2002年5月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2002年5月 

第56巻 第5号(通巻第614号) 和文概要


自動車の環境負荷低減手法―ハイブリッド自動車を中心に―
独立法人産業技術総合研究所 エネルギー利用研究部門 清水 健一  

 地球温暖化問題が文字通り地球規模の問題となっており,各部門での省エネルギー化等の対策が迫られている。国内で消費されるエネルギーの2割強が運輸部門で消費されており,そのうちの8割が自動車に消費されていることから,地球温暖化対策として自動車のエネルギー効率の飛躍的な向上が求められている(この要求は世界的な課題となっている)。
 内燃機関の実用時の効率が低い原因は,効率そのものの低さに加えて,実使用時の低出力域での効率が大幅に低下する点にある。これに対しモータは低出力域を含めた広い動作範囲で高い効率が確保でき,実使用時の高い効率が期待できることから,電気自動車やハイブリッド車,燃料電池自動車など電動車両の普及が期待されている。
 これらのうち,歴史の長い電気自動車は一充電走行距離の短さ(この点を高性能電池で解決可能であるがその場合は電池コストが問題)のネックから用途を限定した利用方法が模索されている。また,究極の高効率自動車と目されている燃料電池自動車は,実用に向けて未解決の課題が多く,インフラまで含んだ実用的な姿を早期に描くのは困難な状況である。これらの状況から,短期的には早期の普及が可能なハイブリッド自動車が有望視されている。ここでは燃費2倍を実現可能にするハイブリッド技術の基礎について概説し,市販車やプロジェクトで開発中の種々のハイブリッド車を例にハイブリッド車の技術動向を紹介する。
(本文3ページ)


CO2削減に向けた諸外国の取組と日本の対応
環境省 地球環境局地球温暖化対策課 駒木 賢司  

 平成13年10月から11月にかけてモロッコで開催された気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)において,京都議定書の運用に関する細目を定める文書が採択された。これにより,京都議定書の実施に係るルールが確定し,先進諸国等の京都議定書の締結が促進される見通しである。また,我が国においても,京都議定書の2002年締結に向けて,次期通常国会における京都議定書締結のための承認及び京都議定書の締結に必要な国内制度の整備・構築のための準備を本格的に開始することとしたところである。
 ここでは,京都議定書の概要,COP7の合意の内容等とこれらを踏まえた我が国国内対策に係る中央環境審議会での検討の内容等について,諸外国における状況を含めて概説する。
(本文13ページ)


太陽光発電システム―現状と展望―
産業技術総合研究所 電力エネルギー研究部門 作田 宏一  

 典型的な分散形エネルギー資源である太陽エネルギーは,エネルギー密度は小さいものの,地球に降り注ぐ総量は人類の総エネルギー需要の約1万倍と膨大である。クリーンで枯渇することのない未来のエネルギー源としての期待は大きく,様々な利用技術の開発が進められている。中でも太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換して利用する太陽光発電システムは,可動部分がなく単純であること,電卓等の小さなものから大規模発電所に至るまで様々な規模のシステムへの応用が可能なこと等の特徴から,実用化に近いシステムとして注目を集めている。本稿では,長年に渡る産官学を挙げての研究開発と様々な導入普及策により効率向上と低コスト化が進み,本格的な実用化・普及が始まりつつある太陽光発電について,その概要と,研究開発・実用化普及の現状を紹介する。
(本文25ページ)


二酸化炭素シンクの考え方―COP7までの合意と今後の課題―
国立環境研究所 地球温暖化プロジェクト総合研究官 山形与志樹  

 COP6再開会合(2001年7月;ドイツ・ボン)では,多大な危機感を募らせていたEU側からの大幅な譲歩があり,アメリカの離脱という大きな制約はあるものの,京都議定書の実施ルールに関する「包括的合意」という名の部分合意(以下,ボン合意)が採択された。さらにCOP7において批准のために必要となる運用細則の詰めの交渉がなされ,現在各国が2002年の発効に向けて批准のための準備をすすめているところである。
 COP3からCOP6にいたる交渉のプロセスの中で,特に大きな課題として継続的に議論されたのが,森林・農業の吸収源活動の取り扱いである。「植林」や「森林管理」等の人為的な吸収源を拡大する活動が,数値目標達成のために利用できることが京都議定書で認められたものの,従来から不確実性が高いとされてきた吸収源に関する取り扱いをどうするのか,米国等に大幅な吸収源を認めてエネルギー部門の排出削減努力を緩和することを許すか否か,科学アセスメントと政治交渉が平行して進められてきた。
 本報では,吸収源に関する主要論点と交渉経緯,ボン合意の分析と日本に対する政策的含意,今後の課題の順に見ていく。
(本文30ページ)


製紙産業の省エネ推進状況
日本製紙連合会 間 邦彦  

 日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め活動している。その中の地球温暖化対策の1つとして,CO2の排出抑制があり,省エネ目標として「2010年における紙・板紙の購入エネルギー原単位を1990年比10%削減する」を掲げている。
 1998年度から1990年を基点とした前年度の省エネ実績についてフォローアップし,結果を公表している。なお,目標は暦年ベースであるが,途中年次は集計の都合から年度ベースである。今回2000年度実績について報告する。
 1990年に対して2000年度の購入エネルギー原単位は92.8%まで順調に削減されているが,CO2排出原単位は95.1%にとどまっている。これはコスト上有利な石炭が多用されたことによる。
 また,1990年に対して2000年度の生産量は13.1%増加したがCO2排出量は7.6%増にとどまっている。その差の5.5%の削減のうち,4.2%は製紙業界の努力によるもので,1.3%は電力会社の努力(発電・送電効率向上,原子力比率増)によるものである。
 2000年度の省エネ投資額(回答29社)は231億円で,省エネ量(原油換算)は176千kl/年であった。今後の投資計画(回答27社)は930億円,省エネ量は4,884千kl/年が見込まれている。
(本文39ページ)


抄紙工程でのインバーター導入による省エネルギー
三菱製紙株式会社 八戸工場設備技術室 鹿糠 広治  

 三菱製紙株式会社は,1993年に環境憲章を定めて環境影響負荷の低減に積極的に取り組んでいる。現在のCO2排出量の削減目標は,「2005年までに1999年比20%削減」である。八戸工場は,全社のCO2の約70%を排出しているため,大幅な削減が急務である。
 平成12年度から,継続的なエネルギー削減を目的として「購入エネルギー原単位向上対策」投資の第一次をスタートした。
 第一次として,主に抄紙工程に80台のインバーターを設置して,約1,000kWの電力の削減を図ったので,実施した内容について紹介する。
 また,平成13年度は,第二次購入エネルギー原単位向上対策として,木釜アキユームレーター蒸気発電を実施中であり,その他の主な省エネルギー活動全般についても紹介する。
(本文52ページ)


DIP製造工程における省エネ対策及び産廃物削減対策について
中越パルプ工業株式会社 二塚工場生産部原質課 高島 勇治  

 当工場は,主製品として新聞用紙を製造している。メイン原料としてエネルギー消費量の低いDIP利用促進を進めてくる中,製造初期段階の古紙離解工程(パルパー)を中心とした処理効率向上・加温用蒸気節減対策・繊維歩留まり向上対策・増産対策としてファイバーフロー排出異物中に含まれる原料の回収装置の開発・離解温度の見直し・希釈白水制御ソフトの改善に関して平成9年10月から第T期対策として取り組みを進めてきた。また,スクリーンゾーンスケール除去洗浄強化・高濃度パルパーブロー希釈方法・ソフトの改善等に関して平成11年9月から現在まで第U期対策として取り組みを進め省エネ及び産廃物削減を推進してきた内容について紹介する。
(本文60ページ)

ライムマッドフィルターへの自動プレコート更新装置導入―ライムキルンでの重油削減―
日本製紙株式会社 旭川工場工務部原質課 上田 和司  

 旭川工場では1960年にNo.1,1972年にNo.2ライムマッドフィルターの運転を開始しキルンへのスラッジ供給を行っている。
 ライムマッドフィルターは運転中にフィルター表面のろ布およびプレコート層の目詰まりが発生するため,定期的にドクター後の1セクションにブロアで空気を送り込みプレコート層をドラム表面より剥離させてろ布の空気洗浄とプレコート層の更新(ブローオフ)を行っていた。
 このブローオフによる洗浄は不完全であり定期的にろ布の酸洗浄を必要としていた。また,ブローオフ後にはスラッジ水分が変動(含有水分の増加)し工程が不安定になるため,キルンでの処理量を一時的に低下させる等の対応が必要であり重油原単位悪化の一因であった。
 今回,ライムマッドフィルターへ自動プレコート更新装置(CPR)を導入したことにより重油原単位が改善され,また,ブローオフを廃止することにより現場での操業性が改善されたので報告する。
(本文66ページ)


動力プラントの省エネ活動
王子製紙株式会社 苫小牧工場 泉 茂樹  

 苫小牧工場火力発電所(定格出力268kW)は,7基のボイラーと13台のタービンから構成され,水力発電を含めた自家発電にて工場電力の全てを賄うことができる。
 ボイラープラントにおいては,稼動より25年以上経過しているものも多く,設置当初の運転状況と現在では操業状態に変化があることに着目し,1997年より順次高効率ファンへの更新を行い合計927kWの省エネを実施してきた。
 また,10号重油ボイラー及び16号復水タービンの週末起動停止(WSS:Weekly Start and Stop)を実施し更なる省エネを推進してきた。本報ではその詳細を紹介する。
(本文71ページ)


KP工程における中濃度ポンプの省エネルギー ―省エネ型MCポンプへの改造効果―
北越製紙株式会社 新潟工場工務部施設課 塚野 雅美  

 北越製紙 叶V潟工場は,地域との共生と環境問題への配慮から,業界でいち早くパルプ漂白工程にECFを導入し,ミニマムインパクトミルを目指し取り組んできている。今回このファイバーラインの一部の増強のため,中濃度(MC)ポンプの能力増強を計画している。いずれのMCポンプともかなりの大型高圧モーターを使用しており,ファイバーラインにおける使用電力の大半を占めているのが実状である。
 そこで2001年12月中旬に省エネ型MCポンプへの改造を行い,ポンプの能力増強と省電力化を図ることとした。この省エネ型MCポンプへの改造効果に期待するところは大きく,ファイバーラインの電力原単位の改善によりコストの削減につながるものと確信している。
 今回はこの計画が進行中であるため,この省エネ型MCポンプへの改造経緯並びに省電力予想について報告する。
(本文76ページ)


ヒートパイプ式熱交換器による省エネルギー―コータードライヤーの排気熱回収―
日本製紙株式会社 勿来工場工務部 佐々木千代信  

 勿来工場は福島県の最南端,首都圏より約2時間のいわき市に位置する。日本製紙の中では中規模工場で,抄紙機1台とコーター5台を有する。
 情報用紙を生産する当工場のエネルギー事情は,平成12年2月〜平成13年1月までの実績で年間電力量79,298MWh(内自家発電66,623MWh),蒸気発生量346,000ton(重油量36,200kL)である。エネルギー原単位は数々の省エネルギー対策工事にもかかわらず,ユーザーニーズに答えるべく生産品種の増々の多様性に対応するため実施してきた設備投資による,エネルギー使用量の増加により際立った改善が見られていない。
 日本製紙としての全社的な省エネルギー目標(2010年度までに1990年度比製品当り10%の改善)に対し,当工場においても目標達成に向けた取り組みを行っており,その中から蒸気使用量の大半を占めるコーターの省エネルギー対策として,コータードライヤーの排気熱回収を実施する。
 コータードライヤーの高温空気は,ドライヤー本体と空気加熱器とを循環させており,蒸発水分を取り去るために,その一部を排ガスとして排気ファンにより屋外に排出している。一方,新鮮空気は排気量に見合う量を補給する必要があり,現状では空気加熱器入口付近に屋内空気の取り込み口を設けて循環ファンにより吸引し,蒸気ヒーターにより循環空気と共に加熱している。そこで,これまで捨てていた排気熱を補充空気の加熱に再利用するため,1号,3号,4号コーターにヒートパイプ式熱交換器の設置を計画した。
 本件では5基の熱交換器を設置する,1号コーターについて紹介する。蒸気使用量の削減効果は,重油換算量で年間220kL/年の削減を見込んでいる。
 ヒートパイプ式熱交換器は20年程前より様々な用途で使用されている。当社では他工場において現在まで15年以上ノートラブルで使用している実績があり,信頼性が高い設備であるといえる。当工場においても,残る3号と4号コーターについて順次実施し,更に省エネルギーに努めていく所存である。
(本文81ページ)


N―1 M/Cの省エネ設計及び事例
王子エンジニアリング株式会社 米子事業部設計グループ 津森 郁男  

 王子製紙米子工場では1996年より塗工紙生産設備(N―1M/C・N―1C/M)を建設する大規模投資を実施し,1997年9月に営業運転を開始した。N―1M/C・N―1C/Mは新鋭の技術を導入した大型高速設備である。本稿では,N―1M/C・N―1C/Mで導入した省エネ機器の特徴と省エネ効果及び稼動後から今日まで実施してきた省エネ対策事例について幾つか紹介する。
 (1) シュープレスの導入と省エネ効果
 (2) ターベア真空発生装置の導入
 (3) ヤヌスカレンダー(オンラインスーパーカレンダー)の導入と省エネ効果
 (4) アジテータの省エネ対策
 (5) シュープレスのブランケット仕様変更による省蒸気
 (6) ヤヌスカレンダーニプコロールの排油装置改造による省電力(駆動負荷減少)
(本文85ページ)


インクジェット用紙の印字特性に対する塗工顔料の影響
韓国 江原大学校 山林科学大学製紙工学科 李 鎔奎,安 国憲,李 光燮  
東京大学大学院 農学生命科学研究科生物材料科学専攻 空閑重則            
 インクジェット用塗工層の性能を原紙の影響を排除して評価するため,プラスチックフイルムに塗工する条件を探索した。PETフィルムの上にシリカゲル塗料を直接塗るために,まず下塗りによってフィルム面を親水化した。PVA溶液で下塗りをすると親水化の効果はあるが,これに上塗りをすると乾燥後の表面に割れが発生した。PVA溶液にクレーを20%まで混ぜて下塗りをしたものは,上塗りをしたときに割れができにくく,クレーの量を最適化すると完全に防止することが出来た。上塗り顔料としてシリカゲル4種,板状の水酸化アルミニウム1種,板状のクレー 1種を用い,PVAをバインダとして塗工し,表面の吸液挙動とインクジェット印字品質を評価した。水酸化アルミニウムのものおよびクレーのものはインクの吸収が遅いためインクが表面で広がりドットゲインおよび顕著な色ムラを生じた。シリカゲルのものはいずれもインクの吸収が速く,使用に耐える印字品質を与えたが,種類によりかなりの差があった。塗工層表面に水滴を落としたときの接触角の変化挙動はインクジェット印字におけるドットの面積や光学的性質と相関を示した。
(本文94ページ)


両面段ボール板の弾性曲げ変形解析―周辺支持板の任意位置に長方形集中一様分布荷重が働く場合―
愛媛大学地域共同研究センター 松島 理  
愛媛大学名誉教授 松島 成夫  

 周辺が支持された異方性段ボール板の任意の域に長方形一様集中荷重p0が働く際の応力および変形についての弾性解析を試みた。この解析により求めた段ボールのジュート・ライナー(JL)外表面の諸応力分布状態を議論し,その特性を明らかにした。得られた結果は以下の通りである。
 段ボールのたわみおよび表面の垂直応力(加工方向および横方向)は,荷重域に強く集中し,4側辺では零になる。たわみは荷重中央位置と4側辺との距離が大きい程大きくなる。垂直応力の最大値は荷重中央位置にあり,その値は荷重の集中が強くなるに伴い大きくなる。側辺の支持力の最大値は荷重中央位置から最も近い位置にある。JL表面のせん断応力は荷重域付近に強く集中し,その応力は荷重中央位置付近では反対称的に生じる。
(本文101ページ)