2002年2月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2002年2月 

第56巻 第2号(通巻第611号) 和文概要


高パワー密度非接触式ドライヤー“ユニドライヤー”
ソラロニクスIRT社 営業部長 G.ケナード 株式会社マツボー 製紙機械課 大塚 進司   

 ガス赤外線ドライヤー及び電気式赤外線ドライヤーのリーディングメーカーである。ソラロニクスIRT社(フランス)は,3年前のこのセミナーにおいて既に,ユニドライヤーを紹介した。当時はまだコンセプトの段階であったが,今日では,既に16台のシステムが稼動している。6台の代表的なシステムを紹介し,その結果から得られたユニドライヤーの利点を説明する。
新しいコーター用として,ユニドライヤーはつぎのようなの利点を持つ。
・フレキシビリティーがあり,紙幅方向の水分プロファイルを行なうことができる。
・非常にコンパクトである(約50%のスペースが減少できる)。
・赤外線ドライヤーとエアードライヤーを組み合わせて使用するよりも安い。
・エネルギー効率が非常に高い(63%)ので,ランニングコストを押さえることができる。メータリングサイズプレス後の使用では,つぎの利点もまた得ることができる。
・カラーによるアフターシリンダードライヤーの汚れ防止。
・シートの走行安定性及び紙のしわを押さえる効果がある。
・紙面温度をコントロールできる。
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最新のエアーフローテーション乾燥技術
スプーナー社(英国) ロバート クランプトン  株式会社マツボー 製紙機械課 大塚 進司

 スプーナー社(英国)は,70年前に設立された。設立当時,強制的なエアー対流式乾燥装置の完全なオリジナルパテントを持っていた。その後今日に至るまで,紙及び板紙用の乾燥装置及び冷却装置の技術を常にリードして来ている。
 MGフード,非接触式エアーフローテーションドライヤー,高性能コンパクトドライヤー(HPCドライヤー)及びエアーターンに続いて,最新の乾燥技術を使用したモジュールドライヤーを開発し立ち上げた。
 今回は,スプーナー社フローテーションノズル,HPCドライヤー,モジュールドライヤーの順に説明する。
 モジュールドライヤーの必要性を説明するために,従来のコーティングライン及びその欠点を説明した後,モジュールドライヤーのコンセプト及びその利点,オンマシーン及びオフマシーン用のコンセプトを説明する。モジュールドライヤーの鍵を握る非常に重要な装置は,RECAT(エアー循環式エアーターン)である。
 Voith社Heidenheimのパイロットコーター用にモジュールドライヤーを設置し,赤外線ドライヤーもその乾燥の1部として使用したトライアルの結果及び品質,特にプリントモットリングへの影響も既に調査し,モジュールドライヤーが実機で使用できることを確認した。最後に,Arjo Wiggins Virginal及びUPM Kymmene Kaukasで稼動しているモジュールドライヤーのケーススタディを紹介する。
(本文7ページ)


めっき被覆した長寿命コーターブレード
株式会社野村鍍金 大阪工場生産技術係 岸 洋文  

 当社は,1916年以来,表面処理業を営みはじめ今日に至っているが,その間に培われた技術を基盤に,1988年から製紙業界の抱えるテーマ,“コーターブレードの長寿命化”に着手し,「長寿命クロム被覆コーターブレード」を開発した。実用化に到るまで,めっきの他,溶射,イオンプレーティング,イオン注入など,各種の表面処理法を検討した結果,従来のクロムめっきを改良した被膜が最も耐磨耗性に優れていることを見出した。ところが,コーターブレードは,表面被覆材による耐磨耗性の改善のみで実使用に耐えるものではなく,長期追跡調査の結果,刃先精度が塗工精度に密接に関連のあることが判明した。長寿命を得るための条件として,一般にはブレード先端精度,つまりキャンバーや被覆材を含めた板厚精度の向上のみならず,コーターの型式に見合った被覆材(この場合ではクロムめっき)のプロファイルが重要であることを見出した。すなわち,適正なめっき厚さとコーターヘッドの型式に適合しためっきプロファイルとすることによって,少なくともSK材の3倍かそれ以上の長寿命を得ることが明らかとなった。当ブレードを使用されているユーザーの声として,長寿命であることによってブレードの交換頻度の減少による操業性の改善,ロールへのブレードなじみ時間の短縮および,ブレードを交換する度に生じる損紙量が減少した。あるいは,硬度の高いもので塗工するので紙質が改善されたとも聞いている。この成果に満足せずユーザーと一体になってどの様な塗工紙種やマシーン幅にも適用できるよう今後一層の品質改善に取り組んで行く所存である。
(本文15ページ)


最新の塗工量測定・制御技術について
横河電機株式会社 システム事業部P & Wシステム部 峯尾 知宏  

 カラー出版物や家庭用プリンタの普及などにより,塗工紙の生産はこの10年で30%を超える伸びを見せている。さらにこれらの印刷技術のめざましい進歩につれ,塗工紙には用途に応じた多彩な品種と,安定した高い品質が求められるようになった。一方,東南アジア等の海外からの塗工紙の市場参入によって価格競争も激しさを増してきている。
 発売以来すでに数多くの納入実績を持つ当社のB/M9000CSシステムでは,最新・最先端の塗工量測定・制御技術を通じて,オフマシンコータにおける操業の多くの課題に対するSolutionを提供している。
 塗工機に応じた,高精度・高速応答の塗工量測定技術として,「BD差分方式」,「XW差分方式」,「CW計直接方式」の3種類の測定方法と,原紙の変動等を除去し多用な操業形態に対応可能な測定機能を紹介する。それぞれが持つ特徴を生かして塗工量の測定精度を高めることが可能である。
 塗工量幅方向アクチュエータは幅方向に均一な塗工を実現するために必要不可欠な装置であり,現場での操業のノウハウを凝縮した当社オリジナルの最先端プロファイル制御技術と組合せることにより,高品質化や生産コストの低減に大きく貢献できる。
 本報では,B/M9000CSで実現されているこれらの塗工量測定・制御の機能およびその技術的ポイントについて解説し,併せてこれらの最新技術を組み合わせて大幅な生産性向上と品質改善が得られた実施例を紹介する。
(本文23ページ)


カレンダー工程での厚み・光沢度制御技術
ハネウエル株式会社 営業技術部 小島 幹郎  

 スーパーカレンダーに代表される仕上げ工程での厚み,光沢度の最適化はユーザー各位の重要課題であり,その必要性はますます高まってきている。従来,我々はスーパーカレンダーでの光沢度の最適化,あるいはラインスピード上昇等の目的の為に飽和蒸気を用いたグロストロールあるいはキャレンダイザーといったアクチュエータをご紹介させて頂いていたが,近年スーパーカレンダーでの制御アクチュエータとして電磁誘導加熱型アクチュエーターキャルコイルCWを使用し,光沢度と厚みの最適化,ラインスピードの上昇による生産性向上などの成果をあげている。
 本報では,キャルコイルCWのパフォーマンスを復習し,スーパーカレンダーにおける応用と結果について報告した。
(本文30ページ)


コータにおける最新の検査装置
オムロン株式会社 ビジョンシステム事業部生産管理部シートグループ 遠藤 誠  

 コータマシンでは,抄紙マシンと違った特徴ある欠陥が発生する。当社では,検査装置メーカに先駆けて1985年にコータマシンで発生する欠陥検出を目的にストリーク検査装置を開発した。従来のスポット検査装置では,検出できない欠陥を専用の検出アルゴを使用しユーザの品質要求に答えてきた商品である。
 2001年NASP検査装置の開発完了にともないストリーク検査装置も一新することができた。NASP検査装置では,ストリーク欠陥検出のみならずスポット欠陥も検出可能とした商品である。従来コータで発生するストリーク欠陥画像も表示できるようにし将来性のある拡張機能を考慮した装置構成とした商品である。オフラインコータマシンのみならずオンラインコータマシンでも十分機能するスペックを有している。今回この最新のNASPストリーク検査装置をここに紹介する。
(本文36ページ)


32号コーターの操業経験
大昭和製紙株式会社 白老工場製紙部 臼井成一郎  

 大昭和製紙 株著V工場の32号コーターはA2コート紙の生産を目的に,平成8年5月に営業運転を開始した。32号コーターは最大塗工幅6590mm,設計最大速度1,100m/minの4ヘッドオフマシンコーターであり,コーターヘッドにはバリドゥエルタイプのジェットファウンテンを採用し,ブレードによるダブル塗工が可能となっている。これらの最新技術の導入により,生産性が高く,高品質のコート紙が製造でき,当社の主力製品として品質面でも高い評価を頂いている。稼動後約5年が経過し,様々なトラブルはあったものの,現在は順調に操業しており,当初の計画以上の生産を達成している。
 本報では,これまでの操業で得たコーターマシンの操業経験を中心に報告する。
(本文45ページ)


No.3コーターの操業経験
王子製紙株式会社 春日井工場 東海林節夫,高橋 茂  

 春日井工場の10マシン・3コーターは塗工紙の安定供給を図るため,当時の最新鋭技術を導入した大型高速設備として1991年2月に営業生産を開始した。本報では設置後から現在までに経験した様々な問題とその対応について紹介する。
 稼動から早11年が経過しているが,様々な問題点についてはその都度対応してきた結果現在では安定した操業を継続している。ダブルコーターの難しさも経験したが,シングルコーターにはない優位性も見出してきた。今後,益々多様化するニーズに適切に且つスピーディーに対応してゆくために,ダブルコーターの特徴を最大限発現させ,お客様に満足して頂ける紙の安定供給の使命を果たしたい。
 1) 基本仕様:ブレードコーター2段塗工方式,塗工速度1,500m/分塗工幅5,600mm
 2) アンワインド:スプライスのポイントを押さえることで99%以上の成功率達成。
@速度同調,A貼付けロールの硬度,Bショックアブソーバーの機能,Cスプライス前の紙の煽り,Dスプライス後の紙の飛散
 3) 下塗り・上塗り:ショートドゥエル方式(下塗り)ファウンテン方式(上塗り)
  塗工方式の違いによる特徴及び問題点への対応。下塗り・上塗り双方のCDプロファイル制御装置導入による塗工量制御の効果。
 4) リール:厚物のテープ枠替装置導入による枠替の安定化と今後の課題。
(本文51ページ)


紙パ特許委員会の特許情報サービス活動について―特許電子図書館(IPDL)の活用―
紙パルプ技術協会特許委員会 紀州製紙株式会社 藤田 敏宏  

 紙パルプ技術協会特許委員会では,古くから紙パルプ技術に関する特許情報のサービス活動を実施してきた。その活動内容は,独自の特許公報分類の策定,特許公報抄録の分類,分類した資料の提供,特許セミナーの企画・開催及びその他啓蒙活動である。
 これらの活動は,紙パ業界の技術者への有用な技術情報の提供を目的としており,これらの技術情報の共有化という観点から行っている。
 今回の年次大会では,展示会場において紙パ特許委員会のブースを設置し,特許庁のホームページ上の特許電子図書館(IPDL)を利用して,特許情報を簡易に検索する方法を紹介している。
(本文54ページ)


KP操業技術アンケート調査結果(その3)―薬品回収工程(黒液濃縮,回収ボイラ,苛性化,石灰焼成)―
パルプ技術委員会 王子製紙株式会社 土谷 慶一  日本製紙株式会社 山田 英継  大昭和製紙株式会社 細谷 年  

 パルプ技術委員会では,紙パルプ業界内での技術の提供および共有を目的に98年度には,KP製造工場における未晒,晒工程に関するアンケート調査を実施した。今回はこれに引き続き99年度(’99年4月〜’00年3月)のKP工場の薬品回収工程の操業状況についてアンケート調査を実施した。
 アンケートは国内34KP工場に対して実施し,未回答1工場を除く33工場から得られた結果を取りまとめたので,ここに報告する。薬品回収工程では,黒液濃縮,回収ボイラ,苛性化および石灰焼成に関するアンケート調査結果について取りまとめた。
(本文59ページ)


リサイクルにおける繊維の角質化が繊維交点の潜在結合力に及ぼす影響―共焦点型レーザー走査顕微鏡を用いて―
東京大学大学院 農学生命研究科生物材料科学専攻製紙科学研究室 カンタヤーヌウオン ソムワン,  江前 敏晴,尾鍋 史彦  

 広葉樹クラフトパルプから調製した手すき紙に,リサイクル処理をモデル化した熱処理を施し,リサイクルを行った。4回のリサイクルによって密度は0.67から0.51g/cm3に,比引張り強さは46.3から12.9Nm/gにそれぞれ低下した。リサイクル手すき紙の全体的な結合強度の低下と関係のある微細繊維量の減少と繊維の角質化は,密度と引張強さの低下に影響を及ぼす要素になっていると考えられるため,それらの挙動を調べた。共焦点型レーザー走査顕微鏡(CLSM)を用いた観察によって,微細繊維が繊維表面を覆ったり,繊維間結合部の周囲を埋めたりすることによって紙力を向上させる役割を果たしている可能性が示された。広葉樹クラフトパルプ繊維の断面のCLSM写真は,角質化が起これば湿潤状態での繊維の再膨潤が妨げられることを明らかに示していた。その結果,手すき紙のリサイクルのどの段階においても角質化は紙層形成過程の繊維の柔軟性低下に大きな影響を及ぼしていた。リサイクル繊維は膨潤性と柔軟性に劣るため,リサイクル手すき紙では十分な繊維間の接触がないということもCLSM写真ははっきりと示していた。手すき紙のリサイクルでは,十分な微細繊維量の減少は検出されなかったことから,非結合面積の増加は,再湿潤リサイクル繊維の再膨潤能力又は柔軟性の低下に因ることが示唆された。CLSM観察でも,リサイクル手すき紙の強度低下は明らかに繊維交点の非結合面積の増加に起因するものであることがわかった。
(本文79ページ)


多品種生産に対応した抄紙機ワイヤーパートのリテンション制御
 王子製紙株式会社 製紙技術研究所 森 芳立  同 春日井工場 第二抄造部 加来 正年 
 同 春日井工場 パルプ部 末田龍三郎 同 春日井工場 施設部計装システム課 水野 昭夫
 同 春日井工場 施設部計装システム課 飯尾 博明
 王子エンジニアリング株式会社 春日井エンジニアリング部 山田 訓雄  

 抄紙機のワイヤーパートの原料歩留りを歩留向上剤の薬品添加によりコントロールするリテンション(歩留り)制御を実機に導入した。供給原料と白水の両ラインに特殊センサーである低濃度計(カヤーニ社製:RM―200M)を設置して,トータル,パルプ,灰分の各濃度と各リテンション値のプロセス状態をモニターすると共に,白水濃度を一定に保つようにリテンション制御を試みた。リテンション制御にはコントローラーとしてギャップ付きPI制御(比例積分制御:proportional plus integral control)を用いた。
 また,本抄紙機では多品種生産を行なっており頻繁にプロセス状態が切替わるためリテンション制御時の白水濃度の目標値(SV値:set value)を決めづらい。そのためプロセスの安定性を自動的に判別し,自ら目標とする白水濃度のSV値を決めて制御を実行していく機能をシーケンス機能で組み込み,連続操業の中でもリテンション制御を良好に実行して行ける見通しを得た。
(本文86ページ)