング技術の発展により,実機に即した解析とリアルタイムでの対応が可能となった。
 そして,これらの技術を組み合わせることにより,安定したスライム処理が,より低コストで実施できるようになった。
(本文69ページ)


インクジェット用紙向け炭酸カルシウム/シリカ複合材『FMT―IJ』について
株式会社ファイマテック 内山 浩隆  

 インクジェットプリンタは手軽に再現性の良いフルカラー印刷ができるので,広く使われている。インターネット,デジタルカメラなどの普及により,インクジェットプリンタの需要はますます強くなってきている。きれいなフルカラー印刷を得るためには専用紙が必要である。インクジェット専用紙の塗工層にはシリカが広く使われている。シリカは白色度が高く,インク吸収性,発色性に優れている。一方でシリカスラリーは高濃度化が難しく,作業性も良くない。また,高価な原材料と言える。
 このような問題を解決するために私達は湿式粉砕炭酸カルシウムの改良を行なった。湿式粉砕重質炭酸カルシウム(WGCC)はスラリー時に高濃度での流動性が高く,また白色度,風合い,コストパフォーマンスに優れているからである。炭酸カルシウムの粒子径を最適化し,特殊カチオンポリマーで表面修飾することにより,WGCCのインクジェット適性を上げることができた。この新開発WGCCとシリカを複合させ,シリカと炭酸カルシウムの長所を併せ持つFMT―IJグレードを作ることができた。また,FMT―IJは高い表面強度を持たせやすいため,シリカと比べてバインダーを低減することができる。
(本文74ページ)


タイ国の紙パルプ産業の現状と展望(その1)―タイ国の紙パルプ工業の構造と動向―
Dr.小林技術士事務所 小林 良生  

 タイ国の紙パルプ産業は,過去20年有余年の間に,その構造や紙パルプの原料事情が大幅に転換した。1970年代から1980年代の前半は,同産業はタケ,イナワラ,バガス,ケナフというような非木材に依存し,タイ最大の財閥であるサイアム・セメント・グループが業界を支配していた。しかし,1980年代後半にインド系のフェニックス社がケナフからユーカリとタケパルプに転換し,1990年代になってコメの最大の輸出業者であるスーン・ファ・セン財閥がユーカリの植樹から紙パルプ産業に乗り出し,最大の生産能力を誇るアドバンス・アグロ社をスタートさせたことで業界は大きく変わった。すなわち,非木材ベースからユーカリベースの近代的な紙パルプ産業に形質が変わったのである。そして,タイ国の紙生産総量は年産365万トンとなり,これは需要量の200万トンを凌駕するところとなった。言い換えれば,タイ国は新聞用紙など一部の種類を除けば,全体的には紙の輸出国となっているのである。タイはアジア通貨危機の時,一時的に経済不況に襲われたが,日本よりも速くこの不況を脱しつつある。最後に,日本の紙パルプ企業のタイ国進出例として,天満製紙,阿波製紙,王子製紙の海外活動について言及した。
(本文78ページ)


OM, SEM, EPMAによる観察及び分析のための紙の断面作製技法(2)SEM. EPMA用断面作製技法
濱田 忠平  

 前稿の光学顕微鏡用に引き続き,本稿ではSEM,EPMA用の断面作製技法について述べる。SEM, EPMAでは通常はバルク試料を取り扱うため,OMのように包埋して薄い切片を作製する必要はないが,切片作製後包埋剤を除去しないとコントラストのある鮮明な像が得られない。したがってOMの場合には最も一般的なエポキシ樹脂は脱包埋が困難なため,あまり適当ではなく,また包埋処理や脱包埋処理中に紙の成分や印刷インキなどが溶出したり,変質する場合が多い。そこで包埋せずに紙層構造の変化をできるだけ少なくする切断法が試みられた。この中で筆者らの確立した2枚の塩化ビニル板の間に試料をはさんで切断する方法によれば,包埋せずに大部分の紙の良好な切断面を作製することができ,サブミククロンの領域での紙の断面の観察や分析が比較的簡単にできるようになった。しかし含浸加工用原紙,ティシュペーパーなどの非常にかさ高な試料や薄くて凹凸の著しい試料には不適当で,またより高借率の観察や分析には微小部分の脱落などが発生しやすい欠点があった。
 最近,収束イオンビーム(FIB)を使用した新しい手法がこの分野に導入され,無包埋でより精度の高い紙の断面の作製ができるようになった。しかしこの方法は装置が非常に高価なため,より普及させるためにはより安価な装置の出現が望まれる。
(本文85ページ)


リサイクル処理によるパルプ繊維の結晶化度及び再膨潤能力の変化
東京大学大学院 農学生命科学研究科生物材料科学専攻製紙科学研究室        
カンタヤーヌウォン ソムワン,江前 敏晴,磯貝 明,尾鍋 史彦  

 各種分析技術を総合的に用いることによって,リサイクル処理による非晶及び結晶領域量の変化を明らかにし,同時にそれらが不可逆的に転換する可能性を評価した。X線回折法で観察されるように,リサイクル処理によって繊維の結晶化度は幾分変化した。繊維の大部分は,リサイクル処理による影響をほとんど受けない安定した結晶領域からできているので,結晶化度の変化は,おそらくリサイクル中に非晶領域がわずかに結晶化することに起因するのであろう。リサイクル処理による非晶領域量の減少は,繊維の水分吸着能力に影響するが,これが示差走査熱量計によって間接的に検出された。リサイクル繊維のルーメンは,湿潤状態でも潰れたままであり開くことは少ないので,繊維壁に吸着する結合水の量は,リサイクル繊維の再膨潤能力に多大な影響を与えていることがわかった。湿潤リサイクル繊維の再膨潤能力の低下は,非晶領域量の減少によると考えられる,形態変化には現れないような繊維壁の微小な変化に対応していた。本研究では,フーリエ変換ラマン分光法によって,リサイクル処理が繊維の結晶及び非晶領域量の変化に与える影響を決定することはできなかった。
(本文103ページ)


高速抄紙に適した歩留まりシステム
日本製紙株式会社 技術研究所 上條 康幸,宮西 孝則  

 凝結剤と凝集剤を組み合わせたデュアルシステムに関して,光度分散分析器(PDA)と動的濾水度測定装置(DDA)を用いて,凝集性や濾水性について検討を行なった。
 その結果,凝集剤を単独で使用するシングルポリマーシステムと比較して濾水性,ファインの再凝集性が優れている結果が得られた。これは初めに添加される凝結剤がファイン表面上に存在するアニオン性部位の電荷を中和して(サイト・ブロッキング効果),後から添加する凝集剤のファイン表面での吸着形態の変化を抑制するためであると考えられる。またデュアルシステムは,先に添加する凝結剤が,繊維表面を中和する役割を果たしているが,時間の経過に伴い,ファイン細孔内への拡散などによりカチオン電荷を失う。従って凝結剤と凝集剤の添加間隔を短くするほど薬品の添加効果が高められる。
 紙質について検討を行なったところ,DDAで得られる濾水時間とシート透気度には相関が認められた。濾水性が向上するほど紙層内に細かい細孔が形成され,濾水性が向上するほどシートの透気度が低下する結果が得られた。地合の悪化が認められないことから,この歩留まりシステムを用いることにより印刷適性の優れた紙を抄造できる可能性が示唆される。
 以上の結果より,シングルポリマーシステムと比較してデュアルシステムは凝集性,濾水性に優れており,紙料に対するせん断力が高い高速抄造に対応する歩留まりシステムであると考えられる。
(本文110ページ)