2001年5月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2001年5月第55巻

第55巻 第5号(通巻第602号) 和文概要

第7回エネルギー実態調査報告(その1)
紙パルプ技術協会エネルギー委員会

 紙パルプ技術協会エネルギー委員会では,1998年度のエネルギー使用の実態調査を行うため国内の:要工場にアンケート票を送り,92工場から回答を得た。これは,全生産の89・6%,全板紙生産の76・2%・全パルプ生産の94.8%をカバーしている。同様な調査が1987年にも行われており,両者を比較することにより,業界のエネルギー削減に対する努力が明らかになった。
その1では,種類別エネルギー消費量,エネルギー変換効率,各種パルプ生産における蒸気及び電力原単位等を要約する。
(本文3ぺ一ジ)

ワイドレンジバーナーを利用した省エネルギー
日本製紙株式会社石巻工場動力部 手賀 秀一

 石巻工場には,1972年に運転を開始した重油ボイラー(以下6号ボイラーという)があり,現在も常用缶として操業している。6号ボイラーには,総数6本の重油バーナーが設置されており,工場負荷に追従して負荷調整を行っている・当時・使用していたバーナーチップは内部混合型であった・内部混合型のチップは,重油とアシスト蒸気が混合する際に圧力損失が発生するため比較的アシスト蒸気の使用量が多かった。そこで,圧力損失が少ない中問混合型のバーナーチップを採用し,省蒸気を図った。また,6号ボイラーは全負荷調整範囲を重油バーナー6本で運転できないため,当時はバーナー本数制御を行っていた。その際,監視業務やメンテナンス業務に関する操業上の問題が発生していた。同チップのその他の効果として,ターンダウンの拡大効果が高いため,本数制御の廃止を検討した。その緒果,本数制御が皆無となり,バーナー6本使用による連続運転が可能となった。
 本稿では,バーナーチップの更新により達成された省蒸気と,その特性を生かして実現した操業性改善項目について報告する。その他の付帯効果として,ボイラー排ガスNOxが低減されたため,併せて米報告する。
(本文22ぺ一ジ)

O2低減バーナーの導入
王子製紙株式会社富士工場 早坂 勝紀

 王子製紙富十工場は富士山麓の豊富な地下水と,名古屋,東京などの大消費地に近いという恵まれた環境の中にあり,新聞古紙,ミルクカートンなど幅広い古紙を原料に白板紙,再生紙を生産している。これらを支える動力設備としてボイラー3缶,タービン3基の総発電電力100MWの発電所を有している。
今回紹介する3号ボイラは蒸気圧力9.8MPa,蒸発量70t/hのC重油専焼水管ボイラで,1990年より稼動している。このボイラは,煤塵の発生を抑えるためにボイラ出口の排ガス酸素濃度をやや高めに設定していた。
また,蒸気負荷変動が大きくバーナーの点火,消火が頻繁に行われてきた。そこで低酸素運転の実現とターンダウンの改善による点火,消火回数の低減を目指して,新たなバーナーチップを導入し,これらを改善する事を試みた。本バーナーの導入に至るテスト経過とその結果について紹介する。
(本文26ぺ一ジ)

マイクロガスタービンの開発と運転−排気再燃蒸気回収パッケージ−
株式会祉タクママイクロタービン事業部技術部 柴田 聡,井上 梅夫
設備機械本部技術一課 阿部博文,田中 俊彦

 タクマTCP30マイクロタービン・コージェネレーション・パッケージは,Capstone杜製28kWマイクロガスタービン発電機を組み込んだコージェネレーション・パッケージである。マイクロタービンはガスエンジン等のレシプロエンジンと比較して小型軽量,高効率,低環境負荷,低コスト,無振動,ノーメンテナンスと数多くの特徴を持ち合わせており,また,タクマのエコノマイザ付排気再燃蒸気ボイラで排熱回収を行っている。パッケージは,エンジン本体,ガス圧縮機,制御・電力変換装置のマイクロタービン機器と排熱回収装置,制御装置,その他附帯設備から成立っており,超高速発電システム特有の騒音低減と電子機器からの排熱の効果的な除去という二律背反する面を,コンパクト化されたパッケージ内で両立させている。
 26kW電力(有効電力)と蒸発量600kg/h(換算蒸発量7!2kg/h)の蒸気を出力し,システム効率93%の高効率コージェネパッケージとなっている。システムの高効率化によって従来の方式(電力需要は買電,蒸気需要はボイラによる供給)と比較して約20%の省エネルギーと約25%のCO2削減が実現するとともに,ユーザ側の大幅なランニングコスト削減が可能であり,蒸気需要の多いホテル,スポーツクラブ,銭湯,病院,工場等の施設を対象として急速な普及が期待される。
(本文30ぺ一ジ)

M501G升多ガスタービンの技術的特徴と運転実績
三菱重工業株式会社原動機事業本部 福泉 靖史

 地球環境保全の観点から,火力発電では熱効率の高いコンバインドサイクル発電が最も適していると考えられている。このような環境下で,三菱重工業は燃焼温度1,200℃級のM701D及び1,400℃級のM501F/M701Fガスタービンを開発してきた。一方,コンバインドサイクルの熱効率が,サイクル燃焼温度に依存することから,三菱重工業は更に高い1,500℃級のM501G/M701Gガスタービンを新たに開発した。
M501Gの開発は1990年の初頭よりラ以下のような概念で開始された。
第1に実績あるFシリーズの特徴を踏襲する。第2に最新の空力・冷却・材料の技術を適用する。
第3に三菱重工業が発電用ヘビーデューティー機として検証を積んできた実績ある基本構造を踏襲する。
第4に燃焼器に蒸気冷却技術を適用することで,火炎温度をFシリーズと同等に保ち,窒素酸化物の生成とメタル温度の上昇を同等に抑えながら,熱効率の上昇の為にタービンの入ロガス温度を上昇させる。最後に商用運転の開始前に実機での特殊計測を実施し,高性能・高信頼性を検証することである。
M501Gガスタービンの試運転は,1997年に三菱重工業高砂製作所の構内に建設された「実証発電設備」にて開始された。試運転は成功裏に終了し,1997年6月に商用運転が開始された。以来これまでに計5回の内部詳細点検を経て各部の健全性が確認されてきた。運転開始以来の稼働率(予定停止を除いた運転可能時間のうち,運転要求に対して給電出来た比率)は98・6%を記録し・高信頼性を維持している。
50Hz地域用のM701Gは,1998年10月に東北電力(株凍新潟火力発電所で試運転を開始し,1999年7月に商用運転を開始した。これまでの稼働率は100%を記録し順調に運転中である。本稿ではM501Gガスタービンの技術的特徴と最新の運転状況に関して記述する。
(本文34ページ)

ターボモーターによる省エネルギー運用事例−ボイラー給水ポンプの蒸気駆動化−
北越製紙株式会社関束工場市川工務部施設課動力係 梅津 尚夫

 北越製紙滑ヨ東工場市川工務部は,環境問題を配慮して購入燃料の都市ガス化を進めてきた。また,都市ガス化に伴うエネルギーコストの上昇という問題に対して,工場上げての省エネルギー対策に積極的に取り組んできた。こうした取り組みの中で,冬場に発牛するタービンバイパス蒸気によるエネルギー損失を有効に利用できる設備として,ターボモーターによるボイラー給水ポンプの蒸気駆動設備を導ム入した。この設備の導入経緯,運転経験,コストメリットについて説明する。
(本文43ぺ一ジ)

ヘルパータービン設置による省エネルギー−ボイラ給水ポンプの蒸気駆動併用化−
日本製紙株式会社小松.島工場工務課 原田 道成

 日本製紙株式会社小松島工場では近年,資源の有効利用及び市場二一ズに対応するため,古紙パルプ製造設備を設置した。これによって,電力需要が増加し,購入電力を増やさざるを得ない状況となっていた。
そこで,省エネルギー対策工事の一環としてボイラ給水ポンプに蒸気駆動装置(ヘルパータービン)を設置し,有効に活用されていなかった蒸気減圧減温エネルギーを給水ポンプの駆動動力として回収し,省エネルギーを図った。主な特徴として2つある。一つは購入電力を多く受電している様なエネルギー使用量が多い時に多量に捨てていた蒸気エネルギーを駆動動力源とした事である。外部に抽気圧力制御をもつ既設蒸気タービンの抽気蒸気は出力が増加するにつれ,エンタルピは高くなる傾向がある。その蒸気を今までは無駄に減圧減温していたが,これを動力源として回収した。もう一つは同様にエネルギー使用量が多い時に,負荷が高くなる補機を回収動力の使用先にした事である。ボイラの給水ポンプはエネルギー使用量が多くなると,ボイラ蒸発量は増大し,負荷が高くなる。前述の動力源を用いて給水ポンプの駆動動力を補助する蒸気駆動装置を設置した。期待される効果としては平均回収動力190kW,更にエネルギー使用量が多い場合では回収動力285kWとなり,省エネルギーは基より,エネルギー使用量が多い運転状態での購人電力削減に寄与する。
(本文46ページ)

蒸気タービン誘導発電機の導入−エネルギーロス低減によるコスト削減−
王子製紙株式会社岩渕工場 早坂 大助

 2000年8月,小型蒸気タービン誘導発電機を導入した。当工場では,これまで発電設備がなく電力は全て購入電らであったため,電力料金の工場のエネルギーコストに占める割合は非常に大きなものとなつていた。蒸気タービン発電機を導入したことにより当工場の第一号発電機となり,ここに岩渕工場発電所が誕生した。構内で蒸気をもっとも多く使用する設備は工場の主力である3,4マシンであり,ボイラーより蒸気圧力1.1MPaで供給し直前にて減圧弁で蒸気圧力0.3MPaに下げて使用していた。この減圧による熱落差ノエネンルギ−ロスを有効利用すべく出力385kWの蒸気タービン誘導発電機を設置した。導入効果としては予定通り前使用電力の約3%を自家発電することとなり,エネルギーコストも目的通り節減が計られた。今回こうした導入経緯,設備概要,効果等,エネルギーコスト削減の一例として紹介する。
(本文51ページ)

高効率トランスについて−省エネの動向及び省エネ技術について−
株式会社ダイヘン設計課 田中 剛

 当社では世の中の省エネ化の動きに伴い,JIS規格の特性基準値よりも損失をさらに低減した高効率変圧器を開発した。
 本稿では,まず高効率トランスが普及してきた背景として省エネの動向とエネ革税制の内容を述べた後,変圧器の関連したJISおよびJEM規格の変遷について説明し,その中でも特にJEM規格の高効率油入変圧器の特性基準の考え方について詳しく説明している。
 次に,省エネ技術について紹介し,変圧器の損失構成について,数式を用いて説明し,これらの損失を低減するための対策案について具体的な方法を述べている。
また,現在市場で取り扱われている三つの高効率トランスである「高効率変圧器」「超高効率変圧器」「アモルフアス変圧器」の違いについて説明し,これらの変圧器の特性,寸法,構成について比較表でまとめている。
最後に,高効率変圧器選定の目安となる考え方について述べている。変圧器を選定するには,トータルコストの比較が必要である。本章では,具体的な例として償却年数10年,負荷率60%における変圧器損失からランニングコス/の計算を/テい,イニシャルコストを加えてト一タルコストを算出し,各種高効率変圧器の/一タルコスト比較を行っている。
(本文56ページ)

大規模風力発電の導入割列とその特長−苫前グリーンヒルウィンドパーク−
株式会祉トーメン電力事業本部第一部 中村 成人

1. 風力発電の現状
世界的な地球環境への意識の高まりを背景に,90年代半ば以降欧米先進各国を巾心に風力発電に代表されるいわゆる再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいる・塊在全世界で設置されている風力発電の総容量は約12,500MW,最大のドイツで4,445MWであるのに対し,未だ離陸期にある我が国の設置済み容量は100MW程度と推測される。
卜一メンは1987年に米国カイリフォルニア州におけるプロジエクトを始めとして,現在までに欧米・日本の6ヶ国で合計約700MWの風力発電設備を建設・運営中である。
2. 苫前グリンヒルウィンドパーク1999年11月,トーメンは日本で初めて且つ最大規模の集合型風力発電施設(1MW×20)を,北海道苫前町に完成し運転を開始した。この施設は通産大臣の新エネルギー事業者としての認定に基づく補助金対象事業であり,且つ17年に亘り発電電力の全最を北海道電力に売電する我が国初の風力発電にょる卸電力事業でもある。その特長は下記の4点である。
・大規模化による大幅なコストダウン(風一車はデンマーク製を採用)
・複数の運転員を常駐させることによる安全・安定操業の確保
・周辺環境との調和
・地域社会との共生
3. 風力発電の将来
欧米各国は政策的支援を含めて,今後供積極的に風力発電の導入を促進していく方針を明らかにしている。日本においても漸く風力発電を始めとする自然エネルギー導人に関する本格的な関心と議論が高まるところとなって来た。風力発電の本格的且つ大量の導入に当たっては技術的,経済的な諜題もあるが,これらを踏まえて種々の観点から,国民の一人一人が白分自身の明日のライフスタイルとエネルギーを選択する時期に来ているものと考えるものである。
(本文64ページ)

燃料電池の開発状況
株式会祉束芝電カシステム社燃料電池事業推進部 白岩 義三

 燃料電池は小型でも高い発電効率(40%:LHV)を有し,窒素酸化物の発生量が少なく,硫黄酸化物やばいじんの発生量がなく,低騒音でしかも振動もほとんどないことから環境特性に優れた発電装置として,環境問題の重要さが増している現在,分散電源やコージェネレーションシステム,さらには電気自動車の電源などへの適用に期待が高まっている。中でも,りん酸形燃料電池(PAFC)は,その開発が完了し,本格的普及を推進すべき段階に到達している。都市ガスやLPGを原燃料とした,燃料電池の発電電力とそれに付随して生成される熱を使用するコージェネレーションとしての利用形態が進む中,食品・紙パルプエ場等の排水や下水汚泥の嫌気性処理の際に発生するバイオガスや消化ガス,半導体製造工場から排出される排メタノールのような未利用エネルギーを燃料電池の原燃料とする新しいアプリケーションが開発され,発電運転を開始している。さらに,燃料電池の特徴を生かした高品質・高信頼性電力供給システムヘの適用など,新しいアプリケーションがどんどん開発されている。また,固体高分子形燃料電池(PEFC)は定置用から白動車用まで幅広い用途に適用が可能であり,現在実用化のための開発が急ピッチで進められている。
(本文70ページ)

木質バイオマスのエネルギー利用−これからの展望−
岐阜県立森林文化アカデミー 熊崎 実

 エネルギー源としての木質バイオマスは,再生可能で環境への負荷が小さいことなどの特徴があり,加えて近年,これを電気などに効率的に変換する技術も進歩している。木質バイオマスの国内の利用可能量は!990年の総エネルギー消費量の約5%に達するという推計もあり,その潜在力は大きい。たが,木質バイオマス発電の基本は,現行の火力発電と違って熱利用をともなう小規模分散型のCHPであり,現行の電力供給体制から言えば,ニッチ市場を埋めていくことが中心となる。この場合,重要なのは第一にバイオマス燃料が容易に入手できること,第二に発電の副産物である熱の需要がプラントの近くにあることである。この両者を勘案して適切な変換技術とその規模を選択することになる。現在の段階で有望と思われるケースとしては,(1)木材乾燥の熱を重視する小規模プラント,(2)地域への熱供給を重視する小規模プラント,(3)ある程度の電力生産を意図する中規模プラント,(4)既存の火力発電所でのバイオマスの混焼,(5)木質燃料ペレットの生産・配給システムである。
(本文78ページ)

プラスチック脱塩素固形燃料化装置について
株式会社日本製鋼所研究開発本部機械研究所 時久 昌吉,炭広 幸弘,千村 禎
日鋼設計株式会祉 橋本 憲明

 当社では,基盤技術であるプラスチック混練技術および押出技術をもとに,塩素系ポリマー含有廃プラスチックを脱塩素する二軸スクリュ方式の脱塩素機と脱塩素プロセスを開発した。
本報では,まず,二軸スクリュ押出機の概要を説明し,脱塩素機および脱塩素プロセスについてその概要,特微および実施例を述べた。
脱塩素機により,初期塩素濃度が2.8wt%の一般系廃プラスチックを脱塩素し,温度350℃,滞留時間約10分のもとで残留塩素濃度をO.25wt%まで低減した。また,滞留時間一一定のもとで温度を310℃から350℃で脱塩素すれば,残留塩素濃度が約O.6wt%低減できることを確認した。また,温度一定のもとで滞留時間を6.6分から13.3分で脱塩素すれば,残留塩素濃度がO.14wt%低減できるが,滞留1侍間約10分で飽和していることを確認した。さらに,初期塩素濃度ユ.8〜45.Owt%の廃プラスチックが,温度350℃,滞留時間6.6〜13.3分の滞留時間のもとで残留塩素濃度O.25〜O.39wt%に低減した。
また,二軸スクリュ押出方式は単軸スクリュ押出方式,バッチ分解槽方式,およびロータリーキルン方式よりも優位であることを確認した。
(本文82ペ一ジ)

省エネ機器の採用によるDIP設備と最近の省エネ事列
中越パルプ工業株式会社能町工場施設部電気計装課 芳野 知樹

 当工場ではインバータ化を積極的に進めて実績をあげてきたが,平成10年7月より塗工設備(実負荷3,600kW),平成11年10月よりDIP設備(実負荷2,000kW)が相次いで稼動した。これにより当工場の使用電力量が月当たり35,300MWhから37,600MWh,月間最大電力が57、000kWから61,500kWに増加した。また品質向上や環境関係設備で逆に増エネになる可能性もあるので,新設備設置段階より回転数制御可能機器の検討・調査をし,さらに育エネ型高効率のモーター及び機器を導入する事を提案してきた。今回は,その計面と効果の確認と既設設備の省エネ実績をテーマに選定した。
(本文89ぺ一ジ)

脱墨条件における有色染料の脱色性
日本化薬株式会祉色材研究所 菅谷 邦夫

 近年,環境問題が世界的にも大きくクローズアップされている中で,製紙業界に於いても白然保護を推進する上で,古紙のリサイクルヘの気運は年々高まっており脱墨処理設備の建設も積極的に行われている。
紙製品には増白用の蛍光染料や色上質紙の着色用に有色染料が広範囲で使用されており,リサイクルする上で,これらの染料が少なからず影響を与えていることは事実である。
現状,リサイクル古紙として対象となる原料古紙は新聞紙,雑誌等が主体であり有色染料が関わる色上質紙等の分野は比較的少ないと思われるが,有色染料の脱色性についても一つのテーマであると考える。
過去にも酸化法,還元法での検討はされているが,今回,脱墨処理条件におけるアニオン性直接染料の脱色性について検討してみた。
(本文96ペ一ジ)

超音波顕微鏡を用いたパルプ繊維壁の弾性係数測定
東京大学大学院農学生命研究科生物材料科学専攻製紙科学研究室
カンタヤーヌウオンソムワン,江前 敏晴,尾鍋 史彦

 走査型超音波顕微鏡(SAM)を用いてパルプ繊維壁の弾性係数を測定した。超音波材料シグニチャ(AMS)と呼ばれる,材料に特有の超音波の干渉図からこの計算が可能となる。熱処理した繊維及び未処理の繊維の横断面を調製し,この断面の表面を走るレイリー波の速度を測定すると,それぞれ3,520±170m/s及び3,240±180m/sであった。これは,レイリー波の速度が速いほど弾性係数(C44)が大きくなることから考えて,熱処理した繊維の繊維壁は未処理の繊維に比べて堅くなったことを意味する。さらに,繊維は放射方向に等方体と考えられるS層が主成分であると考えると,レイリー波の速度は,剪断波の速度の093倍に相当し,セルロースの真密度が1.5g/cm3あるという条件を一適用することができる。すると,熱処理した繊維及び未処理の繊維の繊維壁弾性係数(C44)は,それぞれ22±2GPa及び18±2GPaであることがわかった。これは熱処理によって弾性率が増加することを意味するが,未叩解の熱処理した繊維から調製したシート全体の面内菊断弾性率は未処理の場合と比べて低い値を示した。ここでの結果は,繊維壁の弾性係数を増加させる熱処理の効果を表しており,一般に角質化として知られているものである。
(本文104ページ)

紙の不均一性評価システムの開発と応用
王子製紙株式会社総合研究所分析センター 泉 英樹,吉田 芳夫

 厚さムラ,坪最ムラ,密度ムラ,光沢ムラなど微小部分の紙質不均一性は,印刷面品質への影響が大きく紙の重要な品質項目のひとつである。例えば,密度ムラが大きい紙はインキ吸収性ムラが大きく印刷適性が劣る,地合ムラは印刷ムラに影響するなど紙の不均一性は印刷面品質を低下させる要因のひとつになっている。また,坪量ムラは紙の強度低下の一因になっている。このように紙の不均一性は重要な品質項目であるため,坪量ムラを測定するβ線地合計,光沢ムラを測定する微小光度計などの装置はあるが,厚さムラおよび密度ムラを高精度で測定できる装置はなく,紙の不均...性をシステムとして総合的に評価できる装置もないのが実状である。筆者らは,紙の表および裏の表面粗さデータから厚さムラを測定する3次元厚さ計を新しく作製すると共に,既存のβ線地合計の坪量ムラデータから密度ムラを算出するソフトを作成した。これらの装置に,光沢ムラが測定できる微小光度計を加えて,紙の不均一性を総合的に評価できるシステムを開発した。本報では,このシステムの概要を述べると共に,新聞用紙などの測定例を報告する。
(本文109ぺ一ジ)