2001年4月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2001年4月

第55巻 第4号(通巻第601号) 和文概要


紙パルプ産業の歴史・特徴とエコロジー
紙パルプ技術協会 飯田 清昭

 日本の製紙産業は,恵まれない立地条件にもかかわらず,生産量は世界第2位で,国内経済の中でも重要な地位を占めている。これは,製紙産莱が資本,原料,生産技術,環境等の問題に挑戦的に取り組みのできた結果である。この報告では,そのいくつかの努力を紹介すると共に,製紙産業の歴史・特徴を概説する。
今後も,製紙産業は幾多の新しい問題に直面するであろう。それを切り開くのは,若い世代の柔軟な挑戦的な取り組みで,それに産業の将来が託される。
(本文1ぺ一ジ)

三菱コータ高速化への取組み
三菱重工業株式会社技術本部広島研究所 杉原 正浩,山田 建治
紙印刷機械事業部 三浦 洋司,宮倉 敏明

 最近の・コート紙市場における塗工速度の増加と軽最・微塗工化の動向に対応すべく,当社ではパイロットコータの増速改造とレイアウト変更を行った。これにより,塗工速度2,800m/minでの各種塗工装置,塗工液の高速塗工性能検証・評価など,各種二一ズに合ったトライアルが実施可能となった。また著者らは,この高速パイロットコータを用いて,ロッドメタリング,ゲートロールなどピグメント塗工用フィルムコータ,S-F1owなどフリージェット型ブレードコータ,及びカーテンフローコータの高速化に向けた,様々な技術開発を行っている。高速フリージェット型アプリケータ及び高速カーテンフローコータの開発においては,塗工液ジェットの流動解析を行い,塗工液膜と原紙との間に空気が侵入するメカニズムを明らかにすると共に,接液部における空気侵入により発生するスキップ,スプラッシュを抑制する「蒸気置換シールシステム」を新たに開発した。一方,ゲートロール,ロッドメタリングなどフィルムコータの開発においては,アプリケータロール上の塗工液膜が原紙表面に転写されるロールニップ出側で発生するミスティング現象について,その発生メカニズムとミスト発生量特性について把握し,これを基に高速フィルムコータの開発を行っている。
 本報では,上述の三菱パイロットコータ高速化改造の概要,運転経験,及び各種コータの高速化技術開発状況について紹介する。
(本文12ぺ一ジ)

オプティコンセプトによる最新の洋紙用抄紙機
住友重機械工業株式会社機械事業本部 田頭 弘章

 上質コート紙は,原紙の生産と仕上げ加工を分けて行うオフマシン方式でほとんどが生産されている。オフマシン方式には,原紙生産と仕上げ工程が独立しているため各工程毎に最適化を図り易いという特長がある一方,各工程毎に専任のオペレータを必要とするため操業員の数が多い,設置スペースが大きい,生産ロスが多い等々問題点もある。オンマシン方式には,各工程が連続しているため,原紙の品質,塗工品質,カレンダ品質等を短時間でセッティングしなければならないという難しさがある反面,設置スペースが小さい,オペレータの数が少ない,生産効率が高い等の大きな利点もある。
 バルメット社は,これらのユーザー二一ズに応えるため,次世代の抄紙機に対しオプティコンセプトという名称を与え,数年前から新しい製品群を紹介してきた。良好な地合を得るため流路が最適化されたオプティフロー,ローディングブレードの採用により優れた地合を容易に達成できるオプティフォーマ,ノーオープンドロー・高ドライネスを実現したオプティプレス,効率の高い乾燥装憧を使用しドライヤ設樫スペースを大幅に短縮したオプティドライ,通紙性を改善し高速塗工可能なオプティコータ,オンラインで低線圧から高グロス品まで対応可能なオプティロードカレンダ他,既に多数の実績を上げている。
(本文19ぺ一ジ)

紙パルプ産業における嫌気性排水処理システムの適用割列
石川島播磨箆工業株式会社環境プラント事業本部 茂木 浩一

 紙パルプ産業分野では1980年代初めから現在迄に100基以上の嫌気性排水処理設備が建設されてきた。それらの大部分はUASB(.ヒ向流嫌気性スラッジベッド)法によるもので,活性汚泥法の後処理設備が設置されているのが一般である。UASBリアクターはその高速処現特性からヨーロッパの紙パルプ排水処理分野では比較的濃度の高い排水の前処理システムとして標準技術となっている。BODの80〜85%を除去できるため,活性汚泥曝気槽容積,余剰汚泥量を大幅に削減出来,エネルギー価値の高いメタンガスを回収できるメリットがあるためである。UASB法はあらゆる分野の紙パルプ排水に適用されているが,特に故紙パルプ分野で普及が進んでいる。酸性サイジングが行われなくなった事から水利用のクローズド化が進み,排水中の有機物濃度が上昇した事が人きな理曲である。最近ではより高負荷運転が可能で省スペース化が図れるICリアクターと呼ばれる改良型UASBリアクターに糧き扱わりつつある。高温性メタン細菌を利用して熱ロスを無くし,ICリアクターで極小スペースの設備とした完全無排水工場も稼働している。
 一方KP,SP工場のコンデンセートやTMP,CTMP排水,更にはソーダパルプやNSSCプロセスの黒液にも適用が進んでいる。しかしながら我が国における普及のための条件としては,中性サイジングヘの変換や節水/クローズド化の推進等クリアーすべきハードルが残されている。
(本文30ぺ一ジ)

嵩高剤を用いた軽量紙の製造
花王株式会社化学品研究所 久保田和男,平石 篤司,濱田 義人,西 森俊之, 高橋 広通

 白色度や不透明度等の光学特性に優れ,かつ印刷適性にも優れた軽量紙を製造できる抄紙用内添薬品「嵩高剤」を新たに開発した。嵩高剤はパルプ表而を疎水化し,シート形成時の水の圧力を大きくする。その結果,得られるパルプシートがポーラスとなり,嵩高くなる。このポーラスとなることによりシートの反射率が高くなり,トレードオフの関係であった白色度と不透明度が両立するようになる。また,透気度も良好となり,同時に表面平滑性も向上する。
一方,嵩高剤処理をすると,紙がしなやかになると阿時に紙カが低下する。これは,紙力に寄与する水素結合が減少するからである。しかしながら,紙力の回復に利用できる水素結合部位は嵩高剤処理してもまだ存在しており,嵩高剤と澱粉とを均一に混ぜ,紙中に疎水部分(嵩を発現する部分)と水素結合部分(紙力を維持する部分)を均一に細かく分布させることによってこれまで述べた嵩高剤が示す特長を損なうことなく,紙力を回復することができた。
(本文35ぺ一ジ)

塗工操業性と流動性改質剤「ソマレックス」の効果
ソマール株式会社FC部 常川 謙二,新井 修一,須ヶ崎かおり

 われわれは,流動性改質剤ソマレックスを拡販していく過程で,塗工カラーのレオロジーと塗工操業性が多岐に渡り相関していることを突き止め,平成11年度の紙パルプ年次大会でその1例である塗工カラーの粘碑性と塗工操莱性について撒告した。
 本報では,塗工操業性と塗工カラーのレオロジーとの関係を具体的事例で種々紹介し,その効果と考察される理論的メカニズムについて報告している。具体的には
1) 前回報告した塗工カラーの粘弾性の考え方を広め,塗工カラーの粘弾性・保水力と多くの実機での塗工操業性との相関図を確立した。
2) カレンダー汚れと塗工カラーの水相のレオロジーとの相関を得,カラーの水相の粘度を上昇させることによりバインダーマイグレーションの抑制が可能となった。
3) 塗工カラーが経時的に変化して行く様子を捉え,塗工操業性の悪化を招く要因を考察した。
等,塗工操薬性と塗工カラーのレオロジーについて報告し,かつ,上記以外での流動性改質剤が使用されている例について紹介している。
(本文40ぺ一ジ)

最新の欠陥検出システムとその未来が築くもの
オムロン株式会社ビジョンシステム事業部 遠藤 誠

 本報は,「最新の欠陥検出システムとその未来が築くもの」と題して過去の歴史を踏まえ,新世代検査装置の有るべき姿について述べている。これからの検査装置と題して
1) 人間の目に近い欠陥検査をする
従来のモノクロ欠陥検出からカラーで検査することにより飛躍的に検出能力を向上させる。淡い欠陥検出は,デジタル処理で検出を行いCOLOR-AGEでさらに人間の目に近い欠陥検査を実現する。また検査能力を向上させるだけでなく欠陥認識においても形状判断に色による識別要素も加えより精度の高い判別性能を向上させる。
2) 画像データで品質基準となる記録を残す
欠陥がどの検査基準で検奄され結果がどうであったかの記録することが重要になってきた。このサポートを欠点白動録画システムでおこない検出された欠陥画像の有効活用により感度支援ツールや欠陥種別判別により品質基準作りを支援していく。
3) システム化
抄紙機で稼動する計装機器企体効率やデータの共有化を目的としたシステム提案をしていく。シングルウィンドウやネットワークのオープン化を目指し今後の商品に反映していく。
4) 操作性とメンテナンス性への配慮
当社の検査装濫では,感度設定の簡略化をサポートするヒストグラム画面やリモートメンテナンス機能の導入により故障解析だけでなく欠陥発件状況の遠隔モニタリングを実現していく。
最後に,ユーザニーズにあった商品を提供し続けトータルマシン効率に向けた商品を提案していく。
(本文50ぺ一ジ)

緩圧式脱墨紙料調整機「ニュータイゼン」について
−未離解対策,残インク対策,及び,粘着異物対策など様々な用途の開発−
株式会社大善営業技術部 松倉 英明

 古紙を使って従来通り,または従来以上の品質を求めんとすると,原料設備におけるこれまで以上の性能を有する処理装置が必要となってくる。
そこで,ここに推薦する「緩圧式脱墨紙料調整機ニュータイゼン」は,繊維と繊維による揉み効果を最大限に引き出すように設計され,効果的に摩擦熱を得,繊維を切断せずに高い離解・分散効果が得られる,これからの古紙処理に最も適合する装置である。
さらにまた,現在最も問題とされている粘着性異物の除去にも効果を上げることができるなど,優れた特性を牛かし,多種多様な新用途の開発も積極的に行われている。
いわゆる従来の二―ダー,ディスパーザーと,口的はほぼ同一であるが機構,効果ともにこれらとは一線を画す優れた特性を有し,多岐にわたる目的に適応できる,主に,古紙をリサイクルするための紙料離解・インク分散装置である。また,同時に,粘着性異物や,ポリラミなどを除去しやすい形状に変化させることから,後の工程の除塵設備で容易に,しかも確実にこれらを物理的に系外に排出させ,抄紙工程にこれらを持ちこまない手法をとることを可能としている。
(本文56ぺ一ジ)

次亜塩素酸塩使用の漂白からECF(無塩素)シーケンスヘ−段階的アプローチ−
アトフイナ・フランス研究所 J・Cオスタチー,J.クデロ,P.ラニコル

 現在,日本の紙パルプ産業はクロロホルムの排出についてこれまで以上に厳しい制限に直面している。そのため,大多数のパルプエ場は従来のパルプ漂白工程で生成するクロロホルムの放出を減らす手段を模索しているところである。周知の如く,クロロホルムは主として次亜塩素酸塩段において多く発生する。
このことを背景において,本研究では最初に,日本のパルプエ場の多くで使用されている現行の漂白
シーケンスOC/DEPHDを修正して,H段を取り払うことに決めた。次に,日本のパルプエ場を,他の多くの国で最良利用可能技術(TheBestAvai1ab1eTechnoiogy,BAT)とみなされている,ECF(無塩素)漂白にもってゆく準備段階として,C1、をC1O。によって完全置換する過程について論じる。そして最後に,最終の最適化段階で,従来の酸素脱リグニン段の修正と最終D段の操業条件の変更に関して検討した。
(本文63ぺ一ジ)

セメント産業の環境産業への変貌−ManufacturingからEcofacturingへ−
太平洋セメント株式会社専務取締役 谷口 正次

 日本における資源のインプット量は毎年20億トンに達する。そして生産物の製造過程で4億トンの産業廃棄物が,さらにそれらの生産物の消費過程で一般廃棄物が8千万トン,合計4億8千万トンの廃棄物が発生している。そのうち8千万トンが最終処分場で埋め立て処理されている。しかし,この最終処分場の余命が,産業廃棄物であと1.6年,一般廃棄物で8年と言われている。そのため,不法投棄が絶えず社会問題となっている。
このような状況の中で,セメント産業は,年間2千5百万トンの廃棄物を代替原燃料として資源化しており,このうち1千万トン近くを当社グループで受け入れている。その結果,最終処分場の延命に大きく貢献し,今や日本のセメント産業は,資源循環型社会になくてはならない存在となっている。当社で受け入れている代替原燃料としての廃棄物の排出者は,28業種500社に及び,その結果,燃料消費量原単位は世界で最も低くなっている。また,バージン原料使用量の20%,化石燃料使用量の9%を廃棄物で代替することにより,CO,の排出量をバージン原燃料を使用した場合に比べて14%削減している。さらに,セメントエ場で受け入れなければ最終処分場に埋め立て処理しなければならなかったわけで,その延命効果は,セメント製造1トンにつき廃棄物188kg分に相当する。当社は,今や製造業というより,環境マネージメントサービス業ともいえよう。これすなわちManufacturingからEcofacturingへの変貌である。
(本文68ぺ一ジ)

インクジェット記録における高画質化技術の変遷と記録メディアの進化
セイコーエプソン株式会社 TP開発センター 大西 弘幸

 インクジェット記録技術は記録ヘッドの高性能化,インク吐出量の低減化による粒状性の改善,高画質と高速化を両立させることができるインク量変調技術と記録インクの性能向上に加え記録メディアの高性能化・高機能化により写真画質の実現に大きく貢献し,デジタルフォトプリント市場はこれらのインクジェット要素技術の技術革新により大きく前進することができた。そしてだれもが簡単かつ安価に銀塩写真に匹敵する写真画像を手に入れることができるようになった。その中でもインクジェット記録メディアは銀塩写真では実現できないさまざまな記録メディアによる高付加価値化と染料系インクジェット記録の課題である保存性の改善,更には顔料系インクに対応する記録メディアの開発による急速な進化が市場拡大に寄与してきた。今後,インクジェット記録技術があらゆるプリント市場におけるデジタル画像出力装置として更に発展していくためにも今後の記録メディアの進化に大いに期待したい。
(本文78ぺ一ジ)

漂白クラフトパルプ及び古紙パルプのオゾン処理
東京農工大学農学部 山本 諭
宮士ゼロックス株式会社メディア研究開発部 古賀 千鶴,細村 弘義
東京農工大学農学部 岡山 隆之

 近年,クラフトパルプ漂白工程から排出される有機塩素化合物の環境への影響が指摘され,塩素系漂白剤の使用を抑制する傾向にある。しかし,これらの有機塩素化合物は,漂白パルプ並びに紙製品中に残存することが確認されており,紙製品が紙ごみとして焼却処分されることを考えると,低減の必要がある。本研究では,市販の塩素漂白パルプ並びにカラーコピーされた上質系古紙パルプをオゾン処理し,塩素化合物量の指標として全ハロゲン(TX)及びエタノール抽出有機ハロゲン(EOX)を,また,パルプ及びシートの性質としてISO白色度,銅エチレンジアミン法による極限粘度数,保水度,引張強さなどを測定した。
 オゾン処理はオゾンをパルプスラリーと接触させることにより行い,処理温度10℃,処理時問を5,10,20分とし,処理時のパルプ濃度は4%,30%とした。塩素漂白パルプ中のTX及びEOXの量はECF漂白パルプに比べて大きかったが,オゾン処理を施すことによってその量を低減できた。上質系古紙パルプにおいても,通常の脱インキパルプに比べ,オゾン処理を施したパルプの方がTX,EOXともに低い値を得た。オゾン処理によって,広葉樹漂白パルプの白色度は大きく向上したが,白色度90%以上のパルプの場合には低下する傾向を示した。また,パルプの極限粘度数はオゾン処理によって大幅に低下したが,手すきシートの強度特性に及ぼす影響は小さかった。
(本文90ぺ一ジ)

フーリエ変換と相互相関法による紙の異同識別法(第2報)一市販PPC用紙への適用一
王子製紙株式会杜新技術研究所 篠崎 真
警視庁科学捜査研究所 宮田 瞳
東京大学大学院農学生命科学研究科 中山 智仁,江前 敏晴

 紙の異同識別を非破壊で行う方法として前報で画像解析を利用する方法を提唱した。すなわち,紙の光透過画像に対してフーリエ変換を施してワイヤーマークなどの周期性を特徴として抽出し,そのパワースペクトル(以下PSと略す)の類似度を相互相関法によって定量化することによって紙の異同識別を行う方法である。
前報においては紙に周期を与える要因をモデル的にワイヤーのみに注目し,市販の実機用ワイヤー片を用いて調製した手すき紙を試料とした。今回はその実地応用例として市販PPC用紙への適用を試みた。
市販の12銘柄の化学パルプ製PPC用紙を用いて,原則として1銘柄につき4枚の紙片の各3箇所,計12箇所に対して光透過画像のFFTを施した。その12枚のPSを単純平均したものをその銘柄の代表的な画像,すなわち参照ファイルとし,参照ファイルの群をデータベースとした。また試料ファイルとしては,参照ファイルと同一の12銘柄から1枚ずつ別の紙片をとり,それぞれの3箇所をFFT処理しその3枚のPSを単純平均し各試料ファイルとした。
 異同識別のアルゴリズムとしては前報と同じ梢互相関法を採川した。類似度の計算の際に長波長成分のパワー値が短波長成分に比較してきわめて大きいことを考慮して1.63mm以上の波長のパワーをすべてOとした。
各試料とデータベース中の各参照とを順次照合しそれぞれの類似度を数値化した。12銘柄中10銘柄については正しく照合ができた。誤認を行った2対の試料は同一製紙会社の製品であった。共に同一抄紙機あるいは同一ないし類似のワイヤーで抄造された可能性が考えられる。
また本実験では試料をスキャナのガラス面に置く際の縦横方向の精度や,紙のロールの幅方向の位置による繊維配向など,照合に悪影響を及ぼすと考えられる要素があるものの本実験への明瞭な悪影響は見られなかった。したがって本異同識別法は実用に適したものと考えられる。
(本文98ぺ一ジ)