2001年3月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2001年3月 

第55巻 第3号(通巻第600号)  和文概要


最新の医用機器の現状と動向―「人に優しい医用機器」を目指して―
株式会社東芝 医用システム社経営企画部 鈴木 義規 

 CTやMRIを始めとする最近の医用機器の進歩には目を見張るものがある。これらの最新医用機器の出現により多くの病気の早期診断が可能になった。しかしながら,現在の医用機器といえどもガンや老人性痴呆などの病気に対して早期発見や治療に充分とは言えない。世界の医用機器研究者が新しい機器の開発に取組んでいる。本報では,医用機器を取り巻く環境や医用機器の現状や近い将来製品化が期待されている技術について説明する。
(本文19ページ)


リニアモーターカーの概要と将来計画
財団法人鉄道総合技術研究所 長谷川 均,武藤 雅威  

 鉄道総研とJR東海が共同開発している,「超電導磁気浮上式鉄道」がリニアモーターカーの正式名称である。海外ではMagnetic Levitation(磁気浮上)を略してMaglevと呼ばれることが多い。以下超電導リニアと呼ぶ。
 超電導リニアを一言で言うならば,「超電導現象を利用した超電導磁石を用い,リニアモーターで推進し,浮上して走行する乗り物」となる。超電導リニアの特長は,在来の鉄道が鉄のレールの上を鉄の車輪で走行するのに対し,浮上して走行することである。また,パンタグラフで架線から集電してエネルギーを得ているのとは異なり,地上側と非接触で,集電することなく地上設備から直接,電磁気的なエネルギーを得て超高速走行を行うという点にある。
 超電導リニアの目標とする営業最高速度は時速500kmである。この際,駆動力は電磁気的な力によるため,平らな場所ばかりでなく,急な勾配のあるところでも,天候に関係なく時速500kmで走ることができる。さらに,公共交通機関の場合,天候に左右されずにどこでも安全に止めるということは,絶対の条件である。超電導リニアは,非接触で駆動・制動するので勾配や天候にともなう車輪の空転・滑走という問題がなく,電磁気的な力で減速ができるので,いつでも高速から安全に停止することができる。
 超電導リニアは,このように加減速が自在であるうえ,騒音などの環境問題も大幅に低減できるため,超高速での走行に有利なシステムである。本報では,これまでの開発の経緯について説明し,さらに今後の試験予定と将来計画について触れる。
(本文27ページ)


最近のDCS更新事例
中越パルプ工業株式会社 二塚工場製造部 中村 一也  

 二塚工場にDCSを導入してから20年近くが経過して,各工程ではボードレスのCRTオペレーションによる操業を行っている。DCSは,省力化,高効率化を実現したシステムであるが,一旦トラブルが発生すると,直接操業に影響する。信頼性維持のために,定期的な保守は行っているものの,設置後十数年経過したシステムでは,各部品の劣化,消耗部品の入手等,保守上の問題が発生してくる。
 本報ではこれらの保守上の問題や,プラントの増改造に伴ってDCSの更新を行ってきた事例を報告する。
(本文32ページ)


保全管理システムの運用事例
王子エンジニアリング株式会社 高橋 賢二 
 
 各工場の生産設備の安定操業による生産性向上を図るため,保全部門(計装,機械,電気)の業務効率化を促進し,適正な保全計画を作成して,突発故障のトラブルを減少させることを目的に保全管理システムの導入に取り組んできた。
 今回のシステム導入に当たり,各工場の施設部保全担当者を中心に推進責任者・担当を選出し全社をあげてスムーズな導入が図れる体制をひき,この組織を中心に保全管理業務の改善施策について検討を行った。
 保全管理システムの具体的構築は,第1期として96年度に旧新王子8工場に導入,続けて,第2期として98年度に旧本州10工場に導入しシステム化を行い全社統一システムの運用を行っている。本報では,保全管理システムの導入について,背景・狙いを活用事例を交えて紹介する。
(本文38ページ)


保全管理システムの構築とその活用例
日本製紙株式会社 勇払工場工務部 浜田 知明  

 日本製紙勇払工場では,1986年に,新旧設備が混在する他様々な環境の中で,体質改善を行い競争力の強化と品質向上による増収を図るべくTPM活動を導入した。この動きは勇払工場一丸となって押し進めるもので,個人の意識改革も加え実践していった。
 電装課としては,使命でもある「設備の故障や不良を“ゼロ”にする」を掲げ,活動の一端を担うことにした。そのためには,計画的な保全体制づくりが必要と考え計画保全のマスタープランを作成しテーブルに基づき活動を展開していった。活動の一つに情報管理体制づくりの確立があり,効果的に目的を達成するには,先人が培った優秀な技術力とそのノウハウを確実に継承し生かしていくこと,故障や補修の内容等の情報を蓄積してデータベース化し,その集中管理などを全体的に活用できる手段として保全管理システムの構築を行った。
 当初,当時市販されていたソフトを購入し運用して行こうと試み市場調査したが,どれも過不足があり自己のニーズに合うものがなく,使う以上は快適で今後のシステム拡張にも柔軟に対応が可能なよう自分たちで構築することにした。システムは,作業支援とも位置付けしパソコンの利便性を最大限引き出すと共にその反面使い勝手が悪くないよう心掛け業務効率化の一助になっている。蓄積された情報は,LANにてネットワークされ一度に多人数で利用し,故障や保守作業等で各自が日々収集及び対処してきた事象を逐次参照することでスムーズな対応に役立っている。
 本報では,管理システムを用いた情報の集中管理による計画保全の有利性とその活用例を紹介する。
(本文45ページ)


DCS〜MCC通信の活用事例―現状と課題―
新日本製鐵株式会社 名古屋製鐵所 吉川 宏明  

 新日本製鐵では,10年ほど前から設備投資のコストパフォーマンスの向上と,プラントの運転効率の向上を目的に,電気(E)制御と計装(I)制御の統合化を提唱し,推進してきた。名古屋製鉄所のNo.5連続亜鉛メッキラインはCIEMAC(東芝製)を使った初のEIC統合システムである。
 従来,電気(E)と計装(I)の機器は対象の制御速度が異なるため,EとIの単独システムが主流であったが,操作性の向上と低コスト化のためにEIシステムの統合化が提唱され,シングルベンダーによるEI統合から実機化が始まり,複数メーカーによるマルチベンダーEI統合へと進展してきた。直近では,エレクトロニクス技術の進歩により,汎用機器を汎用ネットワークでつなぐオープン・ライトサイジングシステムが開発され,その実機化が急速に進展してきている。
 今回はこれら1例として,DCSとMCCとの通信に関して,東芝製CIEMAC―DSとCCR21型モータマルチリレーを伝送装置(TOSLINE―F10M)にて接続した事例について報告する。
(本文53ページ)


フィールドバスの現状と普及への期待
横河電機株式会社 IA事業本部 栗山 勘衛 

 双方向フルディジタルの次世代フィールドネットワークとして期待されてきたファウンデーションフィールドバス(FOUNDATION Fieldbus:以降フィールドバスと記述)も,1996年の仕様のリリース以降各社からフィールドバス適用製品がリリースされ,テストプラントの実運用試験,さらに実プラントへの適用と実積を重ねてきている。1999年度には世界の各所でフィールドバスシステムが実プラントで運転を始めている。2000年度はさらにフィールドバスシステムの適用が加速されることが予想される。
 一方,当初はシステムの立ち上げがスムーズに行かないケースが報告され,それらは主に他社機器接続において発生した。その対策としてフィールドバス協会は,真の相互運用性の確立に向けこの7月より新しい相互運用性試験を開始している。
 本稿では,まずフィールドバスとはということで,フィールドバス全般について述べる。さらに,フィールドバスのもたらすメリットを述べ,その後,フィールドバスの設計,エンジニアリングの手順について考慮すべき項目について説明する。
(本文57ページ)


デジタル型欠陥検出器の導入経験
日本製紙株式会社 岩国工場動力部 高橋 俊之

 日本製紙岩国工場3号マシンおよび5号マシンの欠陥検出器に,従来のアナログ型に替えて,東芝エンジニアリング製のデジタル型欠陥検出器を,紙パルプ業界では初めて導入した。
 今回導入したシステムは,カメラ側にて256階調にA/D変換された濃度信号について,MMPボードと呼ばれる処理ボードにて,デジタル処理による欠陥判定を行っている。MMPボードでは,2値化明・暗,ミクロ,ムラ(薄汚れ),スジ状(ストリーク)の7種の欠陥判定を並列パイプライン処理している。特に,大・中・小の3種類のムラフィルタは薄汚れ欠陥検出に有効であり,検出能力アップが期待される。
 また,マーキング装置には,従来のフェルトタッチ方式に替えて,非接触スプレー方式が採用されており,汚れの問題が有るものの,省スペース化および多色マーキングを実現している。
 一方では,立上げ当初,エッジ検出や欠陥判定ロジックの点で製紙特有の仕様との食い違いが見られるなど,運用上の問題点も発生していた。しかし,それらについてもほぼ解決済みであり,画面の操作性・カメラ自体の性能を含めた検出能力・欠陥画像の鮮明度が他メーカーと同等またはそれ以上であることから,今回のシステム導入効果は大きいと考える。本稿では,システムの概要および導入後の問題点について報告する。
(本文62ページ)


ヘッドボックスレベル計の改善
大昭和製紙株式会社 生産技術本部工務部制御システム課 廣嶋 篤  
白老工場工務部動力課 計器係一同  

 大昭和製紙白老工場の8号マシンは1998年品質向上を目的とした改造工事に着手し,ヘッドボックスを均一な坪量プロファイルと安定した繊維配向角が得られるディリューション方式のものに更新した。以前と比較して紙の品質は向上し,その効果は予想していた通りのものであったと高く評価されている。
 当然のことながらヘッドボックスにはいくつか計装機器が設置されており,ヘッドボックスの機能を最大限発揮するために各々重要な役割をもっている。
 その一つに静電容量式レベル計があり,ヘッドボックスのオーバーフローレベルを測定しているが,このレベル計が度々検出不良を起こし,トータールヘッドの変動要因となっていた。
 工場の計装担当者はその対策としてレベル計をエアパージ式に変更することを提案し,その結果,安定したレベル測定が行えるようになった。
 これまで,当社においてエアパージ式レベル計は使用個所が少なく,重要な個所にはほとんど設置されていない関心も低い計測機器であったため,今回の事例は他工場の計装担当者達にとってもいろいろな意味で興味深いものであった。今回はその改善事例について紹介する。
(本文67ページ)


第16回ISO/TC6国際会議報告
紙パルプ試験規格委員会 東京農工大学農学部 岡山 隆之  
日本製紙株式会社技術研究所 加納  直  
紙パルプ技術協会 大石 哲久

 ISO/TC6国際会議が2000年9月25日〜30日カナダで開催され,日本代表として出席したので,全ワーキンググループ(WG)会議,分科委員会(SC)会議およびTC6全体会義の概要を紹介する。
(本文72ページ)


抄紙工程中のスケール発生要因と対策―バリウムスケール並びにその他スケール(Ca, Si, Al等)の発生要因と対策について―
ケイ・アイ化成株式会社 機能性薬品部 伊藤 賢司,望月 謙治  

 抄紙工程で発生するスケールがもたらす障害は紙の欠点発生や生産性に直接関わってくる。抄造工程で発生するスケールはカルシウム,珪素,アルミ等が主体となったものが一般的であるが,原料パルプや抄造紙の種類或いは抄造条件によっては硫酸バリウムのスケールが発生し問題となることがある。硫酸バリウムのスケールはアルカリ洗浄でも酸洗浄でも除去は難しく,現状における対応策としては硫酸バリウムの析出を抑えることが最善策と言える。この現状を鑑み,SO4 2−の主な供給源である硫酸アルミと硫酸について,バリウムスケールの形成に相違があるか否かを探る試験を実施した。
 その結果,硫酸アルミ添加系,硫酸添加系共に同量レベルの硫酸バリウムの析出はあるものの,金属表面に形成される硫酸バリウムのスケール量としては,硫酸アルミ添加系よりも硫酸添加系の方が多く,硫酸バリウムスケールの形成低減を望む観点からは,硫酸の使用は望ましくないと判断できる知見が得られた。
(本文78ページ)


電子ペーパー―その社会的・技術的背景―
東海大学 工学部 高橋 恭介  

 デジタルペーパーあるいは電子ペーパーの技術が画像技術の分野で現在,多大の関心をもたれている。本報では,ペーパーライクディスプレーやリライタブルペーパーの現状について述べる。また,ソフトコピーとしてのペーパーライクディスプレーやハ―ドコピーとしてのリライタブルペーパーの応用分野についても触れる。
(本文87ページ)


プランテーション早成樹アカシアのパルプ化と漂白(第1報)―化学組成とパルプ化特性―
南京林業大学 化学工程学院 薛  国新,鄭  建文  
東京大学大学院 農学生命科学研究科 松本 雄二,飯塚 堯介  

 中国のプランテーションで栽培する3種類の早成樹アカシアを樹齢の異なった段階で伐採し,クラフトパルプ化と漂白(CEHシークエンス)に供し,パルプ化特性,漂白特性を検討した。化学組成と,細胞構成成分の構造的特徴の分析も行った。用いたアカシアは,Acacia mangium, Acacia auriculiformis, Acacia crassicarpaである。これらのアカシアはコンベンショナルなクラフトパルプ化法で容易にパルプ化され,カッパー価20で約50%の収率を与えた。同一樹種で樹齢の異なったチップの混合蒸解,あるいは樹種の異なったチップの混合蒸解の結果も良好であった。CEHシークエンスを用いた漂白により漂白特性を調べた結果,漂白条件の最適化を行わなくても,75%以上の白色度が容易に達成された。細胞壁成分の分析結果は,典型的な広葉樹の化学組成を示し,樹齢3年のものでも,化学パルプ化に不適当な組成を示さなかった。
(本文94ページ)


鉄鉱石を流動媒体および反応剤とする気泡流動層による直接苛性化プロセスの開発
川崎重工業株式会社 技術総括本部 現:財団法人 新産業創造研究機構 永井 千秋  

 製紙パルプ廃液からの苛性ソーダの回収の省エネルギー化を達成するために,従来の薬液複分解によらない直接苛性化プロセスの主要装置である流動層方式高温苛性ソーダ回収反応装置の開発を実施した。このプロセスでは,パルプ廃液に含まれる炭酸ナトリウムを高温で高純度鉄鉱石と反応させフェライトを生成し,加水分解で苛性ソーダを回収するもので,生成鉄酸ナトリウムを加水分解の後,乾燥工程を経て鉄鉱石をリサイクル再使用することに特徴を有する。本研究では,500mm角流動層よりなる高温反応装置を連続運転することにより,反応装置の好適な操作条件,運転特性ならびに反応特性を明らかにした。その結果,0.2〜1mmの高純度鉄鉱石を流動媒体・反応剤として気泡流動層を形成し,1,173〜1,273Kでパルプ廃液中の有機分を燃焼させ,廃液中の炭酸ナトリウムを鉄鉱石と反応させるのが好適であることを示した。加えて,流動層の定常運転を阻害する流動媒体・反応剤粒径の痩少の対策として0.2mmアンダー粒径の粉状物の約50%を最低限の造粒割合として造粒し,これを反応装置に供給することによって流動層を恒常的に運転でき,苛性ソーダ回収が図れることを,プロセスシミュレーションにより予測し,40時間におよぶ連続運転にて実証した。
(本文101ページ)