2001年1月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2001年1月 

第55巻 第1号(通巻第598号) 和文概要


グランフロー(省エネと粘着除去の改善)&ストック・コンタミネーション・アナライザー
相川鉄工株式会社 技術部 金澤 毅  

 ここにご紹介するグランフローは平成12年度の紙パルプ技術協会の佐々木賞を頂戴した最新型のスクリーンである。特に紙パルプ業界が直面している粘着異物対策と省エネルギー対策の両面において画期的な改善をもたらしたスクリーンであるとの評価を頂くことが出来た。従来型のスクリーンとの違いは,リジェクト濃縮率を低減してスクリーンバスケット全域を有効に活用出来るようにしたこと,効率の良いハイドロフォイルに改良することによって回転速度を遅く出来るようにしたこと,そして新しい組み立て式バスケットの開発と適正なスリットプロファイルの設計によって開口面積を大きくし,かつ通過抵抗を大幅に小さくし,さらに除塵効果を高めたことである。本文ではグランフローの構造的特長とそれによって得られた性能的な改善を報告する。更に,本文ではオンラインの原料をサンプリングして粘着異物などの不順固形物がどの程度混入しているかを識別する装置SCAN(Stock Contamination Analyzer)をご紹介する。SCANはオンラインの原料を定期的にサンプリングして原料中の異物のみを分離,採取してこれをシートに漉き取るまでを自動的に行う装置である。
(本文35ページ)


オンライン表面繊維配向計の開発
日本製紙株式会社 技術研究所 阿部 裕司  

 製品の重要な品質を決定する物性値は,最終的にはオンラインで計測を行い,その変動を早期に発見して,迅速に操業条件にフィードバックする必要がある。繊維配向は,紙の基本構造を示すものであり,紙の力学的特性や寸法安定性を決定する重要物性といえる。我々は,この繊維配向を抄紙機上でリアルタイムに計測するオンライン繊維配向計を世界に先駆けて開発した。
 測定原理は繊維の側面部の反射光を捉えることにより,紙表面の繊維配向を計測するものである。入射光は紙面に垂直に照射され,円周上に配置した受光器で反射光強度を同時に計測することにより,高速計測性を達成した。
 1993年8月に,表裏計測用の2台のプロトセンサーを当社の小松島工場に設置し,高速で走行する紙の表面繊維配向をオンラインで定常的に計測可能であることを確認した。さらに,BM計(BM7000XL)用のオンライン繊維配向計を横河電機と共同で開発した。フィールドテストを小松島工場において2年間行い,BM計用のオンライン繊維配向計の商品化に成功した。製品版は,既に当社の2工場に3組導入され,コピー用紙や新聞用紙等の品質管理に2年以上活用されている。今後は,抄紙機の標準的計装設備の一つとして,導入されることを期待する。
(本文44ページ)


ISO14001の認証取得と運用実績
三菱製紙株式会社 八戸工場環境管理室 下村 徹  

 当社八戸工場は環境問題のグローバル化と多様化に対処するため,1998年4月よりISO14001に則った環境マネジメントシステムの運用を開始し,同年11月に国内の紙パルプ一貫生産工場として初めてISO14001の認証を取得した。
 1997年7月より認証取得のための活動を開始し,構築スケジュールに則り規格要求事項を満足するシステムを作り上げ,1998年4月より運用を開始することとなった。1998年10月に審査登録機関による実地審査を受け,同年11月の認証取得に至った。
 当工場のEMSは「下請負業者の管理方法」,「工場長によるシステム見直しの方法」,「過去からの経験に基づいた環境保全への取り組み」,「法規制に基づく届出等の図表化」を特徴としている。
 システムの運用を開始して3年目を迎えているが,これまで特に問題なく運用されているものの,「システムのスリム化」,「文書体系の簡素化」,「関連会議の統合」等のシステム上改善が必要と見られる点も見受けられている。また地球環境の継続的改善のため,地球温暖化対策等の地球規模の環境問題に対する取り組みを積極的に推進しなければならない。
(本文52ページ)


ユーカリクローン苗植林について
日本製紙株式会社 技術研究所 村上 邦睦

 紙パ企業を含め産業界が積極的に植林事業や試験植林プロジェクトを推進している。一方,パルプ用材植林は精英樹クローン植林による量的拡大が世界的な流れとなっている。日本製紙では21世紀に向け競争力のあるチップ集荷体制を築くため,これまでの量から量プラス質を重視した植林をめざしバイオ技術を導入した次世代植林の技術開発を進めている。これまでにバイオ技術の一部を用いて,チリ,ミャンマー,中国で試験植林を行ってきた。その結果,精英樹クローンによる植林は原木コストの大幅な引き下げとパルプの高収率化を実現し得る可能性の高いことがわかってきた。すなわち,自然界に存在するパルプ生産性が高く,生長の早い品種(精英樹)を選抜し,クローンで植林することができれば林地からの生産性は一気に倍増する。しかしながら,ユーカリグロブラスのように,挿し木増殖が難しい樹種では精英樹の均一な苗を大量に2〜3ヶ月間の植栽時期に事業植林に見合うコストで準備し提供することは非常に難しく,苗の低コスト化が長年の課題であった。挿し木増殖が困難なEucalyputssglobulusを例に,これまでに開発してきたユーカリのマイクロプロパゲーションと,その発根工程での光独立栄養培養技術,および苗の低コスト化を可能にした増殖工程での低温貯蔵技術について報告する。
(本文59ページ)


防湿包装紙『グリーンラップ』の防湿理論
王子製紙株式会社 機能材開発研究所 河向 隆,石井 悦子,八木 寿則 

 ポリエチレンをラミネートした防湿包装紙と同等の防湿性がありながら,再離解性を有する新しい防湿層を開発しその水蒸気透過機構について研究した。このような再離解性を有する防湿紙としては1970年後半に登場したパラフインワックスとラテックスからなる防湿包装紙がある。しかし,ワックスに起因する防湿性の劣化や滑りの発生などの課題があり普及しているとは言い難い。本報告ではSBRラテックスと平板状顔料からなる塗工層からなる新しい防湿包装紙の水蒸気透過機構について述べる。
 SBRラテックス被膜は通常の乾燥ではラテックス粒子の形は残存し成膜欠損が発生する。そこでSBRラテックス被膜の成膜欠損を残しながらポリエチレン被膜並の防湿性を示す方策を研究した。この防湿層について水蒸気の吸湿脱湿挙動や構造モデルのシミュレーションで考察した結果,SBRラテックスと顔料の界面部分は,常に水蒸気で満たされているような状態であり防湿性には寄与していない。しかし,水蒸気がSBRラテックス被膜中で平板状顔料を迂回しながら移動しその透過経路が大きくなつて拡散する曲路効果と,SBRラテックス粒子が水分により可塑化して膨張し防湿被膜の成膜欠損部分やラテックス粒子相互の間隙,あるいは顔料との界面の空隙が小さくなり防湿層の溶解係数を抑制する効果により高い防湿性を示す。
(本文65ページ)


スラッジ焼却炉除塵強化対策―大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する総理府令の対応―
中越パルプ工業株式会社 二塚工場 小幡 慎吾  

 中越パルプ工業株式会社二塚工場は,立山連峰を背景に自然に恵まれた富山平野に立地している。主な製品は,新聞巻取り用紙で年間約159,000tを生産している。
 当工場のスラッジ焼却炉は,平成12年4月1日から煤塵の排出基準が改定強化になり,現行の排出基準が0.5g/m3Nであったものが,0.08g/m3Nと,大幅な改定強化となった。そこで,排ガスの除塵強化対策を進めた。
 色々な除塵装置があるが,セラミックフィルターはテスト機の実績及び,他社実績の見学をとおして優秀であり,除塵装置を,セラミックフィルターに決定する。
 セラミックフィルターは,省スペース,除塵能力,フィルターエレメントの耐久性,耐熱性等が優れている。価格の高いのが難点ではあるが,基本性能が優れていて使用後も除塵能力,差圧が安定している。現在,焼却炉の除塵装置で主流であるバグフィルターは,3〜4年程度でフィルターの取替えが必要となる。この事を,考えればメンテナンス,除塵能力,排ガス処理技術が同程度で,フィルターの耐久性,耐熱性,省スペース,産業廃棄物の減少で優位であるセラミックフィルターは,今後も普及していくと考えられる。
(本文69ページ)


新ペーパースラッジ焼却炉の操業経験
大昭和製紙株式会社 生産技術部 和田 一孝  
大昭和製紙株式会社 本社工場富士 原 康浩  

 本社工場富士は首都圏に近い立地条件を生かしリサイクル工場の確立を目指している。近年のリサイクル紙需要に対してDIPプラントを増設する傍ら,この増設において発生するPSやエネルギーの使用増加に対応するPS焼却炉設備が必要となった。新PS焼却炉発電設備は平成10年6月発注,本年1月から試運転を開始し3月に使用前検査合格,4月15日から営業運転に入っている。
 補助燃料は化石燃料を使用せずに安定した燃焼と高いエネルギーが得られる廃棄物燃料を前提に検討し,高カロリーで性状に変動がなく,さらに安定供給できるカットタイヤを採用した。
 炉はカットタイヤに実績のある旋回流型の流動床を選定し,さらに付属設備は廃棄物燃料を使用していることから環境対策には万全を期したものとした。大気汚染物質の性能試験データにおいても,規制値を十分にクリアできるものであった。
 本設備の廃熱ボイラーは最大65t/hの蒸気を発生させ抽気復水タービンにより発電出力14,500kWを得る。またPS脱水機はPSの持つエネルギーの回収と安定燃焼から全基スクリュープレスに変更した。
 試運転からほぼ手直しも終り,4月に営業運転を迎え順調に稼働している。本文は各設備の概要や特徴の紹介。また運転状況やここ数ヶ月で発生した燃料系,灰処理系でのトラブル事例や対策状況の報告。さらにタービン復水器の冷却温水利用した省エネルギー事例などを紹介する。
(本文76ページ)


純酸素活性汚泥の操業経験
北越製紙株式会社 新潟工場 本永 洋一  

 当工場の排水処理施設は,8号抄紙機及びパルプ設備の増設によって増えた排水への対応,並びに工場の臭気対策を限られた設置面積中で行うために,新たな排水処理設備として,純酸素曝気方式の活性汚泥処理装置を選択した。
 本報告は,平成9年12月運転開始以降,約3年間の操業経験から,純酸素曝気活性汚泥処理装置の特筆すべき事項について紹介する。
(本文83ページ)


高効率型嫌気性排水処理について
日本製紙株式会社 江津事業所 廣田 真,牧田 雄介 

 日本製紙株式会社江津事業所は国内唯一の亜硫酸法によるパルプ工場である。また木材成分の総合利用をコンセプトに,溶解パルプを原料とするCMC(カルボキシメチルセルロース),セルロースパウダー,蒸解排液からはリグニン製品,核酸・酵母エキスも製造している。
 ところで江津事業所は1981年より嫌気性排水処理を導入しており,COD削減と共に発生するメタンガスをエネルギー源として利用してきた。運転開始から約19年が経過し,取り巻く環境も大きく変化してきたことから設備更新を検討した結果,最新型の嫌気性排水処理設備を導入する事を決定し,本年より運転を開始した。
 本システムは粒状の菌を処理槽内に保持することを特徴とするUASB法(Upflow Anaerobic Sludge Bed)をさらに発展させたもので,流量変動や負荷変動に対して影響を受けにくく,濃度の薄い大容量の排水や操業条件の変動にも追随性が高いことが実機で確認された。海外紙パ工場では導入実績も多いが国内では未だこれからの技術であり,循環型の生産構造という点でメタンガスの利用,余剰汚泥の削減など本技術には期待するところが多く,我々もより効果的な操業に取り組んでいく所存である。
(本文88ページ)


苛性化工程ファジー制御の操業経験
紀州製紙株式会社 紀州工場 山本 裕蔵  

 安定操業・各直での操業均一化・操業品質の安定化・省エネルギー・操業技術のレベルアップ・オペレータの負荷軽減を図るため導入した。
 平成11年10月に設置して調整を開始し,平成12年6月調整終了し運用に入った。性能確認のため,5月末から6月初旬にかけてテストを実施した。テスト期間が5日間と短期間であったことから品質の安定化,省エネルギーに関して顕著な改善の確認はできなかった。
 オペレータの負荷軽減についてはファジー制御ONが調整終了の6月初旬から7月末の定期修理まで連続しており,オペレータの操作はその間ほとんどなく監視が中心となっている。この事からオペレータの負荷軽減には有効であると考えられる。
 このファジー制御システムはFLS Automation A/S(Denmark)製でクヴァナパルピング株式会社が納入したもので,特徴はオペレータの判断と操作に近い動きと,グラフィックによるオペレータインターフェース及びユーザーでも比較的簡単にソフトの追加変更ができることである。
 今後さらに調整をする事によって苛性化にはなくてはならないシステムになるものと確信している。
(本文94ページ)


苛性化工程を利用した高品質軽カル製造技術
日本製紙株式会社 技術研究所 南里 泰徳  

 クラフトパルプの蒸解液再生工程である苛性化工程では,生石灰と緑液の反応により,白液(蒸解液)の生産と同時に軽質炭酸カルシウム(以下苛性化軽カル)が生成される。この苛性化軽カルは通常キルンで燃焼され生石灰に再生されるが,これを製紙用填料に使用し生石灰を直接補給すれば,キルンでの燃焼が不要となり,コストダウンのみならず,多大な重油使用量削減や炭酸ガス放出減に繋がる。ただし現状の苛性化軽カルは,不純物も多く,粒子形状は不定形塊状であり,製紙原料として用いられるものではない。そこで,苛性化軽カルの結晶構造の改質に取り組み,製紙用軽カルの工業的製造技術を確立した。
 現状の苛性化工程では,スレーカー内に生石灰と緑液が同時に添加されるため,生石灰と水による消和,消石灰と緑液による苛性化の二つの反応が不均一に起こっている。そこで,二つの反応を基本的に分離し,それぞれの反応条件のコントロールを検討した結果,針状,紡錘状,米粒状などの様々な形状の軽カルが得られることが分かった。それらの軽カルはワイヤー摩耗性,不透明度などに良好な品質が得られ,中でもアラゴナイト結晶を有する針状軽カルは,市販のアラゴナイト軽カルに優るとも劣らぬ高不透明性を有していた。それら基礎実験の結果を基に,日本製紙岩国工場にてパイロット,実機設備とスケールアップテストを進めた。その結果,白液と軽カルを同時に製造する大量生産技術を確立し,本年秋より針状苛性化軽カルの生産体制に入った。
(本文103ページ)


ヤヌスカレンダーの操業経験
王子製紙株式会社 米子工場抄造部 近澤 彰

 米子工場のN―1マシン・N―1コーターは,日産700トンの上質塗工紙生産能力を持つ大型高速設備で1997年9月に営業生産を開始した。
 N―1コーターは,最大塗工幅7,290mm,設計塗工速度1,600m/分の単段塗工式オフマシンブレードコーターであり,コータ本体設備は三菱重工業製となっている。また,N―1コーターには,フォイト・スルザー社製の「ヤヌスカレンダー」を世界で初めてオンラインに設置し,オフラインのスーパーカレンダーと同等のグロス・平滑度の塗工紙の生産を可能としている。ヤヌスカレンダーは,2―スタック,5―ロールの構成となっており,常用塗工速度1,500m/分,線圧150〜250kN/mにて使用している。リールパートでは,グロス仕上げした塗工紙を高速で巻取るために新型の「TNTリール」を採用した。本報では,ヤヌスカレンダーの設備概要と操業経験について紹介する。
(本文109ページ)


キシラナーゼのオンサイト生産とパルプ漂白への導入
王子製紙株式会社 製紙技術研究所米子研究室 福永 信幸  

 王子製紙では,1998年にキシラナーゼによる酵素漂白を,日本で初めて米子工場のL系クラフトパルプ漂白工程に導入した。使用する酵素については,パルプ漂白に適するキシラナーゼを高生産する微生物を見出し,この微生物の大量培養を含む酵素の量産化技術を開発した結果,オンサイト生産に至った。ヨーロッパや北米等では市販酵素を用いて酵素漂白を行っており,酵素のオンサイト生産は世界の紙パルプ工場で初めてのことである。酵素製造工程では,本キシラナーゼの特性とオンサイト生産の利点を生かし,培養液を酵素としてそのまま使用するなどしているため,設備投資や製造コストを削減することができた。酵素漂白を導入することによって漂白薬品や排水中のAOXが3割程度削減することができ,現在も順調に操業を行っている。日産1,500トンあまりの米子工場製品は,全て酵素処理パルプを原料として製造されている。酵素漂白は,塩素と二酸化塩素の価格差により,将来のECF漂白においてさらにコストダウン効果を発揮することが期待される。
(本文114ページ)