2000年11月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2000年11月

第54巻 第11号(通巻第596号)


抄紙機ドライヤーについて―設備と運転の今昔―
国策機工株式会社 藤井 博昭  

 グローバリゼーション経営の物指しがROEに移ると,域内ではM&Aと,企業内では現有設備の効率の極大化投資に向かう。つまり増速である。その意味では久しく取り残されていたドライヤーが脚光を浴びる。しかし作る側での水素結合に対する配慮と,使う側での限界応用とのミスマッチが起きないとも限らず,目的に合わせた品質と効率の整合性のある投資バランスのセンスが必要である。改めて技術の原理原則に立ち帰る時でもある。
(本文3ページ)


高速マシンにおけるドライヤ
三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 製紙機械設計課 大平 和仁

 製紙機械の高速化に伴い,その乾燥工程であるドライヤパートに要求される性能は,大きく変化してきた。たとえば,薄い湿紙を高速で走行させる手段や断紙トラブルの処理方法,高速運転ゆえに劣化しがちな紙品質の維持・向上など,たいへん厳しい性能が要求されている。それと同時に,従来から取り組んでいる省エネルギ,省力化についても更なる改善が要求されている。
 本稿では,このような高速マシンにおけるドライヤに要求される性能に対して,当社の具体的な取り組みについて説明し,当社が目指しているドライヤのコンセプトを乾燥メカニズムと関連付けながら紹介する。
(本文14ページ)


板紙のドライヤーに関する最近の設計思想
石川島播磨重工業株式会社 紙・プラスチック設計部 関 賢

 近年,抄紙機はスピードアップし,板紙マシンにおいても設計抄速1,000m/minを超えるマシンも現れてきている。しかし,ほとんどの板紙マシンは現状抄速1,000m/min以下であり,従来の設計思想を適用しても実用上,特に問題はないと考えられる。
 一方,上質,新聞マシンに関しては,抄速は飛躍的に上がっており,ドライヤについても新しい設計思想が要求されてきている。
 そこで,本稿では,シングルティアにおけるデュオスタビライザーとドリルドカンバスロールのシートの走行安定性に対する有効性,キャリア通紙に対するエア通紙の利点,カンバスさらにはワイヤ,フェルトなどの抄紙要具の洗浄に大きな効果を発揮するデュオクリーナー,などの機器を紹介し,板紙マシンにとらわれずドライヤに関する最近の設計思想について述べる。
(本文21ページ)


ヤンキードライヤおよび関連ドライヤ技術
バルメット株式会社 山崎 秀彦  

 弊社の第1号ヤンキーの図面は1891年に作製され,その3年後に原型となる製品がGoteborg製紙工場に納入された。このヤンキーはその後1980年代まで運転され,最後に北アフリカのある製紙工場に売り払われた。以後,現在まで450台のヤンキーシリンダーがKarlstad(スウェーデン)より出荷されている。材料,製造法の改良に加えて,コンピューターによる工業デザイン化,鋳造プロセスの精密化,コンピュータ制御による研削が行われている。今や,抄速2,000m/min以上のティシュマシンにおいてもジャンボサイズのヤンキードライヤを目にすることができる。
 ティシュマシンでは,乾燥部はヤンキードライヤとフードが主役であるが,これらに加えて,近年は革新的なTAD(Through Air Drying)技術の導入も行われ,大幅な品質向上がもたらされる。
 一方,板紙マシンにおいてもヤンキードライヤは,従来ヨーロッパでMGドライヤとして乾燥部に設置されている例がよく見られた。近年の傾向としてはマシンの改造によりMGドライヤは除かれる傾向にあり,目的の表面品質はカレンダーにより付与するというコンセプトに移ってきている。
 本稿では,ヤンキードライヤ,フード,TADの技術を紹介するとともに,斬新なドライヤ技術として,紙・板紙用のインピンジメントドライヤ,板紙用の独創的なストレートスルーのプレスドライ方式であるコンデベルトを紹介する。
(本文27ページ)


抄紙機廻りのエアシステム技術―ドライヤーパートのベンチレーション及び走行性改善―
住友重機械工業株式会社 プラント・環境事業本部 増田 浩二  

 近年の抄紙機の抄速アップに伴い,ドライヤーパートはかつてのトータルダブルカンバスの時代を経て,シングルカンバスが導入され,今日ではトータルのシングルカンバス化も既に実現に至っている。
 抄紙機の変化と共にエアシステム技術も進歩してきているが,その中でも特にベンチレーション及び紙匹の走行性改善は重要性が要求される。この点を中心に住友/Valmetの高露点密閉フードとブローボックスの基本から最新技術動向までを紹介する。
 住友/Valmetの高露点密閉フードのメリットとして,1)省エネルギー,2)走行性改善,3)製品の品質向上を上げることが出来る。一方,住友/Valmetのブローボックスは,大きく分けて,1)ポケットベンチレーター,2)シートサポート,の2つの目的に分類される。製品,抄紙機コンセプト,抄速等に合わせて,豊富なタイプを供給する体制を整えている。
 重要なことは,今日これらのエアシステム技術は抄紙機の技術及び抄造そのものの技術と切り離して考えることは出来なくなっていることである。
(本文39ページ)


最新製紙技術とドライヤーカンバス
敷島カンバス株式会社 技術部 大森 良行  

 抄紙機のドライヤーパートは多筒式ドライヤーが開発されて以来,乾燥理論や機械構造の大きな変化はないものの着実に広幅化と高速化が進んできている。その最新製紙技術として高速抄紙をポイントにドライヤーカンバスに関する弊社の研究内容を紹介する。特に今後主流となると予想される単列ドライヤーシステム用カンバスについて,構造,通気度,表面性,光反射特性を詳しく説明する。あわせて単列ドライヤーとエアーキャップを併用したドライヤーに関する知見を報告する。
 また,古紙利用が進む中でカンバス汚れによる欠点や断紙の有効な解決策の一つとしてカンバスロールのオールインサイド化について紹介し,カンバスの走行安定性に関する知見を報告する。
 その他の項目として,カンバスの表面性,随伴空気流,シート走行安定装置との相互関係についての報告の他,カンバスの安定操業への工夫,最近の高機能素材に付いても言及する。
(本文46ページ)


51号抄紙機ドライパートの操業経験
大昭和製紙株式会社 本社工場 吉永製紙部 伊藤 学,畔高 潤

 51号抄紙機は,既設の4台のマシンで抄造していた特殊板紙を移抄するとともに,新たに高級板紙の分野にも進出すべく,平成4年5月に稼動した。日産能力は250t,ワイヤー幅は3,950mm,リール紙幅は3,550mm,設計抄速は450m/分であり,マシン本体設備および主要付帯設備は小林製作所より供給されている。操業開始から8年が経過した現在でも,印刷適性,作業性などの品質面において,各ユーザーの皆様から高い評価を頂いている。
 51号はオンマシン上に4コーターヘッド+2スタックのソフトカレンダー+6段2スタックのハードニップカレンダーをもつ板紙抄紙機である。現在,洋紙の塗工紙においてもオンマシンコータ化,オンマシンカレンダー化が進行しつつあるが,51号はその先駆けとして,操業性・作業性・生産性・省力化の面から様々な技術が集約されたマシンであると言える。設備単体では目立った最新技術はないが,アフタードライヤ以降の操業安定性にはかなりの英知を注ぎ込んできた。本報では51号抄紙機の設備概要と,ドライヤーからリールまでの操業経験を中心に報告する。
(本文56ページ)


N8m/cドライヤーパートの操業経験
北越製紙株式会社 新潟工場 工務部抄造第6課 吉川 磨

 新潟工場8m/cは,コート紙・軽量コート紙の生産能力向上,品種構成の充実,品質の向上を目的に,1998年7月に稼働した。生産性・品質の両面から各所に最新技術を取り入れた当社3台目の大型オンコーターマシンとして,順調な立ち上げから2年を経過しているが,更に高いレベルの効率と品質を目指し,現在も改善を進めながら操業を行っている。この報文は,当社にとって初めての導入となった単列ドライヤーを中心に,ドライヤーパートの操業経験について述べている。
 N8m/cのメインドライヤーは,マシンスピードの高速化に伴い,より安定した走行性と品質を確保すべく,シムランドライヤーを導入している。シムランドライヤーは,反転群の操業性,サクションロール(VACロール)の操業,ロープレステール通紙,カンバスロールのインサイド化等,注視する点も多かったが,結果としては,概ね良好な操業性であったといえる。但し,細かな問題点も幾つかあり,それらの設備についてはこの2年間の間に,操業性を上げていく為の幾つかの改善が実施され,それぞれ効果を挙げて現在に至っている。
 品質・生産共に,順調に推移してきているN8m/cであるが,より高いレベルでの操業が望まれているのも事実であり,現在も多くの改善項目について検討中である。今後も設備の実力を充分に発揮し,高い生産性と品質向上を実現,維持していくべく,更なる工夫と改善を積み重ねていかなければならないと感じている。
(本文63ページ)


循環型社会とバイオエネルギー
筑波大学名誉教授 熊崎 実  

 20世紀は化石エネルギーの世紀である。来るべき21世紀は脱化石エネルギーの世紀になるであろう。本稿では,新エネルギーとしてのバイオマスの特徴,木質バイオマスの供給,木質バイオマスを利用した小規模分散型発電技術について論じ,日本林業におけるバイオマスエネルギーの位置付けについて言及する。
(本文69ページ)


カチオン性高分子とPEOを用いた新規歩留システムの開発
日本製紙株式会社 技術研究所 小野 裕司,上條 康幸,宮西 孝則  

 近年の抄紙機の高速化に対応するために,高歩留・高濾水性のリテンションシステムの開発が望まれている。我々はフェノール性水酸基を骨格に持つビニルフェノール(VPH)と,カチオン基を有するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(VBTMAC)の共重合体であるカチオン性ポリビニルフェノール(VBTMAC/VPH)を合成し,この高分子化合物とポリエチレンオキシド(PEO)を組み合わせた歩留システムに関して検討を行なった。カチオン性ポリビニルフェノール中の,カチオン基とフェノール性水酸基のモル比が約30/70の場合には,従来のフェノール樹脂(PFR)/PEOシステムと比較してファインリテンションと濾水度が優れている結果が得られた。
 また,既存のカチオン性凝結剤とPFRとを適切な比率で添加することにより,カチオン性ポリビニルフェノールと同様の効果を発揮するものと考え,三種の高分子から構成されるpDADMAC/PFR/PEOシステムについても検討を行なった。pDADMAC/PFR/PEOシステムは,凝結剤と凝集剤を組み合わせたデュアルカチオンシステムやPFR/PEOシステムよりも添加効果が高く,最適なカチオン基とフェノール性水酸基のモル比は45/55であった。添加したpDADMACの四級アミノ基は繊維とPFR双方に吸着するために,カチオン性ポリビニルフェノールの場合よりも四級アミノ基の比率が高くなったものと思われる。
 pDADMAC併用時の,PFRの繊維への吸着量を測定した結果,pDADMACを添加するにつれてPFRの吸着量が増加した。pDADMAC/PFR/PEOシステムが従来のネットワークシステムよりもファインリテンションと濾水性に優れている理由について,衝突頻度と繊維への吸着性の面から検討を行なった。衝突頻度と吸着量の関係から,PFR/PEOシステムの場合には粒子間の架橋に関与するのがPFR―PEO複合体のみであるのに対して,pDADMAC/PFR/PEOシステムでは粒子間の架橋に関与するのがPFR―PEO複合体とPEOであることが,添加効果を向上させている理由であると考えられる。従来,PFR/PEOシステムは抄紙系の電荷の影響を受けないと考えられていたが,本研究の結果から凝結剤の添加により更なる高歩留・高濾水性が達成できることが明らかとなった。
(本文79ページ)


紙の表面ラフニング機構に関する研究(第3報)プレスドライングによる紙の表面ラフニング抑制効果
東京大学大学院 農学生命科学研究科 佐々木 潔,江前 敏晴,尾鍋 史彦  

 プレスドライングは,乾燥工程中に同時に圧力を保持する工程であり,繊維間結合が強くなるためラフニングの抑制効果が予想される。本研究では,TMPとLBKPから手すき紙を調製してプレスドライング処理を行い,水への浸漬処理によるラフニングの程度を測定し,カレンダリング処理した紙との違いを検討した。
 浸漬処理では,プレスドライング処理試料はカレンダリング処理試料に比べ,吸水量が低く抑えられることによる表面ラフニング抑制効果が確認された。吸水量を同一にして比較した場合でも,特にTMPのプレスドライング試料では,明らかなラフニング抑制効果が確認された。しかし,LBKPでは,カレンダリング試料でも繊維の膨潤,収縮にある程度の可逆性があるためか,プレスドライング試料の優位性は認められなかった。TMPで見られたプレスドライングのラフニング抑制効果は,熱と圧力の効果が及んだ表層付近では繊維が角質化したために繊維壁が膨潤しにくくなり,繊維が管状の形態を回復しなかったための効果であると考えられる。また,吸水した水は主に繊維間の空隙を通ってゆっくりと浸透していくと考えられる。
(本文92ページ)


クラフトパルプの塩素系漂白におけるクロロホルム生成―固相マイクロ抽出法による分析と評価―
筑波大学農林工学系 大井 洋,増沢 喜良

 揮発性物質の分析法である固相マイクロ抽出(SPME)/ヘッドスペース―GCを取上げ,漂白におけるクロロホルム生成量の評価を行った。パルプとリグニンモデル化合物を密閉系で反応させ,系中のクロロホルムをSPMEで濃縮し,ただちに分析する方法を考案した。この方法は,再現性がよいこと,溶液中の塩濃度の影響が小さいこと,分析精度が高いことが確認された。リグニンモデルのグアイアコールとシリンゴールを過剰の次亜塩素酸塩で処理したところ,モデル重量の120,000ppmのクロロホルムが生成した。カッパー価14.4のユーカリクラフトパルプを有効塩素添加率2.5%(比0.17)で処理したところ,塩素,次亜塩素酸塩,あるいは二酸化塩素処理で,それぞれパルプ重量の280ppm(pH12.1後),450ppm(pH10.7)あるいは20ppm(pH4.01)のクロロホルムが生成した。C―E―H―DおよびD―E―D―D漂白シーケンスの推定値はそれぞれ,430ppmおよび29ppmとなった(パルプ700万tに対してそれぞれ,3,000tおよび200t)。工場廃液を分析する場合にも,SPMEは簡便で信頼性があり,C,Ep,H,D各段の廃液中の濃度はそれぞれ,0.47ppm,0.44ppm,12ppm,0.18ppmであった。二酸化塩素によるクロロホルム生成機構についてはさらに検討が必要である。
(本文101ページ)