2000年7月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2000年7月

第54巻 第7号(通巻第592号) 和文概要


KP製造の化学
筑波大学 農林工学系 大井 洋 

 ダイオキシン類対策などの最近の環境対策を考慮に入れて,クラフトパルプ製造の化学についてまとめた。まず規制で問題となるダイオキシンとクロロホルム排出量を示し,つぎに,リグニンの化学的特徴,クラフト蒸解におけるリグニンと炭水化物の反応,パルプに残留するリグニンの構造,塩素系漂白剤の反応,パルプの酸性処理の役割について解説した。また,過酸化水素の反応と可能性について述べ,著者らの研究であるマンガンの還元を目的とした酸性処理と過酸化水素漂白を用いる無塩素漂白を紹介した。
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我が国の海外産業植林事業の現状と動向
社団法人海外産業植林センター 久田 陸昭  

 我が国の紙パルプ産業の原料は1989年を境に古紙の使用比率とパルプ材中に占める輸入材の割合が50%を超え,その後古紙と輸入材の使用比率が減ることはない。丁度その頃から主として紙パルプ企業により本格的に始められた海外産業植林は10年を経過し,今では世界の8か国で事業を展開してその面積は258千ha(1998年末)に達している。
 これまで天然林,人工林問わず海外で生産される木材を輸入してきた我が国の企業が,自分で使用する原料は自分で育てようとするのが海外産業植林の本来の目的で,我が国の海外産業植林は,日本向けチップ輸出を目的とするプロジェクトが大半である。
  1997年の地球温暖化防止京都会議にて,植林の炭酸ガス吸収機能が国際的に認知されてからは別の面で注目されるようになり,自動車業界,電力業界からの事業への参加が目立つようになった。
 今後我が国の海外産業植林を推進するには,解決すべき問題が多くあり,正確な情報の収集と対応が望まれる。
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KP操業技術アンケート調査結果 (その1)未晒工程
パルプ技術委員会
(王子製紙株式会社) 進藤富三雄

 紙パルプ技術委員会では,紙パルプ業界内での技術情報の提供及び共有を目的に98年度(’98年4月〜’99年3月)のKP操業状況について国内35KP工場を対象にアンケート調査を行い,未回答の1工場を除く34工場から得られた結果を取り纏めた。
 未晒工程では,蒸解から酸素脱リグニン及び後洗浄工程までの操業状況についてのアンケート調査結果をもとに以下の内容について取り纏めた。
@パルプ品種別生産量と使用樹種について
Aチップの前処理設備設置状況
B蒸解工程では蒸解方式,型式,蒸解条件,安定操業対策等について
C洗浄・精選工程では洗浄段数・洗浄機型式およびノッター・スクリーンの設置状況
D酸素脱リグニン工程及びその後の洗浄設備については,酸素脱リグニンの方式,操業条件,洗浄管理指標等について
E未晒工程まとめ。
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KP操業技術アンケート調査結果 (その2)漂白工程およびアフター処理(晒再選)工程
パルプ技術委員会          
(日本製紙株式会社) 田部井宏一 

 パルプ技術委員会が実施したKP操業技術アンケート調査結果のうち,漂白工程およびアフター処理について報告する。BKP工程は30工場・50系列(L30,N12,LN切替え8系列)あり,内3工場・4系列は酸素脱リグニン工程がない。半晒工程は6系列(5例はOH2段漂白)で,いずれもN材である。ECF漂白は3例(L1例,N2例)で,いずれもトップDである。オゾンを使用している工程は無い。トップCとトップC/Dが同数であり,最も多い漂白シーケンスはC/DE/oHD4段である。3段シーケンスは6例(DnDを1段とすれば8例),5段は4例である。アルカリ抽出段では3/4の工程が酸素,ハイポ,過酸化水素などで強化されており,酸素とハイポまたは過酸化水素の併用は6例である。過酸化水素使用工程は11例,ハイポ使用工程は46例である。酵素使用工程は1例,最終段でのDnD採用は2例である。漂白工程入口カッパー価は11.4(LBKP単独では10.2),カッパーファクターは1.73(kg基準),CEK価は2.1,仕上り白色度は85.8,仕上り粘度は相対粘度採用工場で6.7,絶対粘度採用工場で15.8,夾雑物は1.8mm2/100g,塩素原単位は18kg/T,C/DのD原単位は0.9kg/T,C/DのD比率は13%,トータル有効塩素は29.3kg/T,COD発生量は15kg/T,漂白工程排水量は31m3/Tである(いずれも平均値)。
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クヴァナパルピングのファイバーラインの今日クヴァナパルピングAB Stig Andtbacka
(スウェーデン,カールスタッド市)
クヴァナパルピング株式会社 今井三千雄

 ここ最近の傾向として,新設のクラフトパルプ製造設備の数は,一部東南アジア並びに南米の地域では増加が見られたものの世界的規模では明らかに減少傾向にある。一方その製造技術に関しては,この間にいくつかの目立った変化が見られた。特に蒸解技術に関する開発にはこの20年間に目覚しい進歩があった。今日ではパルプ品質並びに漂白性の向上をもたらす新蒸解システムが可能になっている。また漂白技術に関しても環境面への対応から漂白薬品消費量の低減並びに排出負荷の低減を目指して中濃度酸素脱リグニン技術の普及,更にはその2段化への拡張,またTCFあるいはECF漂白への転換も進み,現在では更にソフトECF漂白システムが推奨され導入されてきている。
 さて現状を見てみると,クヴァナパルピングではこれらの新技術へのニーズに対応すべく開発を継続する中で,特に蒸解技術については「Compact CookingTM」「Compact Cooking XylanTM」「Compact Cooking Con―CurrentTM」及び「Kobudo MariTM」と称す一連の新システムを開発し,現在推進している。また,中濃度酸素脱リグニンシステムについてもその選択性の最適化と併せて設備費の低減をも計った「DUALOXTM」と称す新システムを開発し既に実機運転に入っている。漂白技術についても「PrepoxTM」と称す加圧過水段,また中濃度オゾン段,更には拡張型中濃度オゾン段を開発しそれらと組みあわせたシステムを提供している。
 今後を展望すると新設ラインの建設数は明らかに減少するであろうが,設備の能力面では一層の大型化が進み一系列による最大処理能力は日産2,800〜3,000ADT程度にまでなるものと予想される。またその他の要求として,蒸解の歩留まりを向上させる技術,また既存設備の能力増大のみならず,効率化,品質向上をめざした部分更新を可能にする技術,また装置面では特に洗浄においてはより簡便で操作性のよいウォッシュプレスへの要望,等々が出てくると考えている。クヴァナパルピングとしては当然これらニーズを視野に入れた開発を進めていくことになろう。
(本文42ページ)


アールストロームのMCオゾン漂白技術
―ECFへの応用,酸処理加水分解との組合せ,実機のオゾン増幅効果―
アールストローム株式会社 川上 千明,オラビ・ピッカ  

 オゾンは理論的には,二酸化塩素の1.69倍の酸化力がある。しかし,オゾンの反応は急速かつ過激であるので,強力な酸化力を活かしつつ選択的な反応条件を得るのは容易ではない。特殊開発されたAMZ型ミキサーは瞬時に多量のオゾンガスを均一分散し,パルプスラリーと接触し,選択的な反応条件を提供する。AMZミキサーの中濃度オゾン漂白はオゾンの強力な酸化力をマイルドな反応条件下で繊維を損傷することなく最大限に活用することを可能にした。
 近年,オゾン漂白をECF漂白にも応用し,二酸化塩素に対し高い置換率が得られ,塩素系薬品が更に減らせることからECF―Lightとして欧州では高い評価を得ている。また,セミ・クローズド化も試みられている。
 カナダのAMZ―MC実機プラントでは6kg/tまでのオゾン添加に対し強度低下が起きていない。更に,ラボよりもAMZミキサーを用いた実機の方がはるかに高い二酸化塩素置換率が得られていることが最近分かって来た。オゾン漂白はリグニン,ヘキセンウロン酸から蓚酸を生成する。AhlstageTM酸処理はClO2,H2O2を節減するほか,ヘキセンウロン酸を分解することでオゾン漂白の効果を更に高め,スケールトラブルを減少させる。
  80年代MC機器の開発により高濃度方式に代わりMC酸素脱リグニンが急速に普及した。オゾン漂白もより単純な中濃度システムが開発,実証され,塩素系薬品を減少させるため広く普及する可能性があると思われる。
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ECF漂白へのオゾンの応用
Valmet Fibertech AB モニカ ボクストレーム
バルメット株式会社 小林 達

 1990年代はじめにオゾンシステムが実機操業に入って以来,TCF/ECF漂白に導入されてきている。開発・研究はその後も進み現在では確立されたシステムとなったといえる。オゾン処理で粘度低下が懸念されていたが,実機操業においては強度の高いパルプを生産できている。オゾンシステムには,中濃度法と高濃度法が採用され,それぞれさらに開発されてきている。バルメット社は1992年に高濃度オゾンシステムをECF漂白プラントに導入して以来TCF漂白にも導入している。
 高濃度法について実機データを含め,中濃度法との比較,ECF漂白プラントへのオゾンシステム導入の利点を報告する。
 環境面から,漂白排水をさらに低減する要求が強くなっておりTEFの実現が可能なプラント設計が要求されてきている。
 バルメット社は,研究・実機データから高濃度オゾンシステムを導入した極めてパワフルでシンプルなECF漂白シーケンス,(Z(Eo))DnDを紹介する。このシーケンスは,オゾンの高い脱リグニン反応・酸化力を十分に引き出して,オゾン段でのカッパ制御を容易にし,ヘキセンウロン酸を別途,酸で処理する必要がない。日本で生産されている広葉樹・針葉樹パルプについてのテストでは,最終の二酸化塩素段は1段で白色度ISO88―90を得ることができ,二酸化塩素消費量は極めて少なくなる。また,排水は最終の二酸化塩素段と酸循環からのみとなり将来のTEF化を促進できる。
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次世代の板紙抄紙機 ―低コスト,高生産,高品質を目指して―
フォイトスルザーペーパーテクノロジー アレキサンダ ワッサーマン  
石川島播磨重工業株式会社 製紙機械設計部 藤村 修

 従来の設計のままでは,生産性の高い板紙抄紙機を製造するには限界がきている。その限界とは,例えば次のようなことである。
 多層フォードリニアフォーミングは最新の技術であるが,より高速抄紙を求める場合,脱水長さがかなり増加するだろうし,巨大なワイヤセクションが必要となることが容易に想像できる。プレスパートでは,いくつかのロールプレスが続く時,嵩が少なくなる問題がある。ドライヤパートでは,ダブルティア乾燥部は両面の平滑性が改善されるが,MD方向には拘束のない乾燥のため,MD方向の引張強度がシートの端で低下するような収縮効果をもたらすという欠点を持っている。
 IHI―VSPTでは,上記のような限界に打ち勝つために,高生産量,高効率さらに,高品質の紙を抄くための最新,最適な抄紙機を開発し続けている。
  ここでは,今後の板紙抄紙機はすでに証明された機器の組合せで構成できることをしめしており,その高生産性板紙抄紙機の仕様をまとめると,坪量160〜400g/m2,ワイヤ幅最大10.5m,抄速600〜1,000m/min,生産量最大3,000t/日となる。
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セルケム社の二酸化塩素製造プロセス
セルケム株式会社(スウェーデン) アンダース・ダール  

 セルケムは世界最大の塩素酸ソーダメーカーであるエカケミカルスのエンジニヤリング会社として長年にわたり二酸化塩素プロセスの開発を積極的に行ってきている。当社の二酸化塩素プロセスは基本的には今日世界中で実用化されているすべてのプロセスを網羅している。
 本報では日本のパルプ工場の要求に最も適していると考えられるSVP―LITEプロセス及びHP―ATMプロセスをまず取り上げその特長について述べる。SVP―LITE〓は操業の信頼性と安全性の面で非常に優れており,また今日では最も経済的な汎用プロセスである。SVPプロセスは多くの異なったモードでの運転に対応できる柔軟な技術であり世界で70基以上の実績がある。
 HP―ATMプロセス(Hydrogen Peroxide―Atmosphericの略)は従来の常圧システムを新技術に転換する場合に特に有利である。既存の反応器システムを使って能力を1.5〜2倍に増やす事が可能である。
 また最近開発したSVP―GLSプロセス(GLSはGenerator Liquor Splitの略)についても簡単に述べる。このプロセスはSVP―LITEプロセスもしくはSVP―HPプロセスに追加の設備をつけたもので,副生芒硝を基本的には酸と苛性ソーダに転換することができる。
 SVP―プロセス及びHP―ATMプロセスは国内では保土谷エンジニヤリング鰍ェ販売している。
(本文83ページ)


カラーシート検査装置の開発及び導入事例
オムロン株式会社 ビジョンシステム事業部技術部 松井 秀人

 カラーシート検査装置はこれまでの検査装置と大きく概念を替えた。単にモノクロ検査をカラー化しただけではなく,検出アルゴリズムに,パターンマッチング方式を採用し,検出欠陥種を大幅に改善した。
 今回,この装置の開発の経緯〜装置特徴,そして導入事例を説明する。大まかな特徴としては,カラー化による色欠陥検出精度の向上,簡易な画像処理による安定した検査,そして,パターンマッチングによる薄汚れ検出精度の大幅な向上が上げられる。また,判別においては,ライン処理からエリア処理に代えることで,人の目に近い判別が可能である。
(本文90ページ)


バイオマス変換のためのケナフ成分の分別と利用 ―ケナフ靭皮のアルカリ酸素パルプ化およびケナフ酸素パルプの漂白―
北海道大学大学院農学研究科 敖日 格勒,佐野 嘉拓  

 ケナフ靭皮パルプを針葉樹クラフトパルプの補填パルプとして利用するために,ケナフ(Hibiscus cannabinis)靭皮のアルカリ酸素パルプ化と得られるパルプの無塩素漂白を検討した。アルカリ酸素パルプ化はクラフトパルプの酸素漂白の条件に基づき設定した。表皮が褐色化した靭皮は表皮の脱色に多くのアルカリと煩雑な操作が必要であった。しかし,一般的な緑色表皮の靭皮では8〜15%NaOH(対靭皮),110℃,酸素圧7kg/cm2,1時間のパルプ条件により,カッパ価44〜54のパルプが67〜78%の収率で得られた。パルプは50〜70%酢酸水で還流することにより,パルプ収率は56〜59%(対靭皮)に低下し,カッパ価は21〜31まで低下した。酢酸水で処理した酸素パルプは5%Pa―1%P―1%Pa―1%Pa,5%Pa―1%Pa―0.2%D/0.2%P―1%Pなどのシークエンスにより完全漂白することが可能であった。強度試験の結果は靭皮の酸素パルプおよび漂白パルプが針葉樹クラフトパルプの補填パルプとして利用できることを示した。
(本文99ページ)


塗料の保水性が塗工紙物性に与える効果(第3報) ―塗工層表面のラテックス濃度―
日本製紙株式会社 研究開発本部技術研究所 大篭 幸治,森井 博一,藤原 秀樹  

 塗料の塗工原紙に対する保水性は,最終製品である塗工紙の品質を決定する重要な因子のひとつであることは良く知られている。塗料の保水性を測定する手段として数多くの保水性測定の提案がなされているが,一般的に塗料の保水性という言葉は明確には定義されていない。第一報では,塗料の保水性を静的保水性および動的保水性に分類し,塗工適性評価を行った。塗料が塗布されてから掻き落とされるまでの間の脱水量は,ブレード直下での流動性に大きく影響を与えている。また,塗料が脱水する際,塗料中の水と共にバインダー成分も原紙に浸透し,このバインダーの浸透挙動が塗工紙物性に大きな影響を与える因子のひとつになると考えられる。そのため第二報では,塗料のバインダーの浸透挙動を明確にするために,塗料および,塗料中の水およびラテックスから構成される希薄ラテックスの脱水量を測定し,その際,水と共にバインダー成分(ラテックス)が原紙へ浸透する挙動を,クロマトスキャナを使用して測定した。これらの値,ハイシア粘度,脱水量等は,塗工適性および塗工紙品質に影響を与えると考えられる。
 本報告では,@塗料のハイシア粘度,保水性およびドゥェルタイム等に依存するブレード圧追従性,およびA塗料中のバインダ(ラテックス)と塗料中の顔料,助剤等との相互作用に依存する原紙へのラテックス浸透挙動の二つが,塗工紙物性に影響を与える因子のひとつである塗工紙表面のバインダ濃度に与える影響を検討した。
 ブレード圧追従性およびラテックスの浸透挙動は,クロマトスキャナを用いて測定した塗工紙表面のバインダ濃度と密接な関係が見出された。塗料粘度,保水性,ラテックスの浸透挙動等を評価することにより,塗工紙表面のバインダ濃度の傾向を推定することが可能であると考えられる。
(本文107ページ)


両面段ボールの異方性弾性引張り変形表示
愛媛大学 松島 成夫  
愛媛大学 矢野 忠  
帝人製機株式会社 松島 理  

 一様引っ張り変形荷重下における両面段ボール異方性弾性変形の表示が求められた。この表示によって,異方性弾性素材の弾性係数によって両面段ボールの縦弾性係数が決定され,また,引張り変形実験の既知の結果によって,その表示の妥当性が確認された。さらに,その段ボールの弾性係数の異方性特性が明らかになった。
 この表示によって得られた両面段ボールの変形は顕著な異方性が示された。両面段ボールの異方性は,セミ中芯の波長の増加に伴って増加し,その中芯の厚さおよび波高の増加に伴って減少する。
(本文116ページ)