2000年12月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2000年12月 

第54巻 第12号(通巻第597号) 和文概要


カレンダーの理論と展開―ハードからソフトニップカレンダーへ ―
株式会社淀川製鋼所 鋳造部 小野 豪臣  

 抄紙機において,カレンダーパートは製品の品質に対し最終的に影響を与えるパートとして重要であることは言うまでもない。カレンダーロール本体の精度,線圧変化に伴うロール撓み等の弾性変化,及び,温度ムラにより引き起こされるロールの熱膨張変位,変形等の色々な因子が複雑に品質面に影響を及ぼし,従来の多段式ハードニップカレンダーの作業は豊富な経験と技術が必要とされてきた。
 近年,カレンダーパートにおいては,品質の安定,操業性の向上を計るため,種々のアクチエーターが開発されてきた。また,平滑度の向上,紙厚の確保,印刷適正の向上等,品質面から新聞用紙はむろん,全ての分野において,従来のハードニップカレンダーに変わりソフトニップカレンダーが急速に普及してきている。ここではカレンダーに求められる品質要求と,それに影響を及ぼす因子をハードニップとソフトニップとを対比しソフトニップの有利性を考察する。また,CD方向のキャレパープロファイルの修正をロール本体で行うことのできる新タイプのロールが開発され,大型ソフトニップカレンダーに使用されてきている,この新タイプのロールの作動原理,制御システムを含め紹介し,その修正能力について検証する。
(本文1ページ)


カレンダリングコンセプト―カレンダリングの将来展望―
住友重機械工業株式会社 機械事業本部製紙・工作機械センター 岩永 圭 

 カレンダの新規な革新的技術はいろいろなグレードの紙を仕上げる方法を変えつつある。これらはより速い速度で操業可能で,しかもより良好な表面特性と構造特性を有する紙を生産できるので,従来よりオンライン操業の可能性が高くなる。バルメットは最近,高速ソフトニップカレンダの外に,新たにOptiLoadマルチニップカレンダとOptiDwellロングニップカレンダを稼働させた。
 カレンダリング工程が指向しているグレード別の展望は,新聞用紙から,非塗工上質紙,SCグレード,各種塗工紙にまで渡っている。
 OptiConcept抄紙機はオンラインカレンダリングを大いに利用するであろう。しかし,ダブルコートやトリプルコート印刷用紙のような高級グレードの仕上げでは,オフラインカレンダリングが主要なコンセプトとしてあり続くものと予想される。今後,ある種の非塗工中質紙や上質紙の仕上げにどれほど早期にどの程度まで新しいロングニップカレンダリングを適用できるかが注目されてきている。
(本文8ページ)


最新のリールについて―センター巻きTFリール―
石川島播磨重工業株式会社 紙・プラスチック設計部 小竹 寛  

 近年,巻取サイズの大型化,及び製品の多様化が進んでいる。従って,皺や紙切れなく製品を巻取ることが以前よりも難しくなってきた。これらの問題を解決するためには,最適なトルクで巻取ることが必要である。
 しかし,従来式のサーフェスリールでは巻取り時のトルクがニップ圧に依存するため,トルクの制御には限界があり,これら最近のニーズを十分満足するが難しくなってきた。そこでこれらの問題を解決するために,弊社ではセンタードライブ式の新型“TFリール”を開発し,巻きのトルク制御を自由に制御可能となった。
(本文16ページ)


MHリール―CW及びMHリール―CWCについて―センタワインドリール―
三菱重工業株式会社 道浦 克彦  

 抄紙工程の効率化により,抄紙機の高速化がますます進み,それに伴って巻き取りロールの大径化が進んでいる。この様な状況でしわや破断無く大径に巻き取るためにはセンタワインド式リールが有効であることを理論的,及び実験的に確認した。
 弊社は2種類のセンタワインドリール,つまりMHリール―CW及びMHリール―CWCを製作,納入している。
 MHリール―CWは従来式サーフェスリールで発生するしわ,破断の発生要因のうち,不均一及び変動に関する要因をなしに巻き取ることを基本コンセプトとして開発されたリールである。運転中,スプールは水平レール上を移動するのみであり,また,ニップやトルクの受け渡しもないため,理想的な巻き取りができる。国内初号機がスーパーカレンダー紙巻き取り用リールとしてH9年5月に運転を開始しており,順調に稼動している。
 またMHリール―CWCは従来式サーフェスリールにプライマリ及びセカンダリセンタ駆動装置を設置した構造をしており,従来式サーフェスリールを部分的に改造するのみでセンタワインドリールに改造可能であり,国内各社でセンタ駆動装置を使用した方が大径巻き取り可能である運転実績が得られている。
(本文22ページ)


抄紙機におけるBM計の最先端制御技術について
横河電機株式会社 IA事業本部環境機器事業部P&Wシステムセンター 佐々木尚史

 横河電機鰍フBM計(BM9000CS)には,さまざまなタイプの抄紙機に対応した各種制御機能が搭載されている。本稿では,それらのうち,カレンダーにおけるCLPプロファイル制御の最新アルゴリズムと,ドライヤ乾燥モデルを用いた新しい蒸気圧抄替制御について紹介する。
 最新のCLPプロファイル制御は,時定数の長いプロセスでも最短時間で目標値に整定させることのできる有限整定応答法を適用し,さらに制御定数を自動的に決定するオートチューニング機能と,周期外乱に応じて自動的に制御ゲインを最適調整する適応制御機能を備えている。
 ドライヤ乾燥モデルを用いた新しい蒸気圧抄替制御は,王子製紙株式会社殿と現在共同で開発中であり,抄替後の蒸気圧目標値の予測精度向上と,チューニングの簡素化を目指している。
(本文30ページ)


品質センサの基礎と最新のBM計(QCS)
ハネウェル株式会社 紙パルプ営業技術部 渡辺 憲幸  

 現在,抄紙工程で,当り前の様に使用されているQCSではあるが,当初は,計測/品質管理を目的として開発されたものであった。その後,流方向制御,幅方向制御や各種の最適化制御が付加され,今日では,DCS等の制御システムの他,生産管理システム等とも統合される様になってきている。
 今回,もう一度QCSの基本部分である品質測定センサについて説明する機会を頂き,改めてその構成,原理を振り返って考えてみたい。
(本文40ページ)


シート欠陥検査システムについて―シート欠陥検査システムの概要と今後の動向―
オムロン株式会社 ビジョンシステム事業部技術部 荻野 健次 

 シート欠陥検査システムは,1960年代に抄紙機,コータなど製紙工程で発生する穴,汚れなどの欠陥を検査するために開発された。その後,生産ラインの高速化,大型化による生産性向上,製品高品質要求に対応するため,検査性能の向上,機能の強化が継続しておこなわれてきている。
 シート欠陥検査システムの推移は,機能などから大きく4世代に分類でき,第2世代においてCCDの出現により現在使用されているカメラ方式,μCPUの出現によりデータ処理機能と操作性改善などが実現し,現在の原型が確立した。さらに第3世代では,欠陥録画システムによる欠陥のビジュアル化へと発展し,現在システムとして欠陥情報と録画画像の一体化が実現し,第4世代へと進化してきている。シート欠陥検査システムは,人間と機械との調和を考慮しながら時代に適合した性能・機能と利用可能技術を積極的に取り込みながら進化してきた。また,製紙工程での使われ方も欠陥の検査だけでなく,欠陥録画画像により発生源への対応,後工程での事前準備など生産性改善のツールとしてその重要性が高まってきている。
 今後の動向としては
 1) センシングにおいては,人間による目視検査同様,モノクロ検査からカラー検査への発展。
 2) 欠陥録画データの利用として,人間の頭脳に相当する判断をおこなう欠陥種類判別システムの実用化。
 3) 急速に普及してきているIT革命のリモートメンテナンスなどへの活用
 4) 映像信号の欠陥検査以外への利用
などが予想され,今後とも機械にできることは機械に任せ,人間はより創造的な仕事ができるような形態で進化していくと予測される。
(本文47ページ)


N2マシン ドライパートの操業経験
日本製紙株式会社 八代工場抄造二課 門間 信也  

 1998年2月に営業運転を開始した,日本製紙株ェ代工場の最新鋭機,N2マシンは,設計最大抄速1,700M/Min,ワイヤ幅9,050mmの新聞専抄マシンで,当工場が国際競争力を強化する目的で,旧2,3マシンのスクラップアンドビルドにより建設された。
 また,この高速・広幅マシンにより,新聞用紙の効率的な生産を図り,高品質の新聞用紙の九州地区への安定的な供給体制を築くことも大きな目的の一つである。そのために,世界初・国内初の最新技術・設備を取り入れ,徹底的な自動化により省力化を図るなど,品質・操業性・コスト面での優位性を徹底的に追求したマシンとなった。
 本報では,これまでのドライヤーパートからリールパートにおける操業経験について述べる。ドライヤパートは,国内初のプレ・アフタ共オールトップデッキタイプで操業性を重視した設計で,シリンダ配列等は当社の技術に基づいて設計されている。カレンダーパートには,ソフトカレンダーを取り入れたことにより,紙表裏差の少ない,優れた印刷適正を持った新聞用紙が抄造できた。品質面では,新聞社での紙の走行性,着肉も良好で好評を得ている。その他,断紙・通紙についても述べる。今後,N2マシンは設計最大抄速を目指し,品質・諸効率も更なる向上に向け取り組む予定である。
(本文54ページ)


N―6マシンの操業経験―ドライパートの操業―
王子製紙株式会社 苫小牧工場 大場 正昭  

 1910年より操業を開始した王子製紙鞄マ小牧工場は,新聞用紙生産工場としては世界第一位の規模を誇っている。将来の新聞用紙の安定供給と顧客のニーズに答えるべく,最新鋭の技術を導入して建設したN―6マシンが1998年4月に稼動を開始した。稼動後約2年が経過し様々な問題点があったものの,現在では常用抄速1,450〜1,550m/minで操業をしている。今回はドライパートの操業経験として,以下の4点を報告する。
 1. ドライヤーシリンダーへのCARBベアリングの採用(当時国内初の採用であった)
 2. CARBベアリング採用による固定サイホンの改良(カーボンシール部の改良)
 3. カンバスガイダーの改良(問題点と対策案)
 4. TNT―Cの採用(リールパートでの親巻取大径化のため導入した)
 N―6マシン稼動後からの2年間で得た操業経験・設備改善を踏まえながら,新しいアイデアを採用して常用抄速1,600m/minを目指し工場一丸となって努力していきたい。
(本文59ページ)


産業技術遺産保存への取り組み
紙パルプ技術協会 飯田 清昭  

 現在,各産業界で,主として戦後の技術遺産を保存する活動が進められている。一方,国ベースでは,国立科学博物館が中心となり,産業技術史資料の評価・保存・公開に関する調査研究を進めている。その目標は,1. 産業技術の発展に関する資料を収集すること,2. 産業技術史資料の情報ネットワークを作り上げ,それに寄与する情報を発信すること,3. 産業技術の継承と発展に対し社会的な関心の向上を目指すこととしている。
 紙パルプ技術協会でも,産業技術(主として戦後を対象として)の保存・継承を如何に進めるべきか,総合企画専門委員会が中心となり検討を進めており,その内容を紹介する。併せて,この活動には,多くの方々の協力が求められ,ボランティアとしての登録を募集している。多くの方々の申し出を期待する。
(本文63ページ)


酵素脱墨のメカニズムに関する研究(第3報)ー酵素脱墨のメカニズムに基づく最適フローの開発ー
日本製紙株式会社 技術研究所 杉野 光広  
北海道大学 大学院工学研究科 高井 光男  

 酵素脱墨法を実用化するためには,酵素脱墨のメカニズム解明と,それに基づく最適処理フローの確立が必要と思われる。第1報では酵素脱墨における機械力の重要性を指摘し,第2報では,酵素活性の重要性と酵素利用による機械力低減の可能性を指摘した。これらの結果を踏まえ,本報では,様々な酵素処理フローを比較し,最適酵素処理フローの確立を検討した。その結果,トナー印刷紙の脱墨工程で一般的に用いられているニーディングはヘアリートナーからクリーントナーへの変換率を約2倍に向上させ,脱墨に非常に効果的であることがわかった。また,酵素処理との組み合わせで,その効果が相乗的に働き,パルパーへの酵素添加の場合,クリーントナー変換率を72%から90%へ向上させ,完成パルプにおける残トナー面積率を著しく減少させることがわかった。逆に,酵素の利用により同一残トナー面積率にするのに,ニーダー負荷を低減できるため,繊維への損傷も低減できることが示された。一方,酵素処理方法としてはパルパー添加よりもニーダーへ添加し,その後,撹拌を伴う熟成段を設けることで,同一機械力における残トナー面積率を低減できることが明らかとなった。また,この最適化された処理フローは酵素無添加に比べ,ニーダー負荷を半減できることから繊維への損傷は低減し,紙力も若干向上した。一方,この最適化された酵素処理フローは現状のアルカリ処理に比べても,同一残トナー面積率で比較すると,ニーダー負荷を10%低減できることが判明した。
(本文69ページ)


ビデオカメラ用包装材のCO2排出量評価
ソニー株式会社 テクニカルサポートセンター 野口 勉,佐竹 一基 社会環境部 冨田 秀実

 本報告は,ビデオカメラ用包装材として使用されている段ボール,古紙パルプモールド,および発泡スチロール,比較検討用として新品パルプモールド,100%再生発泡スチロールの原料輸送,包装材製造,電気製品製造所納入までのCO2排出量評価を行い,環境対応包装材の設計指針を得ることを目的とした。
 その結果,以下の知見が得られた。
 1) 古紙パルプモールドはEPSに比べてCO2排出量が−77%少ない。これは,100%古紙を用いていること,発泡プロセスがないこと,また積み重ねて輸送できるためである。
 2) CO2排出量削減のため緩衝材をEPSから古紙パルプモールドに代替する場合,緩衝材重量をEPSの約4倍以内に抑えることが必要となる。
 3) 包装材トータル(段ボール+緩衝材)のCO2排出量は,古紙パルプモールドの場合0.57kg,EPSの場合は0.87kgとなった。緩衝材に古紙パルプモールドを使用することにより段ボール使用量が1.4倍多くなるが,CO2排出量トータルはEPSに比べて34%削減できることがわかった。
 以上の結果は,包装材の廃棄行程を含めていない。今後,廃棄行程を含めたCO2排出量評価を試みる必要がある。
(本文77ページ)


コンピューターシミュレーションによる最適な修正蒸解法の選択
日本製紙株式会社 技術研究所 宮西 孝則  

 近年MCC法,EMCC法,ITC法,Lo―Solids法といった脱リグニン改良法による新しい蒸解プロセスの導入が盛んに行われている。修正蒸解法の設備上の特長は,白液の分割添加,向流蒸解,黒液の分割抽出,蒸解ゾーンのハイヒート洗浄ゾーンへの拡張である。本研究では連続蒸解釜の数学的モデルを開発し,広葉樹材液相半気相ツーベッセル釜(ハイヒート洗浄付)のコンベンショナル法(CK法)から修正蒸解法の改造効果を予測した。その結果,同一カッパー価における収率と粘度を比較すると,コンベンショナル法(CK法)<MCC法<Lo―Solids法<EMCC法<ITC法,の順に高くなった。アルカリ濃度,温度,溶存固形分濃度などの釜内プロファイルもこの結果を裏付けていた。しかしEMCC法とITC法は操業の不安定要素を抱えており,増産に弱いことが指摘されている。一方,Lo―Solids法はチップコンパクションが低く,MCCゾーンが並流なのでハンギングが起こりにくく,チップレベルが安定して操業できる利点がある。以上のことから,生産ペースに応じて下記のように蒸解法を選択する事が望ましい。
 ・生産ペースに余裕のある場合は,歩留まりと収率の高いEMCC法かITC法を選択する。
 ・生産ベースが高い場合は,操業安定性に優れたLo―Solids法を選択する。
 ・尚,過負荷でハイヒート洗浄ゾーンがない釜の場合は,修正蒸解法に改造すると収率とパルプ粘度が低下するので,コンベンショナル法のままで操業する。
(本文84ページ)