2001年2月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2001年2月

第55巻 第2号(通巻第599号) 和文概要


表面サイズ剤による紙の機能制御
ハリマ化成株式会社 製紙用薬品技術開発部 西村 紀彦  

 製紙業界の動向として古紙使用比率のアップ,軽量化,中性化,インクジェット印刷に対応した各種情報用紙の開発,内添薬品から表面薬品へのシフトが挙げられる。これらは塗工薬品が密接に関係しており,表面塗工薬品の重要性はますます高まっている。表面塗工処理は内添薬品に比べ,歩留まりがほぼ100%であること,紙表面に直接作用することで,内添での操業性の問題(抄紙機の汚れ,発泡,高温抄造でのサイズ低下)がない特徴を持っており,印刷方式の多様化,高速化,高品質化への適性付加が可能である。
 本稿では,現状の問題点に対し表面サイズ剤によって紙の機能制御がどのように行われているか,低サイズ紙用,新聞用,インクジェット印刷適性対応用,ネッパリ抑制機能を持った表面サイズ剤を例にその技術動向について述べる。
(本文1ページ)


エンジニアードカオリンの光学特性
イメリスピグメントおよびイメリスミネラルズ・ジャパン R. W. Wygant, R. R. Iyer, D. O. Cummings,岡川 章夫

 近年製紙業界にエンジニアードカオリンと呼ばれる顔料が導入され,広く使用されるようになってきた。この顔料は通常機械的あるいは化学的に粒度分布等を改善したもので,塗工層の構造に変革をもたらすものである。超微粒子分を除去した顔料によって形成された塗工層の細孔はより大きなものとなる。この様な大きな細孔は光散乱効果を高め,紙表面での液体の毛細管浸透力を抑制する役割をはたす。更に改良された第2世代のエンジニアードカオリンは特に光沢の発現を改善したものである。これらの特徴は特別に開発された紙表面の特性測定器を使って確認することができる。カオリンの最適化にはこの測定器の開発が大きく寄与した。
(本文8ページ)


新規表面サイズプレス用澱粉について
王子コーンスターチ株式会社 技術本部開発研究所 石田 光雄

 新聞紙はオフセット印刷の普及による印刷の高速化や多色印刷化が増加傾向にあり,また古紙多配合化や軽量化も進行している。この様な厳しい条件にも関わらず,印刷に対する品質要求は益々高まっている。特に古紙多配合化と軽量化による古紙由来のベッセルピックや表面強度を向上させるために多量に塗工した表面サイズ剤によるネッパリがオフセット印刷時に懸念される。
 これら新聞紙のオフセット印刷時に懸念されるベッセルピック,ネッパリを抑制させるために新規の澱粉「乾式酸化澱粉」を開発した。この乾式酸化澱粉は表面サイズプレスに広く一般的に使用されている従来の酸化澱粉とはタイプが異なり,粘度が低く,アルデヒド基を多く有し,澱粉被膜は水に溶出しづらい等の特徴を持つ。
 本稿では表面サイズプレスにおける乾式酸化澱粉の効果について紹介する。
 種々検討を行った結果,乾式酸化澱粉は粘度が低いにも関わらず表面強度が強く,更に水を吸収した澱粉被膜の粘着性が小さいことが分かった。最終的に,乾式酸化澱粉をゲートロール塗工した新聞紙を調製し,この新聞紙のオフセット印刷評価を行ったところ,ベッセルピック,ネッパリの抑制効果が確認された。
(本文16ページ)


耐ブリスター性に関する研究
JSR株式会社 高分子研究所 松田 信弘,宮島 史尚,山中 茂生,座間 義明  

 以前,我々は塗工層の高温・高圧の条件下での透気性に着目し,耐ブリスター性に関する研究報告を行った。その中で我々は,塗工紙がオフセット輪転印刷の乾燥工程に入ってからブリスター発生までの短時間における塗工紙の透気性を,透気加速度と定義し,従来の王研式透気度平滑度試験機等により測定される透気性よりも,透気加速度はより高い相関を持ってブリスター現象を説明できることを明らかにした。
 本研究では,オフセット輪転印刷機を用いて乾燥温度を変量することにより市販A2オフ輪塗工紙の耐ブリスター性を比較し,その結果をもとに,耐ブリスター性に関する研究を行った。一般に塗工紙の耐ブリスター性は,原紙の層間強度や塗工層の透気性,並びに塗工紙の水分量に影響を受けるとされており,本研究においても,それらの因子の影響について検討した。また本研究では,原紙の層間強度の影響に加えて,JSRが独自に開発した加熱加圧式透気度測定機による加熱加圧条件下での透気加速度も加味して考察を行った。加えて,市販A2オフ輪塗工紙の耐ブリスター性の結果と,従来行われているラボスケールでの耐ブリスター性に関する評価結果との比較を行い,その相関性についても考察を行った。
 その中で,我々は透気加速度によりブリスター現象を考察する際には,実際にブリスターが発生する時の透気の方向性が重要であることを見出し,原紙から塗工層方向への透気加速度を測定することにより,より高い相関を持って耐ブリスター性を説明できることを明らかにしたので報告する。
(本文22ページ)


変貌する紙外観検査 ―テクノス アクティブ・センシング3010Hによる欠陥撲滅システムの構築―
株式会社テクノ・テクノス 山田 吉郎  

 紙業界は鉄鋼業界の冷間圧延と同様にワーク速度が極めて速いことが知られている。そのため比較的早くから自動検査化が進んできている。しかし従来のシステムは数十台のカメラをラインに設置せねばならずカメラ間の感度の差異や取り扱いなど多くの問題点を持っていた。テクノスは全く新しい原理で,たった1台のカメラで毎分10,000m視野幅1,666mmの時に0.33mm角の欠陥を捉えるシステムを開発した。このシステムは既に日本を初め,アメリカ,ヨーロッパ(ドイツ,フランス,イギリス,スイス,オーストリ),韓国で国際特許化された技術である。このこのシステムは焦点深度が極めて深くラインのどこにでも簡単に設置でき,また欠陥の原因を追求する情報を容易にハンドリングできる能力を持っている。微細欠陥から全面にわたる色ムラまでを確実に検出できる。
(本文29ページ)


抄紙工程向け新規エマルション型消泡剤
栗田工業株式会社 石田 敏雄  

 抄紙工程用の消泡剤として,高級アルコールをベースとしたエマルション型消泡剤が広く使用されている。このタイプの消泡剤はサイズ度に与える影響が少ないこと,脱気効果が強いこと等の機能上の長所に加え,価格が安価であることが多用されている大きな理由と考えられる。しかし,このタイプの消泡剤は保管時に増粘したり,適用先によっては消泡剤自体が系内に付着して抄紙系を汚したり,製品に斑点を生じる等の問題が発生することがある。
 そこで,本発表ではエマルション型消泡剤の製法や増粘対策について概説を行うとともに,抄紙系適用時の消泡剤付着トラブル事例の紹介,この様な問題を防止するために開発した新規エマルション型消泡剤クリレス230について紹介する。
(本文34ページ)


紙パ設備における電動機の絶縁診断及び余寿命推定
安川シーメンスオートメーション・ドライブ株式会社 技術本部サービス部 松永 博喜

 電機設備は現在の産業の操業を支える大きな柱であり,その電機設備の安定維持は関係者の重要な任務である。一時期までは,事故が起きてからいかに早く復旧されるかが重要とされていたが,いかに事故を起こさないかが重視されるようになってきた。
 この突発性の事故を防ぐには機器の的確な診断・保守すなわち「予知・予防保全」が必要となってきている。
 本来モータの寿命,耐久力は充分余裕を持って設計・製作されており,ある程度の消耗品(ベアリング,潤滑油等)の交換,一般清掃作業等を実施することで安定な運転が維持できる。
 しかしながら長年の使用中に大気中の塵埃がコイルの表面などに付着してコイルの冷却が阻害されると,コイルは加熱される。一般にコイルの温度が10℃上昇するごとに絶縁寿命は半分になると言われている。このようにモータなど電機機器の絶縁は,その環境,使用法等により人間の健康と同じように経年的に劣化(老化)していく。
 紙パ設備においても,近年更新需要が多くなり電動機についても余寿命診断と絶縁蘇生が行われるようになっている。
 本稿では,電動機の絶縁診断技術および回転機メーカとしてのノウハウと永年にわたる巻線の修理・巻き替えを通じて蓄積したデータを用いた絶縁破壊電圧の推定,さらには絶縁劣化による余寿命推定法について報告するとともに,巻線を更新することなく絶縁を蘇生することができる技術―エポキシ樹脂の真空加圧含浸技術を適用した巻線の延命策―についてもあわせて紹介する。
(本文39ページ)


GREENOXTM脱リグニンプロセスの新しい展開
ケミラ ケミカルズ オイ アルト パレン,ユッカ ヤカラ
宇部ケミラ株式会社 技術部 児玉 学

 GREENOXTMプロセスは,選択的でコスト競争力のあるクラフトパルプの漂白法である。過酸化水素の新たな利用法として開発されたこのプロセスは,モリブデン酸塩で活性化した酸性過酸化水素を脱リグニン剤として活用する方法である。このプロセスは,特に広葉樹クラフトパルプのECF漂白において,比較的穏和な条件で適用できる。その後の研究で,このプロセスにはヘキセンウロン酸除去にも効用があることが判明したので,紹介する。
 ヘキセンウロン酸は,広葉樹クラフトパルプに多く含まれており,二酸化塩素やオゾンと反応して有害な蓚酸を生成する原因物質と考えられている。このヘキセンウロン酸を漂白シーケンスの初期の段階で除去することが,後段での蓚酸起因のスケーリングトラブルを防ぐことになる。GREENOXTMプロセスでは,生成するぺロオキソモリブデン酸塩が,選択的にヘキセンウロン酸と反応することで,効果的に除去できる。反応生成物は主としてギ酸であり,蓚酸は少ない。また,活性化剤のモリブデン酸塩と過酸化水素使用量は,洗浄濾液を循環使用することで削減できる。
 これらのことを,ラボテストと工場テストにより確認。工場テストでは,一部排出するモリブデン酸塩の環境への影響を調べたが,極めて低いことが判った。
(本文45ページ)


乾燥工程における紙の寸法安定性の改善(第3報) ―実機における紙の幅方向特性と印刷障害―
三菱重工業株式会社 広島研究所 久野 廣明,蓮池 牧雄,鈴木 節夫,赤塚 正和  
三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 大平 和仁

 一般に,実機ドライヤで乾燥された紙の寸法安定性は幅方向に不均一で,これは幅方向の乾燥収縮率の違いが大きく関与していると言われている。本研究では実機ドライヤにおいて,収縮特性および寸法安定性に係る水分伸縮率,ストレッチの幅方向特性と乾燥拘束条件との関連を明らかにした。拘束乾燥実験の結果,拘束率の高い単段式ドライヤの収縮抑制に対する有効性が検証されたが,ストレッチや水分伸縮率など寸法安定性に係る幅方向物性値は,いずれも両端で高く,中央付近で低い不均一なプロファイルを呈する。また,単段式および二段式ドライヤで抄造された寸法安定性の異なる新聞用紙で,幅方向に不均一な物性をもつ抄紙機端部と均一な物性をもつ中央の巻取り紙を印刷し,ファンアウトを測定評価することで,幅方向の寸法安定性が印刷障害に与える影響を定量化した。寸法安定性に優れた単段式ドライヤの中央の巻取り紙においても,湿し水の吸収による幅方向への広がり率は印刷ユニット内で0.03%/%水分であり,ファンアウト量がもっとも小さい。また,単式ドライヤ端部の巻取り紙は従来の二段式ドライヤよりファンアウトは改善される。しかしいずれも,端部の紙は幅方向における寸法安定性の非対称な不均一さから,新聞見開き4ページ分を印刷した際の左右の見当ずれ量が異なるためファンアウト修正を行うとともに,寸法安定性のさらなる改善が望ましい。そのためには,乾燥過程において,拘束力のないオープンドロー部での紙端部の収縮抑制が有効と考えられる。
(本文61ページ)


両面段ボール板の弾性曲げ変形解析 ―中央位置に点・面一様集中荷重を受ける周辺支持板の場合―
帝人製機株式会社 松山工場 松島 理  
愛媛大学 松島 成夫

 点,面(長方形)状集中荷重を受ける4辺支持異方性両面段ボール長方形板(Lb=400,Hb=200mm)の応力および変形の弾性解析を試みた。その解析によって得られた長方形一様応力分布を議論し,その特性を明らかにした。得られた結果は以下のようなものである。段ボールのたわみwは,板の中央位置に強く生じ,4周辺では零であり,wの最大値wmaxは板中央位置にある。KL外表面の流れ方向(MD)および横方向(CD)の垂直応力σx,σyは板中央位置にあり,4周辺では零である。それら応力の最大値σxmax,σymaxは板中央位置にあり,w, σx,σyは中央位置を通るx, y軸に対し対称的に生じる。KL外表面のせん断応力τxyは,板中央に対して反対称的に生じ,その最大値は板中央からx=±Lb/4,y=±Hb/4の4位置付近に生じる。
(本文73ページ)


塗工層乾燥過程におけるラテックスとデンプンの相互作用
東京大学 大学院農学生命科学研究科 池田 敦,江前 敏晴,尾鍋 史彦  

 乾燥過程で発生する塗工紙のバインダーマイグレーションを,ラテックスとデンプンの相互作用の観点から考察した。ラテックス及びデンプンが,急激な乾燥工程を経た結果,塗工層表層に集中する現象はバインダーマイグレーションとして知られている。ラテックスのバインダーマイグレーションは,コバインダーとしてデンプンを添加した場合に発生しやすく,その程度は,デンプンの添加量を増やすにつれて促進された。デンプンの重合度が約33のデキストリンの添加は,重合度数百のリン酸エステル化デンプンに比べ,激しいラテックスのマイグレーションを引き起こしたが,グルコースでは,その影響は少なかった。デンプン自体のマイグレーション量も同様の傾向が見られた。デンプンの荷電は,ラテックスのマイグレーションに影響を与えなかった。アニオン性のリン酸エステル化デンプンでもノニオン性のヒドロキシルエチルデンプンでもラテックスとデンプンのマイグレーション挙動に差がなかった。ラテックスのマイグレーションを誘発するデンプンの特異性は,乾燥が進んで固形分濃度が高くなるとゲル化を起こしやすい性質にあると考えられる。塗工層の急激な乾燥で表層付近のデンプン及びラテックスの濃度が高くなり,その時にゲル化が起これば,急激な粘度の上昇を招き,デンプン分子及びラテックス粒子の拡散速度は大幅に低下する。すると,表層でのデンプン及びラテックス濃度が高いまま完全に乾燥固化する。これが,デンプン添加時のマイグレーションの原因になると予測した。
(本文82ページ)