2002年3月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2002年3月 

第56巻 第3号(通巻第612号) 和文概要


列車の自動運転制御−エキスパートシステムの自動列車運転装置への適用―
三菱電機株式会社 系統変電・交通システム事業所 満川 昌彦

 近年,首都圏地下鉄路線をはじめ,新規に建設される鉄道路線では,ワンマン運転を前提とした路線が増えつつある。ワンマン運転の路線では,安全の確保,乗務員への負担をできるだけ少なくする工夫が必要となる。その中で,列車の運転の負担を軽減するために自動運転装置が導入されるケースが多い。
 以前に比べ,“良い乗り心地”や省エネルギー等を加味した,より高度な運転操作を要求されるようになってきた。この要求を満たすために,複雑な操作手順を単純な判断,制御手順の組み合わせで表現したルールベース型のエキスバートシステムを自動運転に適用した。
 ルールベース型のエキスバートシステムでは,列車の走行状態を時系列に細分化し(走行モードとして分類),それぞれの走行状態の中で,すべての操作手順をIF(制御条件)THEN(制御手順)で表現し,ひとつひとつの操作が非常に単純化されている。このことにより,ベテラン運転士同様の複雑な運転操作が容易に実現でき,短期間でシステムを完成させることができるようになった。
 本報では,従来の制御と比較しながら,エキスパートシステムの考え方を述べるとともに,システム導入の効果について紹介する。


非製造業向けロボットの最新情報
(財)製造科学技術センターHRP推進室 濱田 彰一

(財)製造科学技術センターでは,下記の2つの非製造業向けロボットの開発プロジェクトに取り組んでいる。
(1) 原子力防災支援ロボットシステム
JCO事故が契機となり開発されたロボットシステムであり,人に代わって遠隔操作で防災対応作業を実施することができる。このシステムは災害や作業の状況を観察する「作業情報監視ロボット」2台,災害対応作業を行う「軽,中,重作業ロボット」3台及び「重量物運搬用ロボット」1台とそれぞれの遠隔操作装置で構成されており,原子力施設の狭隘な空間で,かつ,放射線量が高い災害現場で,ロボットが共同的に作業が行えるように設計されている。
原子力災害などは起こらないと思うが,万一の場合はこのようなロボットが駆けつけてくれれば安心である。
(2) 人間協調・共存型ロボットシステムの開発
2本足で歩くロボットシステムが,実用の場でどんな作業を行うかを研究しようと言うプロジェクトであり,平成10年度から2年間は「プラットフォーム」と呼ばれる研究基盤(ロボット本体と遠隔操縦装置)を製作し,その応用作業を行わせる研究は,平成12年度から3年間をかけて行う。
ロボット本体は,ヒューマノイドロボット(P3:ホンダ製)をベースに改良し,遠隔操縦装置は,あたかもロボットの中に人が入っているような高臨場感を持って操作ができるものを開発した。このロボットの応用作業開発は,「プラント保守」「対人サービス」「産業車両代行運転」「ビルホーム管理」「屋外共同作業」の5分野の,危険な作業や人に代わってロボットが出来るような作業を選んで行っている。
人と協調・共存できる夢のような人間型ロボットの実現を目指して,関係者一丸となって開発に取り組んでいる。


マイクロ波濃度計の使用経験
大昭和製紙竃{社工場 吉永事業所工務部動力課  望月 徹也               

 大昭和製紙竃{社工場吉永事業所は,循環型リサイクル工場を目指し,古紙利用を積極的に推進している工場である。古紙パルプ製造設備は,5プラントあり,洋紙系2系列の外に,板紙系が3系列ある。中でも,板紙系の段ボール用古紙処理設備(以下,RPD設備)は,生産能力増強のため,平成12年既設パルパー2台を日本最大級のパルパー1台(120m3)に更新すると共に,粗選工程等の集約工事を完了した。このRPD設備集約増強工事等においてマイクロ波式パルプ濃度計を11台導入した。
 既存回転式と比べ,配管への突起物が無いマイクロ波式の有利性が,テストにより確認でき,測定精度も同等かそれ以上であったから,異物や夾雑物の多い粗選工程でのパルプ濃度測定を含め,導入したマイクロ波式パルプ濃度計の使用経験について述べる。


パルプ濃度計のテスト結果
紙パルプ技術協会 自動化委員会
王子エンジニアリング株式会社 河田 克哉

今年度の自動化委員会の活動テーマとして,「計装の足元に位置する発信器,調節弁関係を今一度見直そう」との意見がだされ,「計装技術座談会」のテーマとして「調節弁の現状と将来を探る」と題し「調節弁」を,そして「計装技術発表会」として紙パルプ業界に無くてはならない「パルプ濃度計」をテーマに取り上げた。
紙パルプ業界で多く使用されているパルプ濃度計は,一般的に回転式,ブレード式,マイクロ波式,光学式の4種類に大別される。これらの濃度計6機種を同一配管に取付け同一条件のもとで6月12日〜15日の4日間に渡りテストを実施した。3種類(NUKP,LBKP,DIP)のパルプを使い,「濃度変化による測定」と「流速変化による測定」を実施し,合わせて「圧力変化による測定」と「填料添加による測定」も行った。その結果をまとめたので報告する。各種濃度計を同一条件のもとで比較テストをすることにより各種濃度計を十分理解できるとともに,更に各種濃度計の特性を知ることにより選定の目安になれば幸いであると考える。


DIP高配合化における品質管理計器の応用
日本製紙株式会社 釧路工場動力部計装課 大澤 進

最近の新聞用紙抄造では,DIPの配合が高まり,その品質管理が以前にも増して重要になっている。DIPの品質管理の指標として,第一に白色度があげられるが,その他に灰分や残インキも重要な要素である。しかしながら,灰分や残インキは,オンラインでの測定が困難なため,手分析による後追いの管理しかできないのが現状であった。
今回は,これらの測定をオンラインで行うため,カヤーニ製のリテンション計RMiと希釈装置である高濃度モジュールを利用した灰分測定,同社製の白色度計CORMECiの赤外光を利用した残インキ測定の結果を報告する。灰分測定については,サンプリング弁を制御することで3系統のDIP原料の測定を実施した。
何れの測定も品質管理の指標となる比較的良好な結果となったが,両測定器共に測定値を手分析値に合わせ込むタイプのため,DIP原料となる古紙やその処方の変化に注意が必要である。今後の古紙原料の多様化に伴い継続的に再校正が必要となるであろう。


新抄替制御の使用実績
王子エンジニアリング株式会社 米子事業部電気計装グループ 松下 俊二

王子製紙兜ト子工場では1M/C BM計を更新したが,その際に,自社開発のドライヤ抄替理論に横河電機が改良を加えた新しいドライヤ抄替制御を採用した。2000年5月よりこの新抄替制御のフィールドテストを行い,現在,十分の制御効果の向上が確認できている。
今回の新しい抄替制御と従来の制御との違いを述べ,制御結果を報告しながら,改良の経緯について述べる。
 また,合わせてCLPプロファイル制御も新しい制御を採用し,抄替後の製品入りまでの時間を短縮したので,それについても報告する。


フィールドバス導入の現状と課題
日本製紙株式会社 伏木工場工務部 松本 和彦

 「21世紀に向けた次世代の一革新技術」として,夢のようなコンセプトを持つFOUNDATIONフィールドバス(以下フィールドバスと記す)は世に発表されたが,国内においても1994年にフィールドバス協会が設立され,1996年付近からフィールドバス適用製品が各社から本格的にリリースされてきた。
 1999年度には世界の各所でフィールドバスシステムが実プラントで運転を始めたようであるが,弊社伏木工場においても,2000年10月に「N-DIP増産対策工事」が認可された時点で採用の有無を検討(増設プラント規模および融通性=高いレベルで適合,フィールドバス適用製品の充実度=PIDの制御機能をフィールドバス製品自体に搭載可能とセールスを受ける,DSCとの連携=ある程度のエンジニアリングがDSCから可能、他)し,今後の急速な発展も見越して採用を決断した。
 以後,技術教育,システム設計,エンジニアリング,フィールドテスト,あらゆるしミュレーション等を重ね,2001年4月13日に本システムを本格稼動させることができたので,現状と課題について報告する。


欠陥帳票システムの開発
三菱製紙株式会社 総合研究所 西山 和志

 1999年に欠陥帳票システムの開発を行い,同年に三菱製紙八戸工場5号塗抹機にシステムの導入を行った。欠陥帳票システムは,欠陥検出器が有する情報を利用し,オペレーター,スタッフが活用できる3つのツールを提供する。本報では,欠陥帳票システムの導入の経緯,システムの概要,およびツールの役割について報告する。
 既設の欠陥検出器が枠替え毎に出力する欠陥帳票は,欠陥の発生時刻順に並べて印字される時系列タイプの帳票であり,欠陥発生箇所を瞬時にイメージすることが難しい。そこで,オペレータは,縦軸を流れ方向,横軸を紙幅方向として,欠陥発生位置にマークを印字するマトリクスタイプの帳票を作成していた。枠替え毎に行うこの作業はオペレータに負荷がかかることから自動化が要望され,さらに帳票を用いて行う他の作業についても簡略化が望まれた。
 これらの要望を満たすために,欠陥帳票システムでは3つのツールを用意した。@帳票作成作業自動化を目的とする「マトリクス帳票作成ツール」,Aクレーム対応迅速化を目的とする「過去帳票検索ツール」,B欠陥発生状況の解析作業簡略化を目的とする「欠陥解析ツール」である。
 システム導入後は,マトリクス帳票作成作業は本システムに切り替えられ,オペレータの負担を軽減することができた。また,操業条件変更時の欠陥発生状況の変化を確認する場合にも,欠陥解析ツールが有効利用されている。


スマートバルブコントローラ(ND800)の使用実績
王子製紙株式会社 松本工場工務部 横山  裕

紙パルプ産業におけるDCSの設置台数は1990年をピークに順調に推移しており,今ではリプレースについて議論されるなど,DCS第二のピークを迎えると言われている。
一方フィールド計器は相変わらずの安売り合戦に没頭し先行きのみえない,地味な戦いを強いられている。特にコントロールバルブは操業上重要な立場にあるにもかかわらずバルブが正常に作動しているかどうかの判断がプロセス値の結果でしか判断できないなど相変わらず,計装保全担当者泣かせの手間のかかる機種となっている。
これといった変化のなかったコントロールバルブの世界でインテリジェント化と通信機能を搭載した電空ポジショナーが数年前から紹介され注目を集めていたが,この度松本工場でこのインテリジェントポジショナーと共にコントロールバルブの自動診断システムを導入したので紹介する。


ISO白色度及び色の試験方法
王子製紙株式会社 総合研究所分析センター 吉田 芳夫

白色度試験方法のJIS規格には,JIS P 8123「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」及びJIS P 8148:2001「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」がある。JIS P 8123は、1954年に制定,1961年に改正された規格で我が国ではなじみが深い試験方法である。しかし,国際的に見ると日本だけにしかない規格で,国際的な方法が必要との観点から,JIS P 8148:1993がISO 2470:1977をもとに制定され,ISO 2470:1977が1999年に改定されたのを受けて,JIS P 8148:1993も2001年9月に改正された。今後,この試験規格が紙パルプ業界に定着することが重要である。
色の試験方法のJIS規格は,P部門にはない。現在,紙パルプ技術術協会でISO 5631:2000 Paper and board - Determination of colour (c/2°) - Diffuse reflectance method のJIS化を検討している。
ここでは,ISO白色度の試験規格であるP 8148:2001の改定内容及び色の試験規格であるISO 5631:2000の概要について述べる。


新しいドライブ制御技術の考察
安川シーメンスオートメーション・ドライブ株式会社システム技術グループ 河村 美智雄

  近年,製紙設備におけるドライブは,インバータ技術やサーボ技術の急速な進展により,その適用範囲が拡大し,また適用方法も変化しつつある。
 汎用インバータによるファンやポンプ等の省エネルギードライブからベクトル制御インバータによる抄紙機,オフマシンコータ,ワインダ等の高精度,高性能ドライブ,サーボドライブを用いた高速高応答ポジショニング用途まで,可変速ドライブが幅広く適用されるようになってきた。このように可変速ドライブが設備・機械の機能,性能の向上,コストダウン,省エネルギーに貢献する一方で,低騒音への対応,電磁ノイズの低減,商用電源に対する高調波の抑制など環境に対する要求も強くなってきている。
本稿では製紙機械における新しいドライブ技術として,ドライブ間同期位相制御機能を搭載した高性能システムインバータ MASTERDRIVES MCによるシャフトレスドライブとその応用について述べる。次に世界で初めて汎用インバータに3レベルPWM制御を搭載し,400V級インバータの潜在問題,特に対環境性能を著しく改善したVARISPEED G7インバータドライブについて紹介する。また,当社の特長あるドライブ製品である中空シャフトACサーボドライブ並びにインバータモータ搭載ドライブについて紹介する。


現場での問題解決を提案する分離形スマート・ポジショナ〜 スマート・バルブ・ポジショナ AVP3000 Alphaplus 分離形 〜
山武産業システム株式会社 プロダクトマーケティング部 福田 稔

近年,スマート技術(フィールド機器にマイクロプロセッサを搭載し,従来の製品では実現できない性能・機能・安定性を実現する技術)を取り入れたポジショナが浸透しつつある。今回は,このスマート技術を最大限に活用し,現場での問題を解決できるスマート・バルブ・ポジショナ AVP3000 Alphaplus 分離形を開発したので,その主用技術と特長を述べる。
AVP3000 Alphaplus分離形(以下:分離形AVP)とは,フィードバック機構である開度検出部のみをバルブに組付け,可動部を持っているポジショナ本体をバルブから分離することのできるスマート式の電/空ポジショナである。バルブ開度のフィードバックを開度センサにより電気的に行っているので,開度検出部とポジショナ本体は,ケーブルで接続され,現場でフレキシブルな対応が可能になる。
分離形AVPの特長は,大きく以下の3つがある。
1) 振動特性の向上
ポジショナ内部の可動部(ノズル・フラッパ,パイロットリレー)をバルブから分離することで,バルブに組付いている開度検出部の振動特性は,従来の機械式電/空ポジショナの約5倍である加速度98m/s2(10G),周波数 〜2000Hzを実現している。
2) 高所・狭所にあるバルブのメンテナンス改善
高いところ,狭いところに設置されているバルブのメンテナンス作業を行う場合,作業のやりにくさとともに,危険性を伴うことがある。分離形AVPのポジショナ本体を作業しやすい場所に設置することで,簡単に安全に作業ができるようになる。
3) 電/空変換器+空/空ポジショナの簡単な更新
電/空変換器+空/空ポジショナの計装を電/空ポジショナに更新することで,計装品が2台から1台になり,保守・管理コストの削減が可能となり,さらには,空気消費量も1/3に削減できる。ただし,電/空ポジショナに更新する場合,空/空ポジショナの振動特性を満足できないことと,入力信号の延長電線工事が発生することから更新に難色を示していることがある。分離形AVPであれば,これらの課題を一気に解決できるので,更新が簡単に行える。


低質セルロース資源からの高性能吸水剤の開発(3)―吸水剤の性質と構造―
東京大学大学院 農学生命科学研究科 肖 月華, 飯塚 堯介 

広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を出発物質とし,そのカルボキシメチル化(CA化)およびポリエチレングリコ−ル・ジ・グリシジルエ−テル(PEGDGE)を用いた架橋によって前報に引き続き高性能吸水剤の開発を試みている。CA化段後に生成物を単離・洗浄したのち,架橋反応行ったところ,CA化反応系に直接架橋剤を添加した前報に比較して吸水性能を改善することができた。架橋反応のアルカリ触媒の添加量を適切に設定することによって,架橋CA・LBKPの純水に対するな保水値は670(g/g)に達した。また,0.9%食塩水中での保水値も64(g/g)を示した。架橋剤のポリエチレングリコ−ル鎖の鎖長n=4または9のものは,n=1および2のものに比較して反応性は低いものの,架橋反応生成物はより大きな保水値を示した。このことはより粗い架橋構造の生成を示している。CA化度と保水値の関係では,D.S.1.42以下の範囲で,D.S.が上昇するにしたがって保水値も増大することが明らかとなった。