2001年7月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2001年7月

第55巻 第7号(通巻第604号) 和文概要

国内外のパルプ資源の現状
日本製紙運合会林材部 宮部 潔

 我が国紙・パルプ産業は,戦後日本経済の発展に伴い,成長を続けてきており,紙・板紙の生産量は一2000年において31,800千tに達し,その生産量は世界第2位になっている。そしてその生産を支えているのがパルプと古紙である。
古紙の利用については,現在(2000年)利用率が57%に達している。この利用率は1990年に50%を超えて以降年々増加を続けていて,5年後には利用率60%を目指している。
 一方,パルプ利用については輸入パルプの消費比率は若干減少気味であるが概ね横這いで推移しており,その分パルプ材の消費比率が減少を続けている。パルプ材全体では消費は滅少しているがその要因は国産材であり,外材については消費比率は僅かながら増加している。1989年国産材と外材の比率が逆転して以来その差は広がっており,2000年においては外材の比率は70%に達している。また,海外からの調達については,日本企業による産業植林が活発に行われている。海外産業植林は1990年以降本格的に実施され,これに伴うチップの日本への輸入はこれから本格化することとなり,外材の輸入比率は更に進むものとなろう。本報では国内外のパルプ資源の現状を概観する。
(本文3ぺ一ジ)

世界の森林認証制度の概要と現状
住友林業株式会社理事 小林 紀之

 森林認証制度が欧米を中心に世界で普及し始めている。国際的な制度としてはIS014001森林分野の認証とFSC(森林管理評議会)の認証制度がある。米国,カナダ,フィンランド,英国では国内認証制度が普及し始めている。本稿では,森林認証制度の世界の現状を紹介し,日本での普及への課題を論ずる。
(本文13ペぺ一ジ)

植林技術の現状と将来−パルプ材としてのユーカリとアカシア−
日本製紙株式会社技術研究所森林資源研究室 小島 鋭士

 近い将来には,パルプ材の分野においても遺伝子組み換え植物が実用化され,優れたパルプを高収率で与える早期生長個体の利用が始まるかも知れない。このような夢に繋がる高度技術も,遺伝子導入した細胞を植物体へと再生し培養増殖させる技術へのリンクが必須である。比較的新しい組織培養法も,挿し木・接ぎ木・取り木などの古来からの栄養繁殖技術との連係において,より大きな力が発揮できる。
 苗畑での育苗技術の優劣は植栽樹の初期生長を左右し,林地においては生産性の高い森林を形成するために,数々の造林技術・知識・経験が要求される。何れの技術も単独では存在できず,他の諸技術と連関して初めて,重要で意味有るものとなることを理解したい。本稿では,近年事業植林の進むユーカリとアカシアの事例をもとに,植林関連技術について考察する。
(本文19ペ一ジ)

古紙資源の現状と将来展望...
財団法人古紙再生促進センター専務理事 高柳 晴夫

 日本の紙リサイクルは古く平安時代(西暦794〜1185)から始まる。日本の古紙利用率は世界の中でも高いレベルにある。2000年度古紙利用率56%目標は1年前に達成され,新たな古紙利用率目標が2005年度60%とすることが日本製紙連合会で決定され,経済産業省令でも近く60%目標で制定される見通しである。
この古紙利用率向上に対して,現状を踏まえ将来に向けてどうなるか,どうあるべきか,種々検討したので報告する。
(本文34ペ一ジ)

非木材資源の現状と可能性
元大蔵省印刷局研究所長 森本 正和

  非木材パルプは1998年の生産量が世界で生産される全パルプの約11%を占め,中国は生産量1位で,米国に次ぐ紙・板紙生産量の大部分を非木材で賄っており,米国の生産量は世界3位,日本は輸入量で3位である。製紙産業では,地球環境に配慮しながら紙・板紙の需要増に対処できる製紙用資源として早生植物の木材ではユーカリ,アカシア,非木材ではケナフの大量育成に注目している。したがって,まず王子製紙及び米国農務省が実施した研究結果に基づくケナフの年間収穫量とユーカリの年間生長量の公表値を紹介して,これらが環境配慮型植物であることを示し,次に筆者がアバカ(マニラ麻)のパルプ化に応用して既に工業化されて久しい中性亜硫酸ソーダ法が,パルプ収率,未晒白色度,強度が高くて,悪臭がなく,排液中の熱量と薬品回収ができる環境配慮型蒸解法として,ケナフ,わら,黄麻等の非木材原料だけでなく,針葉樹材にも利用できることを紹介し,クラフト法のようにカルシウムを使用せずに回収薬品を転化して蒸解薬品の中性亜硫酸ソーダと炭酸ソーダを得る方法も開発されているので,その原理を解説した。
(本文49ペ一ジ)

木材,非木材,古紙パルプと環境影響−ライフサイクルアセスメントによる評価−
三菱製紙株式会社経営企画部 桂 徹

 海外における非木材パルプを配合した紙のライフサイクル・アセスメント(LCA),及び三菱製紙鰍ノおいて試みた非木材パルプあるいは古紙パルプ配合した上質紙のライフサイクル・インベントリー分析(LCI)について紹介し,パルプの種類による環境影響の違いを明らかにすることを試みた。これらの結果から,非木材パルプより木材パルプの方が環境負荷(CO、排出量や固形廃棄物量で代表される)は若干少ないことが示唆された。木材と非木材を資源として比較する場合,十地の利用形態,生育期問,農産廃棄物利用の可否等を考慮する必要があるが,その点をインベントリー分析に十分反映することは難しい。
 古紙パルプは劣化した再生繊維,非木材パルプは新しい繊維であり,特性が異なるため単純に比較できないが,化石燃料由来のCO、排出量は古紙パルプの方が多い,SO。排出量は非木材パルプの方が多いとの結果であり,重要と考える環境影響により評価が異なる。資源有効利用の観点からは古紙パルプが,農産廃棄物利用の観点からは非木材パルプが優れており,状況に応じて木材パルプを代替,補完する形で利用することが好ましい。
(本文64ペ一ジ)

二酸化塩素製造設備の選定
日本カーリット株式会社 富沢 満

 ECF漂白では二酸化塩素が主力薬品であり,二酸化塩素製造コスト低減のためにどの様な設備を選択するが重要である。海外ではECF漂白が急速に伸びるに従い,二酸化塩素製造設備として無排液,無塩素プロセスが主流となってきた。海外同様,国内でもECFへの転換時には無排液,無塩素プロセスが主流になると想定されたが,必ずしもそのような状況でない。国内では蒸解技術の向上,酸素晒の普及,さらにはオゾン使用などにより大量の二酸化塩素を必要としないケースも考えられる。無排液,無塩素プロセスは大量の二酸化塩素製造に適した設備であるが,日本の事情を考慮するとR2P法が有利となる可能性もある。
(本文7ペ一ジ)

大判カッターにおけるノンリジェクトシステム−新しいエアーギャップ方式によるスタック・チェンジ−
株式会社丸石製作所設計部 稲葉 進

 株式会社丸石製作所はフルシンクロカッターで世界的に有名なドイツ,ビロマティック社と技術提携をしており,既に国内外へ23台を納入している。ビロマティック社ではこの程,スタック交換の中断がないノンストップシーターを開発して特許申請を完了した。今までシングルオーバーラップのマシンにおいて,スタックチェンジをするためにはシングルもしくはダブルパイラーであれ,シート問のすき間を開けるために数カットのシートをリジェクトする必要があった。このリジェクトを回避するために様々な方式が用いられたが,ダブルオーバーラップにする以外どの方式においてもシートヘのキズの発生,摘み取り荷姿の歪み,低生産性等の問題があり最良とは言い難い現状にある。そこで,ビロマティック社では研究開発の結果,全く新しいシステムを構築し,これを商品化した。
それはシングルオーバーラップ機構において,コンベヤーラインをNo.1とNo.2コンベヤーとに分け,No.2コンベヤー部にもサクションボックスを設けてシートを分離する方法である。
(本文77ぺ一ジ)

高速フォーマヘの新型脱水エレメントの適用
三菱重工業株式会杜広島研究所 岩田 弘,後藤 大輔
紙・印刷機械事業部 松本 正信

 抄紙機の高速化は,世界的トレンドで急速に進展し,すでに設計抄速が2,000m/min.台に到達してきた。これには,現状の高い生産効率を維持した状態での高速化による生産性の確保と,エンドユーザの要求する品質を作り込める制御性と安定性による高い品質を両立させる事が要求されている。このような製紙業界の要求に答えるべく,各製紙機械メーカは新しい技術を投入している。特に抄造品質を決定する重要なパートであるフォーマ部では,高速運転条件下で安定した紙品質を確保できるギャップ型ツインワイヤフォーマが多用されてきている。
 当社では,広範な要素研究に基づいて,原料ジェットのワイヤヘの着地調整の容易なロール脱水と繊維分散能力の高いブレード脱水の各長所を融合した固定脱水ブレードに,原料ジェットを着地させ両面同時脱水を行うことにより,高い繊維分散能力を持ち原料ジェット着地調整が容易な新しい脱水エレメントの開発を行った。本報では,ツインワイヤフォーマに用いられる脱水エレメントで発生する脱水圧カプロファイルに基づく,圧力発生メカニズムからの脱水能力と繊維分散能力に着目した脱水エレメントの機能分析と,上述の新型脱水エレメントによるパイロットテスト結果を中心に紹介する。
(本文81ぺ一ジ)

紙中のロジンサイズ剤の分布に関する研究(第1報)
−アラム添加によるSEM,TOF-SIMS及びESCAからの表層パラメータの変化による検討−
財務省印刷局研究所 尾崎 靖
東京農工大学農学部 佐渡 篤

 ロジン無添加の状態でアラムの添加量を変えて得た手すきシートをエマルション型ロジンの希薄な水溶液に浸漬し,再度乾燥させた手すきシートの表面について,走脊型電子顕微鏡(SEM),飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS),X線光電子分光法(ESCA)及び接触角法のデータを検討し,シート中におけるロジンとアラムの分布の実態について考察を行った。SEMによる二次電子像観察結果とTOF-SIMSによるロジンに関するフラグメントイオンのイメージング結果は異なっていた。そして,ロジンのシート表面における分布状態はSEM単独では把握しきれない場合があることが判った。このことは,手すきシートを加熱溶融した場合に特に顕著であった。ESCAによる相対強度(C15/OIS)の値により,パルプ繊維壁内部においてはパルプ繊維表層と比べてロジン濃度が小さいことが判った。また,相対強度(A12P/CIS)の値により,ロジン水溶液に浸漬することによりアルミニウムが緒果として手すきシート表而での濃度を大きく増加させることが判った。手すきシート表面におけるロジンの表面被覆率が増加するに従って接触角が高くなった。また,ロジンの表面被覆率と水の接触角の関係は乾燥方法の如何によらず,類似した傾向を示した。手すきシートのロジンの表面被覆率の大小は接触角の変化と強い相関を示した。
(本文91ぺ一ジ)

熱分解過程におけるシガレット用巻紙の研究(第3報)−シガレット用巻紙の加熱による収縮と表面変化−
日本たばこ産業株式会社たばこ中央研究所 花田 淳成
東京大学大学院農学生命科学研究科 尾鍋 史彦

 第2報において,熱による紙層構造変化の検討を目的として,熱による巻紙の熱的変化を計測するシステムを用いて,加熱処理巻紙の紙層構造および,細孔比表面積を測定した。その結果,巻紙の加熱処理に伴う脱水や残留応力によりネットワーク構造が変化し,パルプの熱分解に伴う繊維の収縮により紙層構造が変化すること,特にパルプの熱分解が著しい270〜350℃の範囲における紙層構造の変化が著しいことが明らかになった。
  熱分解に伴う巻紙物性や紙層構造の変化は,熱による巻紙の収縮挙動として現れることが予測され,シガレット用巻紙の開発においても,熱による巻紙の収縮挙動の把握は重要と考えられる。また,加熱による巻紙の変形は,表面性状の変化として現れることも予測される。そこで,本研究では熱による巻紙の熱的変化を計測するシステムに,熱機械特性(Thermomechani-ca1ana1ysis:TMA)を導入し,熱重量測定(Thermogravimetry:TG),示差熱分析(Differentia1ther-ma1ana1ysis:DTA)の熱分析測定結果を併せて検討を行い,併せて,加熱処理を行った巻紙表面を観察した。さらに,製品シガレット用巻紙に塗布される有機酸塩が,巻紙の熱収縮挙動に与える影響についても検討を行った。
 以上の検討より次に示す結果を得た。巻紙は常温から100℃の範囲で加熱温度の上昇に伴い収縮し,200℃から300℃の範囲で膨張し,300℃以上の温度で急激に収縮する。巻紙の有機酸塩塗布量の増加に伴い,300℃付近のTMAの収縮開始温度は低下し,収縮の変化が緩やかになる。また,320℃における収縮率は,有機酸塩塗布量4.2%までは増加し,8.3%では低下する。巻紙の加熱に伴い,巻紙の表面は320℃付近で外部フィブリルの変質と繊維間空隙の増加が開始し,さらに高い温度領域で,繊維の幅方向の収縮と,繊維間の空隙の増加と繊維表面やフィブリルの著しい分解が生じる。
(本文100ペ一ジ)