2000年8月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2000年8月 

第54巻 第8号(通巻第593号) 和文概要


大判カッターと大判(平判)包装機の連結システム
イリス商会株式会社 桧垣 達雄  

 紙パルプ業界での仕上げ部門合理化の今後の1つの方向性が,カッターと包装機の連結システムである。既に小判カッター包装機の直結は,PPC用紙業界ではあたりまえとされてきた。
 この小判カッターとしてPPC用紙業界で世界一の実績を誇るドイツ・E. C. H. WILL社と日本でも平判自動包装機として多くの実績をもち,世界でもいち早く自動給紙装置を開発したイタリア・WRAPMATIC社とでのこの合理化に成功した。両社はKPLグループに属し,世界の紙パルプ業界発展のために寄与している。
 コンピューター制御による全自動寸法替えはもとより,リームターニング装置により,たて目,よこ目のリームも連結システム内で自動包装することができる。また,不良紙・不良リーム排出にも種々の工夫を装備している。
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表面サイズ剤について ―DIP配合紙のインクジェット印刷適性におけるポリマーの疎水基の効果―
ミサワセラミックス株式会社 化成品事業部技術部 三谷 義之,渡辺 政勝,川村 正明 

 インクジェットプリンタがオフィスや家庭に広く普及し,ここ数年PPC用紙の消費量は拡大を続けている。また,環境保護の観点からDIPの使用量は年々増加し,今後はPPC用紙等情報用紙への配合も増えていくことが予想され,表面サイズ剤の役割はより重要になっていくものと思われる。スチレン―アクリル系,スチレン―マレイン酸系ポリマーは表面サイズ剤として最も一般的に用いられているが,DIP配合紙ではフェザーリング,裏抜けといったインクジェット印刷の問題を改善するには十分な効果が得られにくいことが指摘されている。これらのポリマーに比べオレフィン系ポリマーは上質紙に対しては水性インク受理性が劣る傾向にあるが,多くのDIP配合紙に対しては優れた効果を発揮する。我々はこのオレフィンの特異性に着目し,主に超音波透過式サイズ試験機,マイクロカロリーメーターを用いてサイズ剤処理紙の水浸透特性とインクジェット印刷適性との関係について調査した。オレフィンの構造によってデンプン・サイズ剤併用塗工処理紙の水浸透特性は大きく変わる結果が得られ,分枝オレフィン系ポリマーは直鎖オレフィン系ポリマーとの比較でインクジェット印刷に有利な表面紙質を与えることが明らかとなった。
(本文6ページ)


高負荷対応型流動床式生物処理装置(パビオムーバー)について
神鋼パンテツク株式会社 環境装置事業部製品開発室 川嶋 淳,加治 正廣

 流動床式好気性生物膜処理装置PABIO MOVER(パビオムーバー)は,生物膜の付着した特殊形状のポリエチレン製担体を反応槽内全体に流動・攪拌する方式の有機廃水処理装置である。従来の固定床式担体を利用した生物処理法と比較して,高負荷処理が可能,逆洗操作が不要,様々な形状のリアクターの適用が可能等の特長を有している。
 本プロセスの技術評価を目的とした実証試験を行ったところ,特殊形状担体の流動による酸素移動効率の向上や,微生物の高度な有機物除去能力,微生物の棲み分け等が確認され,これらの相乗作用により,高負荷処理が可能となる本プロセスのメカニズムが明らかとなった。
 実廃水を用いた処理試験の結果,再生紙工場廃水でBOD容積負荷2.0〜5.5kg/m3・dにおいてBOD除去率95〜80%,化学工場廃水でBOD容積負荷3.0〜9.5kg/m3・dにおいてBOD除去率97〜80%,食品工場廃水でBOD容積負荷0.8〜7.9kg/m3・dにおいてBOD除去率90%以上,ビール工場廃水でBOD容積負荷0.8〜4.3kg/m3・dにおいてBOD除去率92%以上の良好な結果が得られた。
(本文15ページ)


高温ジャケットロールによる製紙用カレンダ ―ソフトカレンダ,ハードニップカレンダ,その他―
トクデン株式会社Singapore Office 藤本 壹裕

 最近,あらゆる種類のぺーパには,嵩(Bulk)があって,平滑性(Smoothness)が優れ,しかも印刷適性に優れているものが要求されている。特に,マガジン用の印刷用紙,新聞用紙等には,ハイグロス(High Gloss)と平滑性があって,しかも嵩のあるぺーパが求められてきている。特別にグレイズドペーパ(Glazed Paper)と呼ばれているぺーパがそれである。当然,グレイズドペーパには,優れた平滑性と同時にペーパの嵩が要求されることはいうまでもない。
 製紙用カレンダは製紙機械の最終工程,いわゆるぺーパの仕上げ工程で,ぺーパの品質を決定する最も重要なプロセスである。ぺーパの嵩を維持して平滑性及びグロスを高くし,印刷適性をあげるには,低ニップ圧のカレンダでしかも高温のカレンダロールを使う以外に考えられない。あらゆるぺーパ及び板紙にとって,それは重要なプロセスである。ゼロニップ圧がぺーパの嵩を維持する理想のカレンダであることは言うまでもない。それには,カレンダロールは温度が容易に高温に,しかも温度が均一なジャケットロールが不可欠であるといえる。
 トクデンは,ジャケットロールを常にあらゆる製紙カレンダに効果を発揮するように開発に取り組んでいる。
(本文21ページ)


紙・パ設備におけるネットワーク技術の動向 ―オープンネットワークシステム―
安川シーメンスオートメーション・ドライブ株式会社 技術本部 真島 兼義 

 近年,製紙業界では工場全体の集中管理化,自動化が推進されている。また,産業界ではマルチメディア技術が急速に広がっており,製紙業界へも浸透しつつある。これらの中継役となっているのがネットワーク技術であり,世界標準のネットワークを適用したシステムが指向されてきている。特に,トータルFAシステム化を狙う製紙工場では,FDDI等のオープンな基幹LANで,各工場のホストコンピュータ間が接続され,支線LAN Ethernetで各工場の設備間情報伝送が行われるようになった。フィールドネットワークとしては,世界標準フィールドバスであるPROFIBUSが適用され,インバータの制御やI/Oとのインタフェースが行われる。また,現場機器についてもネットワークが適用され,ASインタフェースにてセンサや操作盤等の各機器が接続されている。
 本稿では,最近急速に広まってきたEthernetインタフェースの特長を簡単に説明し,最近注目されてきたフィールドバスインタフェースPROFIBUSとASインタフェースを適用した場合の製紙設備用電気品について紹介を行った。また,生産管理,設備保全,オペレーション面でのマルチメディア技術応用の動向と,その中でも当社で取り組んでいる保全情報管理システムとリモートメンテナンスについて概要を説明した。
(本文29ページ)


高濃度パルプ領域における過酸化水素を用いたDIP漂白技術の検討
新酸素化学株式会社 松原 淳,室谷 正次,西尾 紀昭,佐々木智範,安井 俊彦  

 環境・資源確保の観点から古紙リサイクルの必要性が強調され久しいなか,製紙メーカーのDIP設備の増強と古紙処理技術の改良・革新を受け,日本の古紙利用率は非常に高い水準にあり,98年の古紙回収率,古紙利用率は大凡55%となっている。
 今後更に古紙利用率を高めて行くには古紙処理技術,利用技術,設備等の開発・改良に加えコスト削減を含めた競争力のある製品作りが求められる。今回,古紙漂白,特に高濃度パルプ領域で過酸化水素漂白を実施することにより少ない薬剤使用量で効率の良い漂白が可能となる知見を得たので報告する。
(本文37ページ)


抄紙用消泡剤―消泡剤の種類と作用―
サンノプコ株式会社 研究第2部 上原 真一

 良質な紙品質を得るために抄紙工程では種々の薬品が使用されている。これらの薬品は白水を泡立ちやすくする性質があり,特に顔料,染料,サイズ剤,紙力増強剤が発泡性増大の原因となることが多い。また,近年,生産性効率アップのために抄造スピードが向上しており,白水温度も高くなる傾向にある。このため,白水はますます発泡しやすくなってきている。泡が大量に発生した場合,紙品質に影響が出るほか,操業性の低下という問題点も生ずる。
 泡トラブル防止のためには機械的方法と化学的方法がある。本稿では消泡剤を用いる化学的方法について述べる。
 抄紙用消泡剤として主に使用されているのは高級アルコール系消泡剤とポリエーテル系消泡剤である。高級アルコール系消泡剤の特長は脱気性が良いことである。また,サイズ度の低下が少ないことから新聞用紙の抄造用として使われる。欠点として,貯蔵条件に制約があることである。また,抄紙温度が50度以上になると徐々に消泡効果が低下する。ポリエーテル系消泡剤の特長は貯蔵安定性が良く,少量で効果を発揮することである。欠点は曇点を持つため,使用温度によって消泡効果が変動することである。また,親水基をもつため,紙面に残留した場合,サイズ度を低下することがある。弊社消泡剤を使用した具体例を紹介する。
(本文41ページ)


新製品Z―引張り試験器―内部結合強度のCDプロファイル測定を可能にする新測定器―
Lorentzen & Wettre AB Thomas Furst  
野村商事株式会社 野村 友良   

 全自動のZ方向引張り試験器がスウェーデンのLorentzen & Wettre社(L&W社)で開発された。Z方向の試験は従来多くの試験法が存在していたが,いずれもサンプルの準備や測定自体に手間が掛かるものが多く,測定値もばらつきが大きいので,正確なZ方向の強さを簡便に得ることは困難であった。
 ここで紹介するL&W社のZ方向引張り試験器は,これらの問題を解消するために開発された。すなわち,サンプルは幅10cm程度にカットするだけで,正確なトリミングや寸法は不要であり,その後は粘着テープの貼り付け,測定,テープの引き剥がし等全ての作業工程を自動化した。特に同試験器では,幅10cm程度の長尺サンプルを自動送りしながら測定できるので,マシンの幅方向のプロファイル測定も容易にでき,Z方向の品質管理のレベル向上に大いに役立つものと期待できる。また,同試験器はTAPPI及びSCANの試験規格に準拠している。
 ここでは,L&W社が同試験器を開発する過程で検討された,Z方向の強さに関係する様々な要因を紹介し,また,参考として従来の試験法の比較検討経緯を述べながら,同試験器の機能及び仕様を紹介する。
(本文46ページ)


世界の塗工紙技術動向
日本ゼオン株式会社 事業企画開発部 宮本 健三 

 世界の塗工紙技術動向を先ず「塗工紙グレードの動向」,「塗工機械の動向」,「顔料の動向」,「ラテックスの動向」の観点でレビューした。重要な技術課題は塗工速度の高速化,高白色度化,軽量化である。塗工速度は既に1,850m/分が達成されており2〜3年内には2,000m/分の設備が実現するであろう。高白色度化は炭酸カルシウムの比率を更に増大させていく。新たな塗工機械と形状や粒径の制御された顔料の適用が軽量塗工と良好な被覆性をもたらすと期待されている。次いで地域別の特徴をレビューした。
 米国では塗工紙製造の低収益性により投資意欲が少なく大型の新鋭設備の設置がみられず,処方検討によりコストの低い新規グレードを開発することに注力している。一方,欧州では新鋭設備の導入を積極的に進めている。処方的には炭酸カルシウムの比率が更に高まると共にタルク等の高アスペクト比顔料の使用が増大している。
 韓国においては最大の市場が国内ではなく中国であることが注目される。韓国の各メーカーはLWC製造の新鋭設備導入を計画している。最後に塗工紙の将来へのIT革命の影響に触れた。
IT革命が塗工紙の将来にどのような影響を与えるかは様々な議論があるが,ペーパーライクなフィルムディスプレイの開発は急速に進んでおり現在の予測より大きな影響を与える可能性がある。
(本文53ページ)


乾燥工程における紙の寸法安定性の改善(第2報) ―動的拘束乾燥による収縮とカール特性―
三菱重工業株式会社 広島研究所 久野 廣明,蓮池 牧雄,真田 晃,横尾 和俊  
三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 大平 和仁

 実機ドライヤでは,カンバスによる面圧拘束,オープンドロー部でのテンション拘束,バキュームロール上での真空拘束が連続的にかつ高速で繰り返されることにより,紙の寸法安定性に係る性質の多くが決定される。本研究では実機の乾燥工程を模擬した動的拘束乾燥実験装置を製作し,各拘束の組み合わせによる拘束力および拘束率と乾燥収縮率の関連を把握するとともに,表裏乾燥順序や表裏乾燥負荷をかえることでカールの特徴的な挙動を明かにした。乾燥過程の拘束率と加熱温度は収縮率に著しい影響を与え,機械抄きの紙を使った実験では,拘束率が87%のときのCD収縮率は,無拘束乾燥と比較して36%減の3.4%となり,また加熱表面温度を60℃から100℃に上げることで,CD収縮率を2%まで低減できることがわかった。一方,オープンドロー部での乾燥は幅方向に不均一な収縮プロファイルを与えるが,FEMによる乾燥過程の応力解析から,その原因は端部ほど収縮に対し抗力となる応力レベルが低くなるためと考えられた。また,ドライヤ形式の主流となりつつある単段式ドライヤの場合,カールの傾向は紙の表裏を反転乾燥する際の含水率と,どちらの面から最初に乾燥するかで異なる。片面乾燥においては,クリティカル含水率と定義される33〜34%近傍の含水率で表裏を反転すれば,両面交互乾燥と同等のカール値が得られることが明らかになるなど乾燥過程における寸法安定性改善のためのいくつかの有効な知見が得られた。
(本文74ページ)


上質紙のLCA:ライフサイクル・インベントリー
三菱製紙株式会社 総合研究所 桂 徹
八戸工場 庭田 博章        
東海大学 工学研究科 中澤 克仁,片山 恵一  
東京大学 生産技術研究所 坂村 博康,安井 至  

 古紙パルプを含む上質紙について植林から廃棄に至るライフサイクル・インベントリーを試み,以下の結果を得た。
 @ CO2量を化石燃料由来とバイオマス由来の排出量および木材や紙に固定された量に分けて解析することにより,CO2排出量に対する植林や古紙の役割を明らかにすることが出来た。
 A 紙の全ライフサイクルでの,化石燃料に由来するCO2排出量は紙製造工程が最も多かった。SOx排出量の場合は,チップ輸送時の排出量が最も多かった。これは,紙の製造工程では排煙脱硫装置による処理が行われているが,船舶等の輸送機関では排気の処理が行われていないことによる。
 B 古紙パルプ配合率の影響についてシミュレーションを行った結果,配合率が増加すると,化石燃料とバイオマス由来の合計CO2排出量は減少する傾向にあった。ただし,古紙パルプ高配合に伴う品質低下を防止する目的で,収率50%まで精製した古紙パルプを用いると,配合率が増加しても合計のCO2排出量は減少しなかった。いずれの場合も化石燃料由来のCO2排出量は古紙パルプ配合率と共に増加する傾向にあった。
 C 回収した古紙の一部分をサーマルリサイクルすることにより,古紙パルプ製造に伴う化石燃料使用量の増加を抑えうることが明らかになった。
 D 一連の検討を通じて,植林の取扱い方法,ボイラーで発生するエネルギーの配分方法,製紙用薬品製造時の環境負荷データの整備等が今後の課題として明らかになった。
(本文84ページ)


ファインと紙力剤のリテンションに影響を及ぼす因子の解析
日本製紙株式会社 技術研究所 小野 裕司,宮西 孝則  

 抄紙機のウエットエンドにはパルプ由来のリグニン,ヘミセルロース,樹脂酸,脂肪酸,トリグリセリドなどのリテンション阻害物質が多量に存在し,リテンションの阻害要因になっていることが知られている。これらの阻害物質の指標として,ゼータ電位,電導度,全有機体炭素(TOC),カチオン要求量,UV吸光度,濁度等があるが,統一した見解や普遍的な理論を導き出すには到っていない。そこで,ファイン系の量が多いGPを主体としたパルプに,硫酸バンドとカチオンPAMを使用したシングルポリマーシステムとpDADMACとカチオンPAMを使用したデュアルカチオンシステムのモデル実験を行い,ファインリテンションと紙力剤定着率を最適化するウエットエンド指標を調査した。更に,Smoluchowskiのperikinetic式(ブラウン運動による衝突)とorthokinetic式(シェアーによる衝突)から,乱流下における,凝結剤とアニオントラッシュ,及び繊維への衝突頻度を計算し,理論的な裏付けをした。
 硫酸バンドを凝結剤として使用した場合にファインリテンションを最大にするには,ゼータ電位を約−10mVに近づけ,TOCやUV吸光度,濁度を最小にすること,pDADMACを凝結剤として使用した場合にファインリテンションを最大にするには,ゼータ電位を約−10mVに近づけ,TOCを最小にすることが重要であることが示された。衝突頻度の計算から,アルミニウムイオンはアニオントラッシュに吸着した後に繊維に吸着するが,pDADMACは繊維に吸着した後にアニオントラッシュに吸着することが示された。この結果は本実験結果やBrouwerらの実験結果と一致した。この様に凝結剤の種類によってアニオントラッシュと繊維に対する衝突頻度が異なるために,ろ液のカチオン要求量を測定してもファインリテンションを最適化する指標にはならず,繊維の表面電荷密度を表現しているゼータ電位がファインリテンションを最適化する指標になるものと考えられる。
 カチオン澱粉やPAM系紙力剤の定着率を最適化する指標には,ゼータ電位ではなく,パルプ全体のカチオン要求量が指標になる。パルプ全体の電荷の10〜20%が中和されている場合にカチオン澱粉の定着率が最大になり,約30%が中和されている場合にPAM系紙力剤の定着量が最大になった。歩留向上剤は分子量が大きいために,パルプの最表面に吸着するのでファインリテンションを最適化するにはゼータ電位が指標と考えられる。それに対し,紙力剤は分子量が小さいために,フィブリル内部へも吸着するのでパルプ全体のカチオン要求量が紙力剤定着率を最適化する指標になるものと思われる。
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